メイキング・オブ・超常事典

(by Rei Hani)

 小生このたび、成甲書房より『超常現象大事典』なる少々大それたタイトルを上梓してしまいました。
 今回の作品は「大事典」と銘打つには種々反省すべき点も多いのですが、小生としてはそれなりに力を込めたものとなり、執筆中は目がかすんだり肩が凝ったり風邪をひいたり臨死体験したり(?)、脱稿後は相当のアパシーに陥ったりで、書くことは命を削ることだなどと生意気なことも考えました。実際、一行を書くために関係書を何冊か読むなんてこともやってしまいました。
 ついては、本書発刊の意図など正確にご承知いただくためにも、そのメイキングについてこの場を借りて説明させていただきたいと思います。

1.経緯

  読むまでもなく推察できると思いますが、基礎となったのは超常オタクのデータ・ベースです。要するに百科事典形式で「ア」から「ン」まで50音順に項目を立て、それぞれに簡単な説明を入れたものが基本です。

  これまでこの分野の百科事典と銘打たれたものは、従来の怪しげな書物から無批判で引用するものが多いようだし、ある程度中立的に記述しているものもリン・ピクネットやスペンサー夫妻など各項目の分量を多くして読み物風にしてあるものが多いようですが、小生としては事典ということにこだわり、各項目の記述量を押さえた上で項目数を増やすことを念頭に置いていました。要するにジャポニカ超常現象編のようなもので、似たような試みとしては小学館の『超常科学謎学百科』がありますが、既に絶版ということです。また、『超常科学謎学百科』では、説明が一行しかない項目もいくつかありましたが、こういうのは百科事典として問題だと思います。というわけで、最初は数年かけて納得いくものができたところで自費出版ででも出そうなどと考えておりましたが、もちろんお金が余って使い道に困っているという状況ではないので自分の出費が減るに越したことはないし、まあ協力的なところがあればお願いしてみようくらいの割合軽い気持ちでいくつかの出版社に声をかけてみました。

  そもそも今となっては超常信仰を煽るつもりはないので「たま」とか「徳間」には合わないと思ったし、また三一書房には前書が売れずに迷惑をかけ、しかも担当者が他の出版社に移ったと聞いたので別の出版社を探すつもりでいました。

 最初、百科事典で有名なH社に企画書を送りましたが、これはまったくなしの礫でした。

 続いて、やはり百科事典で有名な○学館に連絡をとったのですが、これが意外にも好意的な反応を得まして、担当者と何度か話し合った結果「ア」行からノンセクションで項目を羅列するのではなくジャンル別にする、各章の冒頭に全体がわかるような概略図を入れる、途中に軽い読み物を入れる、といった最終形態の原型がほぼ整いました。基本的には同社から出している『データ・パル』を踏襲したものです。

 もっとも持ち込みの段階では第5章「聖人と奇跡」、第9章「ニューエイジ運動」、第11章「占い」の項目はなかったのですが、担当の見目麗しき女性が固執するので入れました。しかし第8章の「奇現象と超常学説」はなく、超心理学と心霊研究は合体していたので、全体として9章の構成になっていました。それから何か付録が欲しいと言われたので、とりあえず「世界の偉人と超常現象」を入れました。一項目150ワード(150語)以上という条件が出たのもこのときでした。さらに個人的には、各章間で項目数に大幅なばらつきが出ないよう心がけました。

  具体的な作業としては、まずデータベースに入っている項目のなかから150ワード程度の記述が可能そうな項目を拾い出し、それを分野別に各章に割り当てました。するとだいたい各章100項目程度になったので、1章の項目数を最低100と決めました。この作業中、超心理学と心霊研究を同一章にすると項目数が他の章より大幅に増えてしまうことに気づいたため分断を図りました。
 超心理学の本を見ると超心理学研究の前段階として大抵心霊研究への言及があるのですが(他に魔術とかメスメリズムも)、心霊研究の方面からはライン以降の実験についてはあまり触れてないようです。そこで霊の介在を必要とするかどうかという観点から分断をはかりましたが、無理に分ける必要もなかったかという気もあります。また、この時点での章編成ではバミューダ・トライアングルとかタイム・スリップを入れる場所がないことに気づいたので、第8章を新設しました。新設にあたっては他の各章のなかで移項可能なもの(キリスト異星人説とかナポレオン異星人説とか)を移し、さらに再度データベースを検索して何とか100項目を維持しました(けっこうインチキぽくなりましたが)。

