転送台へ!

スタートレック・ノベライゼーション

 スタートレックもご多分に漏れず数多くの小説が存在しています。ここでは邦訳されている一部の作品を紹介します。
 テレビシリーズ(劇場版)の原作やノベライゼーションには☆マークをつけています。
 たまには違った彼らをみてみましょう。 
 
TOS
惑星パトリアの抗争 過去から来た息子
    TNG
奴隷惑星メガラ ファーポイントでの遭遇 ハムリンの子供たち  エンタープライズ狂騒曲  エンタープライズの面影 

奴隷惑星メガラ奴隷惑星メガラ(DEBTOR'S PLANET)

 キャストは新スタートレックの面々です。
 過去十年間のうちにフェレンギ人の手により急速に工業化を遂げた惑星メガラ。その秘密を探るべくエンタープライズは調査に向かう。果たしてその秘密とは……?
 ここで登場する連邦大使は、TNGをご覧になっていた方ならばご存じ、あのオッフェンハウス!! そう、データが拾ってきたあの嫌味な冷凍人間なのです。日本語版では小川真司氏が実に憎たらしい演技を披露してくれました。
 さてこのオッフェンハウス、前世(!?)はビジネスマンだったのですが、そのおかげで駆け引きに関しては24世紀の人間では最もくわせものの人物となっております。相手は、日本のビジネスマンをモデルとしたというあのフェレンギ。そしてエンタープライズの指揮官は最も巧みな外交手腕を持つ艦長、ジャン=ルーク・ピカード大佐であります。
 ここまで書けばおわかりと思いますが、本作は全編、虚虚実実の駆け引きが中心となっております。そこに更に登場するのが、陰謀好きなカーデシア人……と、それだけでも期待させられるじゃないですか。
 ストーリー自体は非常にわかりやすく、シンプルな作りになっていますが、派手な宇宙戦闘などを期待された方には少し物足りないかも知れません。しかし艦長のあの狸っぷりを愛していらっしゃる方々には、おすすめできる作品です。

ファーポイントでの遭遇ファーポイントでの遭遇(ENCOUNT AT FARPOINT)

 記念すべき新シリーズ第一作のノベライゼーションです。日本ではパイロット版として『未知への飛翔』などの名前で放映されました。
 大筋のストーリーにさしたる変化はありません。バンディ人が建設したファーポイント基地。設備も充実し、連邦への加入意欲も十分なのだが、これほど短期間に、これほど充実した設備を建設するほどの技術力をバンディ人は持ち合わせていない。エンタープライズの使命はファーポイント基地建設の秘密と、バンディ人の連邦加盟資格を調査することにある……
 パイロット版だけあり、個々の登場人物が生き生きと描かれており、スタートレックのテーマである『未知との遭遇』という点でもQの存在をはじめとして十分納得のいく作品ではありましたが、小説では更に個々の人物をしっかりと描き込んでいます。ピカードは勿論のこと、ライカーやデータのキャラクターは特にしっかりと描き込まれています。特に注目していただきたいのは、ボーンズこと我らが医療部提督レナード・マッコイの登場シーンが長い! オールドファンは、必見です。ボーンズがその後どう暮らしていたのかが丹念に(これでもかと!)描かれています。
 TNGの入門書としては、最適かも知れませんね。

ハムリンの子供たちハムリンの子供たち(THE CHILDREN OF HAMLIN)

 謎の異星人がてんこ盛りの本作。タイトルのハムリン、とは50年前にコライー人によって入植者を虐殺された連邦の植民星。そのコライー人が連邦航宙艦フェレルを襲撃した。エンタープライズは入植者を輸送する任務を帯びていたが急遽、フェレル救出の任務に就く。ところが救出した乗組員の中にいた連邦特命大使を名乗るアンドルー・ディーラーから、意外な話を聞かされる。コライーの船には、今なお囚われたハムリンの遺児たちが乗り込んでいるというのだ。ピカードらはハムリンの子供たちを救出するべく、コライーの船の追跡を始める……
 本作は、あとがきにもあるように価値基準の違う異文化との接触をいかに行うかがテーマとなっています。無論これを字面通りSFの一シチュエーションとして捉えることも可能ですが、このことは国家と国家、ひいては個人と個人のコミュニケーションの難しさをも暗示しています。重いテーマをSFというシチュエーションでくるんでみせる手法はいわばこのシリーズのお家芸ですが、本作でもその手腕を発揮しています。
 コライー人の設定もまた興味深い物です。あえてここでは触れません。ご自分の目でどうぞお確かめ下さい。
 いかにもスタートレックらしい本作品。出来れば映像化して欲しい物ですね。

