仮面
気付いたら私は私という仮面をしていた。
涙を流しても決して表に晒されず…誰にも気付いてもらえない。
私は私という偽りの表情を何時しか自分としていた。
でも…
いつもその仮面は彼によって壊される。
いくら私がその仮面を押さえ付けても、彼は甘い言葉と優しい眼差しで壊してしまう。
もしかしたら彼に壊して欲しくて私は仮面をしているのかもしれない。
いつもの旅の小休憩。
大抵かごめは犬夜叉と二人で草原に腰を降ろすが今日は違った。
「ごめんね」と言い残し一人川辺へと行ってしまった。
そんなかごめを見た珊瑚は首を傾げて呟く。
「かごめちゃんどうしたんだろ?」
「…ちょっと行ってくらぁ」
「犬夜叉っよしなよ…」
「るせぇ、黙ってろ」
険しい顔つきでかごめの元へ向かう犬夜叉。
実の処小休憩をとろうと言い出したのはこの犬夜叉だった。
一番小休憩を好まない犬夜叉が言い出したので皆目を見開いた。
とりあえず今は犬夜叉に任せようと言うことで犬夜叉以外はいつも通りの小休憩にはいった。
犬夜叉はかごめの側まで行き、隣に腰掛けると口を開いた。
「…お前ぇは弱ぇんだから…」
「…っ」
見透かされてる…
今日は朝から陽が照り続けている中歩いていた。
かごめの表情に無理があるのに気付いていたのは犬夜叉だけだった。
だから誰も小休憩をとろうなど口にしなかった。
「ちょっと額出せ」
「…ん」
そっと額を合わせると明らかにかごめの額が熱かった。
「何で無理すんだょ」
「何で気付くのょ…」
「気付かないとでも思ったのか?」
「弥勒様達は気付かなかったわ」
「…俺がお前の異変に気付かねぇ訳ねぇだろ」
そう呟きかごめの肩をそっと抱き寄せた。
荒々しい、かごめの呼吸が犬夜叉の胸に伝わってくる。
かごめはそっと瞼を閉じ、犬夜叉にもたれ掛かった。
パキン…
仮面に皹が入る…
そこを覗く犬夜叉は優しい顔を見せてくれている。
その顔をもっと見たくて自ら仮面を外すと彼は優しく微笑んだ。
「辛いなら俺にだけでも言えょ?」
「…うん」
「知らねぇ顔してんの…結構辛いんだからな」
「うん…ごめんね」
それきり会話はなくなった。
何時しかかごめは犬夜叉の胸で寝息をたてていて、
それに気付いた犬夜叉はかごめを抱え皆の待つ処へと歩を進めた。
この日はこれ以上進むのは止めて空き家で一夜を過ごす事になった。
皆は床についているにも関わらず、かごめは一人外へ出ていった。
涼しげな風がかごめの足に吹き付ける。
冬というわけではないがやはり夜風は肌に突き刺さる。
「寒っ」
「…馬鹿だろお前」
突然後方から聞こえた声の主は犬夜叉だった。
いつの間に居たのか、己の紅の衣を脱ぎ、かごめに被せた。
「犬夜叉…」
「そんなに風邪ひいていてぇのか?」
「…ただ…ただ風に当たりたかっただけょ」
「…あんま心配かけんなょ」
そう呟くと犬夜叉はかごめを抱き寄せた。
「まだ熱いな…」
額に唇を落とし、小屋に連れて行こうとすると、かごめが歩を止めた。
「かごめ?」
「…やだ」
「…ん?」
「…一緒に居たい…」
「え…」
思いがけないかごめの言葉に頬を紅く染める犬夜叉。
かごめはしゃがみ込み頭に掛けられた衣を握り締めた。
すると犬夜叉はかごめの側で向かい合うようにしゃがみ込み頭を撫でてやると、
かごめは顔を上げ、犬夜叉を見据えた。
「かごめ…どうしたよ?」
「本当の事言っても…笑わない?」
「笑わねぇよ」
微笑む犬夜叉を尻目にかごめは瞳を潤ませて口を開いた。
「…寂しくて…怖いの…犬夜叉が私が外に出ればついてくるの分かってた…
だから…だから外に出た…」
頬を紅くして訴えるかごめ。
犬夜叉は溜め息を吐きそっとかごめの頭を抱えた。
「知ってる…」
「…嘘」
「…かもな」
「…」
「でも…お前が俺を求めるなら…俺はお前の側に居る」
不意にかごめの瞳から流れる涙。
何故か止めようと思っても止められない。
「…涙止まんない…よっ…」
涙声で呟くかごめ。
「泣きたいだけ泣けよ…寂しかったんだろ?…怖かったんだろ?」
「…っ」
かしゃん…
最後の仮面の破片が落ちて消えた。
どんなに厚い仮面でも簡単に剥ぎ取ってしまう犬夜叉。
「無理して感情隠すから風邪ひいちまうんだよ…」
「…だって…」
その先は言葉を封じられ口に出せなかった。
かごめの言葉を封じた物…それは犬夜叉の暖かい唇だった。
一瞬目を見開いたが、すぐに自然と瞼が視界を覆った。
そしてゆっくり離すと、かごめの涙は何時しか走るのを止めていた。
「…立てるか?」
「うん…」
犬夜叉はかごめの手を握り、小屋へと連れていった。
「また怖くなったら…寂しくなったら言えよ」
「…うん…ありがと…」
頭に掛かる衣を取り犬夜叉の背中に掛けると、かごめは笑顔で囁いた。
「…大好き」
「…っ」
「おやすみ」
かごめが小屋に入ろうとした時、再びかごめの頭に衣が被された。
「待てよ」
「え…」
「…俺の気持ちはお前に負けねぇ」
「…?」
「お前を…愛しく想う気持ちは…誰にも負けねぇ自信がある」
「…え?」
いつもと違う、どこか大人びた表情の犬夜叉にかごめの心臓が早音を打つ。
本当は「大好き」なんて私の気持ちには足りなかった。
こんなに人を想った事なんてなくて、少し自分に遠慮していた。
「私だって…誰にも負けないくらい貴方を想っているわっ」
犬夜叉は頬を膨らますかごめの頭を撫で微笑んだ。
「もう寝ろ」
「…ん」
かごめは頬を紅くしながら小屋へと戻った。
それを確認すると犬夜叉も元の場所へと戻り、浅い眠りについた。
仮面はもう…ない…
<END>
〜後記〜
素敵な画像を見つけてそれに合わせた小説を綴ってみました…
…結果…微妙です…(ぉぃ)
ただ無理しているかごちゃんを素直にさせたかったが一心で
書いてしまいました。。
ここまで読んで頂きありがとぉございましたッm(_ _)m