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多胎児サークル にこにこclubの発足 にこにこclub前事務局 石井宏美 ちょうど5年前のある喫茶店。私と角さん(にこにこclub前会長)はコーヒーを飲みながら話していました。 石井「サークルって、今ここで私たちが『作った』って言えばできちゃうんだろうか?それでいいんだろうか?そんなもんなんだろうか?」 角 「できちゃうんじゃない?それでいいんじゃない?そんなもんじゃない?」 石井「じゃ、作ろう。じゃ、今、でーきたっと。」 これが多胎児サークル「にこにこclub」の誕生です。にこにこclubは、こうしてある日たった二人から始まったのです。 石井「うーんと。じゃ活動内容決めなくちゃ。会報を出そう。」 角 「集会もしたほうがいいんじゃない?顔をあわせたほうがいいよ」 石井「うん。10人くらいならうちに集まればいいしね。」 このときの予想は大きく外れることになります。最初の募集の呼びかけに集まったのは23人。3年後には70人を超えることになりました。多胎児サークルなので子供はその約倍数いることになります。皆さん、集まった様子を想像してみてください。 話はサークル発足の3年前にさかのぼります。 私は3度目の妊娠が多胎妊娠でした。 それまでに2度の妊娠・出産経験がありましたが、多胎妊娠はもちろん初めて、わからないことだらけでした。わからないということは不安を大きくふくらませました。どの育児書を見ても「ハイリスク」とあり、単胎(一人の子の妊娠)と違うということは明らかなようですが、何がどう違うのか育児書には出ていません。説明してくれる人もなければ、調べようと思って探しても多胎を専門に扱った本は見つかりません。 一人の子の育児でさえ大変だったのに、二人同時の育児なんてどうするの?どうやって育てるの?そもそも無事に産むことができるんだろうか?眠る時間はある?仕事をしてても、核家族でも、大丈夫?不安はつのるばかりです。 こんなとき、同じような多胎のお母さんや、経験した人の話を聞けたら、と切実に思いましたが、そんな人は周りにいませんでした。 結局妊娠6ヶ月のときに偶然全国型の多胎児サークルがあることを知り、即入会しました。本も数冊知り、購入しました。角さんと知り合ったのは、産後半年経った頃に入会した2つ目の全国型サークルを通してで、私が入会するとすぐ、名簿を見たと言って電話をくれました。 さて、双子が生まれてから、私は家で育児をしながら他の双子のお母さんたちはどんなことを考え、どうやって過ごしているのか、知りたくてたまりませんでした。100人に一人と言われる多胎児のお母さん。米子にはいないのかなあ?全国版ならサークルがあるのに、なぜ地元にないんだろう?なぜ今までの人たちは作っておいてくれなかったのだろう?みんな双子育児ってそんなに大変なことじゃないと考えているのかな? 一方、情報を得るための手段としてインターネットを利用し始めた私は、そこで双子育児をテーマにしたとても充実したホームページに出会いました。妊娠中に始まり出産の様子、二人同時授乳の方法、ベビーカーの種類、便利な育児グッズの紹介、家事のこなし方、他の双子家庭のHPの紹介etc. それを見て思ったのです。ここにはこんなに双子の情報があるのに、この存在自体を知らない人は見ることができない。私の入っている全国型サークル、私が手に入れた本もしかり。今まで(地元に)双子のサークルがなかったということを考えると、双子の妊娠、育児は一人のときと変わらないと思う人もいることは確かだろう。でも私のように多胎の情報がほしい人もいるはずだ。ほしい人たちに、まず情報があるということを知らせなければ。情報の存在を知り、見るかどうかは本人が決めればいいこと。これからの双子のお母さんのために私にできることをしよう。 初め考えたのは、多胎の図書・サークル・インターネットのHPとML(メーリングリスト)を紹介したパンフを母子手帳交付時に配ってもらうよう働きかける、ということでした。ところが相談した助産婦さんから思わぬ返事が返ってきました。「保健所に話したら、『今、多胎について早急なフォローの必要性を感じている。双子のお母さんの話が聞きたいと思っていたところで、良ければ話に来てほしい』って。」 角さんを誘って保健所に行き、多胎児の母の気持ちと支援の必要性について話しました。とんとん拍子に話が進み、保健所で多胎児育児教室が開催されることになり、先に書いたパンフについても作成して配布してもらえることになりました。原稿担当は私です。 初めに相談した助産婦さんから「地元にいるお母さんたちのためにサークルを作ったら?」と言われたのは、それからしばらくしてからのことでした。 思わぬ急展開に、考えなくてはいけない時期が迫っているということは大いに感じていました。しかし、はっきり言って私は人の世話やまとめ役というのが苦手です。自分に向かないことがわかっています。でも自分自身がサークルを欲していたのですから、あったほうがいいこともわかっています。迷いました。 そこで今度は角さんに相談します。「西江さん(助産婦さんの名前)がそう言っているんだけど・・・」 角さんの答えは簡単でした。