BESIDE YOU









犬夜叉は一人、木の幹に腰掛け、
つい最近まで満月だった半月を眺めていた。


 今回のことでどれだけおれが不甲斐ないのか身にしみた。
 あの時のおれはかごめに護られてばかりで…
 そして願ってしまった以上抑えきれなくなった妖怪の血は
 弥勒とかごめを傷つけた…できることなら…


 忘れたい…忘れてしまいたい…






 




  …忘れたく…ない…










不意に出てきた先ほどとは正反対の意


  おれが変化した時呼び戻してくれた優しい声。

 『半妖のままの犬夜叉が好きなのっ!!』

 そして…初めて触れたあいつの暖かい唇…
 あの口付けでおれは闇の中から一筋の光を見つけた。


犬夜叉が一人で考え込んでいると【呼び戻してくれた人】が声をかけた。


「…犬夜叉っ」

「…かごめ…」

「どうしたの?眉間にシワ寄せちゃって」


かごめは犬夜叉の真似をして眉間にシワを寄せてみせた。
そんな無邪気なかごめに少し頬を緩め笑ってみせた。


「…たんだ……」

「ん…?」

「考えてたんだ…」

「何を?」


ゆっくりと犬夜叉の隣に腰掛けるかごめ。
かごめの甘い香りが犬夜叉の鼻をくすぐる。
かごめは犬夜叉に優しく笑顔を見せ、犬夜叉の話を聞いた。
その笑顔に犬夜叉は顔を赤らめながら口を開いた。


「お前…おれが変化した時…怖くなかったか?」


いつもより低く悲しい声で問う犬夜叉。
そんな犬夜叉を慰めるようにそっとかごめは犬夜叉の肩に頭を乗せ答えた。


「…怖かったよ…」


言葉は主語がないと正しく伝わらない。
あらゆる文法が繋がった時、本当のかごめの答えが出る。
その本当の答えを伝えるため、少し暗くなった犬夜叉に言葉を付け加える。


「犬夜叉が…全部忘れてしまうと思ったら…怖かった…」

「…そんなこと…」


『そんなことない』と言いたかったが実際まともに覚えていることができたのは
最初に変化した時ぐらいだった。


「忘れらる事が…一番怖いの」

「…正直…お前のお陰で戻って来れたんだ…」


犬夜叉なりの感謝の言葉に
かごめは一度瞳を閉じ、深呼吸をしてまた瞳を開いた。




「…犬夜叉は…戻って来てくれたんだよ…」




「え?」


かごめは犬夜叉の大きな手をそっと握り、月を見上げ再び口を開いた。


「思いだしてくれた…私のお陰じゃないよ。犬夜叉自身が戻ってきてくれたんだよ。」

「…でもっ…」

「あの時…犬夜叉一人で戦ってた…。私はそれを少し手助けしただけ。」

「かごめ…」

「…それだけの事よ。」


犬夜叉の手を弄びながら微笑むかごめ。
…と、急に小さな手を大きな手が握りしめた。
いつも一瞬ドキリとする犬夜叉の行為。でもその後の言葉はいつも優しい。


「大丈夫か…腕…」


心配そうに見つめる犬夜叉にかごめは優しく微笑む。


「…大丈夫よ…浅いから」


制服の双方の腕の部分に痛々しく滲んだかごめの赤い血。
その傷に犬夜叉が触れるとかごめは囁いた。


「それにこれは…あんたが心の中で戦っていた証だから」


そして周りの音しか耳に入らなくなった…

今までマイナスにばかり考えていた事実が
かごめによってゼロになり、そしてプラスになる。

暫くの沈黙を断ち切ったのはかごめだった。



「…あんたの方が…怖かったでしょ?」



この言葉をかごめが発した途端、犬夜叉は目の奥が熱くなるのがわかった。
そして視界が滲みだした時、見られまいとかごめを抱きしめた。


「怖く…ねえっ!」


涙混じりの声。震える肩。
かごめはそっと大きな背中に腕を廻した。


「…一人で…戦ってたでしょ?」

「……。」

「怖かったよね…」


まるで子どもをあやすように優しく問いかけるかごめ。
そして、その優しさに少し甘えてみる犬夜叉。


「…怖…かった…」

「もう…大丈夫だからね…」

「かごめ…」


次に変化した時、最後まで覚えていられるようにと
犬夜叉はかごめを強く…強く…そして優しく抱きしめた。
そしてかごめも強く抱き返し、震える犬夜叉に囁いた。






「…私はあんたを…一人にしない」






一番欲しかった言葉が一番好いた人の口から発せられ、
もう止め方を忘れてしまったかのように流れ出る涙。
ただ嬉しくて…こんな事を言ってくれる人がいたことが嬉しくて…
こんな風に自分を抱きしめてくれた事が嬉しくて…
犬夜叉は一晩中涙を流し続けた。暖かい涙を流し続けた。



「…ありがとう…」



小さく聞こえた言葉にかごめは首を横に振った。
そしてお互いにお互いの温もりを感じながら瞳を閉じ、
この出来事を忘れぬよう大切に胸の内へとしまい込んだ。






 かごめ…おれあの時聞こえたんだ…

 心の闇に埋もれていた時…何も聞こえない、見えない所で…お前の声が。



 『ずっと一緒に…いたいよね…』




 なんだよ…そんなの…





 『…あたり前だろ…』



































<END>







<編集後記>

これはずいぶん前に投稿した小説です。
映画のその後を想定してかいたのですがいかがでしょう?
もぉ駄文としか言いようがない作品でした(ならかくな笑)。。