オペラ座の怪人



ジャーン、ジャジャジャジャジャーン、ジャジャン・・・

オークション会場中央に据えられたシャンデリアにスパークがはしり、
大音響に導かれるように、シャンデリアは、ゆらゆらと昇っていきます。


1994年のクリスマス・イブのことです。
シート番号AA01とAA03に、一組の親子が座っていました。

そして大音響!

子供が、「ヒック、ヒック・・・」と泣き始めてしまいました。
次男は、当時5歳。
蝶ネクタイや背中バックリでドレスアップした人ばかりの特別な夜に
ステージに向かって左側中央寄りの最前列に、ちょこんと座っていました。
「シャンデリアが落ちて来るんだよ。」と教えられ、

「あんな、おっきなものが落ちてくる!!!」と恐くなってしまった次男。

思わず父は、お芝居だから落ちてこないと、舞台裏をさらけだしてしまったのでした。

[仮面舞踏会]

その後は御機嫌にすすみ、第二幕の仮面舞踏会のシーンでは、
左手から出てくる出演者達が、小さく「ハロー」と手を振ってくれているのに気付いて
はにかみながら、小さな手を振り返していました。

踊子「メグ」が仮面をかかげるシーンと共に幕が下り、熱狂的なカーテン・コール

そして・・・・・


オーケストラ・ピットが静けさを取り戻すころ、
千六百人の観客も、余韻の温かさを胸に、氷点下のマンハッタンへ消えていきます。

[怪人のマスク]

そんなとき、次男がひとこと。

怪人って、かわいそうなんだね・・・


本物は、たとえ言葉がわからなくても、感動を伝えることが出来るのです!!


 ・   ・   ・   ・   ・   ・   ・   ・


『オペラ座の怪人』は、美しい音楽と豪華な舞台とで、とっても人気のあるミュージカルです。


舞台はパリのオペラ座。その地下に流れる水脈は、実在のものだそうです。
この川面を、小舟を操りながら、歌姫クリスティーンを連れる怪人。
オペラ座の屋上で、青年貴族との愛をデュエットするクリスティーンに気付く怪人。
その合間をぬって繰り広げられる、モーツァルトの喜歌劇にも似たコミカル・タッチ。


10年上演し続けているにもかかわらず、
いぜん、チケット入手の難しいものの一つであることには、驚かされてしまいます。
この間には、当然出演者も入れ替わり、それでも一定レベル以上を保っているのです。
ブロードウェイに対して情熱を燃やすダンサー達の層の厚さに対しても、
怖さにも似た驚きを感じないではいられません。


[WINTER GARDEN]

とはいえ、ニューヨーク・シティー・バレエのプリンシパルだった

Gen-Horiuchiの踊る魔法使いの黒猫は

他のダンサーとは全く異なる素晴らしいものでした。


層の厚さという意味では、主役の歌い手が交替するというシーンに出会ったことがあります。

シティー・オペラの「リゴレット」での出来事でした。
『女心のうた』直前の幕間に、交替のアナウンスが入ったのです。
テナーは、このアリアのために、歌い続けているようなものだと思うのですが、
体調不十分だったオリジナル・キャストに交替した彼は、
最終幕を見事に歌いあげ、満場の拍手を得たのでした。


[リンカーン・センターのクリスマスツリー]

秋になると、リンカーン・センターに、二つのオペラがかけられます。
ニューヨーク・シティー・オペラと、メトロポリタン・オペラです。

どちらにも、良いところがあるのですが、舞台の豪華さ、迫力という意味では、
やっぱり、メトロポリタン・オペラです。

前衛的な舞台創りの増えてきている昨今、
古典的な舞台の好きな方は、早く御覧になった方が良いかも知れません。

ラ・ボエーム」のクリスマス・シーンや「トゥーランドット」の宮殿シーンなど、

『・・・・・!!』

言葉を失ってしまいます。


→Park Avenue