その3 【目指せ!栄光の新君主】


「おー、今日”も”いいの当てたねぇ♪」

そう言いながら、満面の笑みを浮かべて少年の肩をポンポンと叩いているのがこの店の主、関ケ原うめ。

この日もまた前田君が挑戦(彼の中では文字通り”戦”にまで発展しているらしい)しに来ていたのですが、引き当てたのは1本のソフト。

「お、でも今回はSSのやつだね。三国志V!」

今日びFCソフトのほうが高値で置いてある店も珍しくないのでやや複雑ですが、それ以上に言いたいことがひとつ。

「…なんで信長の野望じゃなくて三国志なわけ?」

「は?どういうこと??


咄嗟だったので聞かれていることの意味が分からず、小学1年生に説明を促す女子高生。

「…だからさ、名前が関ケ原とか前田とか、それっぽい伏線が張ってあるのに、なんであえて三国志なのかって聞いてるの!」

「あたしが日本史全然ダメだからよ」

「勉強しとけよ!!」


連載3回目にして、関東風ツッコミも板についてきた前田君。
うめの120%マイペースな返答にも高い順応性を見せて的確に繰り出すそれは、まさに職人芸と呼べるレベル。

将来は日本を背負って立つコメディアンになること間違いなしですね!

…ちなみに筆者も三国志好き、かつ日本史がまったくダメなのですが、だからといって、さすがにタイトルを「長安駄菓子屋本舗」とかにはしませんでした。

マニアックなところを突いて「建寧駄菓子屋本舗」とか思いついていたなら、グラッときたかもしれませんが。

「んー、で、今日はどんな話すんのさ?」

半ば諦めた表情で椅子に腰掛けて頬杖しながら待つ、哀愁の漂う小学生に軽くうすら寒いものを感じるうめ。
自分がそうさせている元凶だという意識はカケラほどもないようですが、こういうタイプが一番迷惑ですね。

「んふふー、今日はこれ!ズバリ新君主!」


■新君主/三国志シリーズ■

劉備や曹操など実在した英雄ではなく、自分で作成した武将を君主としてプレーするシステム。
まさにゲームならではの遊び方だが、友人の名前で登録した武将が裏切る様は、ある種の生々しさを感じる。



「筆者は三国志と現実世界、両方で彼女に逃げられたらしいけどね!」

「さ、散々だね…」

「ま、自業自得だしそんなもん放っときゃいいのよ♪」


技術革新が進む現代の日本で、一匹の鬼発見。

「まず、君主ってことは一番偉いのよ。それこそ部下に命令してなーんでもできちゃうわけね。そこで、君だったらどんなこと命令しちゃう?」

うーん、と首をかしげて考え込む少年。

普通の子供の発想なら「お菓子食べ放題」とか「大きな玩具が欲しい」とか、割と身近な欲望を満足させるものが多いでしょう。

年齢を重ねて視野とか知恵が広く深くなっていくと、「金」だとか「地位」だとか要求するようになりますが政治家の皆さんはこれ読んでないでしょうから、ここで皮肉を言っても届かないでしょうね♪

そんなことを言っている間に、何かを思いついたように目を輝かせて飛びあがる前田君。
うめをビシッと指差し、大きな声で叫びます。

「自分専用の部屋を作って、ゲーム全部集めて置く!」

ふむふむ。やはり彼も例に漏れず、お金はかかりますが子供らしい答えを返してきました。
いいですねぇ、スペランカーとかSS版Zガンダム前編が家にある生活。

なんてったって一生遊べるソフトですからね。
(難しすぎてクリアできないから)

石につまづいた程度で死ぬ主人公や、ニュータイプ並の反応のオールドタイプ(例:ライラ大尉)なんて…。

「しかし甘いねえ、まだ甘い。そう、例えるならば蜂蜜漬けにされた砂糖にさらにシロップをかけたような甘さだね!」

考えただけで水が飲みたくなりますが、この女、またも小学生を相手にマジ説教開始です。

そして、自分の考えをストレートに語っただけなのにここまで言われて面白くないのは前田君。

「んじゃあ、あんたが君主だったら何すんだよ!?」

略奪



■略奪■

統治下にある都市の住民から物資を強引に奪い取り、自軍の金・兵糧を補充するコマンド。
当然、民の忠誠度などはガクンと下がってしまうため、これを実行して尚大丈夫なのは、ラオウくらいである。



「鬼か!あんた鬼か!!」

涼しい顔で平然と言ってのけるうめに対し得体の知れぬ恐怖を覚えつつも、抗議する前田君。

「…でもねー、どこの家でもやってることなのよー?」

「嘘つけ!」


さすがに子供でも騙されるか!と言いかける彼の前に、セリフを遮るかの如くボードがトン、と置かれます。

「これ何の写真?」

「…ッ、何って…おこづかい貰ってる…ところ?」


一方では親戚から。もう一方では祖父や祖母から。
さらに他にも祝いの席やら何やらで、おこづかいをゲットしている子供の写真がぺたぺた貼ってあります。

「そう。それで、貰ったお金は自分の物のはずなのに、誰か持っていっちゃう人っていない?すぐ近くに」

「ははっ、そんなのいるわけな…あっ!」


言いかけて、少年の表情が一瞬にして凍りつきます。

それは自らの言葉を完全に否定する瞬間であり、事件の真相に気づいた名探偵の閃きとも似ていました。

あるいはもつれた糸がスルスルとほどけていくような…、長いトンネルを抜けて光が差し込んでくるような…。

つまりいたのです。自分の他にお金を持っていく人物…

お母さんだーーーー!!!

ビンゴ♪

「なくさないようにお母さんが管理しておいてあげる」
「将来のために貯金しておこうね」
「あんたが持ってるとすぐ使うでしょ!ダメ!」


言い方は様々ながら、だいたい『貯金』という名目で臨時収入を最終的に管理下に置くのは母親です。

そしてちょっとご入用になったときにそれを使われてそのまま返ってこなかった、なんて話はよく耳にするものですよね。

「…つまり、今回は”生活に活かす”より前に、むしろ”歴史は繰り返される”の例えを実践する形で使われていたってことなのさ!…そして、母親こそが一家における君主、という新事実のオマケつき!!」

ズガーン!と、頭を鈍器で殴られたような衝撃。
なんとなく説得力のありそうな空気が流れ、思わずギブアップの声が漏れそうになります(?)

「ま、基本的にはお母さんに預けとくのが一番だけど、自分で管理するならせめておこづかい帳をつけるくらいしてからにしないとね。結構大変なんだから」

軽く放心状態が続くも、うめのこの諭すような物言いにハッと何かに気づく前田君。

「分かった!今日はお金の大切さを教えてくれるためにわざとお母さんのことを悪く言ったんだ!?」

「いや、ウチのお母ちゃんが毎年お年玉を略奪していく鬼のような人で、そのあてつけに言っただけよ」


小さな希望、撃沈。
こうして、またも人生の荒波を身体ひとつで受けながら少しずつたくましさを増していく前田君なのであった。

                    −続く−

□今回のうめファイル□
【新君主…というか略奪/三国志シリーズ】

暴君度 ☆☆☆☆☆
母親度 ☆☆☆★★
好感度 ★★★★★

■ここで使え!■
・子供のお年玉と、旦那のボーナスの支給時


逆に言えば、お母さん(君主)が財政を厳しく管理する国(家庭)は安泰ってことですよね!(フォロー)

(文責:鳥乃かず)


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