佐々木正美先生のお話


             ★平成14年2月16日(土)平和学園講堂にて開かれた
              児童精神科医・佐々木正美先生の講演に参加しました。
              先生は、ノ−スキャロライナ大学・川崎医療福祉大学の教授であり、
              日本全国の保育者や保護者に向けて講演を開いている、
              日本一忙しい精神科医(笑)でいらっしゃいます。
              心理学者エリクソン等の乳幼児・児童の発達を分かり易くお話して下さったり、
              登校拒否やいじめ・学習障害児・自閉症等の問題にも深く研究されておられます。
              娘達がお世話になっている幼稚園では、佐々木先生をはじめ、
              子育て協会の杉浦先生の講演を、沢山設けてくださっています。
              杉浦先生のお話は、また別の機会にご紹介することにして(^^)
              今回は、私も初めて参加した佐々木先生の講演を抜粋してご紹介します。

              当然のことながら、テ−プを撮ったわけではありませんので、
              手帳のメモを見ながらまとめております。
              先生の「品のある」言葉使いを、そのままご紹介できないのが残念ですが(^^;)
              このレポをきっかけに、先生の書籍をお読みいただければと思います。

       

             「子供が育つ家族」

              長年の経験から、これだけは確信を持って言える事がある。
              それは、「親の前ではいい子だが、保育所では手のかかる子というのは、
                    青年期がとても心配!!」ということだ。

              子供が成長して行く上で、「誰に信頼を寄せているのか」ということが
              重要になってくる。
              「親には満たされていない」から「保育者にあれこれとわがままを言う」
              という形になる。

              精神科医という立場上、色々な人と関わってきた。
              私はいつでも「子供・青年・家族」と時間を追って、またその家庭環境のことにも
              目を向けてきた。

              最近問題になっている「自閉症」や「社会性が育たない」という若者達。
              それは、まったく別のものではなくて、共通していることがわかる。
              自閉症は、生まれながらに持ち合わせた病気。
              社会性が育たないという中には、2種類ある。
                非社会的・・・引っ込み思案・不登校・自殺  
                反社会的・・・不良・非行
              非社会的と反社会的は、表れ方が逆なだけで本質は同じこと。
              要は、「人間関係」が上手く出来ないということ。

              卒論を指導している時に、生徒が素晴らしいことに気づいた。
              「スト−カ−というのは、非社会的・反社会的な要素を持ち合わせている」と。
                非社会的・・・彼女と2人で引きこもりたい
                反社会的・・・スト−キング行為をする

              
              自閉症を乗り越えた ウエヤマカズキさんの本を読んだ。
              彼は、この本の中で「引きこもる人の心理状態」をこのようにあらわしている。
              「親を含めた回りの人々とのコミュニケ−ションに絶望している」と。

              コミュニケ−ションに絶望 = コミュニケ−ションに恐れを感じている。
                                 コミュニケ−ションを取る事が出来ない。
     
              コミュニケ−ションは、どのように身に付けて行くものなのか?
              最初に出会った人の影響を強く受ける。
              ごく身近な人から学ぶことが出来る。
              これは、「母親」を限定しているわけではない。
              しかし、一般的に子供の成長の時期に一番密接に関わるのは母親なので、
              母親の影響は大きいと言えるだろう。

              コミュニケ−ション = 人を信じる力である。
              人を信じる力 = 自分を信じる力 = 自分を肯定する力
              これを育てないとコミュニケ−ションは、育たない。

              たとえば・・・。
              お勉強が出来る。お稽古事が上手に出来る。
              これは「技術や知識」はあるが、これだけでは「生きる力」は、育たない。
              社会の中で見れば、自分より勉強のできる人や技術のある人は沢山いる。
              偏差値の高い大学ほど、自殺率が高いのは、このためである。
              だからと言って偏差値の低い大学にいきなさいというわけではない(笑)

              「人を信じ力」と「自分を信じる力」は、同じものである。
              何かがよくできる ということが 果たして自信を与えられるのか?
              それは、出来ない。自分よりも優れた人は沢山いるのだから。


              ここで、移動中に出会った親子の話を紹介。
              若いママと赤ちゃん・2〜3歳くらいの男の子。
              新幹線の車中にて。通路をはさんで、先生は左ブロックの窓側に座っていた。
              右側の窓側では、男の子が靴を脱いで座り窓の外を見ていた。

