セカンドオピニオン

1月15日、セカンドオピニオンをもらうためにRMホスピタルへ向かった。今回もPUDGEが一緒だ。イモウトは一旦帰国した。ロンドンでも有数の裕福なエリア、サウスケンジントンだけあって、町並みが立派だ。ミュージアムやギャラリーが立ち並び、目に入るのは、かの有名なオークションハウス、サザビーズや、いかにも高級そうなワイン専門店だ。見るだけで、少し畏縮しつつも楽しい。

そんな中にそびえ立つ、ウ゛ィクトリア朝風のレンガの建物がRMホスピタルだった。RFホスピタルの四角いコンクリートの暗いイメージとはほど遠い。駐車場にはジャガーが並んでいる。ガラスの回転扉を通って中に入ると、病院とは思えないような明るい受付。カーペット張りの廊下を通ってまずは登録にいく。

そしてマンモグラフィーのためにX-レイ部門へ。待合室ではフィルターコーヒーが湯気をたてている。待っている他の患者さんたちも、癌という病気柄、平均年齢が高いのか、それともリッチな地元からの人が多いのか、履いている靴も質の良いものが多い。「RFでは汚いスニーカー人口が高かったよなぁ、、、。」とぼんやり思う。窓からは教会のとんがり屋根が見える。「これがRFと同じNHSのホスピタルなの?」あまりの違いに、来院の目的もしばし忘れて浮かれてしまう。

笑顔で呼びに来たマンモグラフィー技師の女性と部屋に入り、服を脱ぐ。「あんまり挟む余地ないですよ。」と言うと、「伸ばすのうまいのよ、私。」と笑っている。痛いとウワサに聞くマンモだが、CHUBが鈍感なのか痛みはなかった。そして上半身のレントゲンを撮る。RFホスピタルでは行われなかったものばかりだ。

マンモとレントゲンの結果を持って、いよいよセカンドオピニオンを聞きに外来へいく。担当はMr.S。また「Mr」だ。「Dr」はどうなっているんだろう? 後に聞いたところによると、まず医学生が資格を取って「Dr」となる。そして外科の道に進むと、また「Mr」や「Miss」に戻るのだそうだ。さらに、「Dr」の中でもアカデミックな方面に貢献すると、「Prof」(プロフェッサー)になるらしい。「先生」とひとまとめに呼べる日本がほんの少し懐かしくなった。

さて、外来は待合室がボランティアの人たちが運営するカフェをかねている。紅茶とビスケットでミニティーブレークをしていると、CHUBの番が来た。もう慣れた手順で病院ガウンに着替え、Mr.Sの触診、エコー。マンモで写ったしこりの確認。右側の乳房は異常なし、とのことで一安心。

Mr.Sとブレストケアナース(乳がん専門の看護士)のL、CHUBとPUDGEで輪になって座る。結果は、Miss Rの時と同じ理由で全摘をすすめられた。

「温存手術の後、子供ができたら母乳は出ますか?」に「No.」の答え。

これがCHUBの中で全摘に踏み切る決め手となった。機能を失った乳房をいびつな形で残し、将来再発の不安におびえるよりも、全部取ってしまって少しでも安心したい、そう思った。


ただRFホスピタルと違った点は、RMホスピタルではセンチネルリンパ節生検という新しい術法が実施されていることだった。脇のリンパ節を切除すると、どうしてもむくみや痛みが出てしまう。それを何とかして、リンパ節に転移のない患者のリンパ節を取らずに済ませることはできないだろうか、との研究から生まれた技術である。まず、色素と放射性元素をしこりの周囲に注入し、一定時間後に色素で染色されたリンパ節(センチネル)を摘出し、転移があるかどうかを調べる、というものだ。この方法でいけば、乳腺から癌細胞が最初にたどり着くであろうセンチネルリンパ節(見張り役のリンパ節)を見付けることができ、そこに癌が無ければ残りのリンパ節もクリアーとみなして、切除せずに済む。むくみのリスクを減らせるのはとてもありがたい。ホスピタルのきれいさと、Mr.Sの温かそうな人柄も手伝って、CHUBの心はRMホスピタルに傾いていった。

「手術をこっちでするなら、あさって空きが有るよ。その次は3週間後かな。」あさってといったら17日だ。20日にはチチが仕事でロンドンに来ることになっていた。17日に手術をしたら、チチが来る頃はまだ入院中だ。チチとPUDGEを二人っきりにするのは気が進まなかった。過去に大もめした経歴の持ち主たちだ。イモウトも、RFホスピタルの手術予定に合わせてロンドンに来てくれる事になっていた。その頃にはCHUBは退院してしまっているだろう。皆の予定はめちゃくちゃになるが、思いきって17日に手術をお願いする事にした。2週間後でも3週間後でも、きっと「心の準備」なんてできていないに違いない。同じくらい不安に違いない。それならさっさと終わらせてしまおう!そう決意した。これを機会に、チチとPUDGEも仲良くなれるかもしれない、そんな下心も少しあった。

診察室を出たあと、別の個室に移り、今度はブレストケアナースのLが相談にのってくれた。入院に必要なもの。「コットン100%のパンツは持ってる? それなら手術中にはいても良いわよ。」コットン100%のパンツ? 持ってたかな? 考えるうちにハッと思いついた。「紙パンツならあるけど。」「パーフェクト!」こうして魔のしこり発見日にホテルで購入した紙パンツが日の目を見ることになった。どこで何が役に立つかわからない。「コットン100%でワイヤーの入っていないブラは持ってる? 手術後に必要よ。」この答えはきっぱり「No」だった。貧乳のCHUBにはワイヤーとパッドが必需品なのだ。その他にも、こまごまとした話をし、ホスピタルを出た。

サウスケンジントンはフランス大使館が近く、フランス人が多い。ということは、ケーキがおいしい!ふかふかのロールケーキを買って、砂糖で顔を真っ白にしながら家路についた。

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