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分娩室
分娩室までの立ち会いは希望していなかったので、母とYASU
は廊下で待機。
フラフラとベッドを降り、陣痛室のすぐとなりにある分娩室に入る。
分娩台を前に、再び陣痛が来て立ち止まったが
看護婦さんに急かされ、頑張ってよじ登った。
足を広げて座り、腰のあたりにある棒に手をかける。
もう既にヘトヘトで、力が出るとは思えなかったが
分娩監視モニターから響く赤ちゃんの鼓動に励まされ、とにかくいきんでみる。
なかなかコツがつかめなくて、陣痛とのタイミングも合わない。しかも痛い。
「痛いです・・」
言っても仕方ないけれど、思わず口をついて出てしまった。
「辛いでしょうけれど、できれば頑張っていきんでみて」と看護婦さん。
・・「できれば」でいいのか。「できなかった」らどうするんだろう。
変に冷静に言葉尻をとらえながら、できるだけいきんでみた。
もう、いつが陣痛なのか、よくわからなくなった。
院長先生が入って来るとすぐ、産道の出口を少し切った。
あらかじめ切り込みをいれておかないと、赤ちゃんが通るときに裂けて、
かえってひどい傷になるらしい。
局所麻酔で、切るときの痛みは感じなかった。
そしていきむ。またいきむ。
先生や看護婦さんが「上手、上手、その調子!」
と言ってくれるのを指標に、だんだんコツが分かってきた。
ボート漕ぎのフィットネスマシンを、全力で引っ張る感じ。
なんだか、赤ちゃんが出てくる感覚が分かったような気がした。
「もう頭が見えてるから、頑張れ!」
先生の言葉に、いつもの300倍くらいの力が出る。
「ヴ、ウーン!」
自分のいきむ声が、怪獣みたいで怖い。きっと、顔も怖いんだろうな。
そんなことを考えていると、赤ちゃんの頭が出かかっているのを感じた。
ここで力を抜いたら、赤ちゃんの頭がくびれちゃう。
妊婦雑誌で読んだ記事を思い出し、最後の力を振り絞る。
ズルッと頭が出きると「もういきんじゃダメ。短息呼吸!」と言われた。
つかんでいた棒を放し、手を前で組んで「ハッハッハッハッ」と息をする。
後はいきまなくても、自然に出てくるのだ。
そして・・・出た!!! ついに出た!!!!
足下で先生が処置をしている。
「・・ヴェギャァァ!」
かなりハスキーな鳴き声。先生が持ち上げて見せてくれる。
目の前には、まるいおちんちんのついた、白くてピンクの生き物が
真っ赤な口を最大限に開けて鳴いていた(泣いていた?)。
ぽんちゃんだ!男の子だ!
嬉しくて嬉しくて、「ワーッ」と叫び、手をたたいた。
午前2時4分の誕生だった。
ぽんたの首には、へその緒が一周巻いていたらしい。
だから苦しくて、胎便をし、羊水が濁ったとのこと。
大変だったんだね。お疲れさま、ぽんた。
後産(胎盤の排出)も、切開部の縫合も、全然痛くなかった。
とにかく幸せで、嬉しくて、ずっとニヤニヤしていた。 |