宇宙論的問題 Cosmologic Problem (Yasuo Katayama)

宇宙論的問題

片山泰男(Yasuo Katayama)
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1. 宇宙の年齢問題
2. 大規模構造
3. インフレーションとダークマター
4. 宇宙項とハッブル定数
5. それなら定常か
6. ハッブル深部領域 Hubble Deep Field
7. オルバースのパラドックス
8. 宇宙の背景放射
9. 熱死論
10. 短かすぎる
11. 幻想宇宙論
12. それから考えられること
13. 回転系
14. 加速系
15. 重力と重力波
16. アインシュタイン宇宙
17. ド・ジッター宇宙
18. フリードマン宇宙
19. 選択膨張?
20. 赤方変移は、宇宙膨張かドプラー効果か
21. フリードマン宇宙解の計量
22. 膨脹宇宙解とブラックホール解
23. WMAP衛星の観測による宇宙の年令・運命、ほぼ結着?
24. ニュートン重力再考
25. 重力ポテンシャルと宇宙項
26. 天文学の要約
27. おわりに


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1. 宇宙の年齢問題

一般に信じられている膨張宇宙とは、この宇宙が一般相対論の解として、時空自体の性質として膨張しているというものである。 空間的に一様、等方な物質密度ρから、一般相対論を満たす解としての時空のメトリック g_{i,k} を与える。 最初の宇宙論はアインシュタイン自身の定常宇宙解であったが、 フリードマンによる、宇宙項のない膨張宇宙が基本的に他の証拠に合致するとして採用されている。

そこでの細かな問題として、時間のスケールが合わないこと、つまり、宇宙の年齢が球状星団の年齢を超えない問題がある。 実は、これは細かな問題などではなく、この宇宙論の歴史的欠陥であると私は思う。 少なくとも現在までずっと、宇宙論はこの基本的な年齢問題を満たしていない。

アインシュタインの時代には宇宙論からくる宇宙の年齢が 15 億年でしかなかった。 彼の"相対論の意味"(原題 "The Meaning of Relativity" 矢野健太郎訳、岩波書店)を参照。 彼は、"この時間は地球の地殻のウラン消滅からくる年代と同程度であり、 このパラドックスからこの理論自体の有効性に疑問があること、 この時間の短さは恒星の進化の理論の結果に一致しないこと"を認めている。 しかし、"恒星進化の理論は場の方程式よりも薄弱な基盤に立っているかに見える"とした。 この誤りは、彼の罪ではない。彼は、当時のハッブル定数 432km/s/Mpc を信用した。 この数値に、どれほど精度がなかったか、10 倍ほども狂っていたこと、 そしてその後も、宇宙の平均密度ρだけでなく、ハッブル定数自体が確定できず、 いまだに 2 倍の誤差を克服できないことを、彼が知れば嘆くことだろう。


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2. 大規模構造

宇宙の年齢問題は、現在、地質的年代は解決したが、星の一生の年代で問題を残している。 球状星団の中の星の年齢は、明らかに 150 億年を超えるものがある。 もうすこしで不整合を解消しようとしているとみるべきか、欠陥は解決していないとみるべきか。 かりにそれが解決しても、新たに発見されている大規模構造の説明の不能、という問題が次にある。

グレートウオールという長さ 5 億光年の壁構造、 両銀極のピンポイント探査での36億光年にわたる4億光年の周期構造の発見は、 まだ始まりである。大規模構造は後から後から発見されるだろう。 現在まだ、数億〜数十億光年の規模だから、ビッグバンを認めるときも、 現在の10倍までの構造はあってもよいが、その構造形成の説明は、さらに難問になる。 背景放射の 10^-5 の一様さから短期間にこの大規模構造ができなければならないからである。 また、球状星団の中の恒星の長い年齢に対応するものは、絶対光度の小さい終末星であるから、 今後も記録は更新されるだろう。190億年という数字も見掛ける。

ビッグバン宇宙論は、一様等方、定常の内、定常を捨てたのであるが、 一様等方という前提も怪しいかもしれない。星の一様等方は、銀河の発見で覆された。 銀河の一様等方も怪しい。これは宇宙論の基本的パラダイムに疑問を投げかける。 さらなる大規模構造の発見に伴って、私は私の生きている間にも、 宇宙の年齢はもう 1 桁ぐらい延びるのではないかと期待している。


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3. インフレーションとダークマター

宇宙に始まりがあるという観念は、それを構成している物体、物質のひとつでも、 年齢がそれ以上であれば、廃棄すべきと思う。宇宙の全物質の年齢を知ることは不可能である。 宇宙に年齢があると言うのは、その危険、または過誤を犯している。 しかし度重なる反証提示にも、この観念は耐えて来たようである。

重大な反証がでてくると、それを説明するために理論の枠組が違っても、修正せざるを得なくなる。 そのような歴史をビッグバン宇宙論は持ってきた。解決できなかった宇宙の平坦性 (どんな曲率もありえたのに、どうしてこれほど宇宙は平坦であるのか)と、 地平線問題(どうして一度も出会っていない宇宙の別の方角が同じ性質をもっているのか)は、 インフレーション解を使って説明する。(インフレーションの時期には、宇宙は、 斥力項(宇宙項)によって指数関数的な膨張をし、一度光速を追い越している。 だから、現在一度関与した部分からの光どうしが再会している。 またそのインフレーション期が終ると宇宙の平坦度は完全に 0 になるとする。)

そのインフレーション解が要求するダークマターがどうしても存在しない。 平坦であるための臨界密度Ωcr に比べて物質密度がかなり低い。 見える物質は銀河内でも 0.003 Ωcrである。その10 倍から 100 倍までは銀河の腕の運動、 銀河団の中の銀河の運動から存在は確認される。それがなにかが難しい。 ホットダークマターでは大構造ができない。コールドダークマターでは小構造がない。 両方とも分布構造の説明に問題がある。 標準理論では重さの無い、ニュートリノに微小な重さを与える必要があったり、 存在さえ確かでない、アクシオンとかいう未知の粒子を仮定したりする。

まだコールドダークマター(CDM)の方が有望で、多くの研究グループがこれの調査に全力を上げている。 銀河系中を太陽系が進行する場合の季節変化を捉えたという報告がある。(ホットダークマターHDMは、 質量の軽いニュートリノであり、コールドダークマターCDMの侯補には、アクシオン、フォティーノ 等の超対称性粒子がある。これらは、小玉英雄著の"宇宙のダークマター"サイエンス社に詳しい。)


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臨界密度

膨張宇宙論には臨界密度というものがある。これを過ぎた密度であれば宇宙は、空間的にも時間的にも閉じた宇宙になる。 これ以下の密度であれば、宇宙は、時間的にも空間的にも膨張を続ける。丁度の臨界密度では、宇宙の曲率は0という平坦な空間を 続けながら膨張する。宇宙の密度とハッブル定数の2乗との差が宇宙の空間的曲率を決める。 宇宙の密度測定は、ハッブル定数の測定以上に難しい。それは輝かない物質の量を推定することが難しいからである。 しかし、臨界密度よりは少ない物質しか存在しないことが昔から明らかであったが、 インフレーション理論が丁度の臨界密度の宇宙を約束するため、ダークマターは存在し不足する分を埋め合わせ臨界密度にすると信じられた。 宝探しのように、褐色矮星、通常物質でないもの、例えばニュートリノ、アクシオン、存在の証拠の全くない超対称性粒子までの可能性を 大まじめに追求してきた。それらの存在を仮定してすら不足分を補うことが期待できないことが明白になってきた現在、 理論の最後のたがを崩して、宇宙項にその差分を説明させる。宇宙項は、それを存在させないために宇宙膨張を考えざるを得なかったものである。 宇宙項を認めてしかも膨張宇宙を論じる事自体、宇宙論の歴史的な文脈を崩している。 宇宙項は、なぜか今だけその差分に一致する。例えば、現在の 1/10 の時刻には、宇宙のサイズが 1/10であり、宇宙の臨界密度は、 今より 1000 倍大きかった。ところがそのときも宇宙項は現在と同じなら、それを平坦にする不足分にあてることはできないはずである。 なぜ現在の平坦にうまく合うように宇宙項が存在するのかと不思議がられる。

問題になっている臨界密度の大きさは、1.88 x 10^-29 h^2 [g/cm^3] (h は 0.5〜1 のハッブル定数係数。)である。h= 0.7 以下の場合 10^-30 台になるが、どれだけ希薄な密度か。1m^3 の水をどれぐらいの空間に拡散すれば、臨界密度になるか。 一辺が 10^10 倍になって始めて密度が 10^-30 [g/cm^3] になる。それは、一辺 100 億mの体積である。 太陽地球間の距離が1億5000万km の 1/15 を一辺とする体積に風呂桶一杯の水を広げることである。 半径 70 万 km の太陽の密度が水程度であること(r= 7.0 x 10^10 cm, 太陽M= 2.0x 10^33 g から密度 1.4) を考え、 太陽と半径 6500 km の地球が存在は、宇宙の臨界密度からは、どれほど例外的な物質集中かを知ることができる。 太陽近傍の物質密度は、0.1 太陽M/pc^3 である。臨界密度を太陽質量単位にした、2.77 x 10^11 太陽M/Mpc^3 をみると、 太陽近辺の物質密度は、臨界密度の10^6倍も大きい。(銀河系の内側はもっと密度が高く、外側は密度が低い。) この量自身は、アインシュタインの時代から大きく変わったわけではない。ハッブル定数が 1/10 になったことで、 臨界密度は、1/100 になっただけである。


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4. 宇宙項とハッブル定数

近年、宇宙の年齢問題を解決するために、アインシュタイン自身が一度は"我が人生最大の誤り"と、 言って廃棄した宇宙項を、再度導入する手法が取られている。宇宙項を重力方程式にいれたことの、 自身の倫理的問題を彼は恥じたのである。近年の動きは、今まで重力によって減速膨張するとして いたのを、宇宙項の存在による加速膨張とする考えを採り入れ、年齢問題を解決しようとする。 ハッブルの定数、(速度/距離) は、その逆数が宇宙の年齢を決める。 宇宙年齢は、減速膨張では、(逆数の2/3の) 65〜130 億年、直線的膨張なら 100〜200 億年、 それ以上にするには、加速膨張を必要とする。

ポール・デイヴィス著の”時間について”(林一訳、早川書房)によると、 ハッブル定数は、ハッブル自身の測定では、540 km/s/Mpc (メガパーセク)(1 pc= 3.26 光年)であったが、 その後継者の天文学者、アラン・サンディジ(1952)は、一桁小さい 50 km/s/Mpcを採用した。 その 100万光年あたり 15.337 km/sは、光速の約 2 万分の 1 、逆数は 200 億年、減速膨張を考慮する宇宙年齢は、 130 億年になる。それに対して、ジェラール・ド・ヴォクルールは、ハッブル定数を 100 km/s/Mpc にした。 その場合、宇宙年齢は、65 億年になる。現在は、両者いずれかの派に組するか、新しい測定から 70-80 の値を使う。 1994年10月のハッブル宇宙望遠鏡(HST)の測定値は、約80 km/s/Mpc、減速膨張とする宇宙年齢は、80 億年である。 この宇宙年齢は、すでに誤差として耐えられる範囲を超え、抜き差しならない矛盾の状態として、 ポール・デイヴィスは、アインシュタインの"人生最大の誤り"を "彼は最初から答えを知っていた"と変え、 宇宙項を導入し、年齢を 2 倍以上に延長する。

ハッブル定数を1/10にし、宇宙年齢を10倍にしたアラン・サンディジは、師匠のハッブルの 9 割分を否定したのである。 ハッブルの測定が 10 倍過大に間違っていたとするのなら、結果が 0 か符号の間違いはないといえるのだろうか。 0 ならば、定常論になるし、符号の違いがあれば終末論になる。彼はその可能性もあるとして、測定結果を公平に扱えただろうか。 それは、ハッブルの膨脹宇宙の思想的効果を名目のみ残し、他の証拠と両立できるようにしたようである。 どうしてヴォクルールは、それと2倍も異なるハッブル定数を主張できるのだろう。 それは、他の証拠と決して合致しないのであるが、その方が測定に正直なのだろうと思える。

ハッブル定数は、1929年から最初の 20 数年で、1/10 に変化したが、1960代から現在まで種々の測定でまだ、 2 倍の誤差(50〜100 の間)を埋められない。膨脹宇宙論の最重要な定数、ハッブル定数ですらこうである。 ガウスが夢見た宇宙の空間的曲率の測定や、物質密度ρの推定以上に、宇宙項λは存在するのかしないのか、 それさえ全く判定できる状態ではない。

インフレーション解のように過去には存在したが今はないのか、そんなに時間に依存するようなものなのか。 導入が数学的に任意だからといっても、宇宙の歴史を得るのに時間的に変動する宇宙項を採り入れるのは、 あまりにも恣意的である。説明する対象の性質のパラメタを導入しては説明できて当然である。 今度はいまも斥力項があるというのである。宇宙論への信用度は、回復不可能な点にまで到達したのではないだろうか。


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5. それなら定常か

宇宙論は、最初からすでにこれは科学理論として挑戦的すぎる歴史をもった。 それをこのように救おうという支援者が続いてきたのは、相対論の理論としての魅力であろう。 それ以外の宇宙論がそれほどに明確な説明性を持ち得なかったためでもある。

そのような不利な面は定常宇宙論にはない。定常側では変動の説明をする必要はない。 逆に定常を保つ機構の説明が必要になるかというとそうでもない。 変動が局所的現象なら、ほとんど無視すべきことだからである。 しかし、定常側が一時提案したクリエーション場は、膨張と定常の折衷案であった。 宇宙膨脹の存在を認め、定常的に膨脹するために非常に微かな物質の継続的生成を考えたのである。 定常説には少なくとも、背景放射の説明が必要であろう。赤方変移の説明も必要である。 膨張説は宇宙の進化として物質形成までを説明しようとしているからである。

誤りであったはずの宇宙項を使うことが許されるなら、定常で物質なしに遠方ほど赤方変移する、 ド・ジッター宇宙でも赤方変移は説明できる。赤方変移に宇宙膨張と始まりは要らないことになる。 ド・ジッター宇宙は、現在の物質密度ではどうなるのか、それらの説明が必要であるが。

赤方変移の原因は、ドプラー効果だけとは限らない。 過去の時空と、現在の時空の重力ポテンシャルが異なるだけかもしれない。 遠方ほどポテンシャルが低く見える空間構造もありえる。 地球が丸いため、遠方から来る船がすべて海面より下から浮かび上がって来るかに見えるように、 地球上では、全ての点が他の点より高い地点にみえる構造をしている。 また光は長い期間飛ぶことで決してエネルギー低下を起こさないのか。 時間の経過が過去は遅かったかもしれない。 それらの異論を考えた方がよいのではないだろうか。


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6. ハッブル深部領域 Hubble Deep Field

ハッブル宇宙望遠鏡による深部探索によって、注意深く選ばれた目立つ天体のない一角の遠方(北斗七星の近くの真っ黒な夜空) には、銀河がびっしりと存在(面積の1/10〜1/5 は銀河が占めている)して、少なくともビッグバン 10 億年から、 というかここ 140 億年(2003年では120億年)ほど、宇宙はあまり現在と様相が変わっていないようである。

写真の説明では、この若い銀河はサイズが現在の銀河のサイズの 1/10 以下だという。しかし、基本的に大半の銀河の形態は、 完全な渦巻きをしていて、どこも変わったところがない普通の銀河である。南方深部探査写真(HDFS)の中には、青い不定形の 銀河が多く含まれ、それは明らかに現在のものとは違うといっても良いが。銀河形成に 50 億年と言っていた定説は、10 億年 に短縮しないといけなくなった。

これを見ていて思ったことは、つぎの通り。もしかして銀河サイズが 1/10 に小さいのではなく、距離が 10 倍ほど遠いのでは ないだろうか。将来、さらに分解能が上がれば、銀河間の空間にさらに小さな銀河が見えて来るとする。そうしたとき、それが、 さらにサイズの小さな銀河であると説明するのだろうか。そもそも宇宙膨張は、重力で結合した銀河内には働かない原則では、 なかったか。

銀河自体のサイズの膨張は、初めて使われる説明である。それほど初期の異常な時期か。いや、単に意外に小型の銀河が見えた ため説明に窮したのだろう。ビッグバン説では、ある距離以上の距離があってはならないため、見えるサイズが小さいものは、 現実のサイズが小さいと言わざるを得ないのである。


