さて、独特の世界観を持つフィリップ・K・ディックの本棚です。ご存知の方も多いと思いますが「ブレードランナー」「トータルリコール」の原作者として有名ですね。かなりの変わった経歴の持ち主です。 ホント独特ですね。この独特の世界観はスティーブン・キングに近いものがありますね。誰しも自分にしか分からない言葉というものを持ってると思うんです、たとえば一人で考え事をするときとか。そういった簡単には説明できないような作者自身の言葉を何の説明も無く使ってきます。普通なら理解不能なはずのそんな言葉をすんなりと読まされ納得させてしまう。そんな作家です。たとえば、ガブル、ガブル、ガビッシュ、ってな感じですな。ちなみに火星好き。ほとんどの作品に火星が登場します。作品同士の整合性は無いですが、ほとんどの場合寂れた植民地として登場します。あと、彼が描くのはいつも「人間」です。しかも、スーパーマンみたいなヒーローは出てきません。みんなどこにでもいる普通の人々です。それぞれに悩みを持っていて弱い人間です。むしろダメ人間といってもいいかも知れないです。そんな人々が自分の置かれた悪環境といかに折り合いを付けていくか・・。それはそのまま私たちに当てはまることです。現実は登場人物の希望どおりに解決することは決してないのです。現実世界そのままです。彼はSFを書いてるつもりは無かったのかもしれません・・・。
1955年のディックの処女長編です。くじ引きによって最高権力者が選ばれるという風変わりな世界でのお話です。原題の直訳は「太陽くじ」となってます。はじめ「太陽クイズ」の名で早川SF文庫から出版されていたが改題され出版されました。この話の中では”ボトル”と呼ばれる権力をランダムに移動させるコンピュータがあって、ある日突然権力者はトップの座から転げ落ちます。しかし前権力者は新しい権力者の挑戦をうけそれを退けると権力の座を守ることができます。10年近く前、少年誌で「国民クイズ」ってのがあったけどこれのまねか?
1992年、予知能力者狩りを行うべく、ジョー・チップら反予知能力者が月面に結集した。だが予知能力者側の爆弾で、メンバーの半数が失われる。これを契機に、恐るべき時間退行現象が地球にもたらされた。あらゆるものが退化していく世界で、それを矯正する特効薬は唯一ユービックのみ。その存在をチップに教えたのは、死の瞬間を引き延ばされている半死者エラだった・・・・。ディック作品のなかでおそらく日本人が読んでも理解しやすくなおかつ結末までしっかりしたつくりになっている本書が一番面白いと思われます。私はこれが一番好きですね。ディックの死後感はこんな感じなのかと想像してしまいます。「プレコグ」が登場してますよ・・・。
水不足に苦しむ火星植民地で絶大な権力を振るっている水利労組組合長アーニイ・コット。彼は、国連の大規模な火星再開発に伴う投機で地球の投機家に先を越されてしまった。そこで、途方も無い計画をもくろんだ。時間に対する特殊能力を持っている少年マンフレッドを使って、過去を自分に都合のよいように改変しようというのだ。だが、コットが試みたタイム・トリップには恐ろしい陥穽が・・・・・。ガブル、ガブル、ガビッシュ、です。
1968年突如世界は一変した。ホバート位相と呼ばれる時間逆流現象のために、死者は墓から甦り、正者は若返っては子宮へと回帰するようになったのだ。再生施設の経営者ヘルメスは、ユーディ教の始祖トマス・ピークを墓から掘り出した。再生したピークの去就をめぐって始まる、公安機関<消去局>、狂信的なユーディ教指導者とローマ教会の三つ巴の暗闇に巻き込まれるのも知らずに・・・。
ヒューゴー賞受賞!
アメリカ美術工芸品紹介を経営するチルダンは、通商代表部の田上に平身低頭して商品の説明をしていた。ここサンフランシスコは、現在日本の勢力下にある。第二次大戦が枢軸国側の勝利に終り、いまや日本とドイツの二大国家が世界を支配しているのだ・・。第二次大戦の勝利が逆転した世界を舞台に、現実と虚構の微妙なバランスを緻密な構成と迫真の筆致で書き上げた、1963年度ヒューゴー賞受賞の作品。はっきり言って面白くなかったです。私には難しすぎた。設定は面白いけど何の話かわからなかった。
銀河系の彼方から、謎に包まれた星間実業家パーマー・エルドリッチが新種のドラッグを携えて太陽系に帰還してきた。迫りくる地球滅亡に備えて、不毛の惑星へ強制移住させられた人々にとって、ドラッグは必需品である。彼らはこぞってエルドリッチのドラッグに飛びつくが、幻影に酔いしれる彼らを待っていたのは、死よりも恐ろしい陥穽だった・。ここにも「プレコグ」登場です。彼にとって当然のものなんでしょうな〜。あとパーキー・パットも出てきます。よっぽどバービー人形が嫌いだったんですね。短編「パーキー・パットの日々」を下敷きにこの作品を書いたようですね。
キャンベル記念賞受賞!
