貴方が居るから
「…ツイてない…」
ほんとに…
気付いてないとでも思った?
この日、弥勒と珊瑚に言付かった犬夜叉とかごめは、二山先まで薬草を取りに行くこととなった。
弥勒の余計な親切で結局二人きりで向かったのだった。
かごめは気付いていた…
時折、己の横を風の如く過ぎ去ってゆく白い物体。
…死魂虫。
犬夜叉が気付いていない訳などあるはずはなかった。
かごめはやがて目先に現れた小屋を見つけ、指をさし゛疲れたから″と言い、小屋へと入っていった。
小屋に入った途端に犬夜叉が゛散歩へ行く″と言っても、かごめは止めなかった。
唯、背を向けて頭を上下に振った。
そして少し経つと雨が降り始めた。
「ほんと…どこまでツイてないんだろ…私…」
目を伏しても二人の姿が目に浮かぶ。
冷たい雨が小屋を覆う…
そして…
「…ふぅ…」
朝から身体が重かった。
゛疲れたから″と言うのは言い訳ではない…本当に疲れていた。
今まで表にでなかった熱が今頃になって身体に現れ始めた。
「…犬…夜叉…」
目が霞む…
耳に聞き慣れない一定の音が響く。
刺すような寒さ…
それらは段々とかごめに重くのし掛かり、かごめは床へ身体を倒した。
かごめの息は荒く、瞼を開ける事すら許しを得なくなっていた。
唯一まだ機能を働かせる口は、幾度も同じ名を呟いていた。
「…い…ぬ…やしゃ…っ…」
もう…駄目…
死にそうだよ…犬夜叉…
その時だった。
<ガララ…>
「…かごめ?」
想いが通じたのか、犬夜叉が小屋へと帰ってきた。
寝て…いるのか?
横たわる少女に近付くに連れ、何故か心臓が高音を打つ。
そして今の状況が段々と犬夜叉の頭の中へと取り込まれていった。
汗をかき…
瞼を頑に閉ざし…
息を荒げる少女…
「か…かごめっ!?」
反応は薄いが瞼が動き姿を現した瞳が犬夜叉を捕らえる。
そして微笑み、声ならぬ声でその名を呼んだ。
「いぬ…や…しゃ…」
「お前っ!こんなに熱出てんじゃねえか!」
かごめの額に触れ、少し強く言うが、本当は涙が出そうだった。
こんな奴を放ってまで自分は桔梗に会いにいった。
そして…気付いてやれなかった彼女の異常。
理由ははっきりしていた。
自分はずっと死魂虫を意識し、かごめの事など気にもとめていなかった。
今更後悔などしている暇などなかった。すぐさまかごめのリュックから薬と水を取り出し、飲ませようとした。
しかし…思うように口に入らない。
頭を支えても、口が開かなければ薬は体内へ入らない。
犬夜叉は何の迷いもなく、薬と水を己の口に含み、かごめの体内へ送った。
<コクッ>
飲み込んだ証しを確認すると、そっと重なり合う唇を離し、そっと、細く温もりを帯びた身体を抱いた。
「…ごめんな…」
その声に気付いたのか、かごめは首を横に振り呟いた。
「いい…よ…」
「…よくねぇよっ!」
「…桔梗と…会えた?」
「…知って…たのか…」
コクと頷くと、かごめは瞳を伏し、返答を待った。
「…会えたよ…」
「よかった…」
こんな状況でも微笑み、他人を想う少女が愛しかった。
犬夜叉はかごめの頭を胸板へと押しつけるとそっと囁いた。
「…何で我慢すんだよ…」
「私…我慢…してないよ…」
「してるだろうがっ!いつも…いつも…ッ…」
初めて声が震えた。
「…私はね…身を…退いているだけよ…」
そして犬夜叉は何も言い返せなかった。
唯抱き締め、彼女の柔らかい髪へと顔を埋め゛かごめ″と幾度も呟いた。
かごめにとって、その甘く優しい声は居心地が良かった。
そして犬夜叉の瞳に溢れる涙。決して流さぬようグッと唇を噛む。
それに気付いたかごめはそっと身体を離し、こわ張る唇へ手を寄せ、その緊張を解いた。
途端、犬夜叉の頬の上を走り出した涙はかごめの手へと落ちた。
「暖かい…涙…」
そっと拭ってやると、犬夜叉に腕を掴まれ、犬夜叉の唇に己の唇を塞がれ言葉を封じられた。
「んん…」
どの位、唇を合わせていただろうか…
やっと離した時には、かごめの熱は微熱へと変わっていた。
「移った…かも…」
「…構わねぇよ…むしろ…移しちまえよ…」
犬夜叉は再びかごめを抱き締め髪を撫でた。
「…本当は…」
「…え?」
「桔梗はいなかったんだ…」
意外な言葉に目を見開いたかごめは犬夜叉を見上げた。
「…いなかった…?」
「あぁ…死魂虫も桔梗をさがしているようだった…」
「…あんたは…辛くない?」
「…辛かねぇよ…」
「嘘吐きは…嫌い…」
「…っえ」
嫌われたくない。
でも本当の事を言ったらかごめは傷付くであろう…
本当の…事…
それは…
「…お前を…かごめを失うほうが…辛い…」
偽りなんてねぇ…
お前を失ったら俺は…
どうしていいのか…わからねぇ…
どうなっちまうのかすら…想像つかねぇんだ。
「お前を失うのが…怖いんだ。」
「…犬夜叉…」
その後二人はそのまま眠り、一夜を過ごした。
翌日、薬草を摘み終えると、二人は微笑み手を握り帰路をゆっくり歩いていった。
また少し互いの距離が縮まった気がした日だった。
<END>
<編集後記>
ひえぇ〜駄文も良いトコです。。。
まだまだ修行中ですッ(>_<)
掲示板などで感想頂けると嬉しいですvv
ここまで読んでくれてありがとうございましたッm(_ _)m