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7. オルバースのパラドックス

現在一般的にビッグバンの証拠と考えられているオルバースのパラドックス (なぜ夜空は暗いか) について、定常宇宙では、 どう説明するのだろうか。 (これは、ある遠方より先がない、過去がないために、夜空があるとされている。)

定常無限の宇宙では、星の間にまた星が見えて、夜空は星の表面程度の輝度をもつだろうか。いやそれほど深宇宙は透明では ないのである。深部探査が銀河だらけの図と、銀河中心方向の先がほとんど見えないことを考え併せるべきである。

また、それほど宇宙の平均温度は高温ではないことを忘れている。光学的に見える物質の 1000 倍程度の暗い物質があれば、 宇宙の平均温度は絶対温度数度になり、これで背景放射も同時に解決するではないか。定常状態で、温度が一ヶ所に集中する ことはないから、オルバースの杞憂は無用である。これをそのまま定常論へのパラドックスとして捉えているひとは、 宇宙はどこまでも透明で、宇宙の物質はすべて数1000度の表面を持っていると考えているようである。 それなら、我々の銀河中心方向は、一つの星のように光り輝いているのかと聞きたい。

深部探索の結果は、夜空の最も暗い部分が、オルバースのいうように、遠方の銀河に埋まっていた。それらの光度は、約 30等級 であり、HST の 10 日間の露光ではじめて姿を表すほど暗いものであった。 宇宙が透明なら、銀河のような大きさが写る物体の輝度が距離で下がることはない。ドップラーシフトで説明が付くのだろうか。

そこで、こういう結論はどうだろう。そう、オルバースの疑問は、解かれたのである。パラドックスは、なかった。宇宙の果ては、 どこまでも星ぼしで埋まっている。ときに閉塞感すら与える無限空間の、一種、恐るべきこのイメージが浮かび上がって来る。

(このような暗い銀河に通常のスペクトルでなくフィルタを通した光度からの赤方偏移の推定がされて、それらの大半がそれほど 遠方の銀河ではないと理解された。 宇宙の果ての銀河の光度 参照。 しかし、この種の画像は衝撃的である。 宇宙の果てを見る能力は、60 年代に23.0等級が限界だった地上の5m鏡から30等級へと大きく変化した。)


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定常無限宇宙では、夜空は無限の輝度になるという話がある。 星の密度を一定とすると星の数は、体積に比例する。ある半径 R の先の一定の厚さ d の球殻を考え、球殻の体積 v は厚さ d 一定から球殻の面積 S= 4πR^2 に比例するが、放射は、距離 R の2乗に反比例するから、両者の影響は打ち消し、球殻から ここに届く放射が距離によらず一定になる。これを無限遠まで積分すれば無限大になるとする。

膨張宇宙論の入門書では、よくこの間違った説明が使われ、これを使って宇宙の膨張の証明とする。 (例えば佐藤文隆の"ビッグバン"。) この話は、何かが間違っていることを教えるパラドックスである。 定常でなければ無限大にならないし、宇宙に端がある有限宇宙でも放射が無限大になることはない。 しかし、それで宇宙には始まりがあるか、又は有限と結論するのは早計である。そこには数学的な間違いがある。

まず、この無限大は、物質の立体角を0とすることから起きている。これは、さきほどの簡単な数学に抜け落ちた部分である。 星には大きさがあり、透明でない。それが遠方の光を遮る。そのため、宇宙の明るさが無限大になることはない。 せいぜい全天が星の表面輝度で埋めつくされ、夜空は、その明るさになるだけである。これは、無限大とは全くちがう。 無限大でなくても、星の表面温度の輝度では、夜空が暗いという現実と合わないのではないか、と考える人には、 次の説明が必要だろう。つまり、星の表面輝度ではなく、全天が物質の平均温度輝度で埋めつくされるのである。

膨張宇宙論の説明では宇宙が透明でなく、途中に遮る物質があっても夜空が無限大又は星の輝度になることを解決しないと説明する。 宇宙が透明でなくて途中で光が遮られても、光を遮るチリ物質は、定常が無限の過去からであれば、それがいずれは温度を上げ、 そのうち星と同じ温度になる。それは、一部は正しいが、それが星の表面温度のままではない。


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宇宙の塵埃(チリ)で夜空が暗いと考えることはできないというが、幾つか理屈の合わない論理になる。 もし、夜空が無限の輝度なら、一瞬でチリは無限の温度になる。温度が一ヶ所に集中することは、物理的な系では、あり得ない。 そのことだけから、先の簡単な数学にどのような間違いが入り込んでいるかが分かっても然るべきである。 太陽の表面輝度で全天が覆われているなら、チリはそのうち太陽表面温度になる。そこに難しい理屈はない。 それは、平均化の過程である。逆に永遠の時間を経過したなら太陽もチリの温度になる。 それなら、宇宙全体でチリがどの程度の平均温度を持つかを考えたほうがよい。 それは、決して太陽表面温度の 6000 度ではなく、絶対温度 2.7 度でしかない。 宇宙は、温度の高い星のように光る物質だけでできているのでなく、それより暗い物質、チリのように光らない物質の方がずっと 多いとされ、それらが大半を占めることが昔から分かっている。全天がその平均輝度になるとは、全天が 2.7 度の黒体輻射に 満たされることである。オルバースの話は定常宇宙を否定するパラドックスでなく、宇宙の背景輻射をも定常宇宙で説明するものである。

有限宇宙で、宇宙に空間的な端があるという考えは、すでに余りにも優雅でないため、誰もが拒否するものとなっている。 一様等方の概念がそれに代わる。それに比べて定常性の概念は、どうしてこれほど簡単に捨て去ったのか。 それは、一般相対論の解が定常性を十分与えないからであった。アインシュタイン自身、定常解を捨てた。 空間的な端に比べて時間的な端には、まだ批判力が十分であるとは思えない。 あるとき、突然宇宙が始まったとする膨張宇宙論は、一見未来が容々と開けるようにみえるために、受け入れやすさを醸し出している。

オルバースのパラドックスは歴史上、その時代の考えを鼓吹するために使われてきた。特殊相対論の出たときは、これがオルバース のパラドックスを説明するとされたし、膨張宇宙論では、有限時間とそれから来る有限の観測できる空間がこれを説明すると されている。実は、無限空間でなくても、周期的な境界条件でも同様な結果になる。 境界条件が熱的な反射壁なら小さな有限の閉鎖空間でも、無限空間と同じである。それが無限の輝度を生むはずがないことを まず実感して欲しい。体積あたりの(有限の)エネルギー密度で満たされるだけである。 アインシュタインの定常宇宙解のように無境界有限空間は、無限の過去からの放射が回り込むので、オルバースの問題をそれが解決するわけではない。


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夜空を眺める習慣は途絶えてしまったが、天の河はたんに美意識で眺めるものではない。多くの星が実は太陽のようなものであり、 太陽地球間の距離(1億5000万km)と隣りの恒星までの距離(1.3pc)の比率が約20万倍である。pc(パーセク)という単位が太陽地球間を 基線にして角度の1秒の距離として定義されている。夜空には多くの星があって、肉眼で 6000 個ほど見える。星々はまとまって、 天の河をなしている。それは立体的には円盤形をなし、我々の銀河系というものを構成していた。 それ以外の部分は空虚と思われていた時期があったし、たくさんの星雲は、他の銀河系であるという説が認められたのは、 20世紀に入ってしばらく経ってである。隣りの恒星までの距離とアンドロメダ銀河という隣りの銀河系までの距離の比率が100万倍である。

隣りの銀河までの距離は、太陽地球間の距離の20万倍と100万倍の積で、2000億倍の距離がある。これはほとんど想像を絶する距離の 比率である。太陽の光は、昼の明るさをつくりだし、星々のすべての光の量を合わせたよりずっとずっと明るいものであるが、 それは、地球が平均的な恒星間の距離の中にいないからだろう。もしも地球が平均的な恒星間距離にいれば、太陽からの光と、 その他の全ての星の光とは、ほぼ同程度か、他の方が大きいことになるだろうからである。 他の銀河系からの光は、もっとも近いアンドロメダ銀河だけが肉眼で観測できる銀河であり、その他の銀河がそれよりも暗いことも、 我々が銀河系の平均距離の中にいずに、銀河系にどっぷり浸かっているからである。 もし銀河間のただ中にいれば、われわれの銀河系からの光量と他のすべての銀河系からの光量は、 やはり同程度か他の方が多いということなるだろう。

遠方の物体は、影響が少なくなるが、その分、数が多くなるのである。銀河系の中の星の数は、さきほどでた 2000億という数字と 一致する数が使われている。隣りのアンドロメダ銀河も我々の銀河とほぼ規模が同じと考えると、そこからの星の光量は、2000億倍し、 そして太陽までの距離の 2000 億倍なので、影響は、2000億倍の2乗に反比例するから、太陽からの光量の 2000億分の1になる。 これでは遠方は影響がないように考えるほうが正しいようにみえるだろうが、これが正しくない理由は先に説明した。 重力も、光量も距離の2乗に反比例する。距離の2乗に反比例する星の輝度と重力では、近傍と遠方の影響は、同程度である。 しかし、力をポテンシャルの空間微分ととらえる重力ポテンシャルの式 -GM/R でみれば、地球への太陽とアンドロメダ銀河の影響は 同程度になる。


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遠方は近傍と同程度以上の働きをする。均一な密度で分布する星(その数は R^2に比例する)のポテンシャル(1/Rに比例する)への影響は、 遠方ほど大きい。一般相対論の g_ik の場も重力ポテンシャルをその44成分とする量であるから、同様の性質をもつ。重力方程式は ポアソン方程式∇^2 φ = ρの形を踏襲している。左辺のG_ikは、一種の 2 階微分であり、右辺の運動量エネルギーテンソル T_ik は、 i= k= 4 のとき物質密度ρとなる。地球に対する太陽とアンドロメダ銀河の影響が同程度とは、パラドキシカルであるが正しいのである。 g_ik というポテンシャルを物理量として、それが従う方程式、それが重力方程式である。ポテンシャルは、確定値を持ち得ないという 任意性があるが、ポテンシャルの任意性は、一般座標の任意性に置き換えられている。重力方程式は g_ik の確定値を出すわけではなく、 座標系を指定することで g_ik が確定するのである。

ニュートンの万有引力をポテンシャルを使って表すことは、重力という遠隔力のベクトルを使わず、空間に存在するスカラーですむ というだけでなく、物質との関係が微分方程式 ∇^2 φ = ρ に表せ、それをポテンシャルが従う方程式とみなすことができるからである。 電磁気のスカラーポテンシャルと電荷の関係は、まさにこの式を満たしている。 特殊相対論ができたときニュートンの万有引力は、何者も光速を超えられないという特殊相対論の法則に違反しているので、 重力の影響の光速化が必要であった。リエナール・ヴィーヘルトの式φ= ∫ρ(x)dx/R(x,t-r/c) のように、重力もある点からの過去 の光円錐の時空点にある質量によってポテンシャルを計算することができると思われた。ポアソン方程式と、質点の運動方程式、 加速度がポテンシャル勾配に比例する、d^2r/dt^2= - grad φをローレンツ不変な形式に書き換えることが要請された。 しかし、それは予想以上の書き換えになり、その作業にアインシュタインは、10年を要し一般座標変換に不変な重力方程式を導いた。

この物理での力学的記述からポテンシャル記述への移行は、上に述べたような、パラドックスを招来する。 それは、普通に言うオルバースのパラドックス以上のパラドックスである。ポテンシャルは距離の1乗に反比例するからである。


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8. 宇宙の背景放射

宇宙の電磁波エネルギーとしては最も大きく、 2.7 度の黒体の放射に相当するマイクロ波のスペクトル分布をもつ宇宙の背景放射は、 宇宙がプラズマ状態から原子を形成し、電磁波と相互作用を失った宇宙の晴れ上がりの時期、宇宙のサイズが現在の 1/1000 の時代の 数千度の黒体放射の名残と言われる。

1965 年マイクロ波受信装置の取れない雑音に苦しんでいたペンジアスとウイルソンが発見した、宇宙からの均一のマイクロ波 (最初は 3.5K とされた)は、ビッグバン宇宙論での物質形成、膨張による非平衡過程によって水素とヘリウムの現存比率を説明する、 ガモフの"αβγ理論" (1946年)によって絶対温度約 7 度としてすでに予言されたものであったとされる。

近藤陽次著の "世界の論争・ビッグバンはあったか" (講談社)によると、定常側では、アーサー・エディントンが1926年の著書で 恒星間空間温度を銀河系内恒星の光の強度から3.2Kと推定し、1930年には、レゲナーの銀河系間空間温度 2.8 K という推定が存在したという。 その方がペンジアスとウイルソンの測定へのガモフの予言よりもずっと精度の高い予言であった。つまり、 2.7 度の黒体放射をビッグバンの証拠とする必要はないし、全く逆の解釈があったのである。

アインシュタインもそうであったように、定常宇宙説が当り前であった時代の宇宙空間の平均温度という考え方は、 近傍の空間温度を素直に測定又は推定するものであり、ビッグバン説の宇宙の晴上り神話を持ち出さなくてもよい単純さがある。 膨張宇宙論での時間に依存する温度は、晴上り時期に数1000度であった温度が、現在、数度になっていると考える。 一方で平坦のためにダークマターを必要とし、定常否定のためのオルバースのパラドックスにはダークマターのない数1000度の物質の 表面温度を言うのは矛盾している。数1000度の星の表面輝度は晴上り時点の温度であり、現在は数度である。今は 2.7 度のオルバース のパラドックスを考えるべきである。

晴上り時期には、プラズマが一斉に結合し、水素原子を形成するのであるから、1000倍のドプラーシフトを受けた強い水素の吸収スペクトル が出るはずなのに、どうして黒体放射かという疑問が私にはある。晴上りの情况説明が単純すぎるのである。 また、電磁波の背景放射だけでなく、それ以前の現象として、X 線の背景放射、ニュートリノの背景放射が存在しなければならないのに、 全く検出されていない。起原をいうには確かさが必要である。超新星爆発過程に似た、ビッグバンの過去時点の現象全てに、 そのような証拠の必要がある。

ニュートリノの観測では、カミオカンデ(元神岡鉱山で純水によるチュレンコフ光の測定)で、太陽ニュートリノ問題 (太陽内部の反応から予期されるニュートリノが存在しなかったのを、観測される量が数分の1であることを確認したこと)や、 1987 年に発見されたマゼラン星雲中の超新星 1987A の観測(爆発の中心部からの到達なので爆発の周辺からの光よりも 2 時間前に到達した、 12個のニュートリノの検出)、さらに 10^31 年以上という陽子寿命の下限を求めた陽子崩壊の測定がある。

最近の観測からは、標準理論に反してニュートリノには微小な質量があるらしく、背景放射は、かなり低速のニュートリノになる。 そのため、カミオカンデの採った方式、水の電子を弾いて水中の光速以上にしてチュレンコフ放射を見る方法では、 存在していても検出できない可能性が高い。

もしかすると、宇宙初期の低速のニュートリノが素通りしている。そうかもしれないが、ないものを探す人は、モノポール探し、 ダークマター探しと同じ徒労を経験するだろう。発見できなかったことは、単に忘れ去られ、どこが間違っていたかは、追及されないだろう。


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9. 熱死論

では、定常状態ではなぜまだ星が輝いているのかという疑問には、星の寿命のサイクルは、150 億年よりずっと長いものが多い。 より大きい構造である、自転するだけで数億年かかる銀河の寿命サイクルは、殆んど知られていない、と答えるしかないだろう。

19 世紀末の熱的定常死の幻想に苦しめられたケルビン卿は、太陽の寿命をどれほど長くしても2000万年としていた。 現代のイメージの1000分の1である。寿命より、年齢が長いはずはない。彼は地球の地質年代さえ疑って、 それよりもずっと短い太陽年齢と寿命を考えたのである。そのようなエントロピー増大による熱死論は、 その時代には想像もできなかった、重力による収縮と星の核反応という違う熱源、というだけではとても言い足りない、 それまでの化学反応によるエネルギーに比べて、100 万倍を超えるエネルギーが、すでに自然界では使われていたということ が知られることで、完全に無意味になった。

