| 出 典 |
大前研一著「一人勝ちの経済学」 <<その1>> |
| 発 表 |
1999年8月30日 |
| 内 容 |
◎ビル・ゲイツの偉大さ 彼の特徴は,必ず一度負けることにある。一度負けるものの、その後は敵対する相手まで取り込んで、結局は自分が「一人勝ち」していく・・・マイクロソフトがそのゴールにたどりついた大きな理由の一つは、ゲイツが、常に「みんなが一番使いやすいものを作っていく」「ばら売りはしないで、全体で有機的なシステムを提供する」というシステムをとっていることだ。 みんなが一番使いやすいものを追い求める・・・この姿勢が、技術その他の面で、独善的にならないことにつながっている。たとえば、ネットスケープ社との戦いでも、「なぜあれが売れるのか。うちの製品のほうが絶対にいいのに」という考え方を、ビル・ゲイツは絶対にしない。売れるものがいつも正しいと考えるのである。だから、そこから学んで、それ以上のものを作り出そうとする。必ず、そういう思考をたどるのである。 別の言い方をすれば、意地を張らずに、相手の良さを認めて、それを自分のほうに取り込んでしまうとは、あるときは相手の良さを学んでそれと同等、またはそれ以上のものを作ってしまうことであり、場合によっては相手企業そのものを買収してしまうことである。そういう戦い方をすれば、最初は負けても、やがて相手を乗り越えてしまうのである。 ビル・ゲイツは徳川家康のように、「鳴くまで待つ」経営者のなのである。他社が市場で大きな声で鳴くまで待つ。他社が出してきた優れた商品や技術が、市場に大きな地位を占めるのを、じっくりと見極める。鳴いたら、その時点で、それを殺すか、それとも取り込むか、どちらかを決めるのである。 ビル・ゲイツは、イノベーターではない。新しいものを生み出す発明家ではなく、あくまでも経営者である。優れた経営者というものは、リスクを負わない。リスクは他の誰かに負わせるのだ。そして、選ぶのはユーザーだ。消費者が選択したら、その結果には素直に従う。これが経営におけるビル・ゲイツの姿勢なのである。 こういう経営は、新製品・新技術のトップランナーとしての爆発的な勝利を得る可能性は小さい変わりに、完敗を喫して谷底に突き落とされるという危険も少ない。つまり、「一人勝ち」はするが、「一人負け」する可能性が非常に小さい経営である。おのれの技術や歴史に対するこだわりを抱え込まず、常に何が正しいかを判断する経営である。 ユーザーに判断してもらって、その結果を取り込むことに努力する。そうすれば、ビル・ゲイツの持っている資金や経営資源が、必ず彼を勝利者に推し進めてくれるのである。「一人勝ち」を積み重ねて、現在のような地位を築いてなお、このような姿勢でいるかぎり、もう、ビル・ゲイツが大きく失うという恐れは非常に小さいだろう。 |