ここでは、私の看護研究(というほどでもないけど,少し自信のあるものだけ)を、あげていきました。1年目、2年目は、症例事例を通して看護を振り返りました。3年目では、ターミナルケアについて考えさせられる研究を・・・する事になり、ここで、看護って大変だけど、面白いって気づきました。4年目から、血管撮影(主に肝動注に関する)を主とした研究になります。病棟変わってからは、泌尿器科、褥瘡、HPNと様々な種類に挑んでいます。
 ここまでやってきたから、信頼関係もできたんだと思うし、新しい看護の導入も図れてきたと思います。

でも、一番の楽しみは、研究終了後の一杯かもしれません・・・・♪☆\(^0^\) ♪(/^-^)/☆♪
それでは、ごゆっくりと・・・
 (転写、引用等はしないでください。そんな方はいないと思いますが・・・それから、論文内容の一部を、直しています。原本と多少違いがあります。)
終末期看護関連 ターミナルケアにおけるデスカンファレンスの効果
泌尿器科関連 陰茎切断術を受ける患者の看護  
創傷処置関連 仙骨部にある褥瘡ケアの看護〜観察と洗浄方法・消毒薬の使用について〜
在宅関連 消化器悪性疾患におけるHPN導入時期の一考察
化学療法関連 肝動注化学療法による自覚的副作用の日常生活への影響
看護管理関連(院内研修課題) 自己防止を考慮した行動〜お針箱の使用推進を通して〜

終末期看護関連 ターミナルケアにおけるデスカンファレンスの効果

はじめに
 ターミナルケアは、患者を中心に医師・看護婦・家族等患者と関わる者が、患者のQOLを第一に考えて行うチーム医療である。牛坂らも家族の参加によるカンファレンスの重要性を述べている。しかし、実際は、チームとして十分に患者と関わり、ケアをすることは大変難しい。そこで、病棟では、ターミナルケアを評価し、次に生かせるより良いターミナルケアを目指す目的で、平成2年よりデスカンファレンスを行ってきた。1年間で、44名となった。この1年間を振り返り、デスカンファレンスのターミナルケアを行うにあたっての効果について、以下の2点について考えてみた。
・デスカンファレンスがターミナルケアを考える糸口となり、病棟看護婦の意識や行動に変化が見られたかどうか。
・データシートに次に生かせれている内容が残されているかどうか。
その結果、デスカンファレンスは看護婦のターミナルケアに対する教育的役割があり、次のターミナルケアにつながる有効な手段であることがわかった。以下に報告する。
 デスカンファレンスとは、患者の死亡後、できる限り早い時期にデータシートを使用しながら行うカンファレンス。内容は、患者に対して行ったターミナルケアの評価をすることと、患者との関わりの中で学んだことや意見を医師や看護婦が出し合って、ターミナルケアに対する考えを深めることである。
1 目的
 デスカンファレンスが、次のターミナルケアにつながる有効な手段であるかどうかを明らかにする。
2 方法
1) アンケート調査
 目的 デスカンファレンスを通して看護婦の意識や行動に変化があったかどうかを知る。
 対象 病棟看護婦24名
 内容 ターミナルケアのポイントを症状のコントロール・家族へのケア・精神面への配慮の三点と考えて、アンケートの項目を作成した。
2) データシートの記録内容の検討
 目的 デスカンファレンスがターミナルケアに生かせる内容かどうかを知る。
 内容 44名のデータシート“その他”の記録から検討する。
3 結果及び考察
1) アンケート結果
 回収率100%で、看護婦の年齢・看護歴による差は見られなかった。13問中11問に16名以上が“はい”と答え、デスカンファレンスによる影響の大きいことを表している。
(1)症状のコントロールについて
 設問“薬剤使用後に症状が緩和されたかどうかを、確認するようになった”は18名、設問“症状コントロールについてDrと話し合うようになった。”は21名、設問“躊躇することなく苦痛緩和に努めるようになった”は22名が“はい”と答えている。積極的に苦痛の緩和に努め、薬剤使用後は症状が緩和されたかどうかを確認し、その結果を医師に報告するのみにとどまらず、どうしたら苦痛緩和が図れるかを医師とともに話し合うように変化している。
 しかし、設問“症状コントロールについて、文献学習するようになった”で“いいえ”が7名いた。上記の変化は見られても自己の学習行動までは結びついていない。
(2)家族へのケアについて
 設問”家族の気持ちを考え、意識的に声がかけられるようになった”は21名、設問”患者のケアを家族とともに行えるようになった”は16名、設問“家族の希望に沿えるように、スタッフ間で話し合うようになった”は21名が“はい”と答えている。家族の気持ちを大切にし、希望に沿ったケアができるようにと、変化している。
 しかし、設問“家族の抱える問題について、相談されるようになった”の“はい”は5名と少なかった。家族の持つ問題を相談されるような関わり方は、まだ不十分であることがわかる。
(3)精神面への配慮について
 設問“患者の大切にしていることは何かを考えて、接するようになった”は22名、設問“患者が病状をどのように受け止めているのか、関心を持つようになった”は21名、設問“患者の怒り・悲しみを落ち着いて傾聴できるようになった”は14名、設問“患者が遠慮なく話せる雰囲気を作るように、心がける様になった”は16名、設問“患者との信頼関係を大切にし、看護技術の向上に努めるようになった”は18名が“はい”と答えている。患者の気持ちを大切にし、理解した上で、患者と接するように、変化してきている。
2 データーシートの記録内容の検討
 44名のデータシートの“その他”の記録から検討した。医師・看護婦のターミナルケアに対する考え方や行ったターミナルケアの評価が記録されていた。今後のターミナルケアに生かせる内容として整理すると、以下のようになる。
(1)疼痛コントロールは、鎮痛剤の定期投与で効果があり、患者のQOLの向上にとって重要である。(全ケースより)
(2)医師から出された指示では、症状コントロールが図れないと判断した時点で、ケースカンファレンスを行い、どのように患者と関わっていくのか話し合う。(最期まで苦痛がとれず終わったケースより)
(3)医師と共にケースカンファレンスを行い、治療方針に沿った看護計画を立案して、患者に統一した関わり方ができた(家族も満足して患者の死を見取ったケースより)
(4)患者のQOLを考えると、今後は自宅で可能な限り過ごして、最期を病院でみる短期入院は増えると思われる。入院と同時に医師の方針・家族の意向を確認してそれに沿ったケアをしていく事が必要である。(入院後1週間以内で死亡し、十分に関われなかったケースより)
(5)外泊時には、患者の家族の心身の負担を考えて準備する。対応方法を話しておくと共に地域の医療機関との連絡をとり、患者と家族が安心して外泊できるように用意する。(外泊時に急変したケースより)
(6)患者に病名が告知されていても病状の全てを話すことはできないので、死期が近づくと患者の不安が大きくなることがある。医療者が処置時に細やかな心遣いをし、確実な技術を提供することで患者との信頼関係を維持し、患者は平安な気持ちで過ごすことができる。(病名を知り、予後を悟って死後の準備を整えて亡くなったケースより)
(7)患者の一番大切に思っていることは何かを知り、医師・看護婦が一体となってその実現に向けて努力することは、患者のその人らしさを尊重したケアである。(生きていることは食べられることであるとの思いで、何度もプロステーシスを行ったケースより)
4 まとめ
 デスカンファレンスが有効であったかどうかを、看護婦へのアンケートとデーターシートの両面から考えた。その結果、デスカンファレンスに参加してターミナルケアを評価し、実際に医師や他の看護婦の考えを聞き、意見交換をすることにより、自己のターミナルケアに対する考えを徐々に深めることできてきた。また、患者の一人一人を振り返り、データシートに記録して保管することにより、デスカンファレンスに参加できなかった看護婦にも、その内容が伝わり、記録から学ぶ事ができた。デスカンファレンスの内容は、次のターミナルケアに生かせるものであり、この1年間の積み重ねがアンケート結果に表れ、データシートがその裏付けとなっている。
 したがってデスカンファレンスは、次のターミナルケアにつながる有効な手段であるといえる。
 しかし、デスカンファレンスで初めて患者の抱えていた問題を知ることや、医師の考えを聞くことは、評価ではなく反省であることが多い。デスカンファレンスの記録内容の検討で述べた通り、ケースカンファレンスの重要性を感じている。コントロール困難な症状や苦痛がある時、主治医の方針が看護婦に伝わっていない時、ターミナル段階で入院してきた時に速やかにケースカンファレンスが行われるべきと考えている。そうすれば、医師・看護婦がお互いの考えを出し合い、統一した方針の下で、安心して患者と関わることができる。そうしたケースでは、デスカンファレンスが、行われたケアの評価に集中し、より次に生かせる内容になると考える。
 また、データシートは記録しにくい部分があり検討の余地があること、いつもデスカンファレンスが活発に運営されているとは限らないことも、残された問題である。
 データシートの見直しとデスカンファレンスの充実が今後の課題である。データシートを、自分たちのケアが的確に評価できる内容に見なおしていきたい。また、ケースカンファレンスをタイミングよくすることで、より良いターミナルケアを実践し、充実したデスカンファレンスを行えるようにしたいと考えている。
 