熱死の寿命は、6 桁、100 万倍に延びた。彼(又は当時の最高の科学者)は、それぐらい間違っていた。星は、一過性のものではない。 重い星は寿命が短く、軽い星は寿命が長い。その一生を過ぎれば宇宙に残骸を残し、それがまた新しい星の素材になる。 太陽の寿命は、100 億年を超える。しかし、一旦水素が消費され、大きい元素になると、それを戻す仕組みを考えない場合、 物質からの寿命ができてしまう。鉄にまで変化した物質は、核の結合エネルギーだけでは、もとに戻せない。

エネルギーへの変換効率なら、核融合よりブラックホールは、さらに 100 倍ぐらい高い。星が核融合マシンなら、銀河は、 ブラックホールマシンかもしれない。物質生成も可能かもしれない。ブラックホールへの物体落下で質量の5%がエネルギーとなるが、 これは、1%以下の核融合の効率よりかなり大きい。自転のない2体のブラックホール合体で質量の最大29%まで失われる。 自転や電荷があれば最大 65% がエネルギーになる。そういう合体を繰り返せば、100% にも達する。

銀河の寿命は、一体どれぐらいだろうか。銀河の巻き付きの謎(数億年で自転する渦巻き銀河は 150 億年からみると、 その腕の巻き付き回数が少なすぎる。)から、銀河の渦巻きの暗部にも、見える腕と同じだけの物質が用意され、 星の生成は、銀河の中央からの衝撃波によるらしい。それが渦巻の形をなすだけであるという。数千億の星を抱える銀河の寿命は、 星の寿命の何千倍もあって当然であろう。銀河の寿命は、かなり長いものであろう、しかし、永遠ではないだろう。 それで定常論を捨てる必要があるわけではない。銀河にもサイクルがあるだろうからである。

それよりも、化学反応から核反応への変化と同じような、現在の我々の知らないダイナミクスも、まだ残されているはずである。 しかしそれが今説明できないことは、定常論の弱味である。熱死論を未だにそのまま信じる人はいないにしても、 エントロピー増大の熱力学第2法則のケルビン卿の強迫観念は残っている。


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10. 短かすぎる

宇宙自体の歴史が、地球の歴史のほんの数倍といわれている事も、信じがたいことである。人間中心主義は、 科学の歴史の中で常に破綻してきた。前世紀の間に我々の世界観の空間的スケールは、星ぼしの世界から、 数1000億の銀河系にまで変化した。それに対して、時間的スケールの方は、星の一生も入れないほどの短時間のままである。

現在、宇宙の年齢が地球の年齢より長くなり、太陽の年齢もなんとか宇宙の年齢以内に入っているが、地球を構成する物質 (水素、ヘリウム以外の元素) は、ビッグバンでは決して作ることができず、星の最期の核反応によるため、 太陽は第2世代以降の星であるとされている。しかし、太陽質量程度の第1世代が太陽の前に入るだけで、 その加算年齢が簡単に宇宙年齢を超える。重い星の短い寿命を使えば、多世代も入るかもしれないが、 重い星の確率を使わなければならない。重い大きな星は、軽い小さな星より圧倒的に少ない。物質の超新星爆発経験周期は、 非常に長いだろう。

また、重物質が初期銀河にないという証拠がなにかあるだろうか。 130 億年まえの惑星を NASA が発見というニュース (7/11 2003) があった。これは、木星型の惑星らしいが、宇宙の初期にも重物質(メタル)があったことにはならないだろうか。 木星は、メタン、アンモニアを主成分とする大気をもつ惑星で中心核は金属水素かもしれない。これは、130億年前にも炭素、 窒素が存在し、水素とヘリウムだけではない証拠かもしれない。

(そうではなく、これはメタルの少なさを初期の星とする論理であり、単にメタルの少ない星に惑星があったということである。 60年代には星の色とスペクトルの違いは、温度の違いであり、星の化学的組成は、ほぼ同一とされたが、太陽の鉄成分の1/10000 の星もあり、それを初期の星とするのである。メタルの全くない星は、見付かっていないし、クエーサーにもメタルがある。)

ビッグバン宇宙論は、どの空間的一点も、他の場所と特別に区別することがないという、空間的一様、一様等方を前提にした 一般相対論の解である。その前提に立って、時空の歴史を解くのである。そこには、局所的現象の入り込めるすき間はない。 しかしながら当然、宇宙がその外を知ることのできない境界を持つなら、膨張が局所的現象でないことの証明もできないだろう。 空間的一様等方を前提にするのなら、時間的一様、定常を前提にするのも、さほどの異端ではない。 空間的に粗視化し一様と時間的に粗視化し定常とを区別する理由は殆どないからである。


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11. 幻想宇宙論

平坦な時空のなかで、物体が一点から四散しているようなニュートン的古典的な膨張宇宙があるとする。 その場合でも距離と速度の比例則(ハッブルの法則)が成り立ち、どの点から見ても遠方ほど高速に物体が逃げているという状況が作られる。 ニュートン的膨張は光速の制限がないから、無限宇宙での膨張も許される。そのことは、一般相対論の時空の膨張の考えに近い。 しかしこれと特殊相対論とを合体してみる。特殊相対論の光速の制限をいれると、膨張宇宙の大きさに制限ができる。 それより外は議論できなくなり、任意の点からみて、物体速度が光速になる距離に宇宙の半径ができる。これもビッグバン宇宙と似ている。

そこではローレンツ短縮で、すべての物体が平たく奥行きがなくなり、宇宙の内側には薄い殻ができる。 その距離に近付くのには無限の物体が折り重なり畳み込まれている。(これは特殊相対論的)それでも物体が無限に質量を増しているので、 ある物体がその境界に近付くとき、宇宙に激しい重力の衝撃を与える。(これも特殊相対論的)重力は全てのものに即時に(?)働くので、 いかにその衝撃は大きくとも、地球に乗っている人には全く感ずることはない。(これはニュートン力学)

これは、特殊相対論と膨張宇宙を結合した、異常な幻想である。このような殻の宇宙は、有限でありながら無限の物体を詰め込むことができる。 これは空間が負の曲率をもったロバチェフスキー宇宙だろうか。後述するように、アインシュタインの定常宇宙も殼をもつ宇宙である。 宇宙論には証明がいらない。はっきりとした観測からの反証があれば消えるだけである。宇宙論は、実験ができない。 そこに求められるのは科学としての整合性である。

周辺短縮は、随分と忘れられた効果である。私は、この若年の幻想の周辺短縮を、アイザックアシモフの"夜はなぜ黒い"というオルバースの パラドックスの解説(アシモフの科学エッセイ(3)"時間と宇宙について"山高昭訳、ハヤカワ文庫)によることを再発見した。 特殊相対論は、局所にしか適用しない。だから宇宙論には関係ない。そうだろうか。 膨脹宇宙論では、光速に近い速度をもつ物体、光速物体、又は光速以上の物体の存在が出てくるのに、 特殊相対論の規則を無視して平気でいられるのは、不思議である。

彼等はこう言う、そんなものは問題ではない。それは、彼等がそれより深刻な問題に満たされているというだけのことかもしれない。 宇宙の果てがどう見えるかなど関係ない、座標依存なものを気にすることはない、という反論さえあった。そうだろうか、宇宙の果ては、 どうあるかは自明である。ここと同じ物理法則が成り立つ、というのは一様等方の宇宙原理である。どう見えるか、どうここに影響するか、 という問題しか宇宙論には存在しないと考える。


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12. それから考えられること

物理学と違って宇宙論は、科学の初期段階である。宗教思想の支配から脱出するのにどれほどの戦いがあるかということを示すもの ではないだろうか。デカルトの"世界論"を読んだ人は分かると思うが、実証科学ではない現代宇宙論には、どれほどの間違いが あり得るか、という感覚をもつべきである。

一般相対論からは特殊相対論は、ガリレイ領域という、平坦な時空の局所慣性系間でしか成り立たない法則とする。 特殊相対論では物体が速度を得て光速度になるには、無限のエネルギーが必要なのに、一般相対論からの宇宙論では、 空間自ら膨張する場合、光速制限も平気で無視し、特にエネルギーを必要としないとするが、確かだろうか。

そのとき宇宙の辺縁の光速物体は、重力効果をもたないのか。それは、時空の速度であり、自分で稼いだものでないから身に付かないのか。 重力効果が後方には伝われないだけだろうか。

それより先に、物体が速度を得て、光速の近くに達する場合、その重力効果はどうなるのだろう。 見る慣性系によってブラックホールであったり、なかったりしては困るので、ないという予想はあるが、 速度がエネルギー密度に関与することは、確かである。誰か明確に答えを与えているだろうか。

時空の膨張宇宙の中で、高速な船である初速で船を進めると、船は周囲の物体との相対速度は、段々落ちていくのか、 それとも、その場所に行くことで速度を得て相対速度は保たれるのか。光との類推からエネルギーを失って周りとの相対速度を失う という方がありそうである。しかしそれでは、時空の膨張をいう必要があるのだろうか。 参考

考えなくてはならないことは多い。明確であることは少ない。


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13. 回転系

現実の宇宙は回転系を多く含んでいる。慣性系についで重要なのが回転系である。その扱いは、一般相対論でないとできない。 しかし、慣性系からみた、そこでの力学、電磁気は初等的に扱えるものである。これについては電磁気の章に書いた。

ニュートン力学では、回転系は遠心力とコリオリの力から回転を系の中で知ることができる。静止物体は、中心軸から離れるに従って 遠心力をうけ、運動物体は、その点の速度と系の回転との外積のコリオリの力を受ける。 特殊相対論では、回転系では円周方向の速度が光速になる距離の宇宙の半径ができ、その近辺では、宇宙の周囲は、無限に延びる必要がある。

回転系は、アインシュタインが一般相対論へ進むのに重要なステップをなす思考実験であった。回転系では、周辺空間の幾何学が違ってくる。 回転物体の各点は、半径方向には速度をもたず、円周方向に速度をもつ。そのため円周方向のローレンツ短縮があり、回転系に乗った場合、 円周方向におく物差しは短縮し、外から見た円形の形が保存するので、円周は半径の円周率倍でなく、それより長くなる。 回転系の半径と周囲の比率は、よく間違われる。これは、重力による円周の削減とは逆である。

アインシュタインの"The Meaning of Relativity" では "The General Theory of Relativity" の始めの方に円周と直径の関係を U/D>π と明記しているのに、その矢野健太郎の訳、"相対論の意味" (岩波書店)では、U/D≠π と改ざんされている。 理解できないからといって、式に手を入れるのは、翻訳者のすべきことではない。アインシュタインの最高に良い本なのに残念である。 また、後藤憲一の"相対論"(共立全書)では、その29章"一様に回転する座標系"では、 "円周と半径の比は、2π/√(1-r^2w^2/c^2)<2πとなり、 2πより小さくなる。"と誤っている。余計な式を導入して自ら本質を見えなくして、γが 1 以上であることも忘れたのかと思う。 立派な内容の本なのにこの部分は台無しである。また、今枝国之助、今枝真理の"ブラックホール物理学"ブルーバックス(講談社)も 同じ誤りをしている。一般向けの本でも、M・ボルンの本や、ランダウ・ジューコフの本では、もちろん間違っていない。


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円盤を回転させるとき、この円盤はどうなるか。常識的には、遠心力のために半径が延びることは、確かである。現実的には、 円周方向の張力と、半径方向の張力のいずれかが勝って放射状に割けるか、ドーナツ状に割ける。そう考えてもこれは、 力学の強度設計の問題でしかない。円盤が剛体なら変形はあり得ない。しかし、相対論は、時空の座標変換であるから、 剛体であっても円周方向に短縮することを認めるなら、半径方向にも同じく縮まない限り円形を保つことはできない。 このように考えても、回転には通常の意味の剛体があり得ないことを知ることができるだけである。

考え方を変え、これから円盤を回転させるのではなくて、すでに円盤は回転しているとする。それより良いのは、回転している台の上で 円を描くことである。コンパスか紐かで、回転台の上で円を描く。この円は、回転系の外の静止系から見ても、やはり円形である。 しかし、回転台の上で円周にそって置かれた物差しは短縮し、半径方向に置いた物差しは短縮しない。円周の長さと直径の比を求めると、 確かに円周率より大きくなると認めることができる。

座標系が回転するとは、(x,y,z)と(x',y',z')とが座標軸の z と z' を共通にして、x'軸とy'軸が、x,y 平面上を回転するだけである。 そこには、硬い床でなく変形可能な軟らかい床を考え、床さえないほうがよい。z' 軸からの距離が回転の速度によらず存在する、 ある限界に近付き、その点の接線速度が光速に近付くと、円周方向のローレンツ短縮は、どこまでも短縮の度合を進める。 限界距離では、回転と逆方向に移動する物体は存在を許されるが、静止物体が存在できない。そのように、回転系は、その果てに 無限の周囲を抱える有限半径の世界である。そこは、星ぼしは薄く円盤になって放射状のフロッピーケースにように詰め込まれる世界である。


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回転の存在は普遍的で、地球、太陽系、銀河系も全て回転体であるが、宇宙自体の回転は、星ぼしの見え方が異様であるはずであり、 現実の宇宙は、全体として回転をしていないとされる。回転円盤のどの点もその点での回転が等しく存在するから、 回転宇宙は、どの場所も回転の中心とする一様性をもつが、軸方向が特別であるから等方ではない。

特殊相対論では、動く系は、その前方の同時刻を未来にするので、回転系では静止点同士の時計の合わせ方に問題がでる。 光をやりとりし、系内の点どうしが同時刻を使って、任意の閉曲線で時計合わせをすると、一順すると同じ場所の違う時刻になる。 同時刻は、螺旋を描いて閉じない。そのため、円周上で同時刻に止まろうしても、無限の過去から合意しないとできない。

アインシュタインのいたプリンストン高等研究所にともにいた数学者、不完全性定理で有名なゲーデルによる、一般相対論のゲーデルの 回転宇宙解(1949)があり、一順する時間軸ができてしまうという。マッハの原理からは、宇宙全体の物質がすべてある軸のもとに回転している 宇宙というのは、静止宇宙と同じである必要があるのではないか。そうでないならマッハの原理は、一般相対論に保たれていないことになる。


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14. 加速系

回転系の次に重要なものは、加速度系である。アインシュタインの初期の論文 "重力の光伝播への影響"、 "on the influence of gravitation on the propagation of light"(1911) ("The Principle of Relativity" に収録されている) では、相対論を使用せず、ニュートン力学だけから重力による時間経過の遅れを解明していった。 この論文は、重力を含む系をはじめて明確に扱い始めた論文であり、非常に興味深い考察を提示している。

一様な重力が、加速度系と原理的に区別できないとする。高いところの光源からの光は、低いところに達するまでに系が速度を増しているため エネルギーを獲得する。そのため、上方からの光は青方偏移する。連続的にこれが起こるためには、ばかげたことに重力場では時間の経過速度 が場所によって異なるという必要がある。局所点の時間の経過速度は、その点の光速と同一視できる。場所による光速の違いは、屈折率の違い のように、重力による光の湾曲をもたらすと予想した。

そして太陽の側の光線の折れ曲がりを計算し、その後の一般相対論のもたらす、重力による光の折れ曲がりの 1/2の折れ曲がりという 結論を導びいたのである。重力のポテンシャルが、時間の経過と、光速というスカラーによって表されるこの単純な理論は、どこで失敗したのか、 どうして重力理論は、一般座標変換というとんでもない数学を持ち出さなくてはならなかったのか、このことは、ほとんど説明されない。 そして理解が難しい。この初期の論文は、ナイーブな物理的な思考方法のお手本と考えられるほどに、物理的な常識を壊して行く。

重力ポテンシャルはその時空点の時間経過の速さを決める。重力が時間の経過を決めるのではなく、重力ポテンシャルが決める。 重力はその勾配でしかない。その点ポテンシャルの方が実在的である。地球の中に穴を掘れば、穴の中では次第に重力は減り、 ポテンシャルは低下し続け、ちょうど地球の中心では重力がなく、ポテンシャルの最低点、時間経過の最遅点である。 未来の超高密度物質で作った球殻内には重力がないが、低い重力ポテンシャルが時間経過を遅らせる。 SFでいう停滞場(ステイシスフィールド)、時間の止まる場というのは重力ポテンシャルによって可能なのである。

