その9 【ウニ・ザ・トラップ】


天気のわりには肌に当たる風が冷たく感じる、とある日曜日。

普段通り、1週間分ため録りしておいた水戸黄門を心ゆくまで堪能したあと駄菓子屋へと向かう、うめの姿がありました。

「はぁぁ…弥七の風車、なんであんなに命中率高いんだろう。”水戸オリンピック”とかあったら、きっと射的で金メダルわんさか稼いじゃうね!」

そんなことを考えながら音速のスピードでダッシュ。

一種目で一人が取れるメダルの上限は個人戦・団体戦の累計2枚だと思うのですが、どうやって”わんさか”取るつもりなのでしょうか。

ツッコミを入れたらキリがないほどにハイになってる彼女、店に到着すると、すでに前田君が仁王立ちでドンと待ち構えていました。

「遅い!遅い遅い遅い、遅ーい!せっかくこーやって来てあげてんだから、もーちょっと早く来いよなー!」

うめの姿を確認するなり、「ビシッ!」と力いっぱい人差し指を突きつけて不満をこぼす前田君。

「あ、あんたねぇ、なにもあたしじゃなくてもさぁ、おばあちゃんがいるんだからすぐ引いちゃえばいいじゃない…」

「それじゃ本当の意味で勝ったことになんないじゃん!ゴローちゃんのゾルダを倒した王蛇みたいじゃん!」

「わ、わかったわよ。今おばあちゃんと交代するから待ってなさいよ」


そんなこと知るか、と一蹴する選択肢もありましたが、それでは相手が相手だけに泥沼になることは明らか。

それならばお望みどおり、今日も餌食にしてくれるわ!と店番を代わるうめ。

どっちにしろバッドエンド一直線ですか。

手を某CMの福山雅治並にわきわきさせながら、勝負の刻(とき)を今か今かと待つ前田君。

返り討ちを狙う宿敵と目から火花を散らしあいながら、一瞬の呼吸を置いたあと、残像を残しながら一本の紐をぐいっと引き上げます!

(速いッ!?)


以前の彼ならばたっぷり2〜3時間かけて選び抜いた末に玉砕というパターンでしたが、今日は0コンマ数秒の早業!

勝負事で負けがこんだときは、そのイメージや気分を変えるために普段とは別のことをすると、結果的に好転して脱せられるとはよく言いますが、まさか今回は!?

ゴクリと息を飲みながら、勢いよく引き上げられた景品に目をやるうめ。それは…

「はい、ロックマン2大当たり〜♪」

いつもと変わらず、と。

思わず前のめりに倒れてしまいそうになる前田君。
またダメなのか…と力無くつぶやきますが、ふと見ると鏡の中からうめがドンマイドンマイと慰めてくれます。

無論、速攻で叩き割りましたが。

「でもね、そんなに落ち込むほどじゃないってば。ロックマンシリーズは名作揃いだからね。慣れないと難易度は半端じゃないけど」

バブルマンステージのトゲトゲ(触れると一発死)が忌々しいのなんのって!

「…てことで、今日のテーマは『トゲトゲ』に決定!」


■トゲトゲ/ロックマンシリーズ■

体力満タンでも、触れれば一発で死んでしまう罠。
ボスの部屋の上部にもびっしりと設置してあり、戦闘しながらも、同時に微妙なジャンプ加減が要求された。
ガンダムハンマーにも見える。



「素晴らしいっ!…もうあれよね、考えた人はノーベルトラップ賞とか受賞していただきたいわね!」

「ねーよそんな賞!」


相変わらずその場の思いつきだけで話を進めるうめに、教科書通りのお約束のツッコミを入れる前田君。
仲がいいのか悪いのか分かりませんが、息はピッタリ合っています。

「では聞こうじゃない!この優秀にして凶悪な最終防衛兵器…どう使う!?」

ズッギャァァーンッ!と、マンガみたいな効果を入れて真顔で問いかけるうめ。

日曜の昼間からこんなやりとりしていて、端から見れば恥ずかしいことこの上ない状況なのですが、今の2人はそういったものを超越した空間にいるため、まったく
気になりません。

