「ここに地終わり 海始まる」 宮本輝 著
宮本輝の作品を3作続けざまに読んでみた。「青が散る」「オレンジの壺」、そしてこの「ここに地終わり 海始まる」。今まで人に感想文を書かせられたこと、そして書かせたことはあっても、自分から書きたいと思ったことは一度もなかった。感想を書きたいと思う人がいるということが、よくわからなかった。しかし、今本気で書きたいと思う。何だろうこの気持ちは。今まで、小説というもの、本というものを面白いと思うから読み続けてきた。良い作品だとか、ためになるとか、そんなことは関係なかった。だから、いわゆる文学作品といわれるような、高名な作品は、ちょっと近づきがたいものと決めつけあまり積極的に読んでこなかった。漱石は、大学時代に授業をきっかけに好きになったので、かなり読んだが、よくできてるなとも面白いともおもったが、今考えてみると私にとっては、それ以上でもなくそれ以下でもなかった。もしかしたら、今漱石を読んでみたら、かなり違った感想を持つのではないかと思う。人間やはり、いつ何を読むかということ、どういう精神状態でどんな風にして作品を読むかということ、これが本当に大切なんだと、今日、ほんの今さっきわかりました。
そんな、当たり前のことになぜだか大発見をしたように、私をびっくりさせたのがこの作品なのです。読後感は、面白いとか、よかったとか、今まで感じていたものとちょっと違った感じでした。何となく、一つ得をしたような、幸せな気分になったのです。「あーっ、この作品を読んで本当によかったなぁ」という気持ちです。何となく、心が豊かになったというか、生活が潤ったというかそんな感じです。小説にこんな力があるんだなぁと思いました。今まで、小説を読んで、涙を流したことも何回もありますし、言い表せないような大きな感銘を受けたことも数多くあります。でも、今回はそういうのとは少し違うのです。じゃぁ、いったい何がどう違うんだろう。やっぱりうまく言えないな。ただ「ここに地終わり海始まる」というように、人の一生は、常に何かが終わり、何かが始まることの連続で成り立っている。どんなにくらい過去を背負っていても、どんなに重い悩みを抱えていても、それは新しいスタートにとって大切な何かなんだということ。過去や現実を受け入れて、自分なりに消化し、新しい何かを生み出していく。そういうことの大切さがかかれていたように思う。