もし重力が時空のテンソル理論でなく、より理解の容易な電磁気のような 3 次元ベクトル解析で表されるものであったら、 どれだけ楽だったことかと考える。一様等方の解が宇宙論であり、球対称場の解がブラックホール解である。そういう最も容易な条件に おける数種類の解しか存在していない一般相対論は、十分にこなされた理論とは、私には思われない。 電磁気での遅延ポテンシャルを扱うようなニュートン力学と一般相対論の橋渡しの近似的解が欲しい。 この初期の論文は、その問いに答えているかもしれない。


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重力はすべての物体、物質に一様な加速度を与える。ニュートン力学では、重力を加速度で表現する。アインシュタインは、 これを一歩押し進めて、一様な重力の静止系 K が重力のない加速系 K'とを原理的に区別できないと仮定する。 z のマイナス方向に g の重力加速度をもつ静止系と z 方向に加速度 g の加速系とは、ニュートン力学的に同一であるが、 これを物理的に原理的に区別できないと仮定するのである。 そういう仮定は、絶対速度を否定した特殊相対論と同様に、絶対加速度を否定する理論を許すことになる。 高さ h だけ違う上から下に a 点から b 点に光を投げるとき、これを重力のない加速系に置き換えると、 a 点から b 点まで光が飛ぶ間に、b 点が z の方向に速度をもってしまう。そのため b で受ける光は、青方偏移する。 (逆に b 点から a 点に光が飛ぶ間にも、a 点も z の方向(光と逆方向)に速度をもつため a 点で受ける光は、 さきほどの青方偏移とおなじだけ赤方偏移する。)

このことを連続的に正当に説明するには、系の中で時間経過が場所によって異なる必要がある。 時間の経過の差は、一様な重力加速度 g と、その高さの差 h の積 gh に比例する重力ポテンシャルの差である。 時間経過の遅れは、そのまま比例する光速の遅れとなる。その光速の違いが光の弯曲を導く。 そうして太陽の側を通る光の重力による弯曲を計算し、0.83 秒角 という結果を出す。 時間経過は、実に物体の存在する場所の物体にエネルギーを与える場、重力のポテンシャルに直接に関係するものであった。 ただ、この考察による太陽の側を通る光の重力による偏移は、一般相対論でのそれの 1/2 倍であった。

地上の重力加速度、g= 9.8 m/sec^2 で、高さ h= 1 km とすると、h を光が行く時間は、 30 万分の 1 秒である。 加速系ではこの間に b 点は 9.8 m/sec^2 x 3.3 x 10 ^-6 sec = 3 x 10 ^-5 m/sec だけ速度を得る。 光速(3x10^8m/sec)と比べてこの速度は非常に小さい (10^-13 )がドップラー効果によって青方偏移を起こす。 これは、gh/c^2 であり、重力ポテンシャルを光速 c で2度割ったもの φ/c^2 = -GM/(rc^2) が関係する(φ<0)。 時間経過が (1 + φ/c^2) という結果は、一般相対論の g_{4,4} とポテンシャルとの関係、 φ= -1/2 c^2 (g_{4,4}+1), g_{4,4}= -1 - 2φ/c^2 をみても正しい。


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この考察から導かれる時間経過がその勾配しか直接測定できる物理量でない重力ポテンシャルに比例することは、驚きを禁じ得ない。 ニュートン力学では重力ポテンシャルφは、全体としてある一定値シフトしても物理的にはなんら影響を受けないはずの仮想的な量である。 ところがこの時間経過が (1 + φ/c^2) に比例するという結果は、φの大きさを直接使っている。例えば、φに -c^2 とかそれ以下を与えると、 時間経過が 0 以下になり、物理的に許されないようにみえる。このことは結局はそうでなく、これがブラックホールの地平面を示していると 思われるのだが、彼はこれが1次近似式であると明言しているので、この批判は当たらない。 しかし、この考察は本当は近似が入らない厳密な結果と考えてもよい面がある。

高さ h を光が伝播する時間を h/c としているが、そのとき光速を c としておき、最後には時間経過に合わせて、 光速も場所によって異なるとする、c= c0 ( 1 + φ/c^2 ) この式は、一種異様である。分母の c は、結果の c と一致しない。 これを導くには、最初から高さによって光速が違う計算をすべきだろう。h の高さを光が通過するとき、最初速くて最後は遅くなるという 性質を入れずに通過時間を h/c とするのは h が十分小さいときだけ成立する。φを割る分母にある c の 2 乗のひとつは、a, b 間の 通過時間 h/c の光速であり、もうひとつは、ドプラーシフトの比率 v/c の光速である。両者とも無限遠の光速にしている。

現在からみると、一様な重力下の光速は、もう少し正確に解くことができる。 下方向を x として a から b への到達時間は、1/c(x) を a から b まで積分した、T= ∫_a ^b dx/c(x) であり、v= gT とすると ドプラーシフトは、v/c0= g/c0∫dx/c(x)、光速を c(x)= c0 - v = c0 - g∫dx/c(x) とすると、 両辺を微分した微分方程式 c'(x)= -g/c(x) から c^2(x)= c0^2 - 2gx となる。

一様な重力下では、光速は、低さ x によって、光速の 2 乗がポテンシャルの2倍だけ変化するように低下していき、 ある低さで光速が0になる。それを超すと光速は虚数になる。しかし、どこまでも一様な重力というものは物理的にありえないから、 このような結果も不思議ではない。加速系を一様な重力の静止系に置き換えると、下方のある距離に地平面ができるが、 上方はどこまでも時間の経過と光速が延びてゆく。特殊相対論の双子のパラドックスの弟が遠方でロケットを反転するとき、 地球の時間が急速に経過するのを加速系からみたときの描写と同じである。


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より現実的な 1/r に比例する重力ポテンシャルφ= -GM/r の場合の光速を同様に求める。 g を GM/r^2 で置き換え、 c(r)= c0 - v = c0 - GM/r^2∫dr/c(r)、a 〜 b の積分範囲は r の向きと逆だから微分方程式 c(r)'= GM/(r^2 c(r)) を得る。 変数分離で c(r)dc = GMdr/r^2 から c^2= -2GM/r + const,これに r→∞で、c→c0 をいれて c^2(r)= c0^2 - 2GM/r または c(r)= √(c0^2-2GM/r)。( c^2(r)= c0^2+2φ と書いてもよい。) 一様重力の場合と同じく光速の 2 乗がポテンシャルの2倍につれて 低下し、ある半径で光速が0、それを未満で光速は虚数になる。一般相対論とこの理論とでは、地平面の半径は同じだが、 この光速の式は、次の一般相対論のシュワルツシルツ解の光速 dr/dt= c0(1- 2GM/rc^2) と比べるとその 1/2 乗しか反映していない。

この論文の考察に何が欠落していたのか、時間経過は全く正しかったが、r方向の空間的な計量変化が抜けている。物差しが同程度に 短縮することを入れると、この論文の時点で、アインシュタインは、正確なシュワルツシルト解を出しても不思議ではない。 江里口良治氏の"時空のゆがみとブラックホール" に従ってブラックホールの時空を考える。 *付きの dx* を平坦時空への変換後とすると、ds^2= ds*^2 = dr*^2 + r*^2 dθ*^2 + r*^2 sin^2θ*dφ*^2 - c^2 dt*^2 ds^2 = dr^2/(1-2GM/c^2r) + r^2dθ^2 + r^2 sin^2θdφ^2 - c^2 (1-2GM/c^2r) dt^2 時間の係数が g_00= (1-2GM/c^2r) ということは、この論文ですでに光速の低下として正しく推定できているが、r方向の空間係数 g_11= 1/(1-2GM/c^2r) がない。

速度 v をもった系のローレンツ短縮では、短縮比率は、1/γ= √(1-(v/c)^2)であり、向かう速度 v の青方偏移 (1+v/c)の比率ではない。 v/c の1次の効果をもたらすのは、速度 v で向かう系の同時刻の傾きである。厚さ x のものに速度 v で向かう系のみる同時刻の厚さは、 xγ(1-v/c) である。加速系の b 点は、a 点からみると常に速度 v で向かってくる。b 点からみると a 点は常に速度 v で逃げている。 両者の関係で、1次の厚さの関係が説明できる。この比率は、v/c の 1次の青方偏移、赤方偏移と同じになるのではないか。

光速が c(r) として求まったので、この c(r) で太陽の側を通過する光線の曲りを計算する。 原点を太陽、光経路(y 軸に平行な直線)と太陽との距離を d とし、光線の曲りは、波面中の光速の傾きの経路上の線積分であるから、 光経路上の点の太陽からの距離を r とし光速の r 方向の微分 dc(r)/dr の x 成分を経路にそって積分する。∫(dc(r)/dr)cosθds であるが、この論文では、dc/dr = (1/c^2) dφ/dr であり、光速の r 方向の微分は重力と同じ式になり、その x 方向成分の積分となる。 s = r sinθ= d tanθ から ds = d/cos^2θ を使って、距離の2乗に反比例と、cosθと線分s 方向の線積分であり、 ビオサバールの式と同じ形の∫(kM/r^2) cosθds を sでは -∞〜∞、θでは -π/2〜π/2で定積分する。 ∫(kM/r^2) cosθds = kM∫dθ/r = (kM/d)∫cosθdθ= (kM/d)[sinθ] = 2kM/d

いま考察する、c(r)= √(c0^2 - 2GM/r) では、dc(r)/dr が GM/r^2 だけでなく、それにc(r) が低下した分の1より大きい 1/√...が乗算される。これの厳密解も不可能ではないが、大きさとしては結果はこの論文の結果より、1/√... の比率程度 大きくなり、太陽では無視できると思われる。

光速はスカラーではなく、空間の計量が方向によって異なる場合、方向によって速度は違う。例えば、質点の側では、計量は半径方向 に大きく dr は短い。半径方向の光とそれに垂直な方向の光は速度が同じではない。この初期の時空のスカラー理論では、このような 異方性は扱うことができない。


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15. 重力と重力波

一般相対論の重力理論は、非線形であるので、重力波は、弱い重力の近似をいれないと波動方程式にもならない。 高速物体の起こす重力場は、高速な電荷の出す電場のように、静止物体より大きな重力をだすかどうかさえ明確にするのが、私には難かしい。 そもそも重力はそのように時空に関係している必然性はあるのだろうか。もしかすると電磁気程度のものかもしれないではないか。 地球上の時刻あわせにすら実用化され、Dirac によって量子論にも導入されてスピンの発見という成功を収めた特殊相対論と比較して、 一般相対論は、数値的な精度の検証はほとんどなされていない。

ジョン・テイラーの”ブラックホール”(渡辺正訳) によると、重力波は、メリーランド大学のジョセフ・ウエーバー(1969)によって 報告がされたが、それは間違いであるとされている。長さ 1.5m 直径 1m のアルミの円筒を真空中に吊下げ、 その振動を表面に張り付けた水晶で検出する。振動の感度は、原子核サイズの1000分の1まである。近傍の振動を避けるため、 1000km離れたシカゴに2台目の装置をおいた。数ヵ月に渡って偶発的でないパルスを数100 回検出したという。 ほぼ 4 日に1回 1/2 秒のパルス状の 1600 Hz の振動で、感度の高い方向が銀河中心を指しているときに集中している。 これは、銀河中心に巨大なブラックホールがあって、近傍の星を飲み込んでいる振動と解釈された。 銀河中心からの重力波なら太陽200個分の質量に相当するエネルギーの放出であり、100年に1回しか起こらない超新星爆発に相当する。 それが4日に1回起こるのだろうか。実験結果は再現されなかった。

現在の重力波の測定は、マイケルソン・モーリー実験を何万倍も巨大化したような、直角の数キロメートルの真空パイプの中を レーザー光を往復させ位相差を測定して、原子核のサイズの何分の1、何10分の1の精度の距離測定をもってなされている。 数千万光年から数億光年先の銀河の超新星現象までキャッチする能力があるという。それでも未だに重力波は、地上で存在の確認さえ できていない。この様相は全く、マイケルソン・モーリー実験である。これは、反証ではないかと考える方が正常ではないだろうか。 重力波は、メトリックの変動の波であり、それは、それに沿う局所的物差しでは、原理的に測定できないのではないだろうかとさえ考える。

互いに回転する2重中性子星の回転の低下を説明することにおいてだけ、重力波は確認されているのである。 (Joseph H. Taylor (Princeton Unv.)等にノーベル賞が与えられた。) 地上での重力波検出にアメリカのLIGO、伊仏の Virgo そして 米欧の宇宙干渉計(LISA) が計画されている。ウエーバー実験で 10^-15、日本の TAMA 300は、300 mレーザー干渉計だが、 1999年から2002年まで世界一の検出能力(隣のアンドロメダぐらいまでの現象検出)、その将来的 3km 腕では、数億光年先の現象の検出、 10^-20 の変動検出という。しかし、私は基本的な重力波の局所検出に疑問を持つ。力なしに物体の間隔が変動し、 力で拘束されていない物体間にだけ現れ、宙に浮かせたレーザー光の反射鏡だけが振動し地球は変動しないということを、 信じられるかである。大きなサイズでは地球も軟らかいし、光はもっと容易に局所の計量そのままに伸縮する。(再考を次頁に示す。)

重力波による物差,時計の変動は局所検出は無理で、時空的に十分離れて初めて検出できるのではないだろうか。 例えば、時計の変動は、離れた場所へのメスバウアー効果で検出できるかもしれない。 そして近傍の地上現象の重力波を検出すべきだ。宇宙的現象が地上現象より 大きいという話は、疑ってよい。天体現象に頼らず、距離の点からずっと有利なバー回転による波で検出実験をすべきである。 重力自体の検出は、数cm離れた人間の拳、数m離れた人間の存在さえ容易に検出するが、遠方に届く波として確認ができないだけである。 それがヘルツのした原始的な電磁波の実験だったし、ヘルツは存在するかもしれない宇宙電波に頼らなかった。 検出できないとき、実在が疑われ、発生できないものは、役には立たない。百年間もそうなら、理論の正しさが疑われる。


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物差と時計の進みの変動は、ともにそれぞれ個別には、局所検出できないものである。 単に計量だけ変動するなら、何もない空間と鋼鉄のように硬いものも同じように伸縮するから局所の観測者には見えず、 十分離れた時空点から初めて変動を知ることができるだろう。しかし、計量の変動が局所になにももたらさないなら、それは、 計量自体の現実性を疑わせるに十分である。そのような計量の変動の意味はそれでは十分でない。

重力の本質は計量であるが、重力の変動は、物体に振動を与えるのではないか、それが重力波の検出の意味ではないか、そう思い返す。 例えば、とてもありえないことだが、地球の質量が時間的に変動するなら、それに乗る我々は体重の変化を感じるだろう。 それは、体重計で知ることができる客観的に検出可能な変動である。 重力の加速度が変動しても、周囲の物体がすべて宙に浮いているなら、局所検出はできないだろうが、 動かない硬い地面があって、人体がその上で重力加速度が変動するときは、検出できるのではないか。 加速度変動は、物体に力の変動を与えるのであるから、物の硬さによって局所で検出できるのかもしれない。

さらに思い返す。どのように質点が結合されていても、全ての質点のうける重力変動が空間的に一様なら、一様な加速度の時間的変動は、 一様な速度変動、そして一様な変位の変動になるため、局所では検出できない。重力はポテンシャルの空間微分である。 ポテンシャルは、もともと差しか検出できない本質をもつが、一様なポテンシャル勾配の変動は、検出可能だろうか。 重力カタパルトの項で説明したように、重力の時間的変動は局所検出できないが、さらに空間微分した潮汐作用は、検出可能であった。

2階の空間微分を検出するには、体重計のバネのように、又はジョセフ・ウエーバーの実験ように、固体の振動として捉えるにせよ、 それは、一点で捉えられるものではなく、微小な空間的距離の間の重力の差である。 重力の空間的微分であるから、できるだけ大きな空間的距離の間の変動をみる必要がある。 例えば、地球と月の間の距離を測定して重力波を調べようとするとき、測定しているのは、距離の変動ではなく実はバネを介した、 潮汐作用 (計量の2階の空間微分) を測定しているのである。潮汐作用は、質量に比例した力として出る。 結果として、バネの柔らかさに比例する変位として、光干渉計では浮いた鏡の位置の変動として現れるだろう。 しかし、それは重力波以外を原因とする全ての振動と区別することが難しい。直角の光干渉計で2方向の伸縮の差をとるのは、 重力波には存在しないとされ、通常の潮汐作用がもたらす膨脹/収縮の変動を打ち消すためだが、ランダムな誤差は積み重なる。

