加納朋子
 1992年「ななつのこ」で作家デビュー。 オムニバス形式というのか、短編かなと思わせてそれらがつながって、または伏線になって、秀逸なラストを迎えるという小説が多いようです。 


「月曜日の水玉模様」 集英社文庫  評価A
 丸の内に勤めるOLの片桐陶子が、満員電車で乗り合わせる萩広海と知り合い、日常のちょっと不思議な事柄について話し合いながら推理する連作短編集。
 私たちも何気なく「あれ? どうして?」と思うことがたまにあると思う。 でも、大抵は謎は解決しないまま忘れてしまうことになる。 それが思いもかけず疑問が氷解したら、とても気持ちいいし、日常は単調で退屈ではないと思えるんじゃないかしら。
 この小説の主人公たちは、わずかなヒントを聞き逃さず有機的に結びつけて謎を解いてしまう。 読んでいる側も気をつけていないと見逃してしまうこともあったりして、日々をだらだらと過ごしていてはいけないなと思ってしまった。 
 それらの1話1話だけでなくて、ストーリーの主軸がしっかりしているので、さわやかだけれど、骨太な小説になっているのだと思った。 2001/5/17


「ささら さや」 幻冬社  評価A
 2001年に出た新作ハードカバーである。  
 最初から最後まで泣きっぱなしだった。 やはり短編連作集で、第1話では新婚の夫が語り手となる。 物語は、ある平凡な日曜日に妻と生まれたての赤ん坊と買い物に出かけ、帰り際に彼が交通事故に遭って死んでしまうところから始まる。 しかし、彼は死んでからも、あの世に行く前に現世でしばらく家族を見守ることができることに気づく。 たまに他人に乗り移ることができて、妻と子のピンチのときには、救いに行ったりもする。 第2話からは、未亡人「サヤ」が主人公となり、田舎町の「ささら市」に越してきて赤ん坊「ユウスケ」との生活、出会う人々やちょっとした事件などが書かれている。 サヤが悲しみながらも、周囲の人に助けられたり成長して、だんだんと心から笑えるようになっていく。
大好きな大好きな夫に先立たれて、生まれたての子供と2人で残されたらと思うと、半年後に我が子の誕生を控えている私としては、その悲しさが伝わってきて泣けて泣けてしかたなかった。 ただ悲しいだけの小説ではないのだけれど、サヤの芯の強さも伝わってくるのだけれど、読後私の夫の帰宅と元気な顔が愛しくてたまらなくなった。 2001/5/31


「螺旋階段のアリス」 文藝春秋  評価B
 ほのぼのとしてとても面白かった。 脱サラした初心者探偵と、自称探偵助手のまるで少女みたいなかわいい安梨沙。 開業してぽつぽつと平凡な仕事がやってくる。 謎めいた美少女の安梨沙が鋭い洞察力を示す。 探偵仁木はいつも心の中で感心するのだが、その2人の雰囲気が暖かくてとてもいいのである。 
 仁木の家族の話や安梨沙の本当の年齢や家族構成などがはっきりとは明かされないのだが、最後はそれが謎となってすっきりするのがまたいい。 読後にさわやかな気分となる1冊である。 '02/6/21


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