| 出 典 |
日本経済新聞 日本、経済構造改革を急げ |
| 日 付 |
1998年5月24日 |
| 内 容 |
□ピーター・タスカ ●市場は景気対策よりも、経済基盤そのものを、あるいは富を継続的に生み出す構造に変えることを期待している。市場の目は短期的だとよく批判されるが、実は逆であり、非常に中長期的な視野を持っている。 ●公共事業を増やすだけでは、日本社会全体の富の基盤を強くすることはできない。日本にとって本当に必要なものは規制緩和によるソフト面のインフラである。 ●日本が直面しているのは構造的な問題だ。単に最終需要を一時的に刺激して数字が良くなる問題ではなく、本質的で非常に根が深い。これは金の使い方が非効率で、採算性が低いことに起因する。 ●80年代のバブル期において様々な過剰投資があった。人員採用の過剰、不動産投資の過剰、工場の生産設備への過剰投資である。こうした「過剰」は整理しなければならない。 ●低金利政策はもう一つの過剰を生みだす。投資しても収入は増えない事が分かっていても、競争が激しいため投資せざるをえない。こうしたことから、経済が富を生み出す能力はますます低下している。日本経済の行き詰まり感が深刻になる一方であるが、すぐに楽になる処方箋はない。いよいよ今年に入って声までに無かった本格的な不況が始まりそうだ。 ●解決の処方箋 ウルトラCは存在しない。日本が直面する問題をすべて解決しても数年はかかる。ただ間違った治療を施せば、中長期的な問題がむしろ増える可能性もある。公共事業は間違った治療の典型である。 消費者には将来への不安がある。これは単に消費者マインドが低下しているだけではなく合理性がある。今の仕組みでは、昨年の国民負担増は長い増税プロセスの始まりにすぎない。そして何より怖いのは低金利の悪作用である。万一のときに備えて、貯蓄をする場合、利息で年間300万円の収入を確保するためには、5年前の2倍以上が必要である。 それなら金利を上げればいいかというとそうではない。金利が上がれば、耐え切れない中小企業がたくさん出てくる。 それをどう突破できるか。第一のポイントは恒久減税だ。単なる減税は将来の前触れにすぎず、経済政策への不信を強める。恒久減税プラス税制改革が必要だ。その資金源には、政府機能の縮小に加え、税制改革により従来税金をあまり払っていないところから徴収するシステムも必要だ。国際的に高い所得税の最高税率の引き下げも重要だ。これは金持ち優遇ではない。本当の金持ちはどこの国でも税をあまり払っていない。 日本の不況は深刻である一方で、外国企業はどんどん入ってきている。金融、流通を含めて日本市場に参入してくる企業は中長期的な展望で、日本が駄目になるとは思っていない。こうした企業に対して障壁となるのは、以前のような規制ではなく習慣である。特に労使関係において、柔軟なレイオフができないため、採用に慎重になる。ビジネスで失敗しても雇用を維持しなければならないから、新しいビジネスに信用にならざるをえない。 □福川伸次 ●アメリカの対日不信が強まっている。最近の傾向は学者、ジャーナリストの間に日本の社会システムに対する不安感が募っていることだ。彼らは経済政策に対する遅さ、鈍さについていらだちを感じている。 ●16兆円円を超える大きな対策を取りながら円相場、株式相場が反応しなかったことを考えてみる必要がある。それには3つの背景がある。 1.政策立案過程への不信 日本の政策決定のメカニズムは旧態依然としている。外圧対応型の政策形成に終始しており、日本に何が必要か自分で考えているようには見えない。 2.経済構造の改革が伴っていない たとえば、長期的に税制がどうなるか。将来の財政再建を考えたときに、増税策を取るのか。あるいは、小さな政府を目指して、不必要な歳出を抑えていくことを考えていくのか。そこがはっきりしない。長期的な方向が見えてこないことが市場の評価につながっていない。 3.企業文化の停滞 市場は企業文化、経営の在り方が従来と変わらないのではないかと見ている。これまでの横並び意識から、イノベーションを起こして創造性を発揮できるか。企業はコアコンピタンス(中核事業)もって、それを高めていくように持って行けるかどうか。こうしたことが企業の課題だ。 |