DEAREST



「ねぇ…犬夜叉は私と居て楽しいって思ってくれてる?」
「はぁ?」
 
今、小屋には犬夜叉とかごめの二人しか居なかった。
他の皆は、村へ妖怪退治へと出かけてしまったのだった。
村の皆は酷く妖怪を恐れていたため、犬夜叉は居残り。
かごめはその居残りに付き合っていた。
 
シンとした空気に虚しさを覚えたかごめが己の胸の内を犬夜叉に語った。
 
「前…『俺は楽しんだり、笑ったりしちゃいけねぇ』みたいに言ったよね?」
「…あぁ…」
「…間違ってないと思うの…でもね、少しは笑っても…楽しくてもいいと思う。感情を抑えることは…自分に嘘を吐く事だから」
 私だって…自分に嘘を吐いてる事は…ある…
俯いてしまったかごめ。外で鳥達が謳い、木々がざわめく。
こんな穏やかな時間(とき)にこの様な雰囲気にしてしまった自分に反省したかごめは再び口を開いた。
 
「…今言ったこと…忘れて」
 
顔を上げ笑顔で発したかごめ。
その笑顔はいつもと違い悲しみの笑顔に思えた。
 
「…かご」
「いやぁ…とんだ雑魚妖怪でしたなぁ」
「そうだね」
 
犬夜叉がかごめを呼ぼうとした時、
丁度妖怪退治を終えた弥勒、珊瑚、七宝、雲母が帰ってきた。
何事もなかったかのように笑顔で迎えるかごめ。
犬夜叉は何も言わずに小屋を出た。
 
「あ…何か大切な話してた?」
 
心配そうに聞く珊瑚に気を遣い、
かごめは笑顔で否定した。
 
「ううん。ちょっと様子見てくるね」
「…かごめ様」
 
何もかも見透かされそうな弥勒の瞳に
かごめはドキリとしながら耳を傾けた。
 
「…なぁに?」
「日没までには」
 
弥勒だけには適わなかった。
 
「うん」
 
笑顔で小屋を出て犬夜叉を探すかごめ。
いつ見ても見惚れてしまう戦国の自然の豊かさ。
現代には冷たい石の塊が多々建ち並び、太陽と睨めっこをしている。
汚れた空気、届かない光…
 私は…あんたにとって…石の塊…?
良い事はない。それがあるから太陽の光が照らしてくれない。
元気を…明るさをくれない。
 貴方を支えたいと思う私は…石…?
 
 それとも…木…?
 
 もしも、石ならば…壊して貴方に光を与えるから…
 
 もしも、木ならば…私が得た光と力を貴方に捧げるから…
 
 どうか…自由になって…。
 
下ばかり見て歩いていると、かごめは何かにぶつかった。
そして顔を上げると犬夜叉がいた。
 
「木じゃなくて良かったな。」
「…木じゃ…なくて…?」
 
先程自分で考えていた事とぶつかり合う犬夜叉の発言。
犬夜叉が悪い訳ではないと分かっていても実際にかごめの頬を伝うのは
 
涙…。
 
「お…おいっ」
「ご…ごめん…」
「どこか痛かったのか!?」
「違うの…何でもないの…」
 
尚も止まらない涙を犬夜叉の衣が優しく拭う。
 
 
 
「…辛いのか?」
 
 
 
「え…?」
 
急に止まった涙。
ぼやけた視界が晴れ、
見上げると悲しそうな、切なそうな犬夜叉の顔があった。
 
「辛いから…あんな事聞いたのか…?辛いから…涙を流すのか?」
「…違うよ…」
「じゃぁ…何故お前は」
 
 
 
「だからだよ…」
 
 
 
「…え…」
「好きだから…だよ。こんなに好きだから…不安になる…一杯考えちゃう…だから…だから涙が出るの…」
 
<フワ…>
 
犬夜叉はそっとかごめを包み、かごめの柔らかな髪に顔を埋めた。
とても優しく…震える肩を包んでいた。
 
「…俺は、お前と一緒に居て楽しくないと思った事は一時だってあった事はねぇ…」
 
一度かごめを開放し瞳を交わせる犬夜叉。
かごめはこの瞳から逃れたことは一度もなかった。
 
「お前は…楽しいか…?」
「…私は…」
 
二人の髪を風が掻揚げる。
 
「…楽しいよ…凄く…」
「なら…いいじゃねぇか…」
 
再び犬夜叉に包まれたかごめ。
そして犬夜叉はかごめの耳元で囁いた。
 
「…俺も…好きだぜ…お前の事…」
 
その声は甘く優しく一度止まった涙を再び呼んだ。
それに気付いた犬夜叉は微笑み抱く腕に少し力を入れ口を開いた。
 
「何だよ…まだ辛いのか?」
 
悪戯っぽく問う犬夜叉に半ば安堵を覚えかごめは答えた。
 
「…嬉しいのっ…」
 
犬夜叉の心音を聴きながら温もりを感じるかごめ。
犬夜叉はかごめを抱えたまま、近くの幹に腰掛けた。
お互いに指を絡ませ合いながら抱き合った。
 
「お前が辛い時は…何でもしてやる…」
「本当に…何でも?」
 
上目遣いで問うかごめ。
そんなかごめに犬夜叉が否定する訳がなかった。
 
「…あぁ」
「じゃぁ…」
 
そっと犬夜叉の肩に手を乗せ、耳元で想いを伝えるかごめ。
 
「…口付け…してくれる?」
 
その瞬間頬を紅潮させる犬夜叉。
しかしその顔はとても穏やかで…
 
「構わねぇ…」
 
かごめの唇を銜えた。
自然と瞳を伏し、口付けを交わしていると不意に舌と舌が触れ合い、
互いに相手の舌を求め合った。
 
暫くして唇を離し見つめ合うと、再び抱き合った。
 
 
 