「私もそう思う。作った方がいい。」 その瞬間、角さんと二人ならできるかもしれないと思ってしまいました。 こうして冒頭の喫茶店の場面へとつながるのです。 申し込みはあっという間に20人を超え、「こんなサークルを待っていた」という声も聞きました。一歩を踏み出したら、いきなり地面が動き出したので、ふと見ると自分では気がつかないうちに大きな波に乗っている。そんな気分でした。昨日まで見ず知らずの間柄だった人たちと、サークルを作っただけでこんなに簡単につながる・・・。不思議な気がしましたが、それほどみんな待ち望んでいたのだ、ということをあらためて知りました。多くの人が自分のような気持ちでいたのだと。 角さんと相談して、最初、会長は私と決めましたが、しばらくして「私には向かない。角さんの方が適任」と思い、交代してもらいました。以降私は事務局になり、4年間を勤めました。 経験も何もないところからの出発でしたが、サークル運営する上で決めていたことがあります。 @ 自立した自主サークルであること。 どこにも依存せず、どことも対等のスタンスを持つ。言うまでもなく行政のひも付きにならない。 にこにこは会報の紙代、印刷とそれに係る費用、発送作業及び郵送料、集会の会場の確保、会場費、講師謝金等、活動に必要な一切を当初から会費と会員の力でまかなっています。どこにも頼らず、すべて自分たちの力でやろうと考え、実際やってきました。すなわち「自分を含む多胎児の家族のために」「自分たちの意思に基づいて」「自分たちのお金で」「自分たちの時間と労力を使い」「自分たちで行動して」います。だから相手が国や県、市町村の機関、他のどんなところであろうと遠慮の必要は全くなく、自立した対等の関係です。それは至極自然で当然のこと(協力関係を惜しむものではありません)で、こうしたスタンスを取り続けてきたことに誇りを持っています。 A 一人一人を大事にしよう。 会員さん一人一人を大事にすること。会員さんはお客さんだと思おう。 会費をもらう以上会費分を還元できるようにがんばろう。 これについては、異論もあろうかと思います。入会した以上、会員さんには何かやってもらいたい、何らかの形で参加してほしいと考える運営関係者は少なくないと思います。しかし、私にはそうは思えないのです。ただでさえ大変な多胎児育児で、皆さんそれぞれの事情があり、それぞれの個性があります。集会に参加されない、反応が返ってこないと言って、サークルに参加していないと言えるでしょうか?集会に出られなくても会報を楽しみにしている会員さん。文章を書くのが苦手で、原稿は書けないけど読むことによって参加している会員さん。そういう人もみんな仲間。スタッフを応援してくれている人たちだと思います。「会費を払って会員を続けている」ということが、私はその人がサークルをどう思っているのかすべて物語っている気がします。 ではスタッフの人たちのことをどう考えているか、ということですが、スタッフの人たちには感謝の気持ちでいっぱいです。私が事務局のときにスタッフになってくれた人たちに感謝。一般会員になっている現在、一生懸命やってくださっている人たちに感謝。そしてスタッフの人たちはスタッフをすることによって何かをつかみ、やって良かったと思い、楽しいと感じてくださっていると信じます。 5年間に、定例の集会、会報発行のほか、長年多胎児の研究に関わっておられる医学博士と全国型サークル主催者を招いての講演会、県内東部・中部の多胎児サークルと合同して「県内3サークル合同お泊り集会」を開催し、鳥取県内と島根県東部の市町村と多胎児の母親を対象に「多胎児育児支援の行政支援に関するアンケート」を行い、経験者の声を集めて伝えていくために「ふたご・みつごのママとパパのために」という冊子を作りました。 現在、角さんも私も会長、事務局を交代し、サークルは子どもの年齢ごとにグループを作る等、第二の展開期に入っています。子どもたちの成長に伴い、小学生グループもできました。ゆくゆくは中学、高校、大学生グループ、いや、ひょっとしたら「おばあちゃんになったよグループ」もできるかもしれません。 サークルを運営していく上での喜びってなんでしょう? やっぱり一番大きいのは、会員さんに喜んでもらうことですよね。感謝の言葉をもらったり、励ましてもらったり・・・いろんな言葉をいただけることをとてもありがたく思います。また、会員さん同志が友達になってつながっていくことも喜びです。自分の作った場でどんどん人と人がつながる。人の役に立つことができる。役に立ったと実感できる。これ以上の幸福ってあるのでしょうか? 私はサークルを作り関わったことで本当に多くの方と出会うことができました。人生が2倍も3倍も5倍も10倍も、いえ、もっと楽しくなりました。にこにこのなかった人生なんて考えられません。 サークルを作ってよかったかという質問には200%の笑顔でこう答えたいと思います。 『もっちろん!』 |
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「にこにこclub」って、どんなサークル? 文責 石井宏美
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