松岡 圭祐
  
臨床心理士。 1997年、「催眠」がベストセラー・映画化となる。


「水の通う回路」 幻冬舎  評価A
 
これは面白かった! 松岡氏の作品は全て読んでいて、どれも一気に読める面白さだけれど、これが私のベストである。

 全国で子供が自傷行為など、奇異な行動をとる事件が同時期に多発した。 厚生省の調べでは当事者の子供はみな「黒いコートを着た男に襲われた」と話している。 その子供たちの共通点は大人気のゲーム「アクセラ4」をしたことだった・・・。

 どの登場人物の背景や性格がしっかり描かれていて、またとても人間らしい。 きっとこの作者は職業柄もあるのだろうが、人間が好きなんだろうと思う。 さらに、時代背景もうまく取り入れて生かされているので、読んでいて違和感がない。 メインの人物となるゲーム会社社長・桐生の信念がストーリーを骨太にしているし、伏線にもなっている。 その信念を貫き事件解決に努力するさまは、とても気持ちがいい。 謎の多い社員である津久井の難しい性格や観念的な考え方などで、「生きることの意義」をモチーフにしているのも、物語に深さを増している。 テーマはかなり難しいと思うけれど、うまく使っていて自然に話に溶け込んでいる。 「水の通う回路」という発想は、彼のオリジナルでなくて何かにあるのだろうか。
 事件解決にタイムリミットを設定したり、次から次へと謎が提起されるなどスピード感もあり、エンターテイメントとしては最高の出来じゃないかなと思う。 そして、全ての謎がぴたっと収まる爽快さと気持ちのよい結末。 文句なしの傑作である。


「千里眼 メフィストの逆襲」
「千里眼 岬美由紀」     
小学館文庫  
評価B
 
2冊で1つの話である。 これは、「カウンセラー」のあり方や岬美由紀の心の成長がテーマなのかなと思った。

 北朝鮮の拉致疑惑や2001年9月のテロの話まで盛り込み、小説内で小泉内閣など実名を使い現実と折衷している。 自衛隊や政府の思惑や自衛隊の意義など、この作者は幅広く勉強していて、しかも読んでいて面白いと感じるような説明を施しており、本当にすごいなと思う。

 「催眠」以来、嵯峨俊也がちょっと情けない感じになってしまっていたけれど、この話では彼自身が自分のあり方を見つけ出すなど、安心した。 また、美由紀は慈悲の心はあっても、自分から他人を好きになるということがないスーパーウーマンみたいだったのが、とても人間らしくなり、よかったと思った。

 美由紀については、何でもできすぎて、28年の人生ではつめこみきれない経験をもち、ちょっと神がかっている感じがする。 それに、ノーヘルでバイクに乗り、この若さでメルセデスを愛用し運転もめちゃめちゃうまいなど、ちょっと腹立つこともある。 ネタばれになるけれど、最後にアフガニスタンまで乗り込んで無事に帰ってくるのは、やはり無理があるんじゃないかと思った。
 でも、面白かったよ。 2002/8/1


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