  ところが1998年半ばになって、この担当者が突然退職し、この企画も宙に浮いてしまったのです。百科事典の本家ということで選んだのでそれなりに残念ではありましたが、本来もっと時間をかけるつもりだったし、自費出版も念頭に置いていたので、それほどショックでもなく、また次の出版社を探そうかと思う程度でした。

  1998年秋、たまたま読んだ『トンデモ予言者大集合』のKKに手紙を書いたところ、担当がたまたま三一書房で小生の担当をした人物だったため、あっさり採用されてしまいました。

 ところがこの担当者が例の三一騒動の結果三一に復職し、この企画も一緒に三一に移ってしまったのです。そこで三一での出版ということで話が進んでいたのですが、今度は三一の内部事情からまたしてもこの担当者が三一を離れることになってしまいました。その結果1999年4月の脱稿からかなり時間が経ってしまったのですが、このたび、やっと成甲書房より発刊していただくこととなりました。

 まったく、企画にふさわしい流転の運命をたどった作品と言えましょう。

2.構成

  本体は「第1章:UFO」から「第11章:占い」までの11章構成で、付録として「世界の偉人と超常現象」を付け、各章の冒頭にはわかったようなわからないような解説を入れました。これは○学館の段階で担当者から、各章の冒頭に全体像がわかるような図表を入れて欲しいという要望があったのを発展させたもので、章によっては相関図や図表などを付けました。また軽い読み物として各章に3から4のコラムを入れました。

  付録に付けた「世界の偉人と超常現象」は、○学館の担当者に付録を幾つか付けたいと言われて考えたのですが、分量が増えたので一時は独立した1章とすることも考えました。しかし項目数が増えてしまい、一項目150ワードで独立させると分量の上で他の章とのバランスを大幅に失することや、偉人としての記述と超常関係者としての記述は自ずから異なってくるためどうしても他章との重複が生じることなどから、1項目の記述量を減らして付録としました。この項目は、関連書で有名人の名が出てきたり、伝記を読んでて変な話が出てきたらチェックしてただけなので、記述にあたってはその功績から生没年まで改めて百科事典でチェックしたつもりです。もっともイエイツが「黄金の夜明け」のリーダーであったという話は小生の持っている1968年版のブリタニカにはないし、三島由紀夫が日本空飛ぶ円盤研究会のメンバーだったなんて話は大方の三島研究書には載ってないようです(祖母が生長の家の信者だったというのはたいてい出ているようです)。

 ちなみに今回採用した偉人の定義は、原則としてジャポニカとかブリタニカといった普通の百科事典にまっとうな業績を上げたとして名前が載っている人です。従ってアニー・ベザントなんかも一応偉人に入りますが、楢崎皐月や木村鷹太郎は残念ながら発見できませんでした。この原則を貫くと秋山真之とか木村彦太郎なんかは偉人と言えないのですが、一方はかの『坂の上の雲』の主役でもあり、他方は実業界からの代表ということで敢えて採用しました。なお、偉人と宗教との関わりは、ウエズレーなど本人が宗教家ということで百科事典に載っている場合以外(つまり単なる信者の場合)は無視しました。

3.内容

  本書は基本的には百科事典のつもりです。しかし各項目毎の参考文献の記述がないとか、英語表記や学名がないなど不備な点が多くあることは認めざるをえません。理想的には必要にして十分な記述がなされるべきなのですが、なにしろ広大な宇宙に匹敵する広がりを持つ世界です。しかも無限に広がる大宇宙には生まれてくる星もあれば死んでいく星もありますが、超常世界では死んでいくものが非常に少ないようです。しかも死んだと思っていた話が突然蘇ったりします。だいたいアカデミー賞女優のシャーリー・マクレーンやナザレのイエスなんかと猿人オリバーを同じアングルで論じようというのですから考えて見れば相当滅茶苦茶な話です(もっとも遺伝子配列で比べると両者は2%も違わないらしいですが)。というわけで、今回は結局浅く広くという感じになりました。

  各項目の分量についても重要度に応じた記述量が望ましいのですが、それも手持ちでじっさいに参照できる資料からどの程度拾えるかということでかなり制限されてしまいました。

  記述に当たっては一応手許の関連書をチェックしました。百科事典ということにこだわったので、各章冒頭の解説とコラムを除いて独自の評価はあまりありません。本文の記述の大部分は他の資料に依存しています。本当はと学会系統の出版物のように参考書は全部挙げたかったのですが、資料が三カ所(シドニー、千葉、田舎)に分裂しており、基本となったデータベースにはいちいち参考資料を記入してなかった上、参考書の書名を挙げるだけで『精神世界の本一覧』のようになって大幅にページを裂きそうなので巻末に主要なものを挙げるに留めました。またベロフの『超心理学史』なんかは脱稿時点で読んでなかったので実際にはあまり活用できなかったのですが、やはり傑作なので書名を挙げました。