*参考文献は省略させていただきます。

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泌尿器科関連   陰茎切断術を受ける患者の看護

はじめに
 陰茎癌の発生頻度は生活水準の向上に伴い、減少している疾患である。標準的な治療法というべきものはないといわれており、看護においても陰茎癌の看護が明らかにされているとは言い切れない。
 今回、陰茎癌で陰茎切断術を受ける一症例を入院から退院まで経験する事ができた。陰茎癌患者にとって必要な看護のポイントについてまとめたのでここに報告する。

1 目的
 陰茎切断術を受ける患者の術前術後の看護をまとめ、今後の看護に役立てる。
2 方法
 今回の事例について、1)手術(陰茎切断術)に対する不安がある2)術後の創部の管理が重要である3)バルーンカテーテル抜去後の排尿の変化についての援助が必要である、という3点にポイントを置き、看護計画を立案し、その結果の評価を行う。
3 結果
1) 事例紹介
  患者:男性 
  診断名:陰茎癌
  入院時の状態:陰茎先端に疼痛・糜爛があり、市販の軟膏を塗布した後、無色殺菌剤配合救急絆創膏を用いて保護をしている。
2) 看護の展開
(1)入院から手術前日まで
・ 問題点:手術(陰茎切断術)に対する不安がある。
・ 目標:手術に対する不安が表出でき、落ち着いて手術を迎えることができる。
・ 実際:患者から疾患についてやボディイメージの変化についての発言は多くは聞かれなかった。手術前の面談においても、「先生のお任せだよ」といわれるぐらいであり、その後、主治医に相談するようなことはなかった。病室では、同室者が消化器疾患患者であったためか、他の患者と一緒に疾患について話をしている様子はなかった。看護婦は別室で話をする機会を設け、関わりを深めていくことに努めた。手術が近づくにつれ、「陰茎を少しでも長く残してほしい」と患者は看護婦に訴えるようになっていった。夜間は十分な睡眠が得られるように眠剤を与薬し、援助に努めていった。
  患者の糜爛には0.025W/V%塩化ベンザルコニウム液綿球を用いて消毒し、無色殺菌剤配合救急絆創膏で保護していた。排尿時には、創部が尿によって汚染されることはなかったため痛みは伴わなかった。
(2)手術当日からバルーンカテーテル抜去迄
・ 問題点:創部感染や出血を起こす可能性がある。
・ 目標:創部感染や出血を起こすことなく経過する。
・ 実際:手術創は、陰茎断端部、陰茎下部と両鼠頚部にあり、両鼠頚部のリンパ節郭清部には直径3.5mmウーンドドレナージチューブが挿入され、ポータブル持続吸引器に接続されていた。尿道口にはバルーンカテーテルが創部の安静を保つために術後13日目まで挿入されていた。創部は、毎日ポピドンヨード液で消毒を行っていた。しかし、術後7日目より、陰茎下部から陰嚢にかけて濃汁様の浸出液が付着するようになり、皮膚科受診をしたところ感染は認められなかった。ポピドンヨード液の刺激による可能性を指摘され、使用消毒薬を0.025W/V%塩化ベンザルコニウム液に変更するとともに、陰嚢の保清のために陰嚢部の10W/V%塩化ベンザルコニウム液浴を開始した。陰嚢の表面は清潔になっていたが、ぴりぴりした表面の疼痛が現れるようになり10W/V%塩化ベンザルコニウム液浴は中止とし、下半身シャワーバスに変更した。濃汁様浸出液は0.025W/V%塩化ベンザルコニウム液消毒とサルファ剤軟膏の塗布により軽減された。そのほかの創部は抗生剤の使用で対応され感染の兆候はなかった。
 手術直後から陰嚢は大きく腫れ、ADLの拡大とともに疼痛も増し、鎮痛剤の使用で対応した。リンパ節郭清による下肢の浮腫には、医師の指示により手術終了時から予防的にゲット帯を使用し対応した。そして、歩行開始と同時に医療用弾性ストッキングに変更した。しかし、浮腫は苦痛を伴わない程度に留まり、これらは活用されなかった。
 ポータブル持続吸引器の管理は両鼠頚部リンパ節を郭清しているため、後出血の早期発見や有効なドレナージなために重要であった。排液の性状は、淡赤黄色であり、術後日数が経過するとともに性状は徐々に薄くなり、術後8日目でドレナージは抜去された。
(3)バルーンカテーテル抜去後から退院まで
・ 問題点:スムーズに排尿できないことが考えられ、自信喪失する可能性がある。
・ 目標:スムーズに排尿ができる。
・ 実際:バルーンカテーテル抜去後の排尿状況の実際の把握を行った。患者は洋式トイレに座り排尿していた。術前のように起立して排尿すると、尿は陰嚢から下肢につたって流れた。陰茎の短縮と陰嚢の腫大のために、尿道口が埋没した形となっていた。片手で尿道口を確保できるように陰茎の根幹部を圧迫する形での起立排尿を試みたが、やはり下肢へつたってしまい、十分に排尿できなかったため装具の必要性を感じた。
・ 問題点:陰茎切除にいる尿線の変化
・ 目標:装具の使用により、起立排尿ができる。陰嚢部の尿汚染を防ぐ。
・ 実際:術前の尿線を確保するために、直径3cm程のホースを10cmに切り、陰茎の代用とした。陰嚢の汚染もなく、起立排尿も術前と変わらない程度できるようになり、患者の満足が得られた。しかし、要領が得られると、患者から装具先端が細く、外から見てもあまり目立たないものを希望された。そこで、哺乳瓶の乳首を使用したり、含嗽液の空ボトルの活用を考えたが、患者の満足は得られなかった。最終的に外装の先端をカットした男性尿失禁用装具を陰茎に当てることで患者の欲求は満たされるようになり退院となった。患者は装具の改良に意欲的であり、退院後も自分で更に改良してみるといった発言が聞かれた。
 退院指導では、装具の工夫のほか、排尿方法、尿道口や陰嚢等の皮膚の変化の観察、尿量確保のための飲水指導、浮腫に対して弾性ストッキングの使用についてパンフレットを用いて行った。
4 考察
 今回1)手術(陰茎切断術)に対する不安がある2)術後の創部の管理が重要である3)バルーンカテーテル抜去後の排尿の変化についての援助が必要である、という3点にポイントを置いて援助を通してきた。
 1)については、手術前に陰茎を切断される気持ちはいったいどのような気持ちなのだろうかという関心が強かった。そこには、異性にはわかりかねる感情が存在するのだろうという先入観があったからだと考える。そして、患者の陰茎が短くなってしまう気持ちは始めのうちは理解し難いものだと感じていた。しかし、手術前に患者と話をする場を少しずつ設けることで少しでも陰茎を長く残して欲しいという気持ちを知る事ができ、その気持ちは、女性の立場では、乳房の切除時の気持ちに類似するのではないかと考えるようになった。共感は得られないのだが、看護者は、できるだけ患者の気持ちを優先できるように、また患者の気持ちに近づくために多くの関わりを持つように努力した。それは、患者との信頼関係を成立するために重要なことであり、不可欠な行動であるといえる。だが、手術に対する不安は、単に陰茎そのものに関する不安だけではない。術式、経過や、術後の変化について患者はどのように考えているかといった不安まで目を向けられなかった。陰茎切断術であっても、患者の不安は一つに限らず、看護者が早い時期から視野を大きく持ち、患者を見守ることも重要な援助活動といえる。
 2)については、ドレーン類が挿入されていることもあり、感染予防が大変重要になる。単に熱型や血液検査の値を知るだけでなく、毎日ガーゼ交換をし、ガーゼの汚染の変化にも目を配らなくていけない。今回、適切な時期に医師に報告し、適切な処置が得られたため悪化する事はなかった。創部の十分な観察の必要性を再確認した。
 感染のみだけでなく、下肢への腫脹についても援助する必要がある。リンパ節郭清による腫脹が患者にとって苦痛であることは、経験上知っている。今回、ゲット帯や医療用弾性ストッキングは使用されていたが、予め、術前から下肢への腫脹に対し計画を立案すべきであった。
 3)については、まず尿線の変化を知る事が重要になってくる。実際に患者に排尿方法を見せてもらい、尿線の実態について知る事から始まる。ここで術前に患者との信頼関係が得られていることが大切である。尿線の変化、排尿姿勢、患者の希望を把握したうえで、排尿装具の選定を行う。まず、尿線の確保を第一に考え、次により自然に近く、目立たないものを工夫していった。患者自身からも、同様の希望があり、協力して装具の選択が行え、最終的に患者の満足が得られた点はよかったと思う。
 今回の症例のみでは陰茎切断術の看護について述べることはできない。しかし、この症例に関しては@手術に対する不安があるA術後の創部の管理が重要であるBバルーンカテーテル抜去後の排尿の変化についての援助が必要である、にポイントを置いて援助してきたことについて問題はなかったと言える。

おわりに
 数少ない陰茎切断術を受ける患者の看護を通して、異性の気持ちに近づく難しさを経験した。退院後の患者の排尿状況がどのように変化したか把握していないので、今後患者の排尿状況にも目を向けていきたいと考えている。

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創傷処置関連:仙骨部にある褥瘡ケアの看護〜観察と洗浄方法・消毒薬の使用について〜

