| 出 典 |
大前研一著「一人勝ちの経済学」 <<その2>> |
| 発 表 |
1999年8月30日 |
| 内 容 |
◎東京三菱銀行 東京三菱銀行がバブルに苦しまずに済んでいるのは、決して先見性や鑑識眼があったからではない。単にバブルに乗り遅れたからなのである。しかも、国内で乗り遅れた分、東京三菱は、海外に膨大な不良債券を抱え込んでいる。 東京三菱は個人預金者に決して強くない。しかも、法人顧客についても、通信、ソフトといった今後有望な新しい産業分野ではほとんど地盤を築けていない。 ◎ユーロ ユーロにとって、当面は低迷しているのが正解なのである。なぜなら、発足当初から強い通貨になってしまうと、アメリカに眼の敵にされて、こてんぱんに叩かれてしまうからである。アメリカの政治的な動きで、EUあるいはヨーロッパ市場の分断が図られるだろう。だから、ユーロが通貨として実際に流通する2002年までは、ジーッと我慢して低迷していたほうがいいのである。その間に、EUの結束を強めておけばよい。 通貨としてユーロが市場に実際に流通し始めたら、もう後戻りはできない。たとえば、ドイツにとっては、ドイツマルクが市場から1年で回収されてしまうからだ。フランスのフランも消える。ユーロとして生きていくほかないのである。そうなった時点でEUの結束が本当に強ければ、ユーロの見通しは明るいものになるはずである。 ◎中国・香港 香港ドルは、中国返還後50年間は、1ドル=7.8香港ドルで動かないことになっている。香港は7.8香港ドル刷られるたびに、米1ドル相当のハードカレンシー(実質通貨)を積みたてておかなければならない。香港ドルは、米ドルに対して完全にリンクしているために、アジア各国の通貨が大きく切り下がれば、輸出競争力を大きく失うことになる。 実際、香港は今ゆっくり死に向かっている。香港は為替レートを維持するために金利を上げざるをえない。だが、不動産と商業で成り立っている経済だから、金利が12〜13%もの高さになれば、香港自体の経済が成り立たなくなる。高金利が続けば香港経済は疲弊し、いずれ破局に向かう。その過程で大きな企業に破綻が生じれば、それを防衛する必要がある。香港政庁の力だけでは無理だろうから、当然、中国が救済に乗り出さざるをえない。中国は手元の金を使うことなる。だが、人民元では駄目だ。世界に通用するハードカレンシーでなければならない。すると、米国債を売ることになる。大量の米国債が売り出されれば、その値は急落し、それがニューヨーク市場における債券の暴落、株価の暴落につながる。 その意味で、中国の持つ米国債は、核同様の抑止力を持ちうるものだった。 ところが、いまや中国はアメリカにとって恐れる必要のない存在と化している。中国の中央銀行に大量に蓄積されていると思われていたドルが、じつは要人たちの手によって不法に海外に持ち出されているようだ、ということがわかってきた。中国の中央銀行には、もはやアメリカが恐れるほどの外貨準備は残っていない。中国の桶は底が抜けていて、その底のほうから資金は自然とアメリカに戻っていたというのである。 |