しもじいさむとみやことてつがく
2003/10/08 10:44



下地勇と宮古と哲学





下地勇 http://isamu0136.fc2web.com/frame.html
のライブに行った。



不思議な体験だった。メロディーはラテン調あり、ロカビリー調あり、フォーク調あり。いずれも東洋のものではない。日本調でも沖縄調でもない。でも、どこかで聞いたことのあるようななつかしいものばかり。歌詞はすべて宮古方言(「みゃーくふつ」というらしい)。聞いていても意味はさっぱりわからない。まったく初めて聞く言語。f、v音があり、p音や長音が多用され、chi、tsuはti(てぃ)、tu(とぅ)と発音される。外国語を聞いているとしか思えない。



音楽として完成されているとは思えない。声や歌い方も素人っぽい。それでいて、一度で気に入ってしまった。



数年前、彼は哲学の自主ゼミを立ち上げた。そのゼミに夫に引っ張られて顔を出すようになって、知り合った。熱い青年だ。今の世の中を熱く語る。自分に何ができるか熱く語る。語るだけでなく、実行力もある。



そんな彼が歌手デビューをすることになったのは、父親の還暦のお祝いに自作の「我達が生まり島(ばんたがんまりすま)」を披露したことにある。宮古島へ熱い思いを歌ったこれを聞いた人から人へ伝わり、あちこちで聞かせてほしいと声が挙がる。そして、宮古出身のアーティストが集まって、CD発売へ。その話を下地さんから聞いたとき「宮古だから」という繋がりの強さに驚いた。そして、人間は本来そんな繋がりの中で支え合い助け合って生きてきたのではないか…と、現代が失ったものを見つけた思いがした。



ライブに来ていたのも、ほとんどが宮古出身の人。でも、そうでない私にも十分楽しめた。音楽を通して、メッセージが伝わってくる。おりしも、台風14号で宮古は大打撃をうけ、そのチャリティーをかねるということで、バンドメンバーの身内が受けた被害が語られたりした。



CDを買って帰って、標準語に翻訳された歌詞をみていると、そのメッセージはより鮮明に伝わってくる。自然や素朴な暮らしが残っている宮古のすばらしさに留まらず、「人間ってすばらしいじゃないか」「世の中これで良いのか」「しっかり生きていこうよ」とそのメッセージは素朴で鮮明でゆらぎない。けれど、どこかで聞いたようななつかしいメロディーとまったく初体験で意味不明のみゃーくふつとに載せられることで、押しつけがましくなく心に浸みてくる。



出会うことのなかった歌詞とメロディーが彼の生き様(哲学)を媒介に出会った。彼の哲学の根底を培ったのは、彼の両親や祖父母の暮らしぶりであり、近所の人や宮古そのものだ。新しく生まれ出てきた独自なものでありながら親しみが持てる。これに出会えて幸せだと思う。沖縄へ来て良かった。宮古へもぜひ行ってみたい。

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