image
鶴俳句の諸作より
波郷が選句していた頃のものより(抜粋)

●緑さすと聞けばかなしき五月来ぬ   石野兌
.
言葉は平坦で弱々しいようだが、一句をつらぬくものは、病生活を支えたはげしい精神力である。気根である。美しい五月、緑さす五月、もはや病生涯の涯をむかへた作者には、起きて緑を見飽くことはできない。「緑さすときけばかなしき」は切々たる生命嘆称の声でなくて何であろう。
.
●衣更へて必死の帯を結ぶなり  石野兌
.
「必死」なども、療養俳句にしばしば見られる病にもたれた誇張ではない。氏も死を予期したわけではなかろうが、死はすでに濃くその痩躯に翳をやどしていたのである。
.
●梅雨寒の薄き屍と弟子ひとり   細川加賀
.
石野兌氏逝去の報にM療園に馳す。未だ訪ふものなし。療養所の殺風景な屍室に今は梅雨寒の嵩もない亡骸となって横たはるひとに、侍するのはひとりの弟子のみ、故人の境涯と、作者の粛殺たる心情が凝結したような、冷たい名詞句の叙法である。
.
.
●捨て犬を遂うて袖濡れ返り梅雨 波郷
...続く (^^)
モクラク本店TOP
line