わかりやすく言うと、一休さんと将軍様がとんち合戦をやってるようなもんです。…ん、余計にわかりにくい。

「むむむ…番犬のかわりに、玄関いっぱいに敷き詰めておくってゆーのは!?」

「それじゃ家の人も入れないでしょうよ。却下!」


思いつく限りのアイデアをぶつけていくも、いまいち決定打に欠け、うめをうならせることすらできない前田君。

間髪置かずに「ドリフのコントで上から落とす」などネタを出していきますが、さすがにそう長くはもたず、不本意ながらもギブアップを宣言します。

「ぜぇ、ぜぇ…け、けっこう腕を上げてきたわね…」

一気に攻めきることができず、悔しさはいくらか胸に残りはしましたが、これまでのように簡単に返されるだけではなく呼吸を乱すまでに至ったことに関しては満足感を覚えます。

「…で、今度はそっちの答えを聞こーじゃない」

これで心に余裕ができたのか、お互い落ちつくまで待ってから、小学1年生とは思えないほどの冷静さを醸し出しつつ、うめの答えを促します。

しかし、精神的優位に立ったと思ったのも束の間。
今度は自分が雨アラレのように言葉の矢を射かけられる番になるのでした。

「栗拾いで自分以外の人が拾えないように、そこらに置いておくとか!」

「駐車禁止を破った車のまわりにバラ撒くとか!」

「ウニみたいに養殖するとか!(?)」


自分をはるかに超えるマシンガントークに、はじめはいちいち返答していた前田君も、徐々にそのスピードについていけなくなり、そして最後には屈辱の、本日2度目のギブアップをせざるを得ないのでした。

「んっふっふ、まだまだ修行不足ってところね!」

実力を誇示するかのように腕を組みながら、ニヤリと不敵な笑みを浮かべるうめ。

その顔は、壮絶な乱打戦を制してベルトを守りきったボクサーの様だったといいます。ホントかいな。

(でも、よく考えたら実用性ないものの方が多いような気がする…なんだよ、養殖するって…)

内容は二の次で勢いだけで押し切るという戦法は本来、こっちがやろうとしたことでしたが、逆にやられてしまっては文句をつけることもできません。

「…あ、でもね、今日はあたしも勉強させてもらった部分はあるのよね」

思い出したように言うと、試作と称してやはり作ってあった、トゲトゲを持ち出してくるうめ。

「(やっぱりな…)それはいーけど、何に使うつもり?こないだみたいにお兄さんとこってのは無しで」

一瞬「バレたか」と苦い表情を見せるうめ。しかし、すぐに別の考えが浮かんだらしく、手をポンと叩いて、どこかへ運び出そうと準備を始めました。

「…どこへ持ってくつもり?」

なんとなく答えは読めてはいましたが、当たっていれば止めねばならないため、一応聞いてみる前田君。

「決まってるじゃない、兄ちゃんちがダメっていうから伊達んちの玄関にイヤってほど置いてくるのよ!」

「やめんかぁーーー!!!!」


どうしてこの人はこんな事しか思いつかないんだろう…

そう思いつつ、同時に考えを読めてしまう自分もいずれああなってしまうのではないかと一抹の不安を隠しきれない前田君なのでした。

                    −続く−

□今回のうめファイル□
【トゲトゲ/ロックマンシリーズ】

凶悪度 ☆☆☆☆☆
地雷度 ☆☆☆★★
イガグリ度 ☆☆☆☆★

■ここで使え!■
駐禁の車のまわりは結構使えそうなんだけどなぁ…


ロックマンのボスキャラ募集、4作目あたりまではよくハガキを出してました。全部ボツりましたけどね(笑)

(文責:鳥乃かず)


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