 本書作成中にも次々に良書が出版されましたが、1999年3月はじめの脱稿の時点で切りました。でも脱稿から印刷までに2年もかかってしまったので、校正の段階でとりこめないでもなかったようです。

 基本的には中立的な内容を心がけました。ここで言う中立とは、超常現象を頭ごなしに否定するのでもなく、本当は怪しい話をさも真実のように述べることもしないということです。とはいってもやはり作者の視点というフィルターは通さざるを得ませんし、ほとんどの事例について完全否定の否定論から全面肯定のとんでも学説を両極端としてその中間に勝手気ままな持論が無数に展開されている状況では、それらすべてを盛り込むことはまず不可能だし(できたとしても別書に譲るべきでしょう)、やはり手許にあって確認可能な資料の記述に引っ張られたきらいはあります。ただ、合理的な説明が十分つく事例にはそうした説を記述するようにしました。ビリーバーの方々など読んでがっかりする人もいるでしょう。

 他方、魔術とか占いについては、基本的に怪しい話だということを前提に書いており、それぞれの項目では否定的な表現を用いてないこともあります。安倍晴明が式神を使った話を否定していないからと言って無条件で信じているわけではありません。各種占いの方式について説明しているからといってそれらが当たるかどうかは保証の限りではありません。大予言編などはむしろ笑っていただきたいと思っております。このあたりは各章の冒頭解説をしっかり読んでいただければわかると思うのですが、前2冊の経験からこの辺りまで察してくれる読者はむしろ少ないのではないかという危惧もあります。また小生の勉強不足から、すでに否定されている話を真実のように書いた部分もあるかもしれません。

 項目選定については、既に述べたように150ワードの記述ができるということを最初の基準にしました。それから、各章間のバランスをあまり失さないように心がけました。そこで、この150ワードの記述ができないために外したものとか、ある章の項目数が多くなりすぎるので削ったところもあります。他方、小生の知識不足のため十分な記述ができそうにないにもかかわらず、有名なのでやはり入れざるを得ないとして入れたものも若干あります。

 他に意図的に外した項目として妖怪の類があります。妖怪事典のようなものが既に何冊も出ているためです。ポポバワについては日本でほとんど知られていないようなのでむしろ紹介の意味で入れることにしました。黒犬についても同様ですが、これらは未確認動物よりもむしろ奇現象の方がよかったかとも思っております。

 日本の「と」系統の人たち、新興宗教関係者は大幅に省きました。やはり弘文堂の『新宗教辞典』てのがあるし、と学会が頑張ってるので、結局そうした記述の受け売りにしかならないと思うのと、こうした人たちを入れると分量が大幅に増えてしまうためです。日本の占い師の類も大予言及び占いで言及した若干名にとどめました。水野南北も本当は入れたかったのですが、これは、執筆時に手許に十分な資料がなかったために諦めました。

  UFOについては毎年のように多くの事件が発生しており、そのすべてについて十分な情報を得ることはとうてい小生の能力の及ぶところではないので、ある程度人口に膾炙しているものに限りました。コニストン事件とかスピッツベルゲン事件など資料や小生の知識の問題、他の章との分量の関係などから外したものもけっこうあります。それでもUFO編がもっとも項目数が多くなりました。

 項目の選定については、正直言ってつっこまれると答に窮するものも多いです。
 五島勉が入ってて黒沼健や南山宏がないのはなぜだ、と問い詰められると、やはりしかるべき場所が確保できなかったとしか言えません。

 用語については、日本で一般的と思われる記述に従うことにしました。つまり一般の新聞や週刊誌の表記法です。何を特定しているかがわかればよいということで、今回は特に表記にはこだわらず、「ヴァ」行も「バ」で統一しました。もちろん「ヴァ」でも間違いではないし、BとVの音を分ける意味では有益なので、次回(もしあれば)は検討したいと思います。地名とか人名もゲーテとかカイロとか一般に通用しているものを採用しました。基本的には他の日本語の百科事典の記述です。ただしイスラム教の創始者については、最近研究者の間ではムハンマドの方が一般的なのでこれを採用しました。「諸世紀」についても、この名称でノストラダムスの予言書ということがまずまちがいなく判るので採用しました(五島勉の影響は大きい)。もっとも最近では「諸世紀」が誤訳ということは広く知られてきたので、次回は考え直したいと思います。またこの世界では最初に日本に照会した人の表記がそのまままかりとおることが多いし、出版物によって表記が異なったり(時には事件の日付も)するので最終的にはえいやと決めたものもあります。聖書関係は「エリコ」以外は日本聖書協会の口語訳聖書に従いました。