はじめに
 病棟では、今まで、褥瘡ケアに携わる看護婦の経験や勘で褥瘡ケアを行なう傾向にあった。統一性のないケアは一時期的対応のみに陥りやすく、症状の遅延を招いてしまう可能性もある。
 今回、長期的に仰臥位を強いられ、褥瘡を形成した症例において、エアーマット、定期的な体位交換や保清などを行っていた。そして、褥瘡形態の写真撮影を行い、スタッフ全員がその写真を見ることで褥瘡の状況を認識した。しかし、褥瘡ケアの検討をした時に、観察、アセスメント、処置の内容や方法においてスタッフ間で統一性がないことに気づいた。本症例を振り返りながら文献学習をした結果、@観察A洗浄方法と消毒薬の使用の2項目について新たな気づきがあった。2項目についての内容を考察し、まとめたので報告する。
1.患者紹介
患者:男性
体格:身長166.5cm 体重:80.6kg
疾患名:直腸癌 直腸切断術・右側方郭清術・精嚢合併切除術
2.患者の活動性と意識レベル
 患者の自動運動は、右上肢の屈曲、伸展のみであり、臥床状態であった。患者の意識レベルは、時々眉間にしわを寄せることもあり、呼びかけに対し開眼やうなずく程度であった。しかし、視点は合い、意思の疎通は図れていた。
3.褥瘡ケアの実際
 7月15日転棟以後の褥瘡ケアについて検討した。
 褥瘡のケア段階を、実際の処置内容の変化によって、7月15日〜23日、7月24日〜30日、7月31日〜8月3日に分類し、1期、2期、3期とする。
1.1期(7月15日〜23日)
1)褥瘡の状況
 転入時の褥瘡サイズは16×12(cm)であった。皮膚は全体的に発赤を呈し、一部分に糜爛、出血を伴っていた。また、中央部には、黒色の壊死組織があり、陥没していた。一部突出している部位も見られ、骨露出と判断した。肛門部近辺には2ヶ所のピンホールがあり、滲出液によるガーゼ汚染は全体的に出血混じりの淡黄赤色であった。褥瘡の分類によると本症例は第4度にあたった。
 処置方法は、生理食塩水100ccのプラスティックボトルに18G針を刺し、褥瘡全体を洗浄した。皮膚科医の診察を受け、褥瘡周囲はポピドンヨード液で行い、褥瘡全体に、褥瘡・皮膚潰瘍治療剤ヨウ素外用パウダー・カデックスを散布した。陥没部位には、カデックスパウダーの密着性を図るために小さくカットしたリント布に褥瘡・皮膚潰瘍治療剤ヨウ素外用パウダー・カデックスを散布し貼付した。そして、褥瘡全体にリント布を貼り付けた。リント布はガーゼよりも目が細かく、保湿効果があり、新たな肉芽組織の損傷を起こしにくいと判断して使用した。交換頻度はリント布の汚染が多いため、1日に3〜4回の交換であった。
2.2期(7月24日〜30日)
1)褥瘡の状況
 褥瘡サイズは、15×11(cm)であり、T期に比べ、サイズに変化はなかった。一部に肉芽形成が見られ、色調も赤色からピンク色へと移行していた。壊死組織状態に大きな変化はなかった。壊死組織に対して、形成外科医の指示で、観血的デブリートメントを開始した。汚染状況は、リント布を超えることもあったが、全体的にT期に比べ汚染の量は少なくなっていた。観血的デブリートメントを行っているため、リント布の汚染の性状は暗血性であった。
 処置方法は、1日1回、医師が壊死組織部位はクーパーでカットし、壊死組織除去及び排膿を行なった。観血的デブリートメントによって、ポケット部位がが形成された。ポケット内の褥瘡には、滅菌ネオマイシン硫ポリB液を含ませたガーゼを挿入した。だが、滲出液が多く、wet and dryの効果が得られなかったため、褥瘡・皮膚潰瘍治療剤ヨウ素外用パウダー・カデックスの散布に変更した。しかし、滲出液が多く、褥瘡・皮膚潰瘍治療剤ヨウ素外用パウダー・カデックスの密着性に欠けたため、精製白糖・ポピドンヨードを塗布したリント布を挿入した。その結果、密着性が高まり、ポケット内に精製白糖・ポピドンヨードがしっかり付着していた。それ以外の褥瘡部はT期と同様の処置を行なった。交換時期は1日に2回程度であった。
3.3期(7月31日〜8月3日)
1)褥瘡の状況
 褥瘡サイズは、15×9(cm)であり、T期に比べ、若干縮小されている。褥瘡全体は、ピンク色と変わらない。ポケット部位の滲出液は続いたが、リント布の汚染状況はU期に比べ、さらに減少した。ポケット内にあるリント布の汚染の色調はベージュ色に変化した。それ以外のリント布の色調は、淡々黄茶色であった。殿部に広がる平坦な褥瘡部は感染もなく乾燥していたため、処置方法を閉鎖性ドレッシング法に変更した。そこに、ポケット部位にあたる部分を開放したハイドロコロイドドレッシング材を貼用した。ポケット部位にアルギン酸カルシウムドレッシング材を充填し、リント布を貼付した。交換頻度は、1日2回程度であった。
3.考察
1)観察
 壊死組織の有無は色調の変化により把握ができる。化膿の四徴(発赤、腫脹、熱感、疼痛)を用いて、化膿の判定を行なうことが、観察のポイントになる。
j褥瘡の観察記録は、看護記録とは別に記録用紙を設け、褥瘡の変化の把握に努めた。記録に滲出液の状況やサイズが書かれていた。しかし、皮膚の観察について、乾燥状態や肉芽形成の有無、壊死組織の状況などの記録は乏しく、組織形成が正常であるか、感染の有無などの判断ができていなかった。壊死組織が存在していたT期のうちに観察を密にし、観血的デブリートメントなどの処置ができ、感染コントロールが早くできたと考えられる。棚瀬らは、「壊死組織の存在は、感染を併発させたり、肉芽組織の増生を抑制したりする事から、創傷治癒を遅延させる重大な原因となるので、積極的にこれを除去する必要がある。」といわれる。化膿の判定や壊死組織の色調の変化を把握していれば、適切な褥瘡処置ができると考える。これより、看護婦によって褥瘡の観察の視点が変わり、適切なアセスメント・処置ができなくなる可能性がある。ケアに携わる看護婦は一人にではないため、スタッフ間の統一した視点で褥瘡を観察し、的確なアセスメントを行うことが重要である。
2)洗浄方法と消毒薬の使用
 今までの洗浄方法は、生理食塩水を20〜30ccの注射器に流すことで、主に保清目的で洗浄を行なっていた。しかし、この方法は創内に残った不必要な組織などの除去が十分に行われていなかったこともあり、効果的な洗浄ができていなかったといえる。今回、必要な洗浄量の生理食塩水のプラスティックボトルに18G針から生理食塩水を流す方法を行なった。この方法により、一定の圧で十分な水量が得られ、壊死組織除去ができ、特にポケット形成部は効果的な洗浄ができた。しかし、原田が、「水圧が高すぎると新生肉芽組織を損傷する恐れがある」と述べるように組織に注意して行う必要がある。
 消毒方法は、従来、褥瘡部全体にイソジン消毒を行っていた。それは、褥瘡という創傷があるために、単純に消毒が必要と考えていた。棚瀬らは、「消毒剤、特にイソジン消毒剤、過酸化水素水やアルコール消毒剤を創に使うと遊走してきた多核白血球や大食細胞(マクロファージ)、新鮮な肉芽組織、上皮細胞を障害する」と述べている。本症例は、筋層や、骨の露出に近い状況にあり、イソジン消毒は組織への影響が大と考え、イソジン消毒は行わなかった。しかし、化膿の四徴のある創面に対しては、局所での感染コントロールが必要である。塚田は、「イソジンシュガーやカデックスパウダーなどの殺菌剤入り軟膏には、殺菌剤を含むが濃度は薄く細胞障害が最低で、かつ徐放性に組織に浸透していく」と述べている。パウダーという性状が、ポケット部位には密着性に欠けてしまい、十分に褥瘡に付着できなった。精製白糖・ポピドンヨードはポケット部位の形態にあわせ、密着性が得られやすいことから、長時間の殺菌効果を得られたといえる。しかし、これらの高浸透圧環境も、滲出液の減少により、逆に乾燥を引き起こしやすい為、皮膚の観察に注意しながら、行う必要がある。