誤差以上のものが見付かれば、それは重力波の証拠となるだろう。明確な重力波の証拠を捕捉できないなら、 もともとそういうものはなかったとして、一般相対論に対する反証提示と理解されるだろう。明確な証拠を出してほしいものである。

メスバウワー効果は、昔、X線の結晶による鋭い共鳴を使って、数10メートルの高さのポテンシャル差をドプラー効果を使って 検出したのである。2地点間のポテンシャル差はそのような方法で検出できる。重力波の検出器は、光干渉計での距離測定でも、 ジョセフ・ウエーバーのアルミ円筒の振動計でもポテンシャル差のさらに空間的微分の測定である。 同じ高さの(水平)2地点のポテンシャル差の変動は、時計の進みの差の変動である。 それは、振動の影響を受けない点で有利だろうか。上下の振動は誤差になるようだ。 また、回転する2重中性子星の結合、超新星爆発現象などの天体規模の重力波は、振動周期が大きく波長が長い。 長波長の波は、空間的微分を受ける度に検出が難しくなる。空間的2階微分より空間的ポテンシャル差の方が検出が容易だろう。

しかし、通常の潮汐作用の現象を比較するなら、2つの鏡が相互に吸引、反撥するのは、その2地点の直接のポテンシャル差ではなく、 それと垂直な方向の重力差が原因だろう。そのような地上の2つの鏡の地点にポテンシャル差はないようだ。 重力波は、進行方向にポテンシャル差があるのだろうか。それは、ポテンシャルの粗密波のようではないか。それがあれば、通常の潮汐 作用のような、進行方向に垂直な面内で膨脹/収縮の変動が出てくるだろう。それがないなら、ポテンシャルの進行方向の変動もないのだろう。


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16. アインシュタイン宇宙

アインシュタインの定常宇宙論について、W. パウリ著、内山龍雄訳、相対性理論(講談社)に従って解説する。 アインシュタイン曲率 G_{i,k}は、2 階のリッチ曲率テンソル R_{i,k} とスカラー曲率 R から作られ、 4 元の発散が 0 となるものである。

G_{i,k}= R_{i,k} - 1/2 g_{i,k} R

物質の全エネルギー運動量テンソル T_{i,k} がそのまま、時空のアインシュタイン曲率 G_{i,k} を与えるというのが、 一般相対論の重力方程式である。

G_{i,k} - λ g_{i,k}= - κ T_{i,k}

数学的に導入が任意な宇宙項、λ g_{i,k} の項を導入するのは、 定常宇宙が宇宙項λと物質密度μ_0 の引力のバランスを要請するからである。 これを縮約したスカラーの式 R + 4λ = κ T をみれば、 任意の物質密度に対してそれに対応するλを与えると宇宙は平衡し定常となる。 宇宙は、空間的に球的で有限、時間的に定常な4次元円筒世界となる。

g_{i,k}= δ_{i,k} + x^i x^k/( a^2 -(x^1)^2 -(x^2)^2 -(x^3)^2 )  (i,k= 1,2,3)

g_{i,4}= 0, g_{4,4}= -1

とおけば、

R_{i,k}= -2/a^2 g_{i,k}, R= -6/a^2, G_{i,k}= 1/a^2 g_{i,k}  (i,k= 1,2,3)

R_{i,4}= R_{4,4}= 0

となる。これから、

T_{4,4}= μ_0 c^2 他の T_{i,k}= 0, T= -μ_0 c^2

λ= 1/a^2 = 1/2 κμ_0 c^2 = 4π k μ_0 / c^2

彼には定常が前提であったため、0でない物質密度と宇宙項が必要であった。λ= 0 を与えると物質密度 μ_0= 0 となり、 宇宙の半径 a は無限になる。これよりは、0 でない物質密度をとる有限宇宙の方を、合理的と考えた。 有限宇宙は、オルバースのパラドックスを避けるためにも必要であった。

λをいれると物質密度 0 では g_{i,k} が定数という一般解がなくなり、 g_{i,k}= 0 という特解のみになり、物質の存在しないとき、場すら存在しないというマッハの原理に合う。 その場合、光も真空中を伝播できず、時計や物差しも存在しないのである。


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この最初の宇宙解は、どのような手順で得られたのだろうか。これには、射影法という技法が使われている。 宇宙解は、一様等方の宇宙原理を満たす必要がある。ユークリッド的な空間を考え、その中の超球面として宇宙を考えると、 その超球面は、空間曲率一定を容易に満たす。球面を射影することで、原点から見た宇宙の大局的な姿を解く、 どのような g_ik の宇宙を与えるかを解くことを可能にしている。この最初の宇宙解であるアインシュタインの宇宙解は、 球面を赤道面に射影する平行射影を使用する。


定曲率空間を表現するために n+1 次元ユークリッド空間中の n 次元超球面上の点を赤道面 x^(n+1)= 0 に平行射影する。 ユークリッド空間、 ds^2= Σi= 1〜n (dx^i)^2 + (dx^(n+1))^2 の中に半径 a の n 次元超球面を考える。 Σi=1〜n (x^i)^2 + x^(n+1)^2 = a^2 を使って、x^(n+1) を消去する。x^(n+1) = √((a^2 - Σ(x^i)^2 ) から、

dx^(n+1) = 1/2 ((a^2 - Σ(x^i)^2)^(-1/2) d(Σ(x^i)^2) = -Σ(x^i dx^i) / √(a^2 - r^2), r = Σi=1〜n (x^i)^2

ゆえに、ds^2= Σi=1〜n (dx^i)^2 + (-Σ(x^i dx^i))^2 / (a^2 - r^2), r = Σi=1〜n (x^i)^2

これから、 g_ik= δ_ik + (x^i x^k)/(a^2- r^2) は得られる。4 次元ユークリッド空間中の 3 次元超球面が我々の空間ならば、 この図の高さ方向 x^(n+1) が時間であり、変動する宇宙を示すものであるが、射影によって次元を減らして x^(n+1) をなくし 平行射影の結果を空間とする。時間は別に定常とする。この射影は、半径 a (赤道)で特異になる。この宇宙の超球面の面積は、 射影の面積の2倍であり、有限から有限への写像である。無限空間を閉じ込める有限空間ではない。 同様に、次のド・ジッター宇宙も、虚数時間 5 次元ユークリッド空間中の 4 次元超球面を平行射影して時空としたものである。

それ以外にも射影は、いくつかあり、球の中心から南極の外接面 x^(n+1) = -a への射影は、半球の射影であり有限空間を無限に写像する。 赤道は無限の先に飛ぶ。

x^i = r/r' x^i', r^2 = Σ(x^i)^2, r/r'= |x^(n+1)|/a = a/√(a^2+r'^2)

という変換で得られた座標系では、r' を r と書き直し、

ds^2= a^2/(a^2+r^2) Σ (dx^i)^2 - a^2/(a^2+r^2)^2 (Σ x^i dx^i)^2 となる。

また、北極 x^k= 0, x^(n+1)= a から南極の外接面への射影は、北極だけが特異となり、 Stereographic projectionと言われる。 これも有限から無限への写像である。 ds^2= 1/(1+r^2/4a^2)^2 Σ(dx^i)^2 という g_ik を与え、形を変えない同形写像 (conforming transform)である。これは、アインシュタインが"幾何学と経験"のなかで言及した写像であるが、 彼の定常宇宙で使われたのは平行射影であり、周辺の計量は全く異なるものになる。 平行射影では赤道近辺の射影された剛体球は奥行きが短くなり平べったくなるが、 ステレオグラフィックでは北極近辺の射影された剛体球が遠方において巨大化する。



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17. ド・ジッター宇宙

しかしド・ジッターは、このλがある場合の g_ik に 0 でない特解をみつけた。

g_ik= δ_ik + x^i x^k/( a^2 -(x^1)^2 -(x^2)^2 -(x^3)^2 -(x^4)^2)  (i,k= 1,2,3,4; x^4=ict)

T_ik = μ_0 = 0, λ = 3/a^2

これは、4 次元擬球状世界であり、a^2= Σ(x^i)^2 で特異だから、物質のない宇宙のモデルではなく殻のある宇宙のモデルであると アインシュタインは批判した。しかし彼自身のモデルも a^2= Σ(x^i)^2 で特異であり、宇宙の果ての処理で同じ問題を抱える。 これらの宇宙論の解は、一様等方なのは、ρだけであり、g_ik は一様等方ではない。宇宙の中心部と周辺部では、g_ik が異なり、 方向にも依存する。どの点も対等という、空間的な一様等方性は g_ik にはない。

両宇宙とも宇宙の中心からある方向、例えば x^1 に離れると g_11 は、最初距離の2 乗に比例して大きくなり、距離 a の宇宙の果てでは 分母が0になり無限大になる。不変式、ds^2= g_ik dx^i,dx^k を考えれば、係数である g_ik は感度であるから、 宇宙の果てには、その方向に薄くなった殻のような周辺世界が存在する。

アインシュタイン宇宙は、定常宇宙であり、膨張もないのに周辺短縮している。それと同じく、ド・ジッター宇宙にも周辺短縮がある。 それは、計量の式の類似から言える。それは擬球状であり、球状ではない。時間軸は虚数である。斥力項の働きは反発であり、物質がないため その引力によって収縮する要素はない。無限大から半径 a に縮まり、また無限大に拡大するハイパーボリック(擬球状、双曲線)宇宙であり、 λだけで時空の半径 a が決まり、時刻 t の空間半径 (a^2 + c^2t^2) がある。φ= -1/2 c^2 (g_{4,4}+1), g_{4,4}= -1 - 2φ/c^2 として近似的にニュートン力学の重力ポテンシャルφと関係する g_44 は、周辺時空で大きく、周辺時空からの光の赤方変移が存在する。 これほどの動的な宇宙を定常というのは、アインシュタイン宇宙と同じくρが4次元一様、g_ik 斉次という性質からである。

アインシュタインは、g_ik の宇宙中心からの変化分が斉次(x^iとx^kの積に比例する)を、等方の言い替えとしたが、 これでは、周辺世界の局所慣性系を考える必要がある。私は、アインシュタイン宇宙ですら膨張宇宙かもしれないと思う。 両者は、上に凸の3次元逆パラボラ底をもち、端で落ちる散逸壁をもつポテンシャルである。


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n+1 次元中の n 次元超球 (半径 a)は、その場所と方向とによらず等曲率で次の式を満たし、宇宙の半径の2乗の逆数 α= 1/a^2 は 座標に依らない。

R_hijk + α( g_hj g_ik - g_hk g_ij )= 0

これを縮約して、R_ik +(n-1)αg_ik= 0

さらに縮約して、R= -n(n-1)α

アインシュタインテンソル G_ik も超球中では、次の値をもつ。

G_ik= (n-1)(n-2)/2 α g_ik

超球の射影の g_ik をもつことで、超球上の等曲率を確保し、上の R_hijk + α( g_hj g_ik - g_hk g_ij )= 0 が成立する。 その縮約した上記の3式に n= 3 を入れれば、R_ik= -2αg_ik, R= -6α, G_ik= α g_ik. (α= 1/a^2) が出る。

G_ik - λg_ik = -κT_ik は、(α-λ)g_ik = -κ T_ik となる。αとλが同じ値をとるとき、 T_ik = 0 となる。 塵埃の質量運動量テンソル T_ik は、3次元においてすべて 0、T_44 = ρ、 T= -ρ を仮定すると、宇宙項は、αと一致させ、 λ = αとすると、R + 4λ = κT から α= 1/2 κρ、半径 a は密度の関数、a = √(2/κρ) となる。

また、上記の3式に n= 4 を入れると、R_ik= -3αg_ik, R= -12α, G_ik= 3αとなり、G_ik - λg_ik = -κT_ik は、 (3α-λ)g_ik = - κT_ik となる。これに T_ik= 0, T= 0 とするための λ = 3αを入れると物質のないド・ジッター宇宙解がでる。

アインシュタイン宇宙解 (α-λ)g_ik = -κ T_ik の α-λ が 0 でないときと、 ド・ジッター宇宙解 (3α-λ)g_ik = - κT_ik の 3α-λ が 0 でないときとは、ともに T_ik が値をもつが、宇宙解を与えるだろうか。 4次元的 (3α-λ)g_ik = - κT_ik は、自然な解釈を許さないかを考えると、物質の圧力を導入し T_11= T_22= T_33= p とし、T_44= u (p, u ともに正) T= 3p - u から、3α-λ= κ(3p - u) を与える。アインシュタイン解の(α-λ)g_ik = - κT_ik は、 α-λ= κ(3p - u) を与えるがそれらが解と言えるか不明。


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18. フリードマン宇宙

フリードマン宇宙論については、"相対論の意味" の第二版への付録、"宇宙論的な問題"について、で詳しく述べられているので、 それに従って解説する。彼は自らの定常解を密度ρが四次元のどこも同一であり、計量が時間x^4によらず、空間x^1,x^2,x^3に関して 斉次かつ等方を条件として解を求めたと述べる。

(R_ik - 1/2 g_ik R)+ Λ g_ik +κ T_ik = 0 ...(1)

"拡張された重力方程式の第二項、宇宙定数Λは、理論を複雑にし、論理的簡単さをかなり減ずるものである。物質の有限平均密度の導入が 避けられないことから起こる困難によってのみ妥当とされる。フリードマンはこのディレンマから逃れる方法をみいだした。"

”三次元に関して等方的な四次元空間”の章で、物質の平均密度ρと、計量場の一定を捨てる場合、空間的一様等方の前提は、 四次元的宇宙の中心を通る全ての測地線を軸とする回転について不変から、四次元的球対称と考える。通常の4つの座標でなく、 x^1〜x^3 が不変で、x^4 だけが変わる時間的な線、中心を通る粒子の測地線を、中心からの距離と時間とを等しいとし、

ds^2= (dx^4)^2 - dσ^2,  dσ^2= γ_ik dx^idx^k (i,k= 1〜3) ...(2)

γ_ik= γ_ik0 G^2

γ_ik は、時間による正の係数 G を除いて同じ三次元の定曲率の計量とする。さらに、線素がユークリッド的になるように x^1 〜x^3 を採り直して、

γ_ik0= A^2 δ_ik

ds^2= (dx^4)^2 - G^2 A^2 ( (dx^1)^2 + (dx^2)^2 + (dx^3)^2 ) ...(2)

と表す。G を時間 x^4 だけの関数。A を r だけの関数 (r^2= (x^1)^2 + (x^2)^2 + (x^3)^2) とする。

A= 1/(1+ z/4 r^2) (z= 1 球状、z= -1 擬球状、z= 0 ユークリッド空間) ...(3)


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宇宙項を入れない重力方程式、 G_{i,k}+κT_{i,k}= 0 ...(4) (G_{i,k}= R_ik - 1/2 g_ik R) に、物質密度ρからくる T_{i,k}= 0 (i,k= 1,2,3)と T_{4,4}= ρをいれ、

G_{i,k}= (z/G^2 + G'^2/G^2 + 2 G''/G) G^2 A^2 δ_ik = 0   (i,k= 1,2,3)
G_{4,4}= -3(z/G^2 + G'^2/G^2) = -κρ .......(4a)
G_{i,4}= 0

G は、時間 x^4 の関数で、宇宙の質点間の計量的距離の相対的測度。z/G^2 は、ある x^4 の空間的曲率、G'/G がハッブル膨張を表す。

(z/G^2 + G'^2/G^2 + 2 G''/G) = 0 .....(5)
(z/G^2 + G'^2/G^2)= 1/3 κρ

辺々引いて、

G''/G + 1/6 κρ = 0 ...(5a)

Gとρは正であるから G"は負で減速膨張であることが分かる。G は、極小や、変曲点をもたず、ρが 0 でない限り G に定数解はない。


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空間的曲率が0 の(z= 0)ときは、ハッブル膨張を h= G'/G とおいて、

2h' + 3h^2= 0 ...(5b)
3 h^2= κρ

h からρを推定する。h= 432km/sec/Mpc = 4.71・10^(-28)、κ= 1.86・10^(-27) から、ρ= 3h^2/κ= 3.5 ・10^(-28) g/cm^3 空間の曲率は、ρと h の関係のつぎの式で与えられる。

z/G^2 = 1/3 κρ - h^2 ...(5c)