              窓の外を一瞬尋常ではない人の群れが通り過ぎた。
              先生の位置からは、それが何であるのかハッキリはわからなかった。
              次の瞬間、男の子はママの方を振り返り、
              「ママ! 見た?」 と話し掛けた。
              ママは、黙ったままだった。居眠りでもしているのかな?と思って顔を見ると、
              目をぱっちり開けている。(笑)
              男の子は、もう一度 「ねぇ ママ 今の見た?」 と聞いたが、それでも返事がない。
              先生は、通路の向こう側から「おじさんは 見たよ」と思わず声をかけてしまったという。(笑)
              
              見ず知らずのおじさんに声をかけられた男の子は 「このおじさん誰?」という顔を一瞬した。
              しかし次の瞬間とても嬉しそうにニコニコと笑った。と・・・。

              男の子は、ボクの感動をママにも分かち合って欲しい!と思ったに違いない。
              こういう小さな積み重ねが、コミュニケ−ションを作って行くのだ。
              「人との共感性」「人を信じる力」「自分を信じる力」は、こうして作られて行くのだ。

              子供が何か言っているのに、反応しないのは絶対にいけない。
              「今赤ちゃんの世話をしていたから見れなかったわ」 それでもいい。
              どんな言葉であってもいいから、必ず答えてあげることが大事だ。

              「相手の立場になる」「相手を尊重していく」力を育てるのが大切。
              自尊の感情を育てないと、生きる力は育たない。
              自分の痛みをわかるからこそ、人の痛みもわかることが出来る。

              『喜びは、人と共有することで大きくなる。
               悲しみは、我がことのように聞いてくれる人に話せばやわらぐ。』 と。


              名古屋大学の笠原教授が書かれた「退却神経症」(この字であってるかしら? ^^;)
              という本がある。
              一流企業や一流大学に入った人達が、ひきこもってしまう原因について書かれていた。
              彼らに共通しているのは
              「喜びの感情を持っていない。
               悲しみの感情も失ったように見える。
               苛立ちと怒りの感情だけが、とても強い。」 ということである。

              「喜び」(明)も「悲しみ」(暗)も、人と共有しあってこそ育つ感情である。
              
              精神科医のハリ−スタックサリバン氏の言葉を引用。
              『人間の一人一人が存在する意味は、人間関係の中にある。
               日々どのような人と、どのような生き方をしているのか。
               自問自答してみたらわかる。
               精神医学は、人間関係の学びである。
               精神障害は、人間関係の障害である。』 と。

              「人間関係」を作るには・・・。
              人間は、自分を信じてくれる人に出会うことによって自信がつく。
              信じていないから口うるさく言ってしまう。(笑)
              何も言わないのは、放ったらかしであって別問題である。(笑)

              「手がかかる子供」の親は、先生が多い。
              子供は「依存」と「反抗」を繰り返すことで、自立していく。
              「依存」というのは、望むことを沢山してあげるという事。
              そうして満たされた子供は、小さな反抗で自立していく事が出来る。
              「依存」「反抗」ともに不十分だと、自立は出来ない。

              先生という職業は、管理したがる。
              立派な先生は、それを家庭に持ち込まないが、そうでない人もいる。
              家庭においては、教師ではなく保護者にならないと、子供はたまらない。


              不登校を乗り越えた高校3年生(男子)の例。
              教師を対象にした講演会のあと、ある先生が尋ねてきた。
              長年ずっとわからなかったことが、今日の講演でスッキリしました。と。

              長い間不登校であったこの高3男子が、登校をしてきて書いた作文がある。
              (内容を箇条書きにします。)

              ・母とは長い間話をしていなかった。
              ・母は、ボクに背を向け台所に立っていた。
              ・ボクは、茶の間でテレビを見ていた。
              ・母が「お風呂に一緒に入ろうか?」とボクに言った。
              ・ボクは、頭の中が真っ白になった。
              ・久しぶりに一緒に入った。母と沢山話をした。
              ・それからボクは、母と話ができるようになった。

              この作文を読んで担任の先生は、理解できなかった。
              しかし、佐々木先生の講演を聞いて「そういうことなのか」と気づいたと。

              先日テレビでも話題になっていた「ボトルヒ−リング」
              思春期・青年期の人に哺乳瓶を与えるという治療法で、
              アメリカでは、この研究が随分前から進んでおり効果をあげていると。
              