<ザク…>
 
 
 
急に奇怪な音と共にビクつき犬夜叉の衣を握り締めたかごめ。
 
「…かごめ?」
 
恐る恐るかごめを覗く犬夜叉。
手をかごめの背中の中心へ移動した時、何かが犬夜叉の手に触れた。
 …矢…!?
「…ぅ…」
「か…かごめっ!!」
 
この矢を抜いたら血が止まらないかもしれない。
しかし苦しむかごめは見たくない。
犬夜叉は矢を放った者を探した…
 
そして…見つけたのは…
 
「奈落…!!」
「…これで厄介者がまた一人消えた」
 
笑みを浮かべ消えた奈落。
犬夜叉は最猛勝を追わずかごめを抱え
一目散で小屋へと駆けた。
かごめの荒い息が犬夜叉を困惑させる。
 もし…死んだりしたら許さねぇからな!かごめっ!!
小屋へ飛び込むと、皆はかごめを見て一瞬で蒼白した。
珊瑚が目に涙を浮かべ、それでも冷静に尋ねた。
 
「…犬…夜叉…どぉして…」
「…奈落が…」
「ひとまず矢を抜き、止血しなければなりませんっ!犬夜叉かごめ様の手でも握ってやっていろ!」
 
弥勒の言われた通り手を握る犬夜叉。
珊瑚は矢を握り思い切り引き抜いた。
 
「あぁぁぁっ!!!」
 
小屋中に響いたかごめの悲鳴。
犬夜叉は思わずかごめから目を逸らせた。
かごめの制服は割かれ、上半身裸にされたが
誰もかごめを嫌らしい目で見る者など誰一人としていなかった。
皆助かれが一心で止血をした。
 
想いが通じてか、血は止まった。
しかし、相変わらず呼吸は荒い。
 
皆が戸惑いを隠せないでいる中、
かごめが大きく深呼吸したその時だった…
呼吸は荒くなくなった…
それと引き換えに、かごめの呼吸が止まった。
 
「…かごめ…?」
 
まるで眠っているかのように堅く瞼を閉じているかごめ。
 
「おい…起きろよ…かごめ!!」
「…犬夜叉!まだ手はある!!」
「何だ!?早く…早く教えろっ!俺は…こいつの為なら…命だって惜しまねぇっ!!」
 
弥勒の肩を掴む犬夜叉。
いつにも増して真剣な犬夜叉に弥勒も真剣に答えた。
 
「…かごめ様に息を吹き込むんだ…かごめ様に教えてもらった人工呼吸だ!!」
「あぁ…でももし上手くいかなかったらっ」
 
<バキッ>
 
弥勒は犬夜叉を殴り胸倉を掴んだ。
 
「弱気になるな!!お前が弱気でどぉするっ!かごめ様は一人でまだ戦っているんだぞ!!」
 
弥勒は以前かごめに教えてもらった通りかごめの胸の辺りに手を添え準備した。
 
「やらないのか!?やらないのなら私がかごめ様息を吹き込むっ!」
「…やるに決まってんだろっ!!!」
 
溢れる涙を流さぬよう、
そっとまだ少し暖かい唇に己の唇を這わせ、息を吹き込む犬夜叉。
それを確認すると弥勒がかごめの胸の下辺りを押した。
しかし反応はそう簡単に返ってこなかった。
 戻ってこいよ…
犬夜叉の大きな瞳に溢れた涙がかごめの唇へ落ちたその時だった。
自然とかごめの手を握っていた珊瑚が目を見開いた。
 
「…た」
「え…?」
「動いたっ!!手が動いたっ!!」
 
犬夜叉がかごめに目線を戻すと、かごめが犬夜叉を捕らえていた。
 
「…かごめっ!!」
…い…や…しゃ…
 
ボロボロ涙を流す犬夜叉。
かごめは声ならぬ声で犬夜叉に訴えた。
 
辛い…よ
「…あぁ…何でも…してやる…だから…だからもう少し…頑張れ…」
 
人の為にこんなに泣いたことがなかった犬夜叉はそっとかごめに口付けた。
 
 
 
やっと落ち着いたのはそれから半時の事だった。
外は暗くなり、犬夜叉はかごめに寄り添って布団の中へ身を沈めていた。
 
「ぅ…ん」
「…かごめ?」
「…犬夜叉…」
「かごめっ!」
 
そっとかごめの身体を抱き寄せる犬夜叉。
何度もかごめの髪を撫で、かごめの温もりと香りを感じていた。
 
「…頑張ったな…」
「…うん…」
「まだ…まだ死ぬには早すぎる!」
「うん」
「俺がお前を護るから…ずっと一緒に…」
 
かごめの唇に犬夜叉は指を這わせる。
そして頬を撫で、前髪を掻き揚げ唇を落とした。
 
「元気になったら…俺の我が儘聞いてくれよ?」
「…うん」
 
そして二人は抱き締め合いながら眠りについたのだった。











<END>



…後記…
 
 何か最後とか微妙ですよねぇぇぇ(..;)
 この後の小説も一応あるにゎあるんですが…18禁なんです( ̄□ ̄;)!!
 もしこのサイトで裏を作ったときにゎ載せたいとおもいますr(^^;
 読んで頂きありがとぉございましたッm(_ _)m


.