4.反省と課題

  正直言って本書が決定版というつもりは毛頭ありません。超常世界はあまりにも広大で、一冊の書物に押し込めることなど到底不可能だと思うし、反省点もあります。しかし小生としてはそれなりに力を入れたものになりました。各章のバランスとか、様々な配慮から外した項目もありますが、よく知らないのに入れた項目もあります(^^;)。というわけで、かなり常軌を逸したものを作ってしまったという一種の満足感はあります。とりあえず本書の出版により、小生としては人生の宿願の一つを果たすことができました。本書がきっかけで一層の議論が盛り上がれば幸いです。次回があるかどうかわかりませんが、現世の肉体を最終的に離れる直前くらいに、小生としての最終回答編を出せれば今生に思い残すことはないでしょう。

 ただもし次回があれば一層常軌を逸したものにすべく以下の諸点についてさらに検討したいと思います。

(1)項目数

  今回の総項目数は1177です(付録を除く)。日本で出てるこの分野での「事典」と比べると数の上では劣るものではありませんが、やはり広大な超常世界を網羅するには不十分でしょう。分量としては処女作の『新千一夜物語』の3倍以上なのですが、事典という形で組んでみると以外に少ないという印象を受けました。項目数、記述量とも増やす必要を感じてます。また、特定項目の記述量は、かならずしも重要度には比例していません。もっとも、世界各地の人類にチャネリングしてくる宇宙存在や世界各地のチャネラーの一人一人について独立項目を設けて記述するのもどうかという気がするし(自称チャネラーまで含めると大変な量になります)、何冊も本が書かれている事項についてはむしろどれを削るかという方が重要でしょう。

(2)参考書の紹介、英語表記

 次回は各項目毎に英語表記を付け、参考文献も項目毎に整理したいと思います。本ホームページではこの点を意識してます。

  できれば各項目について賛否両面からの記述を参考にすることが望ましいのですが、結局特定資料の記述をほぼそのまま引いてしまった項目もいくつかできてしまいました。アトランティスなんかは本来プラトンをもう一度(厳密に言えば原書で)読み返すのがスジなのでしょうが、結局安易な孫引きに頼ってしまいました。ただ、ときどき政治関係とか紀行文とか全然関係なさそうな書物にぽつんとこの手の話が載ってたりするので、そうした書物をすべて挙げるとすると『精神世界の本一覧』を上回る恐ろしいリストになりそうです。

(3)図版

 図版は、本人が各地で撮影したものに加え、手持ちの資料から採用しても問題になりそうにないものを使いました。もちろん出版社と相談の上ですが、やはり学研のように豊富な図版を手持ちで持っているところの方がこの点では強いということを実感しました。次回はもっと良質なものを増やしたいと思います。また海外居住の身でもあり、図版のチェックについて細かいところまで監督しきれなかった面もあります。

(4)妖怪の扱い

 妖怪の類とか宗教団体については、日本でもいくつか百科事典めいたものが出ているので、今回は最低限にとどめました。天狗とか河童とかを未確認動物で記述することもできたのでしょうが(異星人説もどこかにありましたね)、やはり一般に架空の動物と考えられているものということで最終的には外しました。他方狒狒みたいに、じつは未確認動物ではないかと思われる妖怪もいるし、ハクビシンのような例もあるので、次回はこうした連中についても入れた方が良いかとも考えてます。本ページに妖怪ランドを設けたのは、今回事典に入れなかった反動もあるかもしれません。

(5)と系統の人、カルト

 今回麻原彰晃以下何人かのカルト教祖やその教団に言及してますが、一部を除いて彼らのパフォーマンスに超常的要素はないと思ってます。もちろん新興宗教団体教祖のなかには、無視できないような能力を発揮したという逸話も伝わっていますが、大部分の教祖(つまり詐欺師かキ印の人です)たちは本来の超常現象の事典の対象にはならないと思います。しかし超常現象に関わる社会現象という意味では多少関連が出てこざるを得ないので、ニューエイジ運動と大予言で何人かとりあげました。次回はこのあたりを明確にした上で記述を増やそうかと思ってます。ただ下手にこうした人達をとりあげると、デモをかけられたり、白紙ファックスや無言電話を送られたり、時にはサリンやVXをまかれたりするので、寿命が尽きる寸前くらいのほうがよいかと思ってます。ただ小生としてはカルトに属する信者に生き方を指南する気も、カルト批判をして社会に貢献しようという気も(もちろん世直しをする気も)ないので、自分のやってることは正しいと勘違いしている人であっても社会(それに小生自身)に危害を加えない限りは勝手にやって下さいと思ってます。