三千万の視聴者から愛されるマルチタレントのタヴァナーは、ある朝見知らぬ安ホテルで目覚めた。やがて恐るべき事実が判明した。身分証明書もなくなり、世界の誰も自分のことを覚えてはいない。そればかりか、国家のデータバンクからも彼に関する記録が焼失していたのだ!「存在しない男」となったタヴァナーは、警察から追われながら悪夢の突破口を必死に探し求める・・・・。現実の裏に潜む不条理を描く、難解な作品。これも高い城の男に次ぐ難しい作品ですね。彼の作品に共通しているのは彼が日頃恐怖を感じる対象を作品の対象に選んでいるということだといえるかも知れません。誰しも丸裸で見知らぬ町に放り出されたら恐怖を感じるでしょう、彼の場合そういった恐怖をさらに深く掘り下げて読者に突きつけてきます。この作品もそんなひとつでしょうかね。
第三次大戦後、放射能灰に汚された地球では、生きている動物を所有することが地位の象徴となっていた。人工の電気羊しか持っていないリックは、本物の動物を手に入れるため、火星から逃亡してきた<奴隷>アンドロイド8人の首にかけられた莫大な懸賞金を狙って、決死の狩をはじめた! 「ブレードランナー」の原作。自分の事を人間と感じるならそれは人間じゃないのか。裏を返せば人間を人間たらしめているのは一体なんだ?というのがこのほんの主題かな、と思います。レイチェルは自分のことを人間だと思い込まされていたわけですが、やはりどこか人間と違っていた。他の存在に共感することができないわけです。人間は他の存在に共感できるからこそ電気羊じゃ我慢できないわけです。生き物同士の心の接点が無いからでしょうか。それでこのタイトルになったのかもと考えています。結局アンドロイドは電気羊も本物の羊もどちらにも何も感じないみたいです。でも、そんな人間もいますよね。読み手の人間らしさが問われる作品です。
予知能力者を使う犯罪予防局が設立され、犯罪者はその犯行前に逮捕されるようになった。ところがある日、犯罪予防局長官アンダートンは思いもよらぬものを見た。こともあろうに自分が、見たことも聞いたこともない相手を、来週殺すと予知分析カードに出ていたのだ。何かの陰謀に違いないと考えたアンダートンは、警察に追われながら調査を開始するが・・・。7編の短編集。表題作「マイノリティ・リポート」映画化の声を聞いてかなりたつけどホントに映画化するのか?おなじみのプレコグが登場します。「プレコグ」は、レコグナイズと、プレディクトを合体させたのかと、勝手に想像してますが、どなたか正しい由来をしってたら教えてください。
火星人との戦争で人類はかつての豊かな生活を奪われた。地下シェルターに暮すカリフォルニア地区の住民に残された楽しみといえば、パーキー・パットという女の子の人形と古きよき時代の町の模型を使うシミュレーション・ゲームだけ。そんなある日、オークランド地区ではパットよりずっと成熟した女性人形を使っているという噂が・・・表題作他、処女短編「ウーブ身重く横たわる」他10篇の短編集。ちなみにパットのボーイフレンドはレナード。成熟した人形はコニー・コンパニオン。(^.^)映画「スクリーマー」の原作も本書の中に・・・。
アメリカで行われた国家的なタイム・トラベル実験で、タイム・スリップ中に爆発事故が起きた。ひとつの空間に同時に複数の物体は存在できないという原則を破ってしまったらしい。時間飛行士たちの運命は・・・・表題作。ある日チャールズはガレージにいる父親が二人になっているのに気がついた・・・「父さんに似たもの」など、読むものを現実と非現実のはざまへと引きずり込む、悪夢に満ちた9編。
神が降臨してきたかのような姿だった。真昼の太陽を浴びた黄金像そのままの青年。だが彼は、現人類をはるかにしのぐ能力をもつミュータントだった!スリリングな追跡ドラマの表題作をはじめ、雨の夜に妖精の訪問をうけた男の物語「妖精の王」、「アンドロイドは〜」の原型となった「小さな黒い箱」など7編の短編集。
12歳以下の子供たちが「生後堕胎」の名のもとに殺戮される戦慄の未来を描いた問題作「まだ人間じゃない」異星人による奇妙な侵略を受けた地球の物語「フヌールとの戦い」、広告戦争が極限まで達した騒々しい未来社会を描いた「CM地獄」などの秀作中短編8編。それぞれの話がそのまま「トワイライト・ゾーン」につかえそうな面白い本です。ディックのディックらしさがとても分かりやすいです。
古代ローマ人の生まれ変わりのSF作家がたどる奇妙な人生と、未来を見られる摩訶不思議な目をめぐる物語を描く表題作「シビュラの目」をはじめ、ホワイトハウスに設置されたコンピュータが大統領を務める未来の合衆国で、思いがけず大統領の待機員に任命された男を軽妙に描く「待機員」、本邦初訳の「聖なる争い」と「カンタータ百四十番」、大実業家の死後におこる異様な出来事を描く「宇宙の死者」など全六編を収録
2055年。地球は国連事務総モリナーリをトップに星間戦争の渦中にある。モリナーリは、死してなお蘇り、熱弁を古い人々を鼓舞する最高権力者だった・・・・。ある日、モリナーリの専属担当を要請される人工臓器移植医エリック。そしてエリックの妻キャサリンは、夫との不和から禁断のドラッグJJ180を服用してしまう・・・。時間と空間が交錯しはじめた。
へ生きファッション・デザイナー、らーずは、兵器開発に鎬を削るこの時代の西側陣営の要だった。トランスにより霊感を得、兵器のスケッチを起こす。しかしこの兵器開発も、実際はまったくのまやかしなのだ・・・・。だが、謎のエイリアン衛星が人類を攻撃してきた時、彼は東側のデザイナー、リロと手を組み本物の究極兵器ザップ・ガンのデザインにとりかかる!