まとめ
1.褥瘡の適切な治癒過程をたどるためには、統一した視点で観察し、科学的なアセスメントを行う必要がある。
2.適度な圧での洗浄方法は壊死組織の除去において効果的である。
3.消毒の使用は、化膿の有無によって変わる。
4.創傷治癒の段階上で、創の形や組織レベルに応じて、褥瘡ケアの工夫が必要である。

おわりに
 褥瘡は、局所の圧迫による要因で形成されるといわれている。褥瘡の局所管理は、科学的な根拠に基づいた予防・処置から行われている。そのためには、アセスメント内容に根拠を持ち、誰もが一定のレベルで判断できる基準が必要と感じた。病院内では、褥瘡形態を把握する手段として、褥瘡重症分類が紹介されている。また、現在は、予防の把握手段として褥瘡発生のリスクアセスメント法(日本語版ブレーデンスケール)が紹介されており、褥瘡発生のリスクファクターをどの程度持っているかを査定して、褥瘡ケアの方法を推考している。これらのスケールを用いて褥瘡形成のアセスメントを行い、予測や適切なケアを実践すれば、スタッフ間の褥瘡に対する意識も高まり、統一した観察内容で、早期に褥瘡予防の対応ができるのではないかと考える。
 今後の褥瘡ケアで、今回の学びを生かしていきたいと考える。
*参考文献は省略させていただきます。

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在宅関連 消化器悪性疾患におけるHPN導入時期の一考察

はじめに
 消化器悪性疾患は、疾患の悪化に伴い、経口摂取ができなくなる可能性が高く、そのために退院できない患者がいる。そして、今までは経口摂取が可能になるまで、もしくは最期の時まで点滴治療を受けてきた。しかし、保険の改正に伴い、在宅中心静脈栄養法(home parenteral nutrition:以下HPNという)が悪性疾患に適応されるようになり、患者の入院状況に変化が現れてきた。更に、皮下埋め込み型器具であるいわゆるリザーバーを用いて、中心静脈カテーテルのシステム全体を皮下に埋没する方法(以下IVHリザーバーという)の導入で、HPNに移行しやすくなった。
 病棟において、HPNを導入した患者15例について振り返りをしたところ、HPNは患者が望む生活を可能にする一手段であることがわかった。これら消化器悪性疾患患者のHPNの受容状況と事例を通して患者・家族の思いからHPNの導入時期を考察する。
1.研究内容
1)研究対象
1997年9月から1999年10月までにHPNの指導を行い、退院した患者15名(死亡退院1名を含む)
2)研究方法
カルテ調査法
3)研究機関
1999年7月から1999年12月

2.結果
1)対象の背景
 HPNの導入者の性別は、男7名、女8名、平均年齢は、57.2歳であった。原疾患別では、胃がん6名、膵がん7名、その他2名で、全ての患者が癌性腹膜炎の診断を受けていた。IVHリザーバーを使用していた患者は13名で、2名は中心静脈輸液用カテーテル(以下IVHという)であった。経口摂取状況では、経口摂取状況不可能な人は3名、水分摂取可能な人は10名、経口摂取一部可能な人は2名であったが、経口摂取可能でも、必要ない栄養量が取れているとは言い切れない状況であった。HPNの導入において、何らかの抵抗感を感じている人が6名いた。HPN到達状況は、針の刺入から点滴追加までできる人から、家人や第三者にすべてを委ねる人など様々であった。
 HPNの指導開始から退院までの平均日数は26.1日であった。HPN指導期間内に外泊を経験した人は10名であり、全員がHPNを行ってきた。退院後の在宅日数は、平均64.1日であった。現在は、数名が社会復帰や家庭での役割を果たしている。しかし、状態の悪化で在宅期間を得ることができなかった症例もあった。
 ここで、3つの事例を紹介する。
2)事例紹介
(1)事例1
・患者:女性 
・HPN導入後の経過
 本事例は、患者からHPNの導入時にHPNについての拒否的な態度や発言はなかった。看護者は、患者自身がHPNについてどのようにおもっているのか事前に把握できていなかった。患者は、導入時傾眠がちであったため、子供が輸液管理に参加し、その結果、患者は外泊することができた。そして、在宅療養を繰り返し行い、100日近く家で過ごすことができた。
 家族は、HPNの管理を積極的に行っており、患者は、その家族への負担を感じることなく、HPNの導入が受容できていたと推察する。
(2)事例2
・患者:男性 
・HPNの導入後の経過
 本事例は、社会復帰を強く希望していたため、HPNに対する姿勢は、患者・家族共に積極的であり、指導は約1週間で終了した。患者は、HPNに対しHPNを行うことができれば食べられなくても社会復帰ができるという安心感を持ち、身体的・心理的負担を受容することができたと考える。
(3)事例3
・患者:女性
・HPN導入後の経過
 本事例は、患者は責任感が非常に強く、すべてを自分でひとりで行わなくてはならないと感じていた。HPNの導入をしなくてはならないという葛藤が残り、HPNの手技がストレスとなっていた。練習をやめると「やらなくてよかった」という発言が聞かれた。患者、家族共に家庭復帰できなくてもよいと傾き始めていたことから、HPNの教育のストレスは多大であったと推察され、HPNの導入は患者にとってプラスとは言い切れなかったと思われる。看護者は、患者が『ストレス』と感じた時点で家族の協力を依頼し、『ストレス』を最小限にできる関わりを持つべきであったと考える。
3.考察
 病棟では、100%近い形で病名告知がされているが、病状告知・余命告知について明言されているとは限らない。患者との関わりの中で、医療者側の思惑と、患者の受け止め方に食い違いを感じることがしばしばある。患者のHPNに対する受け止め方によって、退院への気持ちにも違いが見られる。看護者は、まず、癌性腹膜炎を期待している患者に対し、HPNの適応かを考えながら、関わりを持っていく。そして、患者と十分なコミュニケーションを図り、患者の様々な思いを把握し、それと並行に医師、家族とのコミュニケーションを取りながら、働きかけをしていく。そうした働きかけで、病状の説明を踏まえ、HPNに対する受け止め方を把握することが大切であると思われる。医療者がHPNの導入においてHPNの導入時期を見定めることは、とても重要であると思われる。
 また、HPNの導入において家族の協力は大きな役割を担っている。家族がHPNに関われるのかそうでないのかを把握し、訪問看護や、民間企業による医療サービス業などの社会資源の活用も可能であることを提示して、患者・家族のHPNの負担を最小限にする必要があると思われる。