(6)ニューエイジ運動の定義

 今回は「第9章:ニューエイジ運動」にヒーリングやカルト、チャネリングなどのアイテムを含めました。9章の冒頭解説にも書きましたが小生の理解では、基本的にニューエイジ運動とは春分点の水瓶座への移動に伴って新時代が来るという信仰をベースにしたものであり(その背後には千年王国思想も見えますが)、その意味ではヒーリングやチャネリングは必ずしもこの信仰の上にしか成立しないものではありません。この辺りをどう整理するかは今後の課題です。でも今回ニューエイジに含めたアイテムにはこうした理論も歴史的理解もなく取り込まれているものが多いようです。

(7)日本語表記の問題

  日本語表記については、一般の出版物と学術的な文書とで表記の異なるものがいくつかあります。今回は一般の表記に合わせましたが、次回は少し検討してみたいと思います。ただ個人的にはヴァ行の表記は好みません。

 また、一般的な百科事典に載ってない人名は、本来原音の発音をチェックすべきなのでしょうがほとんどの事例は従来の関係書の記述を参考にしてます。英名が安易なローマ字読みになっているのは、たいていそうした資料から拝借したものです。

(8)フィクション・文芸との関係

  今回は明確にフィクションと銘打たれているものは外しましたが、一部で実話として引用されるフィクションについては何カ所かで指摘してます(モンスの天使とか)。他方、この世界にはフィクションでありながら実話と銘打っている話は多いし、「未知との遭遇」とか「宇宙誘拐」などの映画も後の事件にけっこう影響しているらしいし、悪魔研究はミルトンの失楽園はじめ文芸作品とかなり重なっている部分もあるし、ダイアン・フォーチュンは作家を名乗ってるし、ユイスマンスやアーサー・マッケン、平井和正や井沢元彦などなど妖しい世界に入り込んでる作家はけっこういるので、フィクションだからというだけで外してしまうのもどうかと考えてます。個人的にはフランケンシュタインの怪物とかドラキュラとかは、本当は1項目立てたかったです。ドラキュラには第4章の吸血鬼で言及しましたが、フランケンシュタインの怪物は場所がとれませんでした。第4章に「人造人間の系譜」というコラムを入れてゴーレムやタロス、西行の反魂(長谷雄草紙とかピグマリオンなんてのもありましたね)とかと一緒に入れることも考えましたが結局外しました(これはメルマガで採用しました)。ただあまり広げるとウルトラ・シリーズや仮面ライダー・シリーズの怪獣や怪人はどうするという話になってしまいます(仮面ライダーにしっかりオオカミオトコも出てきたし、ストロンガーのデルザー軍団は西洋妖怪の子孫らしいし)。少なくとも未確認動物以外の怪獣の事典を作るつもりはありません(もう既にたくさん出てるし)。

(9)超自然と超常の区別について

 最後になって、「超自然」と「超常」の峻別がないことに気づきました。書名は『超常現象大事典』ですが、あとがきは「超自然宣言」です。このタイトルはゴロの問題もあったのですが、本文中でも両者はしばしば混同されてます。超常(Paranormal)と超自然(Supernatural)は、かなり重なる部分がありますが厳密には異なる概念でしょう。この辺りはUFO搭乗員をソーサリアンと言ったりエーテリアンと言ったりするのと同様、世界観の相違に行き着くのかもしれませんが、日本語の字義に忠実に考えると悪魔などは超自然的存在と言えますが、不思議な偶然の一致なんかは超常ではあっても超自然ではないでしょう。

5.最後に

 というわけで、いろいろと欠点もあるかもしれませんが、もし一冊(あるいはそれ以上でも)御購入いただき、少しでもお楽しみいただければ、作者としてこれ以上嬉しいことはありません。できましたらお近くの図書館にも購入希望を出された上、お知り合いにも宣伝してくだされば幸いです。お近くの本屋にない場合は羽仁礼著『超常現象大事典』(成甲書房)ということでご注文ください。定価3000円です。
羽仁礼