星間戦争に敗北した人類は、ヴァグと呼ばれるタイタン生物に支配されていた。人口が激減したこの世界では、一部の特権階級だけが、ヴァグがもたらした<ゲーム>をプレイできた・・自らの人生をかけた<ゲーム>を。ピート・ガーデンも、そうしたプレイーヤーの一人だった。だがある日、対戦相手の大物プレーヤーが殺され・・・・すべての悪夢が始まった。
女友達の自殺をきっかけに、ホースラヴァー・ファットは少しずつ狂い始めた。麻薬に溺れ、彼もまた自殺を試みるが失敗する。だが彼は神に出会った。ピンク色の光線を照射し、彼の頭に情報を送りこんできたのだ。ファットは自分だけの秘密教典を記し始める。さらに彼は自分の幻覚と符合する徴に満ちた映画「ヴァリス」に出会った。ディック自身の神秘体験を投影した晩年の問題作。
保安警察の捜査官がカーニヴァルで出会った奇妙な占い師。”個人の占いお断り”・・・つまり人類の未来だけを占うという、この男がジョーンズだった。一年先までを完璧に予知できる超能力者である。世界政府は彼を即刻監視下に置くが、やがて彼の元に人々は集い、政府を脅かす組織にまで発展する。一方、太陽系には<漂流者>と呼ばれる謎の物体が飛来していた。ディック50年代の名編。
マニーは外宇宙で処女受胎によって生を受けた。母とその夫は、邪悪なゾーンに覆われた地球に彼を送りこむべく外宇宙から帰還する。だがその時事故が起こった。母は死亡、夫は長い冷凍睡眠につき、ただ一人マニーだけが仲間の手で救い出された。そして6年が過ぎ、彼は一人の少女に出会う。彼女に導かれ、自分の正体を知って行くマニー。前作「ヴァリス」を展開させた、新たな物語。
カリフォルニア州に建造された巨大な陽子ビーム偏向装置が突如暴走事故を起こし、八人の男女がまきぞえとなった。その一人、ジャック・ハミルトンは、ほどなく病院で意識を取り戻す。身体には何の異常もなかった。だが・・・・。そこは彼が知っている現実世界とは違った、奇怪な宗教に支配される世界だったのだ。八人はもとの世界に帰る方法を探り始めるが・・・!?高名な傑作初期長編。
人類の中から突然変異的に出現した超人たち、<新人>と<異人>の前に、60億の人間はとりえのない<旧人>として支配されるしかなかった。一介の<旧人>である主人公ニックは、勤務先の上司に連れられ、圧制を打破せんとする地下組織と出会う。彼らの最後の希望は、10年前、外宇宙に救いを求めて地球を後にした英雄プロヴォーニただ一人だった・・・。ディック本邦初訳の雄編。
地球=アルファ星系の星間戦争はとうに終結していた。だが、敵国アルファ系帝国の領地であるその衛星には、地球人の精神疾患者達が今も取り残され、連絡を絶ったまま独自の文化を形成していた。この地を再び地球のものとすべく、地球側は調査部隊を送りこむ。だが独自の思惑をもつCIAは、調査隊に一人の人造人間を潜入させた。著者が精神疾患への関心をもとに取り組んだ名編。
わたしは、P・K・ディック、SF作家である。私の親友ニコラスが、ある日神秘体験を得た。何かが星の彼方から啓示を送って来るという。ニコラスはそれをVALISを呼んだ。おりしも合衆国では新しい大統領が、国家転覆を目論む破壊活動機関の存在を主張、これを粛清せんと動き出した。私も取締官にマークされ・・・・。「ヴァリス」の原型となり、著者の死後刊行された傑作。
ジョン・レノンが死んだ日、エインジェルは愛した人々と過ごした70年代の日々を回想し始めるみんな死んでしまった。ビートルズ狂だった夫ジェフ。彼の父親アーチャー主教の愛人だったキアステン。そして最後には、主教その人も。キリスト教を疑い古代文書の解読にあたっていた彼は、ひとり死海へ趣謎の死を遂げたのだが・・・・「ヴァリス」に始まる死と救済の三部作完結編。
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