祭り








「…どぉしても…駄目?」
「だ〜め〜だっ!」
「…お願いっ」
「…お前なぁ…そんな身体で行けると思ってるのか?」
「行けるわよっ!」

意地を張り立ち上がろうとすると一瞬にして世界が反転した。

かごめはこの祭りの日に限って熱をだした。
日頃の疲労が溜まっていたのか、起きあがるのさえままならない。

「…っ!」
「!!!だから無理だっつったろ!」

床に身体が打ち付けられる前にかごめの身体は犬夜叉に支えられた。

「祭りなんざ行かなくたって死ぬ訳じゃねぇだろ…」
「…うん…」
「今は身体治す事だけ考えてろ」
「…うん…」

かごめを抱き上げベッドに寝かすと犬夜叉は外から聴こえる囃子を耳にした。

 祭りはかごめの時代まで受け継がれているんだな…

まだ自分の知っている『祭り』の名残があり、
犬夜叉は少しだけ懐かしく思えた。
祭りなんていうものは生まれてこの方数えるほどしか行っていない。
それも人目に付かぬように歩いていたためあまり良い思い出でもなかった。


「…しゃ…」


「…ん…?」

寝ぼけているのか否か、かごめが犬夜叉に背を向けて呟く。

「一緒に…行きたいね…お祭り…」
「…かごめ…」

そして再び黙りこくってしまった。

 一緒に…か…

行きたくない訳ではない。
ただ…かごめに無理をして欲しくなかった。

前日にかごめに祭りを誘われ、渋々是を示したが誘った本人がこの状況だ。
例え行きたくても行けるわけがない。
いつの間にか己の胸の内で大きな存在になっているおなごを放って行けるわけがなかった。

 おれだって…お前と行きてぇよ…

ただカチカチと時計の秒針が鳴り響き、
かごめの苦しそうな吐息が聞こえるだけだった。

少し経つと下から階段を上る音が犬夜叉の耳に入った。

…かごめの母だ…。

「犬夜叉君?」
「…え…ぁ」
「かごめが起きたらコレ飲むように言っておいてちょうだい」
「…お…ぉぅ…」

母はニコと微笑み再び下へと降りていった。
渡された物は『薬』
粉状で何だか嫌に鼻につく。
見るからに苦そうな『薬』だった。


暫くするとかごめが寝返りを打ち瞳を現した。

「…かごめ…これ飲め」
「…薬…?」
「あぁ。お前のお袋さんが置いてった」
「…苦いんだよな〜」

屁理屈を吐きつつ渋々水を口に含もうとした。
しかし未だに水は手元のコップに入ったままだった。

「厄日…」
「…さっさと飲め」
「だって…」
「…ったく…」


 …え


<コク…>


「苦ぇっ…」
「い…犬…夜叉…」

犬夜叉は咄嗟にかごめの手から薬と水を奪いかごめに口移ししたのだった。
唇を合わせたのは初めてのことではないが
このようにされたのは初めてで、かごめは頬を紅く染めた。

「…こうでもしなきゃ…いつまで経ってもお前ぇ飲まねぇだろ」
「…もうっ」

再び布団に顔を埋めたかごめ。
そしてそのまま、また眠ってしまった。



気付けば夕方。

祭りが最高潮に達する時刻になって尚一層囃子が響く。
かごめの熱もある程度下がった。
犬夜叉は意を決してかごめを起こした。

「かごめ…」
「ぅ…ん…」
「ちょっと起きろ…」

かごめの顔色は先程に比べるとかなり良くなっていた。
犬夜叉は衣を脱ぎかごめに被せた。

「暑いだろうが我慢しな」
「え…ちょっと…!」

急に犬夜叉に抱えられて外へ飛び出すと近くの木に飛び移った。
眼下に広がる景色…それは…

 お祭り…

「見るだけでも良いんだろ?」
「うんっ」

 良いに決まってるじゃない…

 貴方が居るんだから…

「…なんだよ…人の顔ジロジロ見やがって…」
「え…あ…なんでもないっ。ありがとね犬夜叉」

眼下に広がる祭りを見ていると急に犬夜叉がかごめを抱き締めた。
背中から互いの心音が伝わる。

「…また…行きてぇな…」
「一緒に…ね」

















<END>


Milkさんリクの小説です。。
期待通りになってなかったらごめんなさいッ(..;)
企画参加ありがとぉございましたm(_ _)m