ハハとのひとつき

日本には一か月滞在した。

高級ホテルかと見まがうような東京の専門病院で左乳房とリンパの切除手術をし、退院して確実に快復していくハハの姿を見ることができた。

左ウデを動かすのがつらそうだが、病院で習ってきた体操を欠かさず続けるうちに楽になるのだろう。体操はラジオ体操ていどの簡単なものなのに、とても時間がかかる上に大儀そうだ。病院で言われた通り、一日五回もくり返していたら、それだけで一日が終わってしまいそうだ。

「胸に鉄板が入っているみたいよ。」と言うが、なかなか想像できる感覚ではない。

乳房の切除は、体の表面を切り取ることになるので技術的には簡単な手術だと聞いていた。しかし、子供三人を育てて「お役ごめん」となった乳房がなくなって「はい、おしまい」という訳にはいかないようだ。めったなことでは弱音をはかないハハも、「黄金のバックハンドが...」と大好きなテニスに与える影響を心配している。気丈にふるまってはいても不安なのだろう。

そんな中、切除したリンパ節と腫瘍の検査結果が出た。リンパに転移はしていないということで、まずは一安心。しかし、がん細胞の悪性度は高いそうだ。担当の先生のおっしゃる「タチワル」だ。この「タチワル」が私の心にパニックを引き起こした。表面上は平静を装っていたが、この時初めてハハを失う不安に直面した。本当ならば「癌」と聞いた時すぐに不安を感じるのだろうが、いつもゆったりのんびりのCHUBは不安に対する感度ものろいようだ。この不安を自分なりに軽減させるために、天に向かって「チョコレート断ちします!ハハを元気でいさせて下さい!」ととなえた。この願かけは毎回願いをかなえてくれる。単純にも、少し落ち着いた。

この「タチワル」再発のリスクを少しでも減らすために、化学療法を行うことになった。CMFという比較的副作用の軽いものらしいのだが、ハハは「髪」のことをしきりと気にしている。CMFでは髪は薄くなることはあっても、丸々抜けてしまうことはあまりないらしい。メークアップアーティストのPUDGE(CHUBの夫)が「いざとなったら皆がうらやましがるようなウィッグを作ってあげる。」と言うとハハは、「お願いね。」と笑いつつ目には不安がいっぱいだった。普段、何ごとに関しても(今回乳房をなくしたことに関してさえも)サバサバとした人なので、ハハの「髪」へのこだわりは意外だった。髪は女の命、ということか...?

Next

Back

CHUBの記Top


このホームページのホストは GeoCitiesです無料ホームページをどうぞ