空間曲率 0 のとき、ハッブル定数は時間に反比例する。h= 2/3t ...(6)

アインシュタインは、ハッブル定数が正確という前提を持っていたが誤りであった。物質密度と宇宙の空間的曲率には、ハッブル定数の 2乗が関係し、h が10倍の誤差をもつとρと曲率 z/G^2 の関係は 100 倍も違って来る。結果は、GCマクヴィティ(1939)のρ<10^-27 g/cm^3, おそらくρ〜 10^-29 g/cm^3という推定より1桁大きい。(アラン・サンディジのハッブル定数からは、10 ^-30 g/cm^3 と、1桁小さくなる。 密度推定からのハッブル定数は、ジェラール・ド・ヴォクルールのものに近いだろう。)

ここでアインシュタインは、次のように述べる。" h の測定値からわれわれは、宇宙の現在までの存在期間として、1.5・10^9年 を得る。 この年齢は、地殻に対してウランの壊変から得たそれとほぼ同一である。これは、種々の理由から、理論の妥当性に対して疑を起したひとつの 逆説的結果である。"


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空間的曲率を0としない場合、(5)の第1式は、

z + 2GG" +G'^2= 0 ...(5d)

t を G の関数と考え u= G'= 1/t', G"= (1/t')'(1/t')=u'u (ここで t, u の'はGによる微分)。z + 2 uu'G +u^2 = 0 または、z + (Gu^2)'= 0 (ここで ' はGによる微分である)。これをGで積分し、zG + u^2G = G0 (G0は正の定数)ゆえに、

(dG/dt)^2= u^2 = (G0-zG)/G ... (5h)


(5h)から、曲率が正(z=1)のときは、(dG/dt)^2= (G0-G)/G という、サイクロイドの微分方程式になる。曲率が0のときは、(dG/dt)^2= G0/G から、 G= a t^(2/3), a= (9/4 G0)^(1/3)。t= 2/3 (G/G')、ハッブル定数の逆数の 2/3 の年齢である。曲率が負(z=-1)のとき (dG/dt)^2= (G0+G)/G、Gは0〜∞まで単調増加である。その中のρ=0のとき、(dG/dt)^2= 1 でユークリッド的であり空間的曲率が0、 (5)の第二式からも G'= 1 の直線的膨脹となる。


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(5h)から、z によらずに、G"= -G0/(2G^2) となり、(5h)とこれとが、(5) の第1式を満たすことが確認できる。 なお、式(5a)からすぐに出る、G"= -1/6 κρ G (振動解)と、式(5)の第2式からすぐでる、 G'= +-√(1/3 κρ-z/G^2) G、 (指数解又は振動解)とが上記解と一致しないのは、それらは、ρがフリードマン解では定数でなく時間の関数であることを忘れたためである。

ρとGの関係は、質量が保存されるなら ρ∝ G^-3 であるが、(G"= -1/6κρG は、G"∝-1/6κG^-2となる。) 宇宙論の場合、重力のエネルギーは、質量自体と比較できるほど大きいため、そうとは限らない。クリエーション場など無くても、 斥力項がある場合インフレーションのρ一定の膨脹すらある。斥力項は、空間が拡がっても薄まらないのである。

熱力学の断熱膨脹は、密集でエネルギーが高く、気体は、圧縮するのに仕事が必要である。ところが、重力密集は逆に、密集は、エネルギー が低く、圧縮で仕事ができる。断熱膨脹は、粒子が稀薄になるだけで温度が下がる。それは外部壁に仕事を与えるからであった。 重力気体は膨脹すると、ポテンシャルの高い場所に進むことで、運動を失い粒子温度が下がる。 外部壁ではないが、ポテンシャルの空間的傾斜に仕事をしたのである。

有限無境界状態で膨脹する場合、空間的な外部がない。ポテンシャルの空間的傾斜もない。体積だけが増大するとき、温度と質量は どうなるのか。温度が下がる理由はない。質量は、粒子がポテンシャルの高い所に進むことで、質量が増加するのかもしれない。 逆に、マッハの原理から質量は無くなる方向かもしれない。


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19. 選択膨張?

膨張宇宙説は、宇宙の膨張は、電磁気力で結合した物体や重力で結合した天体間には働かず、その間の空間、銀河間空間だけが膨張する という説明をする。宇宙の膨張は、物差しが膨張する計量の時間変化ではないと聞いて来た。

電磁気力と重力の到達範囲は、無限である。磁場はさほどでもないが、導電体といってよい真空の宇宙は、電場と電荷の偏りは小さく、 電磁気力は、このスケールではあまり重要でないと考えられるが、重力はスケールに依らない。銀河間にも重力がある。それどころではなく、 超銀河団から宇宙全体までの最大のスケールには、重力しか確認されない。そのようなとき、重力で結合した物体間には働かないと いう説明はおかしい。

フリードマン宇宙の膨張は、その原因は宇宙が拡大する宇宙項(斥力項)の力ではなく、ニュートン的なそれ自身の慣性による膨張である。 膨張は初速として最初に与えられ、その速度は宇宙全体の重力による減速だけを受ける。膨張は、ほとんど力を及ぼし合わない物体間に 明確に現れ、力を及ぼしあう物体間には、膨張の初速の影響として現れるとする。ほとんど力を及ぼし合わない物体間にも膨張の減速自体が その間の重力の存在を示す。

それゆえ、銀河間空間だけが膨張するというのは、正確には間違いである。宇宙の膨張は、普通なら吊合っている渦巻を拡大しても なんら不思議ではない。銀河自体も膨張してよい。しかし、膨張が太陽系のスケールにもあると、46 億年前の太陽地球間の距離が 2/3 になり、 その場合の地球の温度は、宇宙膨張を正当化できなくなる。そのため、選択的膨張が、解決策として出て来たのであろう。計量変化という考え に対して、すべてが膨張しては膨張でなくなる、ということはない。空間的に離れた点の計量を論じ過去の計量を云々してはならない理由はない。 計量の時間的変化を認めるフリードマン解を想起してほしい。

前章の式 (2) 時間変化する G と空間的変化 A の積 GA が空間的距離に掛けられ、不変量の式が ds^2 = dt^2 - G^2A^2(dx^2+dy^2_dz^2) であることから選択的要素は全くないことに気が付くであろう。同じ力が弱いところに大きく現れるのでなく、強度が強いところに強く、 弱いところに弱く働く、強度に関係なく物差ごとひっくるめて長さが変化する、アインシュタインの剛体球の変化である。 これは、ローレンツが考えたローレンツ短縮の原因がそうでなかったように、力はその原因でなく、座標変換である。局所の物差も含めて、 単に距離が変化するのである。そのことを思いださせる必要があるほどに、膨脹宇宙説は、風化、俗説化してしまった。


≪=BACK TOP∧ NEXT=≫

20. 赤方変移は、宇宙膨張かドプラー効果か

膨張宇宙説は、赤方変移を、光の波長が膨張したと言ったり、ドップラー効果と言ったりするが、どの分をドップラー効果とし、 どの分を空間の膨張とするのだろうか。それらは、同じことの別の説明ではなく排他的である。その過去の時空点の速度の有無が違うからである。

もし、光の赤方変移を空間膨張による波長の拡大で説明するなら、現在の宇宙の果てに見える過去の物体は静止し、光が飛んでいる間に 膨張して赤方変移したのである。その場所は、近傍から宇宙の果てまで移動したのではなく、最初からその遠方にあったことになる。 これは、膨張を否定するわけではなく、その広さが最初からあったことを意味するだけであり、その点はそこから膨張して今はその2倍 近く遠くを光速で遠ざかりつつあるとしてよい。これは、また有限宇宙を否定するわけでもない。宇宙の果てより宇宙の半径が十分大きければ、 問題ない。しかしこの解釈は、フリードマン宇宙は、初速がゼロの膨張でないことから反論を受ける。



≪=BACK TOP∧ NEXT=≫

それに対して、赤方変移をドップラー効果とし、今見える宇宙の果てがほぼ光速で遠ざかる物体のドップラー映像とするなら、 もし今見える宇宙の果てが最初から遠方で光速なら、ハッブル定数が、始りからの時間の逆数ではなくなり、 フリードマン宇宙の原則と矛盾する。そこで、それらの物体がここの近傍からほぼ光速で広がり、宇宙の果てに到達してから、 ここまで光が届くなら、この場所の宇宙の始めから広がる、膨張による事象の地平線の光円錐と、この場所の現在に収斂する光円錐の 交わる円(実は球面)が宇宙の果てであり、宇宙年齢は、宇宙の果てからの光の到達時間のほぼ2倍となり、普通に言う、 宇宙年齢が宇宙の果てからの光の到達時間に等しいこととは、異なる結論になる。これは、”簡単に宇宙年齢を2倍にする方法”である。 (杉本大一郎は、現在の地平線が 2ct の距離にあるとするが、年齢を 2 倍にはしない。("間違いだらけの物理概念"(丸善)参照。))


佐藤文隆氏は、宇宙膨張で時間的に見える領域が拡大し、宇宙の果てに外から物質が入り込んで来るという解釈をとる。それは、 最初からその遠方の(静止又は速度をもった)宇宙をみていることになる。その解釈は少なくとも、その場所が元はこの1点にあって、 ある時期にはここから 1cm にあった、というものではない。一点からの膨張では、宇宙の果ては、宇宙の始めから広がる光円錐領域であり、 時間的に変化しないからである。(参照)

過去には物差しが小さく、光速が遅かったとするとどうなるか。まず、光速が宇宙の始まりからの時間に比例するなら、dx/dt= c(t)= at, 宇宙のサイズ x が t^2 に比例するパラボリック宇宙になり、宇宙の果てからの光の到達時間は、直線の光の2倍かかる。 宇宙の果ては最初から遠方にあり、見える領域は時間によって拡大する宇宙である。ハッブル定数は、時間に反比例する。

次に、宇宙のサイズ x に光速 c(t)が比例するなら、dx/dt= c(t)= ax 宇宙が2倍に拡大するのに同じ時間がかかり、 宇宙は無限の過去からの指数拡大のインフレーションになる。ハッブル定数は、時間的定数である。

両者とも宇宙の年齢を延ばすが、膨張宇宙説の人にとって、これなら定常宇宙のほうがまだましかもしれない。



≪=BACK TOP∧ NEXT=≫

相対論の FAQ によると、膨張するゴム風船上を虫が這うイメージである。虫は方向を変える理由がないので、ゴム幕上を直進する。 虫の速度にあたる光速は過去も一定とし、ゴム幕の空間が時間に比例して膨張するという条件で、光の到達がどのようになるか。 光が有限宇宙を何回も通過しないなら、風船でなくて一次元 x 方向のゴム紐で十分である。光速が過去も一定とするため、 過去の局所光速を超えて光は到達する。光は(x, t)の時空図上を 45 度の傾きの直線をとる。現在のこの場所へ収束する光円錐である。 空間は、時間に比例して拡大し、この場所の宇宙の始まりから放射状に広がる。虫がその時空点からスタートしてもこちらに近付かない 事象の地平線があり、宇宙の始まりからの上に広がる光円錐になる。つまり”簡単に宇宙年齢を2倍にする方法”と同じ図になる(下図左(a))。

しかしこの描像は、膨張するゴム風船上を虫が這うのとは、まだ異なっている。相対論 FAQ が述べる、”2匹の虫が同じところから 時間をおいて同じ方向に出発すると、その間隔が時間とともに広がる”という性質がない。(FAQ によると、これが宇宙の膨張による 光の赤方変移であり、ドップラー効果による説明は、その1次近似という。) つまり、この虫の這うイメージは、光速一定でなく、光速が光の媒体に対して一定である。これを図示したのが下図の右(b)である。 遠方の光速は媒体の広がる速度が差し引かれ遅い。近傍で 45 度の傾きになるためには、虫のスタート時点は、昔に遡る必要がある。

しかし、光速度が媒体に対して一定というのは、特殊相対論以前の光である。光エーテルの復活がこの膨張宇宙論に本当に必要かどうかは、 疑問である。そうすると系によって光速が違い、局所においても特殊相対論が成立しないが、それでよいのかどうか。 マイケルソン・モーリー実験をどう解釈し直すのか。


FAQ を正しいとすると、宇宙の果ての光の出発時点は、更に古い可能性がでる。風船上の虫の光の経路は、現在のこの場所を (0,t0)とし、 距離に比例する空間膨張で光速が低下 (光エーテルの復活) し、c(t)= dx/dt= x - 1 とする微分方程式を解くと、 x(t)= 1 - exp(t-t0), c(t)= -exp(t-t0) となり、光の経路は、下図になる。 距離 1 からの光の到達には、無限の時間がかかり、宇宙の始まりからある程度膨張してから虫(光)がスタートしたとしても、 どの程度過去からの光か特定できない。しかしこれは、距離による光速低下を固定した定常的な空間構造であり、膨脹宇宙とはかなり違う。



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さらに光エーテル概念を復活させ、その点の速度が移動するその点にとって一定とし、その点が時間が経つと遠方になるモデルは、 速度が x/t によるものである。なぜなら、原点から初速vを保存して発散する点の座標 x は、x_i = v_it であるから、v_i= x_i/t (i= 1,2,3))。 膨脹宇宙の各点の位置 x だけでその点の速度が決まるのではなく、x/t でその局所慣性系(媒質)の速度が決まるとする。 光速 c(t)を媒質速度 x/t から 1 を引いたものとすると、c(t)= dx/dt= x/t - 1 となる。 この微分方程式は、x(t)= t(-ln|t|+C) という解をもつ(下図)。


光は、ぐるりと空間的に曲って来ている。光線は、原点(t,x)=(0,0)から発し、広がってまたもとの位置、x= 0 の t 軸に戻る。 これが我々が見る光である。宇宙の果てと見ているものは、じつはこの場所の、どこの場所でもある原点の光である。 光は、一度その宇宙の果てより外側まで行って、外側から地平線を越えて入ってくる。そのあと原点に帰ってくる。 光は、この曲線上の途中から発生してもよい。それは、最初からの光と重なってくるだろう。

宇宙の果てに x(t)= t という地平線があり、その外側は媒質速度が光速以上であり、粒子はこちらに向かえない。 x=t では、媒質速度がちょうど光速を打ち消し、ここからみる光速は 0 となる。x= t は、すべての光の曲線の頂点を結んだものになっている。 地平線を光が通過するのは、地平線が粒子的地平線であり、粒子はそれを越えられないが、光にとっては違うからである。 光はそこにしばし止まり、地平線が光速で逃げ過ぎるのを待って、こちらに向かい始める。 宇宙の果ては、現在を t= e^C とするとき、現在の 1/e の時刻の t= x= e^(C-1)の大きさである。 (現在を t= 1 とするなら、任意定数 C= 0 である。)

この光の経路は、現代の膨脹宇宙の考え方に最も近いようだが、このモデルは単純に宇宙の各点は一点から直線的に膨脹するとする ニュートン的な膨脹宇宙である。x/t の 1 以上、光速以上の膨脹も最初から存在する。粒子的領域は地平線を越えては来ないが 特異な原点以外では一度も関係のない光が地平線から入ってくるため地平線問題が存在する。この宇宙モデルも、現代的な膨脹宇宙に近く、 その問題点をも備えているようだ。

宇宙の果てと宇宙年齢の関係がこのモデルでは、明確である。宇宙年齢を150億年とするならその 1/e、宇宙の果ては 50億光年先でしかない。 光は、少なくともそれよりも近いどこかで発したのである。その地平線は、今はさらに遠くに膨脹し、ちょうど 150 億光年先にある。 しかし、もし、宇宙の果ての地平線が 150 億光年先なら、今は宇宙年齢 400 億年であり、現在の地平線は、400億光年さきになる。 これは ”簡単に宇宙年齢を e 倍にする方法”である。ハッブル定数(速度/距離)の示すのはどちらなのだろうか。 距離の推定が正しければ、それは宇宙の果てが 150 億光年であり、宇宙年齢に関する推定が正しいならそれは宇宙年齢が150億年である。 宇宙の果ての距離と宇宙年齢に同一の数字を使うのは、何か考えがあるのだろうか。