惑星パトリアの抗争惑星パトリアの抗争(THE PATRIAN TRANSGRESSION)

 TOSシリーズの作品です。主人公は当然J・T・カーク。それにしてもこの人たち一体どれだけ冒険してるんだろう(^^;
 過去20年間に急速な発展を遂げた惑星パトリア。新たな宇宙連邦加盟国として有力な候補となったパトリアであるが、クリンゴンもまたこの新たな獲物に目を付けた。エンタープライズはクリンゴンに機先を制しパトリアを連邦に加入させるべく現地に向かう。しかしパトリアは、政府と反体制派テロリストとの血で血を洗う応酬で、混迷の極みにあった……
 例によって、我らがカーク艦長は肉弾戦が好きです。たぶんフェイザーを持っていても、殴り合いを始めます。この辺りのテイストがいかにも旧シリーズらしく、読む者を『ああ、これはTOSのシリーズなんだ』と安心させてくれたりもします。
 個人的に、映画の『エイリアン・ネイション』を思い出してしまうのですが、それはおそらく『男と男の友情』が熱く語られているからでしょう。これは旧シリーズに一貫して流れているものですが、ジーン・ロッデンベリーが作品中に恋愛感情などを持ち込んで主題の焦点をぼかしてしまうことを恐れたからかも知れません。
 本作は艦隊戦こそないものの、ゲリラ的な地上戦が繰り返し展開し、なかなか飽きさせない作りとなっています。エンタープライズの活躍を期待した方はちょっと物足りないかも知れませんが、小道具に関しても『ディフレクター板ってこういう使い方もあるんだ』などとひねりの利いたところを見せてくれ、SFとしても十分楽しませてくれます。やっぱり、小道具は上手く使わないとねぇ。
 冒険活劇がお好きな方にお薦めです。(キャプテン・フューチャーとかね)

エンタープライズ狂騒曲エンタープライズ狂(Q−IN−LAW)

 TNGシリーズ中、最強といえば、誰でしょう。Q? そうですね。ではもう一人挙げるとしたら? ボーグ? それも悪くない。ロア? あるある。結晶生命体? ロミュラン? クリンゴン? え? 白々しいって? 写真を見れば、わかるって?
 そう。ラクサナ・トロイです。
 舞台は宇宙。航宙民族ティザリン人の二つの名家が結婚する。我らがエンタープライズは、この式場に選ばれたのだ! 外交的にも意味深いこの結婚式に、ここぞとばかりに現れるのはそう、ラクサナ・トロイ! そして何故かこんなおり、呼ばれもせんのに必ず現れる奴がいる。そう、ご存じQ!
 ここまでご覧になれば、おわかりですね。そう、本作はコメディです。
 しかもとびきり上等の。
 TNGを知り、ラクサナを知り、Qを知ってこの本を読まなければ、嘘です。
 ではただのコメディかというとさにあらず、米国製のコメディに通底する「愛」がテーマです。では単に愛を唱える作品かというと、そこにQの存在がさりげなく(そしてやや押しつけがましく)影を落とします。
「ブラボー! このたわごとをどんなに正当化しようと、結局、人間の愛の概念など全くのごまかしだという単純な事実に行き着くだけだ」
 とまあ、こんな調子です。
 Qはまた、愛が連邦の唱える最上の概念であるとするならば矛盾があるのではないかとも指摘します。愛し合い、結ばれるのが正しいのならば、艦長はどうだ? ライカーは? トロイは? ラ=フォージュは?
 愛情とは何なのか。また愛するという行為に一定の規範は存在するのか。なーんてことを考えさせる前に、きっちり笑わせてくれます。
 ラストの活劇(!?)は、圧巻!(笑)
 なんかSFってとっつきづらいよなー、というかたも、気楽に手に取ってみてください。
 それに、まあ、愛情なんてものに、決まった形はありませんものね(笑)

過去から来た息子過去から来た息子(YESTERDAY’S SON)

