奥田英朗
 

「邪魔」 講談社  評価A
 怖かった。 ホラー的怖さじゃなくて、どんな幸せで平凡な日常だって、人は極悪人にもなるし,、ささやかな幸せなんてあっというまに、なくなってしまうことが。
 34歳で2人の子供を持ち、東京都下にマイホームを買い、パートで家計を助けて平凡に暮らす主婦恭子。 その地域の所轄の刑事久野は、7年前に身ごもった妻を交通事故で亡くしてから、生きていくことに関心をもたなくなっている。 仲間とつるんでオヤジ狩をする17歳の高校生裕輔。 この3人が軸となっている。 ある会社の社屋に放火された事件が発端となり、日常に変化が起こっていく。
 私は裕輔みたいな人間は、だいっきらいだし、生きている価値なんてないと思う。 恭子については、私の10年後が見えるようで読んでいて居心地が悪かった。 久野は、私と同じ年の妻を、それも妊娠中の妻を亡くしているということで、何だか残された彼の人生が悲しかった。
 警察の裏の事情や、土着した企業とやくざとのつながりや取引など、社会の汚さがとても嫌だと思った。 それから、パート待遇についてのデモや中小企業の社長という人物など、興味深かった。 いわゆる活動家グループの信念と打算など、こんな世界もあるのかと思った。 やっぱり私も恭子のように世界が狭いと思うと、また居心地が悪くなった。 夫が放火をしたかもしれないと疑いつつ、無視しつづける恭子について、悪いのは夫の茂則だけれど、夫婦なのにこんなになるまで気づきもせず心情を理解しようとも思わない関係に、嫌悪感を感じた。 刑事の久野は、どんな夫婦関係も築く前に理不尽に奪われてしまい、そして心を病んでしまい、この小説の救いは久野の同僚たちの気持ちかなと思った。 
 後味が少し悪かったけれども、とても深い小説だった。 2001/5/31







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