その16
井戸水は冷たかったのだ
さて、我輩の記憶の記録、集団疎開第一日目までおはなしいたしました。きようは二日目の朝の出来事です。
「井戸水は冷たかったのだ」
本堂ほか、別館や別室に分かれて寝ることになりましたが、私は本堂で寝ました。
朝、先生の声で起こされ、自分でふとんをかたずけました。先生の案内で、わいわい言いながら顔を洗いに行きました。本堂の奥、左側の部屋が食堂でした。その食堂から土間に下りると台所です。そのまま外へ出ると裏庭です。裏庭といっても2メーターほどしかありません。小川が流れています。小川というより、谷川の延長といったほうがいいかも知れません。なにせ右横は山ですから。
細長い裏庭に井戸がありました。その井戸水を汲んで顔をあらうのです。普段水道の水で生活していた者ばかりですから、めずらしくわいわい言いながらくみ上げ、それぞれの洗面器に入れて顔を洗うのでした。
私は順番を待っている間、わくわくしていました。常々井戸水は冬は暖かく、夏は冷たいのだ。と聞かされていたからです。どんなに温いねんやろ、と興味しんしんだったのです。顔を洗ってみてがっかりしました。「なんや、ひとつもぬくいことあらへん。つめたー」
井戸水にがつかりはしたものの、この朝の雰囲気はほんの少しぬくもりがありました。これが疎開ではなく、キャンプだったら、谷川の流れを見ながら、朝がはじまる。素敵な朝だつたでしょう。
本日はこれまで 3月7日
その17 「やっぱり井戸水はぬくいのだ」 の巻
ホームへ戻る
はるきくんのお部屋へようこそ
おじいちゃんへのご意見、ご感想など暖かいメッセージを
お待ちしています。