ALIVE
何処まで近付く事を…触れ合う事を赦されていたのだろうか。
目が合う数が増し、手が触れ、抱き合い、そして今互いの唇の感触を心に刻んでいる。
いつか別れが来ると思うと胸が締め付けられ、心臓がおかしくなってしまいそうになる。
もし…別れが明日に迫っていたとしたら…
素直になりきれぬ己の心を優しく癒した可憐な笑顔は…
小さいながら一生懸命手を広げ、抱き締めてくれた腕は…
かごめは…
記憶の存在へとなってしまうのか。
夢でなければ逢う事を赦されぬ御伽の娘になってしまうのだろうか。
果たして…己の心はこのような場面で止まりもせず動いていられるのだろうか。
別れは意外とすぐにやってきた。
かごめが言うには向こうからこちらに来る為に井戸に飛び込んだ時、物凄い重圧が躰に降り懸かったらしい。
弥勒に話せば「もう繋がりが途切れかけているのではないか」と真剣な顔で語った。
ただ立ち尽くしていたかごめの足が力を失い、床へ落ちかけた。
咄嗟に犬夜叉がその躰を抱き寄せたが、酷く震え、何か言葉を呟いていた。
何度も何度も…ひたすら
「嘘」
と。
震える躰を抱く腕に力を加え、
心を落ち着かせ、
宥めるようにかごめの名を囁いた。
「…かごめ…」
すると震えが止まり、紅の衣に埋めていた顔をゆっくりと上げた。
大きな瞳から流れる涙。
綺麗であれども、それは別れを告げる証でもあった。
色々話し、明日別れる事を決意した。
夜に気を遣ってか弥勒らは何処かへ行き、かごめと二人小屋で腰を下ろしていた。
無理してでもいい…
最後に…
お前のあの優しく可憐な笑顔をこの俺に見せてはくれまいか…
涙を見る度思い出す。
己の窮地を脱した時、いつも一目散に掛けより、
この衣に泣き付いたかごめ。
いつも強がるかごめが初めて見せた涙は暖かかった。
「かごめ」
「…」
「お前は桔梗の生まれ変わりだ…」
「っ…」
曇ってゆくかごめの顔。
「だから…俺もお前の世界に生まれ変われるのではないのだろうかと…思うんだ」
思いも寄らぬ発言に、
それまで床に向けられていたかごめの瞳が犬夜叉の金色の瞳を捕らえた。
「だから…だから!」
金色の瞳から溢れる涙。
辛いのは自分だけではない。
今出来る事は…
「…犬夜叉」
かごめは精一杯の笑顔で優しく犬夜叉の頬を撫でた。
「かごめっ!」
床に倒れ込んだ二人の躰。
口付けを交わしながら犬夜叉は何度も「愛している」と呟いた。
そんな犬夜叉にかごめは
「私は貴方を愛し続ける…だから迎えに来て?」
と優しく囁いた。
その言葉に頷き、二人は初めて躰を交わせた。
陽が昇り始めた頃、かごめは目を覚まし、
横で眠る犬夜叉に囁いた。
「私を…忘れないで?私も貴方を覚えているから…」
「あぁ」
今にも涙しそうなかごめを抱き寄せ呟いた。
「…起きたの?」
「…ずっと…」
…お前の温もりと香りを焼き付けていたんだ。
「…私は…犬夜叉しか愛さない…これからも…」