その2
ソース屋のおっちゃん
すこし前に、兄とゆっくり話をする機会があった。
思いつくまま自由におしゃべりを楽しんでいたが,
話題が年賀状のことになった。
最近の年賀状は、写真付きだったり,印刷されていたり,
絵がかいてあったり,多様化している。毛筆スタイルは少なくなった。
そんなことを話しているうちに、むかし我が家に来ていた年賀の
中に粋なのがあつたという。
いつも自筆の絵を書いてよこしていた。
現在では珍しくないが,戦前ではめずらしい。
その人は西宮のソース屋さんだ。と兄は言った。
その話を聞いて私は幼児期の出来事を思い出した。
父に、ソース屋のおっちゃんのところに連れていってもらった記憶がある。
断片的な図でしかないが,部屋であぐらをかいて座っている父の
ひざの中に私はすっぽりはまりこんで神妙にしていた。
目の前にお菓子が出されていた。
そのおかしに手を出すでもなく 、緊張気味におとなしくしていた。
おじさんが「やまちゃんそのおかしおいしいよ、食べなさいよ」と声を
かけてくれた。それでもまだ手を出せないで,父の顔を見た。
父は「いいよひとつよばれなさい」と言ってくれた。
やっと安心してたべはじめたのだつた。
夜、踏切待ちをしていて,電車が通過するのを見ていると,
とおい幼児期の記憶の一片がふとよみがえる。
父に手を引かれて踏切待ちをしていたのを。図ははっきりとし
ているのだが、いつごろなのか、どこでなのかが思い出せないでいた。
兄の話を聞いて、「ひょっとしたら、ソース屋のおっちゃんとこへ
行った帰りだつたのかも」とつごうよく結び付けたりした。
兄に聞くまでソース屋が西宮にあったとは知らなかったのである。
兄の説明によれば、このおじさんは、やまちゃんが好きで
可愛がっていたそうだ。
おまえを抱いて写した写真もあったという。
あの時代に,自筆の絵で年賀をかいたり、カメラも持っていたとのこと、
きっとユニークな魅力のある人柄だったのだろう。
父が心安くしていたのも、わたしもソース屋のおっちゃんとこへ
行くのをよろこんでいたのも頷ける気がする。
4つのときと5つのときに行ったのだそうだ。
現在で言う4歳のころの記憶ということになる。
平成の今、我が家に遊びにくる孫たちに、どんな記憶を
うえつけているのだろう。
魅力のある「おじいちゃん」としてお相手したいものである。
ではまた 99/09/02
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