| Esssay |
□ 最高の獣医さん □

私がまだ結婚していない、ずっと前のことである。
今まで行きつけにしていた獣医がイマイチなので別の病院に変えてみた。
新しく行きつけになった病院は建物は古いが
それがいかにも腕がイイっぽい気がしてよかった。患畜もいつも賑わっていた。
獣医は女医さんで、その建物のわりには若い先生だった。30代後半くらい。
もっと年配で偉い先生がいるのかとも思ったが
いつ行ってもその女医さん以外の先生に診療してもらうことがなかったので
きっとこの女医さんは若くして優秀な二代目なんだな、と勝手に思っていた。

ある休院日、当時飼っていた茶トラのワタタンが嘔吐を繰り返したので
慌てて病院に電話して休日診療してもらうことにした。
病院に駆け込むと今まで見たことのないおじいさんが白衣を着て待っていた。
ヾ(- -;)おいおい、いつもの女医さんはいないの〜?
引退したような小柄なおじいさんじゃ心配だよ〜と私は少し不安になった。
ところが!
このおじいさん先生こそがこのタイトルにもなった最高の獣医さんだったのだ!

私が知っている限りでは、治療に於ける保定係は飼い主の仕事である。
「保定」 とは診察・治療の為に動物をおさえることである。
病院側の助手らしき人が保定する場合もあるが
患畜にしてみれば知らない人に押さえられるより飼い主に押さえられる方が
不安を和らげることが出来るのかもしれない(けどよくわからない)。
初めて保定をした時は
ただでさえ病院・獣医・他の患畜に対してビクビクしているカワイイ我が子を
注射したりお尻に体温計入れたりする為に押さえつけるなんて
あまりに可哀相で胸が締め付けられる思いがしたが
何度もやっていると 「そうせざるを得まい」 と、ある意味悟りの境地に達しつつあった。

おじいさん先生が注射器を取り出したので
私は条件反射のようにワタタンを押さえようとした。
するとおじいさん先生はこう言った。
「あ、何もしなくていいよ。動物は押さえられると余計こわがるからね。」
へ?
だって押さえてないと針刺してる最中に逃げようとしたら余計危ないじゃん、
と私は余計に不安になったが
おじいさん先生はそぉっ・・・とワタタンに注射すると
ワタタンは最後まで診察台の上でおとなしく静かにしていたのだ!
(」゜ロ゜)」(」゜ロ゜)」(」゜ロ゜)」オオオッッッ!
ワタタン偉〜い!!(* ̄▽ ̄*) かわい〜い♪
・・・じゃなかった、おじいさん先生すご〜い!

おじいさん先生はこうも言った。
「猫は少しの音にもビックリするからね。静かにしてあげないと。」
確かにおじいさん先生の一言一言は
ヒソヒソ話をするかのように小さな声でゆっくりと優しい話し方だった。
お見それいたしました。(*_ _*)ぺこり

診察を終えると
「猫が吐いたからといってすぐに病院に来たりしないでしばらく様子を見て
診療時間内に来るようにしてね。それでも充分大丈夫なはずだから。」
おじいさん先生は優しい口調で言ってくださったが
結局ワタタンも大したことはなく、私は萎縮してしまった。
その先生は明らかに釣りに出かけるファッションの上に白衣を着ていたからだ(笑)

待合室では、おじいさんの奥さんと思われる朗らかな女性が会計をしてくれた。
会計を済ませて病院の前の駐車場へ行くと奥さんはついて来て
「あの人(おじいさん先生)は猫が大好きなんですよ〜♪」と嬉しそうに話し掛けてくれた。
今にして思えば
ちょっとシュンとしてしまった私に楽しい話題を振ってくれたのかもしれない。
なんてステキなご夫婦だ!そしてなんて素晴らしい先生だ!
ワタタンがおとなしく注射されている姿を見た時
私はメルヘンチックで恥ずかしいが 「魔法みたいだ!」 と思ってしまった。

残念なことにそれ以降、
その病院へ行ってもおじいさん先生の診察に当たることはなかったのでした。

□ 2002年5月 □
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