FeelTheSame
本当に・・・・
本当に怖かったんだ
有り得ないことだとは思っていても・・・
奈落なんかに手を貸さないだろうとは分かっていても・・・
彼女を手放すことをあんなに恐れてしまうなんて・・・
いつの間にかすっかり信じ切って頼り切ってしまっていた自分がいたのだと感じた
自分を無力だと感じた
この想いにずっと蓋をしていた
極力開けないように、触れないように、心の奥底に追いやった
『お前が桔梗を忘れん限りな』
そんなこと・・・・
桔梗を忘れないでいることなんて出来やしない
彼女だってそんなこと望んでなどいないだろう
――あくまで仮定でしかないが。
『別にいいよ』
いいわけ・・・・ないだろう?
本当は嫌だってこと、傍に居て欲しいってこと、どうして口で伝えてくれない?
おれはお前が居ないとあんなにも不安になってしまうのに・・・
お前はそうじゃないのか?
こんな思いに駆られているのはおれだけなのか?
願いは何時も一緒なんだと思っていた
昔とは・・・・
今よりちょっと前とは、少しだけ違う願いになった
あの頃は・・・
惟、傍に居れれば、それでだけで・・・
そして見つめていられれば、充分だった
温かな眼差し、幸福感に満ちた笑顔・・・・
見ているだけで安堵感が生まれてきて、心が安らいだ
いつの日からか・・・
それだけじゃ不満さを感じていた
恋敵に連れ去られたとき
其奴と話しているとき
今し方白童子の罠にかかり、危うく失う羽目になっていたとき
これだけじゃないけれど・・・
何時だって、彼女が傍から離れてしまえば、其処に残るのは虚しさと寂しさと愛おしさ―
戻ってきてくれるのか、という心許なさがあって・・・
どんな時も自分の心は彼女に奪われたままだというのに・・・
悔しいけれど、これが嫉妬なのだと気づいた瞬間に、嘲笑したくなった
彼女はどう想っているのだろう?
自分と同じ願いであるのだろうか?
そうであって欲しい・・・
そうでなければ納得いかない
「何考えてるの?」
すっかり落ち着きを取り戻したかごめが怪訝そうに尋ねる
「ん?・・・・別に・・・大したことじゃないさ」
「本当に?」
「疑ってるのか?」
うん、と即答するかごめに、犬夜叉は、あのなぁ、と脱力する
「だって・・・・表情が凄く真剣で、でも瞳は哀しそうだから・・・・・」
嗚呼此がかごめの力なのだ、と強く感じる
口にしなくたって自分の心を察してくれて、言い出せないでいることだって、こうやって直に云ってくれる
だから、応えなければならない
義務とか、罪悪感とか、そういうのを感じているからじゃなくて――
彼女なら受け止めてくれるっていう自信みたいなものがあるから・・・
謂ったらきっと彼女らしい答をくれるんだって思えるから・・・
思わず応えたくなってしまうんだ
「おれ・・・・・本当に不安だった・・・
かごめがおれのこと忘れて、何処か手の届かない処に行ってしまうかもしれなかったんだって思ったら・・・
本当に怖かった・・・
奈落の傍にいるお前の姿なんて想像したくなかった」
後は堰を切ったように、言葉が次々と溢れだし、心中を全て吐き出した
かごめは口を挿むことなく、真っ直ぐな瞳を彼に向け、時に頷き、時に微笑んだ
犬夜叉が心の内を全て見せ、一呼吸置いたとき、微かに震える犬夜叉の其の肩に、彼女の体温と重みとが、感じられた
それと同時に、彼女の優しい香りも一層強く鼻を燻った
「漸く・・・本音吐いてくれたね
私、今本当に嬉しい・・・
犬夜叉がこうやって私のこと想ってくれてること・・・
私だけじゃなかったんだなっていう安心感もあって、凄くほっとしてる」
「・・・え?」
犬夜叉が驚いた表情でかごめを見つめる
かごめは彼から体を離し其の瞳を見つめ返した
「私だって、犬夜叉が居なくなったりしたら不安だよ
もう・・・何処か遠くへ行っちゃうんじゃないかって思う
現代に戻ったときだって、このまま私のこと忘れて、新しい人生を歩むんじゃないかなって思うことだってあるもの」
「それはおれだって・・・」
「大丈夫・・・犬夜叉は何にも不安になることなんてない
喩え私は犬夜叉の傍に居なくても、私の心は何時も犬夜叉だけを見てるんだから
そうじゃなかったら、私は白童子に魂を奪われてた筈よ
犬夜叉のこと想っていられたから、自分の強い想いに気づけたんだもの」
ここまで喋って、かごめはクスリと笑った
「何で笑ってんだよ? 人が真剣に考えてたってのに・・・」
犬夜叉が口を尖らせる
「ごめん、ごめん・・・
なんかね、私たちって、やっぱり似たもの同士なんだなって思ったのよ」
「おれと・・・かごめが、似ている・・?」
犬夜叉は眉間に皺を寄せ、考えを巡らせた
似ているだなんて・・・
そんなこと思いもしなかった
かごめはおれとは全然違う
慈悲の心だってあるし、素直だし、何せ心に余裕がある
羨ましいと思ったことだって何度もある
そんなおれがかごめと似ているなんて、よく理解できない
「だって、想いは何時も一緒でしょ?
お互い不安で居たたまれなくなっているんだもん
こんなに傍にいて、お互いの想いをぶつけ合っているのに、
独りになっちゃったら、此処まで不安になっちゃうのが似ているなぁって思ったの」
カタ・・・・
今まで抑えていた想いが―蓋をしていた想いが、一気に解き放たれた気がする
こうやって話すだけで、不安な想いも何もかも拭い去ってくれるかごめと似ているなら・・・
おれだってきっと、かごめの想いを受け止めて好い形で返すことが出来る筈
だって願いは何時も一緒だから・・・
想いは何時も一緒だから・・・
(END)
<管理人感想>
いやぁ切ないやら何やら。。。
こんな小説を書けるえっこ様を尊敬致しますわッ。
結構シリアス風味でしょっぱいですッ(>_<)
でもそこがツボ!
えっこ様ありがとぉございましたvv