渡辺容子
「左手に告げるなかれ」で江戸川乱歩賞受賞。
「斃れし者に水を」 講談社文庫 評価B
ストーリーや着眼点はいつも面白いと思う。 主人公の女性も、きびきび生き生きとして大抵素敵で共感がもてる。 しかし、この素敵な主人公はなぜ不倫しているのだろう。 恋人を愛して愛しすぎている女性というのはいいのだけれど、しょうもないおじさんを、家庭すら守れない優柔不断男をこんなに愛しぬいている、という設定が何だか肌に合わないのだ。
この話でも、主人公のシナリオライター藤原真澄が、恋人の行動に疑問をもつことから事件にのめりこむ。 この恋人が糖尿病で入院したら、真澄はなんとボランティアで付添婦となって病院にもぐりこむのだ。
動機はいいとして、真澄が面倒を見ることになった病室505号室の患者たちの個性と秘密など、いろいろ話が絡まっていて面白い。 「糖尿病」もいいポイントになっているし、真澄の先輩付添婦の裏事情なども、驚かせる。 しかし、この先輩付添婦は、「左手に告げるなかれ」の坂東さんに似ているなあ。
高級住宅地って、「マンションに住むのは低所得者層で街の雰囲気が乱れる」と思っている人もいるのですね。 そもそも日当たりいいのにベランダや庭に洗濯物を干せないなんて、住み心地いいとは思えないけれどな。 2002/8/1
「流さるる石のごとく」 集英社 評価A
小説は、作中作の形をとっていて、それがまず目を引く。 「面白そう」と予感させる書き出しである。
主人公の速水圓(はやみ・まどか)は、大富豪の一人娘で医師の妻。 そして、アル中である。 万引き癖まであり、またダイヤに目がない。 夫のことを愛しているのに彼に殺されるという恐怖心があり、また夜な夜な徘徊し逆ナンしたりもする。 こんな理解不能な女性なのだが、つい引かれてしまう妙な魅力があったりする。
物語は彼女の視点で描かれているので、酩酊状態のようなオブラートに包まれたような、実感がともなわないような感じがよくでていると思う。 奇妙な誘拐事件に巻き込まれ、その後さらなるアルコールに依存したり、義母に助けられながらも立ち直っていく。
意外な犯人や綺麗なラストはとてもよかった。 でも、そんなに夫を愛していたのなら、もっといい妻になぜ全然なれなかったのかと思う。 そのへんは描かれているのだけれど、ちょっと最初の方と最後の方で矛盾を感じた。 2002/8/29