おわりに
  3事例を通して導入時の患者の状況によって患者・家族の受け入れに変化があることがわかった。看護者は、患者・家族の気持ちも充分に理解し、病状の変化にも目をむけ、適切な時期にHPNの導入を図る必要がある。また、HPNの導入にあたり、看護者は、家族、医師とともに充分に関わりを持ち、統一的な指導を行うことが重要となってくる。
*参考文献は省略させていただきます。また、患者のプライバシー保護のため、最小限のデータのみ提示しました。

この研究に際して、HPN指導を行う際に使用していた、パンフレットは、手作りのものです。テルモ社のパンフレットを参考に、患者の理解力、適応レベル等を考え作成しました。

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化学療法関連 肝動注化学療法による自覚的副作用の日常生活への影響

はじめに
 肝動注化学療法(以後、肝動注とする)は、切除不能の転位性肝癌に対し、局所的に高濃度の抗癌剤を注入する治療である。肝動注は、一般に腫瘍以外の全身に到達する薬剤濃度が減少することから、肝動注の副作用は軽微とされている。そのため、外来通院治療が可能であり、患者のQOLの向上に寄与している。しかし、治療を繰り返し行うため、軽い副作用であっても、患者の生活への影響は少なくない。そこで、肝動注を外来通院で受けている患者の自覚的副作用を明らかにし、その生活への影響について調査した。
<定義>ここでは、自覚的副作用とは患者が不快と感じる症状をいう。
1.研究方法
1)調査対象及び研究対象
 1996.1.1〜1998.9.30にリザーバー埋め込み術が施行された患者277名中、死亡した126名を除外し、現在も肝動注を受けている外来通院患者38名を調査対象とした。研究対象は病状悪化のために緊急入院した1名を除く、37名とした。
2)調査方法
 質問紙調査(留め置き法、面接法)
3)調査内容
 自覚的副作用(食欲不振、嘔気、全身倦怠感などの8項目)の有無と日常生活への影響
4)分析方法
 統計学的プログラム・パッケージHALBAUを用いて、項目別カテゴリ度数を算出し、X検定を行った。

2.結果
1)対象の背景
 性別は、37名中、男性18名(48.6%)、女性19名(51.4%)であった。年齢は、60歳代18名(48.6%)と最も多く、次いで、50歳代10名(27.0%)であった。原疾患別では、大腸癌16名、胃癌10名、乳癌6名の順であった。投与方法別では、WHF法19名、one shot法18名であった。使用薬剤は、5−FU、EPIR(ADR)、MMC、CDDPであった。one shot法施行者の使用薬剤は多種にわたった。治療期間は、全員が、1年未満であり、1ヶ月未満が5名いた。また、WHF法で自己抜針を行っている人は、19名中5名(26.3%)であった。
2)自覚的副作用
 肝動注後に何らかの自覚的副作用を訴える患者は、37名中26名(70.3%)であった。内訳は、複数回答で「全身倦怠感」20名(76.9%)、「食欲不振」16名(61.5%)、「嘔気」12名(46.2%)、「腹痛」5名(19.2%)、「便秘」2名(7.7%)、
「嘔吐」「下痢」各1名(3.8%)、「その他」6名(24.0%)であった。治療方法別では、症状のある人は、WHF法とone shot法ともに13名ずつ同数であった。しかし、WHF法をうけているほうに全身倦怠感は多く出現しており、それ以外は、治療方法との関係はなかった。
 全身倦怠感の発現時期は、「治療後に出現する」17名(85.0%)と多く、「常にある」3名(15.0%)であった。経時的変化をみると、「治療24時間以内」8名(40.0%)、「24時間から48時間以内」6名(30.0%)、「48時間から72時間以内」3名(15.0%)だった。
 食欲不振の発現時期は、「治療後に出現する」12名(75.0%)と多く、「常にある」3名(18.8%)であった。経時的変化をみると、「治療24時間以内」8名(50.0%)、「24時間から48時間以内」2名(12.5%)、「48時間から72時間以内」2名(12.5%)であった。
 嘔気の発現時期は、12名全員が「治療後に出現する」と答えていた。経時的変化をみると、「治療後24時間以内」7名(58.3%)、「24時間から48時間以内」4名(33.3%)、「72時間以上」1名(8.3%)であった。
 全身倦怠感を訴えた20名中14名(70.0%)に「日常生活に支障をきたす」と感じていた。しかし、具体的な項目は挙げられていなかった。食欲不振は、16名中13名(81.3%)に「食事摂取量に変化がある」と答えており、それぞれ7名(46.7%)に「食事摂取量の減少」「むらがある」という形で現われていた。また、多岐にわたる嗜好の変化が認められた。食事摂取量において、治療が関係していると思っている人は13名(81.2%)いた。嘔気に対しては、12名中8名(66.6%)が制吐剤を希望していた。実際、制吐剤を使用している人は8名(66.6%)であり、そのうち6名が制吐剤を希望していた。
