その1

おふどうさん

 5歳のときであった。野田阪神にある「おふどうさん」に
連れていってもらった。
小さいころ病弱だったわたしは、からだの故障が多く、
できものなどに悩まされていた。
母はそれを病院ではなく、民間信仰に頼ったようだった。
普通の座敷にそれらしい神棚がしつらえてあるとこで祈ってもらう。
祈祷が終わった後、母はその先生らしいおばさんと何か話をしていた。
私は退屈なので、ひとりで隣の部屋に行った。

そこに懐炉がおいてあった。油を入れかけていたのか、蓋があいていた。
アルミ製のような四角い入れ物が気に入って遊んでいた。
片方だけくちばしのようになっていた。
退屈なときなのでおもちやになったのだ。
 やがて母親の呼ぶ声がして走っていった。
臨時のおもちやはポケットに入れてそのまま帰った。
家に帰ってしまえば懐炉の部品などおもしろくなく、捨ててしまった。

 何日かして、母は「この前おふどうさんに行ったとき,
懐炉で遊んでいたようだが,蓋がなくなっている,
お前が持って帰ったのではないかと,先生が言っている。
そんなことしないよね。」といわれて「うん知らない」とこたえてしまった。
 
こどもは正直だと言われているが,うそをついてしまったのだ。
まずかったと思う。
 記憶は生きる上で大切なもの,でも、神は「わすれる」恵みもあたえておられる。
この記憶は忘れていたほうが良かったのかもしれない。
    
 イレブンです。
                ではまた      99/09/02  

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