検査
ロンドンの我が家にようやくたどり着いた。「明日、GP(General Practitioner、ファミリードクターのようなもの。)に行ってくる。胸にしこりがあるから...。」とさり気なさを装ってPUDGEに告げる。絶句しているPUDGEを相手に、ハハのものとの違いを説明しつつ、自分の気持ちも落ち着かせる。
GPではドクターの触診。胸だけではなく、脇の下のリンパの方も調べた結果「多分害の無いしこりだろう。」とのこと。しかしハハのこともあり不安だろう、と念のため専門の検査を受けるためのレファーラル(紹介状のようなもの。)を書いてくれる。
指定されたRFホスピタルでは、まずブレストクリニックに行って触診、それからX−レイ部門に行ってウルトラサウンドのスキャン、そして「ニードルテスト」とのことだ。
ブレストクリニックでまず一時間待ち。イギリスのナショナルヘルスサービス(NHS)は医療費がただのかわりに時間がかかるのだ。触診の結果はGPと同じく「多分心配ない。」
それから迷路のような廊下を通ってX−レイ部門に行く。ここは具合の悪い人ばかりではなく、お腹の中のわが子を見るために幸せいっぱいでスキャンに来る人も一緒だ。不安を抱える身としては少し複雑な気分だ。「こっちの用事で来たかったな...」と思ってみてもはじまらない。
愛想のない受付嬢から、ガウンに着替えて廊下のいすで待つように言われる。病院のガウンなのに、綿くずのような物がたくさんついている。「タオルと一緒に洗ったのかな...」などとどうでも良いことを考えながら待った。人の往き来する廊下に座って二時間半、そろそろ職員たちが帰宅し始めた頃、ようやく名前を呼ばれた。
ウルトラサウンドでしこりを見る。素人目には何もわからない。
そして「ニードルテスト」。どんなテストかは知らないがイヤな響きだ。イヤな予感は的中した。麻酔もなしに太い針を刺して、しこりの一部を取り出すのだそうだ。診察台に横になり、両腕を頭の下に入れて覚悟を決める。注射には強い方なので大丈夫だろう。太めの注射針が刺さり、それで終わりかと思いきや、針をワッシワッシと中で動かすではないか!想像もしていなかった痛みに、目に涙がにじむ。ようやく針が抜けホッとしているCHUBにドクターは言った。
「十分採れなかったから、もっと太い針でバイオプシーを採ろう。」
表面上は気丈な風をよそおいつつ、心の中ではハニワ顔だった。「あの痛みは無駄だったの!?」と。
次の針は直径数ミリもありそうな物だったが、今回はさすがに麻酔をしてくれた。バチンッ!バチンッ!と大きな音がして、終了。胸には血がにじんでいた。
げっそりして部屋を出ると、看護婦さんが「よしよし」とばかりに肩を抱いてくれた。「よく頑張ったわね。」という言葉を聞きながら、「そうか、やっぱり私は大変な思いをしたのか。」と再確認し、「みんなにグチってやるー!」と息巻いて家路についた。