「上海ベイビー」
衛慧(weihui)著 桑島道夫 訳 文春文庫
ある人に勧められて読んでみた。ちょっと読んでみると、高学歴の女性の高慢なプライドが現れているようで、ちょっと嫌な気がした。しかし、読みすすめる内にだんだんとそういう気分は薄くなり、内容に引きつけられるようになった。
時代を表すような、事件や流行のファッションや、ライフスタイルがふんだんに盛り込まれ、まさに現代の上海の一面を浮かび上がらせるものとなっているのかもしれない。普通、小説を書く時、こういう流行ものを書き込むと後から読んだ時に、古くさくて陳腐なものになってしまうのがいやで、出来るだけ排除しようとするものなのだが、この人にはそういう気持ちが全くないようだ。
小説を飾る、小道具としてドラッグや自由奔放な恋愛模様などが使われ、そうちょっと村上龍みたいな感じでしょうか。最も女性が書いているので、ちょっと違うような気もするのですが。上海在住の彼女が、上海の名門大学(復旦大学)を出てからのまぁ、自叙伝的な小説だそうです。まだ、若くてコン・リーと同い年(29歳)だそうです。
上海の雰囲気は、だいぶ天津と違うのかなぁ、だいぶ都会的だなぁと感じます。この小説の主人公ココの男性観、外国人男性に対する男性観。それに中国人が感じている外国人の中国人観、特に中国人女性に対する見方。そんなものが、実感として迫ってきて、中国で読んでいると特に面白いと感じるのかもしれません。あぁ、そうそう、私は読んだことないのですが、もしかしたら山田詠美の作品に近いものがあるのかもしれません。中国にもこんな自由な発想を持ったインテリが居るのかという感じです。もっともその自由な発想のお陰でこの小説は中国で発禁になったそうですが。
一見、派手で、性描写もあり、麻薬におぼれてしまう恋人を持つ女性の話なので、退廃的で享楽的な小説のような気がするのですが、読み終わってみて、そんなにすさんだ気分にならないのはなぜだろう。自由奔放というか、わがままというか、勝手というか、そんな生き方の主人公に、きっとどことなく人間的な優しさを感じるからだろう。きっと、どことなく人生を投げていない、前向きなところがかくれているような気がする。麻薬におぼれて、救いようのない恋人を、なんとか助けようとして、自分の人間としての限界にぶつかって、とうとう恋人を死なせてしまう。弱くて、強くて、優しくて、自分勝手で、前向きで、いい加減なそんな主人公の人間くささがこの小説を生き生きとしたものにしているのだろう。こんなに破天荒な女性がいたら、きっと普通の生活、世間並みの幸せ、そんなものとは無縁な世界で一生を終えることになるんでしょうね。まぁ、小説の中ですから、普通のありふれた人物を書いても、売り物にならないのでしょうけど…。
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