美和の恋
Section0:永遠…
知らなかったわけじゃない。気づかなかったわけでもない。かといっていつも指折り数えていたわけでもないが、宮川と逢わなくなって…(正確には逢えなくなって)もう5年の月日が流れていた。
美和は全く畑違いの車のディーラーに就職し、多忙ながらも毎日を楽しく過ごしていた。
ディーラーに就職したのは、多分宮川の影響もあった。彼は車について何も知らない美和に車に関する知識をふんだんに与えてくれた。美和もそれを興味を持って聞いていたため、普通の女子大生とは比較できないくらいの専門用語も車のメカニズムも覚えてしまっていた。
美和は突然ひとりぼっちになることを宣言された。
あんなに楽しかった、近くにいて体温を感じた、心を柔らかく包んでくれた宮川が実家の家業を継ぐために帰省する。もう二度とここには戻ってこない。
美和はいつしか仙台に行こうと考えていた。
自分のことを誰も知らない、友達も居ない土地に、地元にあるものすべてを捨ててまでも行きたいと思った。
ただ就職したばかりの美和には、すぐにそれが決断できるものでもなく、宮川に来て欲しいといわれたわけでもないため、期が熟するのをじぃっと息を潜めて待っているしか道は無かった。
5年の月日は二人をどう変えたのかわからない。
でも、美和は間違いなく宮川を、彼を傷つけた。
彼は耐えた。でもどうやっても大怪我には後遺症が残るものだ。
その後遺症は彼が30歳を迎えても変わることはなかった。
美和も自分が犯した罪を忘れられることなどできなかった。
忘れてしまうときもあったかもしれないが、すぐに想い出す。家出していた猫が、ふっと家に戻ってくるかのように。
罪を忘れない代わりに、宮川への想いも引きずり続けた。いつまでも。
美和の行動ひとつで、宮川も美和も何時も後遺症と戦わなければならなくなっていた。
でも後ろは振り返りたくない。
今でも宮川が自分にとって最も大切な、かけがえの無い人だったと確信している。
振り返らない代わりに、前に進むことも無い…