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このような曲って戻る光線を考える程の遠方の宇宙では、ハッブル定数は考慮外だろうか。たしかに、光によって測定されるハッブル定数は、 この光の経路に沿って現在の近傍で測定されたものである。しかし、ハッブル定数は、宇宙年齢の逆数であり、それ以外には、減速係数、 宇宙項しか考慮されない。それは、宇宙全体の年齢推定といってよいほど宇宙論の最重要なパラメータである。それが、深宇宙の様子によって 大きく影響をうける。本当のハッブル定数は、この単純なモデル、直線的な宇宙膨脹では各点での1/t である。しかし測定されるハッブル定数 は、次のように違ってくる。

光経路上で、速度 x/t と距離 x は、現在から昔に遡っていくと、地平線までは線形ではないが単調な対応で、速度と距離はともに上昇する。 しかし、地平線は x の最大点であり、そこから外側では、t→0 で x→0、x/t= -ln|t|+C →∞ であり、距離は下がり速度は増えるので、 ハッブル定数は、地平線付近から大きく増加することになる。このハッブル定数の遡及による変動は、光線経路に沿うための見掛の変動であり、 膨脹の時間的変動ではない。

もし、現在の近傍でハッブル定数を正しく求められるなら、その逆数は正確な宇宙年齢を示すだろう。 しかし、天体の固有運動のためにハッブル定数の測定は近傍では正確に求められない。遠方ほど精度が向上するという性質をハッブル定数はもつ。 そして、クエーサーの赤方偏移までハッブル定数が使えるという自信は、多くの天文学者は持っていない。 ハッブル定数は、適当な距離で赤方偏移が明確に存在するほど遠く、距離確認の別の方法と組み合わせられるほど近い必要があった。

例えば、見えている光が過去であることを全く考慮しないハッブル定数(点線)と、宇宙の果てから直線的に来る光のモデル(一点鎖線)と、 このモデル(実線)との3者はどれほど違うかを考えよう。見えているものが現在とすると、ハッブル定数は、現在(t0=1とする)の1/t0を計っている。 v= x。 宇宙の果てからの 45度の経路では、光は、より過去の期間を測定する。v= x/t= x/(1-x)。 曲った経路モデルは、さらに過去の大きなハッブル定数を測定する。x= v/e^v 。 ハッブル定数の測定値は、H= v/x であり、この実行不可能な、時間軸に垂直な x 方向の経路(点線)に比べ、宇宙の果てからの45度直線光モデル (一点鎖線) は、遠方で倍まで大きなハッブル定数、そして、この曲った経路のモデル(実線)は、e 倍まで大きなハッブル定数を測定する。 もし、現実がこの曲線モデルに近いものであって、それを、空間方向の測定又は宇宙の果てからの直線光と誤認するなら、 ハッブル定数は実際より大きく、宇宙年齢は実際より小さく誤認されることになる。そしてそれの訂正は、宇宙年齢の矛盾を多少とも緩和する。


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しかし、このモデルでは、逆に光の減衰は、光の経路が曲っているためにより大きくなるようにも思える。 この曲った経路モデルでは、光と宇宙膨脹とは、より小さい角度で交叉するようだ。この交叉角をθとすると、減衰の量は 1/sinθ に比例する。 また、地平線付近で光が向きを変えるため停滞している間にも物質は交叉することから、物質との交叉が大きいと思われる。 密度ρが 1/t に比例するとして、このモデルで光の経路における減衰を計算することができよう。もしそうなら、近年の加速膨脹と 解釈される減衰の大きさを説明できるかも知れない。

間違い。これは、空間的交叉角ならそうだが、これは、時間に対する距離の図である。その図の交叉角は、媒質と光の間の速度の意味である。 また、密度ρは 1/t でなく、1/t^3 としても、その積分 -1/(2t^2) の 0〜1の定積分は発散する。出発時点を原点とはできない。1/a〜1 の定積分は (a^2 -1)/2 になる。宇宙の果てからの直線光のモデルでは、速度差は、x/t + 1 = (1-t)/t +1 = 1/t 宇宙の果てから近傍まで 2〜1である。 これの 1/2〜1の定積分は、∫ 1/t dt= ln 2= 0.693 となる。曲った経路の光では、媒質と光の速度差は常に 1 である。1/e〜1の定積分は 1-1/e= 0.632 であり、この方が小さくなる。

粒子は局所慣性系からの光速が越えられないが、局所慣性系の速度には制限がない、こういう考えは、矛盾した概念だらけである。 そこでいう局所慣性系は媒質であり、光速に可算されるものである。実際は、粒子は、局所慣性系に乗っている。 これは、粒子の爆発の速度を自由にするために、座標系を持ち出しているだけかもしれない。 何もない空間に速度を与え、それに慣性を与えるような考え方は、それを否定するために、どれだけの苦労があったかを知る者にとって、 すこしく警戒する考え方である。光が遠方の局所慣性系で光速であっても、それがここにとって光速でないのは、何もない空間が膨脹している からであるという、そのこと自体に疑いをむけてもよいだろう。特殊相対論が宇宙的規模では証明されていないということは、確かだろうか。

光速に可算されない光源の速度は、色々な光源からの光も、遠方からの光も局所で同等である必要があったからであった。 光の遠方での速度は、それほどは重要ではなく、それを統一する必要はないとする考えかたがあるのも事実である。 それなら、光は遠方でだけは、光源ではないが光の媒体の速度が光速に可算されるとするのは、正しいことだろうか。 これは、正しいとも間違っているとも実証されていない。遠方では、光速一定は実証されていないとすべきだろう。

いや逆に、場所によって速度なしに時計の進みも違うことが実証されているといった方がよい。時間の進みが異なれば、光速も違って当然である。 しかし基本的にエーテルの存在が無意味になった後で、同じような空間に属性を持たせるものは、局所においても光は媒質に対して速度をもつ とする考えを復活する必要があるのではないか。そうすると、特殊相対論は、根拠を失い、その損失は大きい。これは、大きさの違いではない。 アインシュタインは、"エーテルと相対論"で、この新しいエーテルについて、速度の概念はこれには適用できないといった。 宇宙膨脹では、メトリックテンソル g_ik の場に速度の概念を適用したことにおいて、彼の考えから逸脱し、誤りを発展させたのかもしれない。


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ついでにここで、膨脹宇宙の中で光速に近い速度で船を出すとそれがどうなるか、遠方にいくと徐々に周囲との相対速度は減速するのか、 その場所にいくだけで加速されて、相対速度が保たれるのかを考えよう。直進光のモデルでは、光速に近い船は、約45度で右上に直線を描く。 周囲との相対速度は減少するが、地平線とは平行線だから、地平線を出ることはない。ところが、曲った光のモデルでは船の経路は、 x= t(ln|t|+C) という上下反転で到着した光の曲線を続けることになる。船の速度は、遠方にいくと次第に加速され、しまいには、 右上の地平線を光速の2倍で出ていく。これが、光の媒質エーテルを認めたことの付けである。この考え方は、いつのまにか 19世紀物理学 に戻っている。何物も光速を超えることはなく、そうでなければ因果性を壊すということは、恐らくこの場合も逃れられないだろう。 (しかし、光速を超える速度でも遠ざかる方向だけなら、この場所の因果性には矛盾を導かないのかもしれない。)

宇宙の果てからの直進光、この宇宙の果ては、原点から時間が経っていないという意見について:
宇宙の果ては原点から光の速度に近い速度で飛び去っている。その場所は、宇宙の始まりの時刻を止めている。 だからそこに至る時間を考えなくてもよい。という反論があったとする。特殊相対論を膨脹宇宙に適用しようとするのは、めずらしく貴重である。 しかし、光の速度に近い速度で移動する物体は歳をとらないが、それをみる我々が歳をとるのである。 原点から宇宙の果てまで物体が移動するのに必要な宇宙年齢の1/2の時間は、宇宙の中心から眺めるこちら側に存在する時間である。 ( 特殊相対論には同時刻が定義できる。A-B-Aと光を往復させて、Bで反射する時刻と同時刻なのは、光がAを出てからAに帰るまで中央の時刻とする。 宇宙の果てと同時刻になるのは、ここの宇宙年齢の1/2の時刻である。)

膨脹宇宙の泡の中では、空間は双曲面をしている。泡の中の空間は無限ということについて:
1999 年の4月の日経サイエンス、佐藤勝彦氏訳の Martin.A.Bucher、David.N.Spergel の "Infration in Low-Density Universe" は、 新しいインフレーション理論、オープン・インフレーションの考えを紹介している。その中で、擬真空から眞の真空に変る、2段階目の インフレーションを行う、光速で膨脹する泡の中の空間が無限という話である。泡の膨脹開始時点からの経過時間は、膨脹の円錐に そって時間が経たないから、同じ経過時間を結んだ双曲面が空間になる。それは、無限の広さをもつ負の曲率の空間になるという。

これは、宇宙の果ての特殊相対論的な議論と解釈でき、不思議な感動を与える。膨脹宇宙の周辺での宇宙膨脹からの局所経過時間をτとする。 v= x/t, γ=1/√(1-v^2), τ= t/γ= t√(1-v^2) = √(t^2-x^2), τ^2= t^2 - x^2 から、 局所経過時間τ一定をむすんだ超曲面は、負の曲率の双曲面をなし無限の広さをもつ。

過去の閉ざされた方向には現実に地平線があったように見えても、実際的に空間が無限というのは、光に近い速度で飛んでも 空間に限界や周期性をもたないことである。この未来の方角への光線は、膨脹宇宙では、もとより無限であった。 原点から同時刻を結んだ双曲面が無限空間とは、どういう意味があるのかは難しい。その意味を体験できるのだろうか。 ここで真直と考えている座標軸は、遠方では膨脹宇宙の円錐に沿って曲っているかもしれない。 内部の時間は外からその泡に入ってからの経過時間であり、外からみると各時点で有限の泡であり、外から入ることができるが、 出ることができないというから、少なくとも、光エーテルによる曲った光のモデルではないようだ。


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平坦を約束したインフレーションが、ダークマターが存在しない、仮に存在しても不足するという事実からの対応として、 負の曲率を招くインフレーションを考え出すのは、平坦のための不足分に宇宙項を導入して埋め合せをするより正しい方向である。 それは、宇宙の平坦性の測定によるだろうが、平坦は観測事実であるという主張は、事実誤認である。 空間的曲率は、局所で精度ある測定ができない。有効な測定はまだないと私は思っている。 平坦を前堤にして宇宙項の存在を確認したなどというよりはましである。 しかし、膨脹宇宙論に必要なインフレーションのインフラトン場という別のエネルギーを考えることは、すでに素粒子論的足場を失っているという。 この泡、光速で広がる暗い泡を爆発させてビッグバンを体験させるというこの最終兵器が原理的にも可能でないことを祈る。

速度 v= x/t で移動する宇宙の周辺の経過時間τの1/γの短縮の比率は、周辺宇宙の奥行のローレンツ短縮の比率と同じである。 その逆数γを距離 x にある間隔 dx に掛算して積分すると、∫γdx= ∫1/√(1-(x/t)^2) dx= ∫t/√(t^2-x^2) dx これは x<t では、 arc tanh(x/t)= 1/2 ln((t+x)/(t-x)) であり、t が x に近づくとどこまでも大きくなる。 これが、特殊相対論的膨脹宇宙の周辺短縮、宇宙の果てに無限の物体が薄くなって畳み込まれているという描像である。

フリードマン宇宙解の空間曲率が平坦な場合の微分方程式、(dG/dt)^2= G0/G から導かれる、G∝ t^(2/3) のとき光線の微分方程式を考える。 t= 1 を現在として、x= t^r という膨脹曲線のとき、任意の (x,t) の媒質速度は、rx/t であるから、dx/dt= c(t)= rx/t - 1 が光線の微分方程式である。この解は、r が 1 でないとき、c を任意定数として、x= c t^r - t/(1-r) である。 さらに、r= 2/3、t= 1 で x= 0 から c= 3 をいれ、 x= 3(t^(2/3) - t) になる。 地平線で光の曲線が止まるのは、dx/dt= 0 から、x/t= 1/r をつかい、3(t^(-1/3) - 1)= 3/2 すなわち t^(-1/3)= 3/2, t= (2/3)^3 となる。 この答は、x= 3(t^(2/3)-t) に代入すれば、佐藤文隆の"ビッグバン"での 膨脹因子 a(t)= 4/9 での引き返しという説明と一致する。 ニュートン的な直線膨脹と比べ、t^(2/3) 膨脹では、光の引き返し時点は昔に遡り、距離はより大きい 4/9 となる。 光曲線の頂点を結ぶ線は、x= 3t/2。ハッブル定数は、H= v/x= 2/3/t から t= 3/2/H 宇宙年齢はハッブル定数の 2/3 になる。 Hとxの関係をみれば、光曲線上のハッブル定数は、近傍で 2/3 であるが、地平線では 9/4 であり 4 倍以上、上昇する。 こんなことをいって物議をかもすのは本意ではないが、一般相対論の専門家である彼の中の膨脹宇宙は、光エーテルによる曲った光モデル、 特殊相対論以前の光と言ってもよさそうである。光エーテルは確実に復活してしまった。

"量子と実在"、ニック・ハーバート著、はやし・はじめ訳、白揚社 p.23からの引用。 "イギリスの指導的物理学者、かの高名なウイリアム・トムソンのちのケルビン卿が、マイケロソン・モーリーの実験の数年後に語った 次の言葉は、物理学者の一般的な態度を示すものであった。 "私たちにとって確実なことが一つある。それは、光エーテルの実在性と 物質性(substantiality)である。"" という言葉は、当時の学者にどれだけ先見性がなかったかを示す逸話であり、 それを私は、相対論の結びに不正確に引用したのであるが、これが膨脹宇宙論では文字通りの復活を果たている。


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一般相対論の g_ik の場は光エーテルではない。後世のひとのわざでそれに速度の概念を埋め込むことで始めてエーテルになる。 ある時空点の局所慣性系には、すべての方向と速度の多様性がある。静止から光速までの速度の多様性があるのに、 なにか決められた速度の系が伴うように扱う。それが物質の静止する系という意識をして使う。塵が漂う系と考える。 物質は局所慣性系に対して光速までの制限を受ける。時空の計量 g_ik は、物質でないが物理量であり、それは、 物質と相互作用する独自の物理によって自己発展をする。それは、物質が受ける制限を受けない。それらは、静止エーテルとしての特性である。 さらに、局所慣性系を光の伝搬の媒質として扱い、光はその局所慣性系に対して光速をもつ。 遠方からは各点の媒質の速度を可算してその点の光速を考える。それは光エーテルとしての特性である。 それが、一般相対論で全く問題のない方法であるかどうかをよく吟味する必要がある。 g_ik は少なくとも4次元時空の中で世界線を追跡できる実在でない拡張概念である。

曲って戻る光は、空間的な曲がりではない、時間と距離の図での曲がりは、速度変化である。石を真上に投げ上げ、真直に落ちてくるように、 時間軸を横に取った図の曲線は、対称的な抛物線とちがい、登りよりも墜ち方が緩やかである。向うへ進んでいた光がこちらに向かいだす、 方向転換かともとおもうと、それも方向転換ではなく、光速より速い物体からのこちら(内側)向きの光が、しばらくは向うに引っ張っていかれて いたのが、空間(?)が光速以下になると、こちらに向かい出すのである。

この光の引き返し現象は、本当にあるのだろうか。例えば、ニュートリノに質量があれば、それを追い越す系があるから、右巻き左巻きのスピンの 2種類ができると習った。光だけは、系が追い越せないものだった。系とは、特殊相対論で速度の違う慣性系の意味である。異なる場所に行くこと を、系を次々乗り替えるというのは、まるで速度をもった慣性系がその空間に所属してるようだが、 系の乗り換えであるから、粒子は、遠方に行っても加速されるわけではないようだ。

光は、系に対する速度を変えず、エネルギーと運動量を波長を延ばして下げる。それがどこまで下がっても、到達するというのは、どうしてだろう。 ブラックホールの事象の地平線のように、光が越えられない境界でないのはなぜだろうか。それは、どこでも系に対する速度が光速という仮定 だから、少なくとも少しは系を乗り換えて、何とかはい上がってやって来ることができる、ということだろうか。 ブラックホールの事象の地平線の内部から外に向かった光が引き返すのと、仕組はどう違っているのか。