3.考察
 肝動注による反復治療を行っていく上で、様々な症状が出現していた。症状の中には、全身状態の低下も考えられるが、治療の副作用とも考えられた。
 全身倦怠感は、症状を訴えた26名中20名に認められた。全身倦怠感は、病状の進行に伴い、「だるい」「しんどい」「身の置き所がない」といった主観的な訴えが多く、把握しにくい点がある。また、全身倦怠感の発生機序もはっきりしておらず、個々の訴えが様々な事から、対応しにくい。場合によっては、患者の訴えと、行動の違いから軽視してしまうこともある。「だるい」「しんどい」といった表現は、身体的な疲労にも使われることがある。しかし、疲労として感じる知覚には、「不快」のほかに「快」と感じることもある。そして、短期的に回復されることが多いために日常生活に支障を来すことはない。小山らの調査によると、全身化学療法を受けている患者にも日常生活への支障を来していた。そして、その支障内容は、基本的生活行動にあった。今回の調査結果では、「日常生活に支障を来している」と70%が答えていることから、副作用が軽微といわれている肝動注であっても、全身化学療法と同じように、何らかの対策が必要であると考える。沼田は、「患者の全身倦怠感の変化や、軽減方法、生活パターンなど把握する必要がある。患者の行動や表情の変化を時間の軸で追うことは、倦怠感のアセスメントをする上で大切なポイントである」と述べている。全身倦怠感は、様々な要因から成り立つ症状であるために、緩和方法として、症状のコントロールを図る、「快」を高めるケア、マッサージなどを行うなどが挙げられている。WHF法で自己抜針を行っている人もいるが、毎週、外来にきて、1日かけて治療を行う患者には、身体的負担だけでなく、精神的負担も全身倦怠感に影響しているのはないだろうか。そのような状況で、出現する全身倦怠感に何らかの対応を行っていくことで、患者のQOLが向上されるのではないかと考える。しかし、外来では、患者と十分な時間が得られにくい現状を考えると、退院時に全身倦怠感に対する指導を行い、外来で、患者の変化を追うことが大切であると考える。また、表現しにくい症状でもあるため、症状を正確に把握しするためにもよく話を聞くことも大切であると思う。
 食欲不振は、栄養を摂取するための食欲が起きない状態とされている。また、嘔気を伴う食欲不振であるならば、嘔気に対する援助も必要である。全身化学療法において、食欲不振や、嘔気・嘔吐などの消化器症状は、使用薬剤にも多少の違いがあるが、治療当日夕から出現し、3〜7日と続く場合もあるといわれている。今回の調査では、治療後24時間以内に半数に食欲不振・嘔気が出現していることが明らかになった。嘔気は患者の多くが48時間以内に出現しているが、食欲不振は72時間以上や、常にあるという人もいる。遅延性型の食欲不振は、治療だけの影響とは考えにくいが、症状を感じている患者には、治療からくるものと感じている人もいることがわかった。食欲不振や嘔気は、抗癌剤のみにならず、精神的、心理的にも大きく関与しているといわれている。長期にわたり、食事摂取量が減少したり、量にむらが生じたりすれば、日常生活を行う上で、必要なエネルギーが得られず、全身倦怠感を誘発、または増強させることもありうると思われる。そのためにも患者の生活に応じた指導が必要と考える。食事指導はもちろん、生活状況の把握、不安の軽減などの援助していく必要があると思われる。
 嘔気に対し、すでに制吐剤を使用している人もいるが、林らは「入院中は、医師、看護婦で症状の判断、対処がなされてしまう。しかし、通院治療が主となってくる場合、患者が判断しなくてはならないため、具体的な状況を予測し、患者が戸惑うことなく、判断できるように指導していかなければならない。」と述べている。在宅で、患者が症状の判断や対応する場合がある。そのために、入院期間中に制吐剤の使用方法についても薬剤師の服薬指導を取り入れるなどして教育指導が必要と考える。今回の調査では、制吐剤希望者とすでに使用されている人との振り分けがされていないため、制吐剤への患者の思いは明らかになっていない。しかし、約66%の患者が制吐剤への期待を持っていることから、予防的に制吐剤を使用するなど積極的な症状緩和が必要と感じる。
 全身倦怠感、食欲不振、嘔気などの自覚的副作用は、患者の感受性に大きく左右される。また、全身倦怠感と違い、自覚的副作用が軽微なために見過ごしやすい。それを防ぐには、適切なアセスメントが必要であり、病棟、外来が連携を図りあうことで、個別性のあるケアの提供につながると考えている。