 この絵を観て、ピンときた方は相当のトレッキーですね。
 スポックの背後にあるのはTVシリーズ”All Our Yesterdays”に登場したゲート――タイム・ポータル(時間孔)です。つまり本書は、TVシリーズの続編となっています。
 簡単に解説しますとこのゲート、時間を行ったり来たりするタイムトンネルなのです。スポック、マッコイはかつてこのゲートをくぐり、氷河期に流刑されたザラベスという女性と会います――とまあ、ここまでがTVシリーズの冒頭。結局彼らは無事現在へ帰ってきたのですが……ここから、本書の物語が始まります。
 惑星サルペイドンの洞窟に描かれたヴァルカン人の横顔。5000年も前の氷河期に、何故? それを耳にしたスポックは(冷静に)動揺する。男なら、一回くらいはある(かもしれない)「身に覚え」。カークはスポックに言う。「これは……生物学上の問題だな?」
 そう、そのヴァルカン人は、スポックの息子だったのです!
 トレッキーなら誰しも考える「あのときのアレはどうなったんだ?」をこうして作品にして送り出したこの作者も抜群のトレッキーです。
 父と子の問題、そして人生の問題。スタートレックシリーズの名に恥じぬ良質の作品です。例によって皮肉屋のマッコイがスポックをからかうシーンもあり、うーん、さすがツボを心得ている、とうならせられます。
 でもまあ、一つ思ったことは、息子にとって父親は、色濃く影を落とす存在でありながら、側にいられると意識してしまって鬱陶しいものなんだなぁ、ということですねぇ。でも、少年はやはり父の背中を観て育つもんなんですよね。

エンタープライズの面影エンタープライズの面影(RELICS)

 本書はTNGシリーズ同名エピソードのノベライゼーションです。
 スコティ!
 その名はトレッキーの中では永遠のヒーロー(?)です。スコッチ・ウイスキーが好きで、頼りになるエンジニア。本名モンゴメリー・スコット、愛称スコティ(日本ではチャーリー。吹き替え当時スコットとスポックが聞き分けにくいと言う理由で変名されたらしい)。カーク、スポック、ボーンズが上陸し、(そしてたびたび)行方不明になると機関部だけではなく艦の指揮を執り、エンタープライズを護ってくれる、頼りになるひと。何よりエンタープライズを愛し、それが原因でクリンゴンと喧嘩したことさえある!
 そんな彼が、24世紀に帰ってきました。
 スコットが、あのスコットがD型のデッキに立つ。その夢のようなシチュエーション! そして、当時は技術的に(そして、予算的に)不可能であったシーンが、本書では再現されています。
 本作は、万人にお勧めすることは難しいかも知れません。とりわけTOSに馴染みのない方はスコットがどんな人物であるのかがわからず、面食らうかも知れません。TNGからファンに成った方は、この頑固だが人なつっこい人物に「おいぼれめ!」と思ったかも知れません。
 そう、おいぼれ。退役間近の元名機関士と、現役ばりばりの名機関士、ラ=フォージュ。二人の出会いは実に愉快に描かれますが、スコティはそこで、自分がこの時代では何の役にも立たない老人であると思い知らされます。老人は、すっこんでいるしかないのか。そして若者は、老人から学ぶべきことはないのか。なかなか示唆に富むエピソードを盛り込みつつ、コメディとして、SFとして非常に完成された作品となっております。
 なによりTOSファンの方は、TVシリーズにない冒頭シーンに感動なさるかも知れません。輸送艦ジェノレーンで大活躍するスコティ! これだ、コレが観たかったんだ! と私は叫んでしまいました。
 最後になりますが、TVシリーズのシーンを、ちょっとだけ。
 シャトル発着場でスコティを見送るD型機のクルー。皆、笑みを浮かべ、そしてスコティは例の如く愛想よく、にこやかに笑みを浮かべ、堅く握手を交わす。心温まるシーンです。そして、さりげなーくウォーフの前を素通りする(笑)。二人は互いに不愉快そうな視線を交わし、ちょっと遠回りするように離れていく。そりゃそうでしょう。スコティは、クリンゴンと戦争を繰り返してきた時代の人ですからねぇ! それに彼のクリンゴン嫌いは、数々のエピソードに描かれてますし。不器用なウォーフもまた、弁解くらいすればいいのに不器用に見送るだけ。
 最高のシーンです。
 出来れば本作は、劇場版あたりをご覧になった後で読まれることをお薦めいたします。
(5作目などは、お茶目なスコティが見れていいかも☆)
転送台へ! 本店へ