              大人になってからではなく、乳幼児期に十分してあげることが大切なのです。

              親の愛情だけでは、子供の栄養は足りない。
              栄養は、バランスよく与えるのが大切。
              心の栄養に必要なのは、
                親の愛  祖父母の愛  おじ・おばの愛  近所の人々の愛  等。

              アフリカの格言を引用。
              『村中の人の智恵と力がなかったら、子供は1人たりとも健全には育たない。』

              今の日本は、育てるシステム・社会を失いつつある。


              「親の愛」は 子供の未来や将来の幸福を考える。
              「その他の人の愛」は 現在の幸福を考える。

              「子供」は、現在の要求を満たされないとダメなもの。
              将来のために今があるなどという感情は、ない。
              「今」十分に満たされないと、夢も希望も持てなくなる。
              「昨日は、幸せだったなぁ。今日も、楽しかったなぁ。
               だから明日もきっと幸せだろう。」 と。

              「今日」を「今」をイキイキ楽しく過ごすことが、大切。
              「今は苦しいけど、この努力が将来につながるんだ」と理解できるのは、
              いかに聡明な子であっても小学校高学年だろう。それでも難しい。
              それを幼い子供に強いるのは、絶対にダメ。

              たとえば「チョコ」
              「親」は、チョコを食べたら歯を磨きなさい! という。
              それは、明日の虫歯が心配だから。(笑)だから子供は、隠れて食べる。
              「祖父母」は、ママに怒られるから、ぐちゅぐちゅぺっ!しておいで、と言って食べさせる。
              虫歯になったら、親が歯医者に連れて行けばいいのだからと思っている。(笑)

              うるさいことを言われて嫌な顔をしている子供を、親は見ない。
              祖父母は、こんなに嫌な顔をしているのに、まぁまぁかわいそうに・・・と受け取る。

              こうして、色々な人の色々な種類の愛情を持って育つのが良い。
              自分の子供は自分の手で! ではなく 周りの人の手を借りて育てる。
              お互いに「育ちあう」というのが、大切である。

              人を育てるのは、学校ではない。
              日常生活の中でしか育たない。
              これが、幼少期にしっかりできた子は、中学高校で人の中に入っても
              育つことが出来る。


              『性別的役割』 母性と父性
              人は、母性・父性の両方を持ち合わせている。
              母性というのは、母親だけに求めるものではない。
              
              「母性」は、くつろぎ・やすらぎ・自信を与える。
              子供のありのままを認める。そのままでいいよ。
              そのままのあなたでお母さんは十分満足よ。 と子供に自信を与える。

              この「母性」が確立した上で、「父性」を育てるのが大事。
              バランスよりも順序が大切である。

              「父性」は、ル−ルや責任を教えること。
              こうでなくてはいけない。 ということを教えるのも大事なこと。

              母親だから「母性」 父親だから「父性」と分ける必要はない。
              母子家庭の例をあげての説明。
              父がいなくなったことで、母親の中の「父性」が大きくあらわることになる。
              父親の代わりをしなければ! という現状から母性が欠することになる。

              家庭では「母性」を与え、社会では「父性」を育てることが大事。
              欲求を満たされていない子に社会のル−ルを教えることは出来ない。
              
              最近の子供達は「ままごと遊び」が出来ない。
              中でも一番人気のない役が「おかあさん」である。
              女の子は、おかあさん役をやりたがらない。
              まれにお母さん役を引き受けた子供を見ていると、ずっと指示ばかりしている。(笑)
              お父さんの役も出来ない。家庭の中で「お父さん」の存在が薄くなっているから。
              
              一番人気は「ペット」(爆)
              家庭の中で「一番くつろいで・一番幸せ」でいるのが、ペットだから。
              子供がつくろげる家庭を作って頂きたい。(笑)

         
            *****************************************
     
              というようなお話でした。
              誤字脱字は、どうぞお許しください(^^;)
              小さな子供を育てている渦中に佐々木先生と出会えて
              私は幸せだなぁ〜 と思いました。(^^)
              これから子育てするみなさん すでに大きな子供を抱えているみなさん
              今からできることを始めてみませんか?
              
              司会の杉浦先生から 
              「佐々木先生のお話を聞くと、3日間は優しいお母さんでいられるでしょ?」と(笑)
              最近ちょっとイライラしてるわ(^^;)と思ったら、どうぞまた読みにいらしてください(^^)
              私も3日後にまた来ます(爆)


                                             2002.02.21