結論
 肝動注を外来通院で受ける患者の自覚的副作用について調査を行ない、日常生活への影響について検討した。
 主な自覚的副作用は、全身倦怠感・食欲不振・嘔気であった。
 全身倦怠感や食欲不振、嘔気などに対し、副作用が軽微といわれている肝動注であっても、日常生活に何らかの影響をもたらしている傾向がある。
 肝動注における自覚的副作用には、わずかな副作用にも積極的に取り組む必要がある。
*参考文献は省略させていただきます。

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看護管理関連(院内研修課題) 自己防止を考慮した行動〜お針箱の使用推進を通して〜

はじめに
 平成8年に針刺し自己防止マニュアルが作成され、携帯用廃用容器(以後お針箱という)の使用が薦められている。しかし、実際には使用済みの針の処理は、お針箱の中に入れるほかにボトルに刺したり、スタンドに張りつけたり、リキャップしていることもある。
 私は、この状況では自己の安全が確保されないばかりか、他人にも危険となる環境を作っているのではないかと感じた。そこで、@使用済みの針の処理が確実にできるA自己、他人の安全確保の必要性が考えられることを目標にお針箱の推進・検討を行ったので報告する。
1.目的
1)お針箱の使用により安全に使用済みの針の処理ができる。
2)針の処理を通してスタッフの安全に対する意識が高められる。
2.方法
対象:病棟看護婦23名(婦長、看護助手及び筆者を除く)
期間:1997年7月11日から10月30日
方法:1)7月11日の病棟カンファレンスにおいて、課題達成計画について発表し、協力を求める。
    2)発表後、アンケートを使用し、スタッフの使用済みの針の取り扱いについて意識調査を行なう。
    3)7月12日から18日までをアンケート期間とする。
    4)お針箱の使用について啓蒙を行う。(事故防止マニュアルの提示、指導、アンケート結果の発表や、カンファレンスでの検討)
〜1)から4)までを推進前とする〜
    5)7月22日から10月19日(90日間)の間に使用するお針箱は新しいものを使い、10月20に容積量を把握する。
    6)10月22日から26日までにアンケートによる意識調査を行う。
〜5)から6)までを推進後とする〜
    7)アンケートの集計を取り、意識の変化を評価するとともにお針箱の容積量の1週間平均を算出し、推進前と比較する。
    8)何か問題が生じたときには、問題意識が持てるようにカンファレンスを開く。
3.結果
 推進前のアンケート回収率は100%、推進後のアンケート回収率95.6%であった。誤刺経験は、推進前は10名(50%)を示しており、推進後には1名(4%)であった。これらについては感染の有無や誤刺方法は把握していない。
 全員がお針箱の位置は知っていた。推進前では、お針箱をいつも使っている人は3名(13%)と少なく、特に10年目以上には、お針箱をいつも使っている人はいなかった。しかし、推進後には、お針箱をいつも使っていると答えた人は10年目以上が2名となり、全体では9名(39%)と3倍に増えた。お針箱を時々使うと答えた人も加えると推進後には100%ととなった。
 使用内訳では、各勤務年数別で推進前・後問わず、採血時に使用している人が多い。更に、延べ人数は1〜3年目と4〜6年目において推進前より推進後の方が増えている。そして、幅広い項目にわたってお針箱等が使用されている。
 お針箱を使用しないと答えた1〜3年目に関しては、推進前は点滴ボトルに刺していると答えていた。しかし、推進後にはお針箱を使用しないと答える人はいなくなった。反対に、推進後のアンケートの中でお針箱をいつも使っていると答えている10年目以上、4〜6年目のスタッフの中に点滴ボトルに刺すと答えている人もいた。
 お針箱の使用理由には、推進前・後ともに自分の安全のために使用していると答えている。便利だと感じて使用している人はいない。お針箱を使用していると答えている。便利だと感じて使用している人はいない。お針箱を使用しない理由は推進前にはお針箱が使いにくいと答えていた。
 安全面において、推進前は2名(9%)が、今行っている方法は安全であると答えている。推進後では、安全であると答えた人は、9名(40%)に増えた。安全とは言い切れないと答えている人は推進前が21名(91%)に対し、推進後では12名(54%)に減少した。
 自由記載に関しては様々な意見が集まった。針の取り扱いについて工夫や努力しているかの問いに対し、医師にリキャップしてもらう、採血後スピッツに針を刺したまま処置室に戻り片付ける(1〜3年目)、リキャップしない、お針箱を横にして安定感を得る(4〜6年目)、医師にお針箱の中に入れてもらう、膿盆などを用いる(10年目以上)、という意見が上がった。
 また、問題と感じることに対し、どのように対処しているかという問いに1〜3年目からは意見が集まらなかった。4〜6年目では、問題と感じない人もいたが、お針箱の数が少なく処置室までの取りにいくのが手間であったり、コンテナ内にきちんと針が捨てられていないといった問題が出されていた。10年目以上では、動線(病室とお針箱のある準備室まで)が長くお針箱を取りにいくことが面倒であったり、ボトルから使用済みの針を抜かずにそのまま捨てたり、急な抜針時は使用済みの針をスタンドに張りつけたり、ボトルに刺すなどしているという意見が出された。これらは推進前の意見であったため、結果を提示するとともにカンファレンスで発表した。その中で、スタッフから、お針箱の不便さや、リキャップをしたり、ボトルに使用済みの針を刺してもよいのではないかという意見が上がった。しかし、マニュアルの中にすでにリキャップはしないと謳われていること、針の取扱いのうえで感染の可能性が高いこと、使用済みの針をスタンドに張りつけたり、ボトルに刺すことは第三者への危険が潜んでいること、お針箱に使いなれていない背景などを話し、スタッフの意識を高めた。そして、2回目のアンケートの自由記載の中には、必ずお針箱を使用する、リキャップしないようトレイに乗せた(1〜3年目)、意識を針に傾けた、お針箱を使用して誤刺から身を守るようにした、予めお針箱を持っていった(4〜6年目)、膿盆を用いた、誤刺をしないように気を配った(10年目以上)などの意見が上がった。しかし、中には、使用済みの翼状針の処理はお針箱では危険に感じるためにボトルに刺す、ボトルに刺してテープで固定した、お針箱を取りに行くことが面倒でボトルに使用済みの針を刺してしまうという意見もあった。
 2回目のアンケートの中で、今後の針の処理についての問いに対し、16名(72%)のスタッフが採血、注射、点滴抜去、介助等のときに使用すると答えている。しかし、その中には点滴ボトルに刺すなど今まで通りで行っていくと答える10年目以上もいた。針の処理を現行通り行っていくと答えた人も7名(31%)といた。
 お針箱の容積量の変化については、推進前は約40g/週(参考)であった推進後には平均約62g/週と増えた。
4.考察
 看護業務では、採血・注射や点滴介助等で血液汚染された針を取り扱う機会が非常に多い。そして、50%のスタッフが誤刺の経験があることから、誤刺事故の危険性は身近に潜在しているといえる。
アンケートの中で、病棟のスタッフのほとんどがお針箱等を使用していいると答えている。しかし、自由記載の中に私用した針をボトルに刺す、スタンドに張りつけるという行動をとっていると答えている人もいた。この背景には、現在使用しているお針箱の挿入口が小さく、安定感に欠ける、数が足らないといった物質面の不備と、お針箱が使いにくいから使わない、取りに行くことが面倒であるという看護者の危険回避への努力の欠如があると推測できる。また、使用済みの針をボトルに刺したり、リキャップを行っても実際には自分に危害が生じていないという経験からくる自信もある。誤刺は、身体的条件や環境的要因が絡みあって発生すると田中等は述べている。また、剥き出しのままでの移動距離と時間をできるだけ短くすることが予防するうえで重要点であることも指摘されている。看護者は、不規則な勤務の中で身体的変化が起こっていることを認識する必要がある。そして、そのような条件の下で針を取り扱っていることを知り、使用済みの針を短時間のうちに処理する必要がある。それらのことを念頭に入れ、お針箱の使用を促した。また、動線の短縮を図るために、各自が携帯できるようにお針箱の数を増やした。啓蒙されることで、安全への意識付けが図られていったと感じる。しかし、10年目以上の方が1〜3年目・4〜6年目に比べ、お針箱の導入が悪いことに気づく。これは、針の処理を行う際の経験や慣れが大きく、なかなか新しいことが導入できない現われなのではないかと感じる。そして、10年目以上の導入の悪さが1〜3年目に影響されていると思われる。それは、問題と感じることに対し、どのように対処しているのかの問いに意見がなかったことから考えられる。1〜3年目の主だった指導を行う10年目以上が、安全に対し適切な行動の必要性や見本を1〜3年目に伝えていないため、問題対策も考えられないのでないかと考える。また、自分よりも上の人が行っている行動を見て、真似をしているために疑問と思わないことにも関与していると考える。
 推進後に安全面について聞いたところ9名(40%)の人が、お針箱や膿盆を用いての針の処理は自分にとっても、第三者にとって安全と答えている。ここから、第三者に対する安全への配慮の必要性に気づき始めたのではないかと推測する。
 お針箱の使用に薦めてきて、スタッフがお針箱をなかなか使用しない理由や、針の処理方法の実態を知ることができたとともにお針箱を使用しての針の処理や誤刺予防への意識付けができたと考える。今後とも看護部全体で誤刺予防への意識を高められる様に取り組み必要があると感じた。
 
おわりに
 スタッフの中から使用済みの翼状針の取扱いで、現行のお針箱では使いにくいという意見が出ている。お針箱をはじめとする装具の工夫が必要と考える。
*参考文献は省略させていただきます。

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