粒子がその場所に行っても系の乗り換えだから加速されないなら、宇宙膨脹の中で、ある場所から光速に近い速度で飛びだした宇宙船は、 周囲との相対速度を徐々に落し、そのうち停止するということのようだ。粒子は、停止してしまうとそのあとは、系を乗り換えられない。 なぜなら、停止しているからである。その場に停止したままである。これでは、まるで速度に比例する抵抗のようだ。 粒子の性質がそれなら、もし、ニュートリノに質量があるなら、粒子の地平線を越えられず、光の背景放射はあっても、 それ以前のニュートリノの背景放射は存在しないということか。


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系の乗り換えを観測系の乗り換えと考えると、遠方にいく物体は、空間から直接影響を受ける訳ではなく、観測系によって停止するのである。 光の赤方偏移も、膨脹する観測系とだけみることで説明できる。そのとき光エーテル的描像は、不必要になる。 光の経路途中の影響はなくなり光は直進する。しかし、光の空間的湾曲を認め、時間的な光速変化は認めないのもすこしおかしい。

光速は、g_ik 自体から計算できる。膨脹宇宙の各時点の g_ik から、各時点の光速を使えば、光エーテル的描像よりもましな方法で、 曲った経路の光が計算できるかもしれない。それが同じ結果になるか調べる必要がある。そういって、やってみると全く逆の結果になった。

ds^2= dt^2 - (GA)^2 (dx^2+dy^2+dz^2)

フリードマン宇宙の計量の式に空間的間隔 dl= √(dx^2+dy^2+dz^2)を使い、ds=0 をいれると、dl/dt= 1/(GA) が光速。 G の従う微分方程式は、空間的曲率が 0 のとき、(dG/dt)^2= G0/G から、G= t^(2/3) である。 光速は、c(t)= t^(-2/3) とすると t= 1 で c(t)= 1 を満たす。 c(t) があるとき、その光の経路を表す x(t) は単純に、dx/dt= -c(t)= -t^(-2/3) なら、x(t)= -3t^(1/3) + C である(C は任意定数)。 x(1)= 0 を使い、x(t) = 3(1 - t^(1/3)) となる。この光の経路は、45度の線に見える距離の 3 倍の距離から来る逆方向に曲った 光の経路である(下図)。この光の経路は、フリードマン宇宙の計量の時間変化、G の増大ということを字義どおり使用し、 光速の時間的変化としたもので、宇宙膨脹という解釈を必要としないし、物差の縮小という解釈もいらない。光エーテルを使用しない。 しかし、膨張宇宙的結論とは、全く違う結果になっている。 この経路は、直線的な距離よりも遠い所から来ているため、光の減衰が多くなる現象を説明することができるかもしれない。


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時空点に系をひとつ与えると、局所の特殊相対論によって、それに速度を持った同じ時空点のすべての局所慣性系にも光は光速をもつ。 それによって時空点が系をもつこと実体化する。ところが、それと異なる時空点からみるとそれは、光速ではない。 それが一般相対論の正しい方法だろうか。g_ik は系ではなく、座標変換の不変式の係数である。その時空点の性質を代表する値であるが、 系に依存する。別の系からみると同じ時空点の g_ik は異なる値をもつ。

ある時空点の g_ik 場を速度をもった系だとするのは、電磁気で力線を物質的実在とみて、電磁場の速度を考えるのと同様に、 怪しい方法であろう。ある系で磁力線があって、それを速度 v で横切る電荷の系では、磁力線が速度 v で横切っているとみるわけではない。 電荷は電場を見ているのである。電磁場は観測系によって変換されるから、場の速度とは、一種、混乱した概念である。 g_ik 場も観測系によって異なるから、それに速度を与えるのは同様の問題がある。 電磁場が系によってローレンツ変換されるように、g_ik もローレンツ変換される訳ではない。 g_ik は変換方法を表す不変式の係数である。 しかも、局所慣性系では、g_ik は、g_00= 1, g_11= g_22= g_33= -1 というミンコフスキー時空の標準値である。

物質の移動は、光円錐の中だけで、光の移動ですらこのように制限されるという光円錐を、曲がる光の膨張宇宙に書き込めば、 次のようになる(下図)。それらの光円錐は、媒体の速度によって、吹き流しのように、色んな方向を向いている。 時空点に、小さな光円錐を描くのはすべて、一般相対論の光エーテル的理解であるといって良いのかもしれない。

ある時空点を通過する光は、均一でどこから来た光も等しい性質をもつ。その時空点の全ての局所慣性系は、その光とは光速の関係にあるが、 互いに光速までの全ての速度をもつ。それゆえ、その系の速度をその点の光の速度(これを遠方から知ることができるとして、)から光速を 引いて与えることはできない。その時空点に唯一の速度を与え、その時空点の標準的な静止系を設定するのは、特殊相対論的に誤りである。

光エーテルを認めるなら、特殊相対論を否定することになり、マイケロソン・モーリー実験を説明できなくなり、物理は一からやり直しになる。 2種類の曲がった光経路の光エーテル的描像、dx/dt= rx/t - 1 (r= 1, 2/3) では、ある時空点の光速を、その時空点の媒体速度 rx/t と 光速 1 の差で与えている。光速 1 は、この場所からみた光速をそのまま、遠方の局所に適用している。 順序としては、媒体速度を先に与え、光の経路がそのあとに求まる。

そうではなく、遠方過去の光速を g_ik 自体から先に与え、光経路を求めたのが、dx/dt= -c(t)= -t^(-2/3)、x(t)= 3(1 - t^(1/3))である。 それは、全く反対の性質の光経路になる。より遠方の空間からの光の経路にみえる。しかし、これが宇宙の膨張や収縮を表している訳ではない。 光エーテル的概念では、光経路 x(t) があると媒体速度は、dx/dt + 1 になるが、光経路 x(t) の微分 dx/dt に先与の光速 c(t) を加算した 媒体速度 dx/dt + c(t) は常に 0 である。局所光速は 1 だが、ここから見るその時空点の光速は 1 ではなく、計量から直接に求まる。


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21. フリードマン宇宙解の計量

フリードマン宇宙解(18 章)の、計量を作り出す方法は技巧的であり、ふつう測地線は局所慣性系、ミンコフスキー時空という 一般相対論の前提を覆すものである。光速が 1/GA であるから、過去Gの小さいとき光速が大きく、宇宙の周辺は、z=1 では A が小さく 光速が大きく、z=-1 では A が大きく光速が小さい。

g_44= 1, g_11= g_22= g_33= -(GA)^2

-(GA)^2 は、時間的に変化する空間的計量である。曲線の空間的グリッド、メッシュを考えるとき、空間的計量の大きいところでは メッシュ間隔が狭い。GAが小さかった過去には、空間的メッシュは大きかった。物差しは計量 g_ik の逆数の平方根、1/GA に比例するから、 過去の剛体の物差しが大きかったか、時間の経過が速かったとなる。これは、過去の世界がすべて小さかったという、常識的イメージの逆である。 この計量の意図したと思われる常識的な膨張宇宙、過去の小さい世界では物差しも小さかったというイメージは、実は成立しない。 物差しは過去には逆に大きかったとなると、膨張宇宙は表現しようもない。ある時刻の宇宙の空間的サイズの測度という G も、 そのまま受け取ることができない。その逆数が宇宙のサイズに比例する。G の膨脹は、実は宇宙の収縮であると私には思える。

例えば、宇宙の晴上り時期の水素原子は、宇宙のサイズが現在の 1/1000 のときのものだとするが、物差である水素原子が現在の 1000 倍に大きいというのでは、宇宙の膨脹を考えることはできるだろうか。それは、物差ごとに物体が収縮してきたと表現すべきことがらであり、 膨脹してきたということではない。光が空間を飛んでいる間に空間が膨脹して、光が数 1000 度の黒体放射から、2.7 度の黒体放射に変化した、 とする話は、もともと水素原子が大きかったから、波長も長かったとするならまだ理解できる。

このように、式がその意図に反する理由を理解するのは難しい。しかし、言えることは、計量の意味を本気で考える人はいなかったと いうことであろう。アインシュタインも、このフリードマン宇宙を認める際に、天文学の膨張の発見が先にあった。 観測が理論を導く流れがあるとき、理論の細部の不備は無視される。

それにもまして重要な点は、この計量を導く際、4次元空間の一様等方でなく、3次元空間の一様等方を採用し、4次元空間を球対称にとり、 時間を半径とし、3次元超球面を空間としたことである。それは、有限無境界空間を前提に入れることである。この前提では、無限空間は、 無限の未来にしかない。時間的に閉じない場合に初めて空間的無限が存在する。最初に無限の空間を置くことはできず、宇宙解を4次元球対称解 に限定する。このことは、この部分の数学的扱いを知って初めて明らかになる膨脹宇宙論の基本的思想であり、それ自体に疑いを持つ以外には 否定できない事項である。

もともと粗雑な比喩であると思っていた、ゴム風船の上の虫は比喩ではなかった。彼等は、この宇宙を脹れつつあるゴム風船であると 本気で考えているのである。時間軸が宇宙の中心からの距離なら、空間の大きさは、単調に時間の関数として決まるのが普通の答えである。 G がサイクロイド解を得たりするのは話としておかしいのではないだろうか。



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パウリの"一般相対論"では、フリードマン計量は、アインシュタインのGAに相当するものをR(t)とし、

ds^2 = R(t)^2 dσ^2-(dx^4)^2, x^4 = ct

と書かれているが、アインシュタインの "相対論の意味" との重要な違いとして、 "x^1, x^2, x^3 が R(t) を単位とし" ているとし、 "g_44= -1 なので、光速は一定" と解説している。空間距離が R(t) を単位としていて、その後に R(t)^2 を掛けるから、 空間距離をR(t)を単位にしないもとの単位に戻すと、

ds^2= dσ^2-(dx^4)^2 ,x^4 = ct

となり、R(t)が消え去る。R(t)がどうであれ、この式がミンコフスキー空間を導くから、膨張宇宙論で光速が一定という話は正しい。 しかし、問題はそうではなく、宇宙膨張が一般相対論の重力方程式の解だった計量と関係を失うことである。 R(t)が数学的に任意の関数であり、宇宙の計量的な物理的現実に関係のないものとなっている。それは、大きさに比例する単位が原因である。 "空間の膨張に追随する物体については、空間座標 x^1, x^2,x^3 は一定である。"という、空間座標を共働座標とするという考え方は、 膨張宇宙論の計量の式を全く無効化する働きをし、R(t)すら計量の式から消え去る。 これは、数学的な詐術であり正しい処理とは思えない。少なくとも、もとのフリードマン計量の式と異なるものになっている。

これで膨張宇宙論は、収縮する物差しという概念から解放され、ミンコフスキー空間を導くから、膨張宇宙論で光速が一定となる。 これは、膨張宇宙論の秘密であろう。そして、宇宙的な光速一定と空間の膨張という概念に遊ぶことができるのである。 空間の速度、光エーテル的な説明もこれによって正当化できるのである。そうか、そういうことだったのかと納得する。

しかし、これはパウリの誤解かもしれない。フリードマン宇宙の膨張解の計量が、彼の言うように共動座標上であったなら、 共動座標からみると宇宙の膨張も収縮も物質の移動としては存在しない。計量の意味が物差しの縮小だけなら、 共動座標からみる縮小する物差しは、もとの座標からは、一定の物差し、共動座標での光速の縮小が、もとの座標で光速の一定となる。 つまり、ミンコフスキー空間でのニュートン力学的な物質の飛散する膨張宇宙である。それは、一般相対論の正しい解とは言えない。 どのような膨張の仕方 R(t) も、もとの空間の物差し時計に影響できないのである。


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22. 膨脹宇宙解とブラックホール解

このフリードマン宇宙の4次元球対称解では、時間を宇宙の中心からの距離とし、3次元空間を4次元超球面とすることから、 シュワルトシルトのブラックホール解の地平線の内側に様相が似ている。

ブラックホール解では、極座標表示の角度θとφ方向の計量は影響を受けず、時間tと中心からの距離rが影響を受ける。 事象の地平線の内側では、(1-2GM/r)が負になるため、t と r の役割が入れ替わり、空間的なブラックホール中心からの距離が 外の世界の時間の役割をして、物体は不可避的に中心に進む。

ds^2= (1-2GM/r) dt^2 - 1/(1-2GM/r) dr^2 -r^2 dθ^2 -r^2 sin^2θdφ^2

これを極座標でなく直交座標(t,x,y,z)で書くと、次になる。

ds^2= a^2 dt^2 - b^2 (dx^2 + dy^2 + dz^2)

a= (1-GM/2r)/(1+GM/2r), b= (1+GM/2r)^2

dt^2 の係数 g_00 を 1 に正規化すると、

ds^2= dt^2 - (1+GM/2r)^6/(1-GM/2r)^2 (dx^2 + dy^2 + dz^2)

これは、フリードマン宇宙解の光速 (1/GA) を (1-GM/2r)/(1+GM/2r)^3 とするのと同じである。右辺の G は、重力定数であり、 (1/GA) の G は、フリードマンの宇宙サイズである。同じ文字を使ったが別物である。フリードマン宇宙解では、この空間係数は、 空間的距離に依存する項Aと時間に依存する項Gの積であるが、ブラックホール解では、中心からの距離 r にだけ関係する。

違いは、宇宙解には物質密度ρがあることである。ブラックホール解では、中心にだけ質点があり、それ以外の部分に物質密度を考えない。 たしかに条件の違いはある。条件の違いがなく解が違うなら、少なくともいずれかが誤りである。それでは、ρ= 0 のフリードマン宇宙解は、 なぜブラックホール解と違うかというと、それは、中心質量が 0 だからである。ρ=0 でも違いがあるといえる。

膨張宇宙解とブラックホールの内側とは、時間反転の様にみえる。一点に収束するのではなく、一点から拡大する膨張宇宙と似るのは、 ホワイトホールであるが、それらは、同じ解の時間反転でしかない。しかし、問題はそれでなく、これは、同じ方向の現象なのである。

ブラックホールの時空の地平線の内部では r が 0 に近づくと GM/2r>1 となり、 a は -1 に近づき、 b は 1/r の2乗に比例して大きくなる。 これは、宇宙膨脹で (GA)^2 の G が時間関数として大きくなるのと同じ方向である。 このことは、前章に述べた宇宙膨脹が実は収縮であることから理解できる。 ブラックホールの内部では r に比例する物差の収縮がある。 それは曲率0の宇宙膨脹では物差が t^(2/3) に反比例して収縮することと似ている。

宇宙とブラックホールの内側を同一視するのは、通俗SFか初心者のイメージと笑われることが多いが、 笑って思考停止するのは止めたほうがよい。それらは実は殆ど区別できないからである。


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23. WMAP衛星の観測による宇宙の年令・運命、ほぼ結着?

2003 年 2月11日、NASA は、人工衛星 WMAPによる宇宙背景放射の測定(100万分の1度の精度)をもとに、宇宙の温度分布図を作成、 宇宙の寿命を137億年 (135億年〜139億年(誤差1.5%)) とする発表を行なった。

物質は4%、ダークマター23%、残りの73%はアインシュタインの宇宙定数(ダークエネルギー)とする。ハッブル定数は、71 (68〜75)。 宇宙は平坦(曲り方3%以下)で、加速膨脹を続け、800 億年後の宇宙のサイズが現在の100倍になるという。最初の天体形成は、誕生から 2 億年というのには驚く。宇宙の温度分布図だけから、宇宙定数の存在と大きさが決り、宇宙の年令を確定できるという。

宇宙定数は他に存在の証拠は全くない。(*) インフレーション理論の存続のため、平坦性を前堤にして、長い間多くの研究者を悩した ダークマターの不存在のつけを、不確かな宇宙項のせいにしただけである。それによって、どうして宇宙の年令が確定したというのか。 平坦であるための物質の欠損分を宇宙定数に割り当てると、年令が伸ばせ、ほぼ無矛盾な宇宙年令が計算できるというだけのことである。 都合がよすぎる。ダークマターを約束し、それが嘘だったインフレーションも責任を取らされず再び安泰なのか。ダークマター探しを させられた研究者は、ダークエネルギーにはどうするのか。それは、物質ではないから探しようがない。確かめようのない仮説である。 そういう論理は、そろそろ見限ったほうがよい。

その前堤である平坦の証拠(宇宙の曲率測定)が、背景放射の乱れの分布では無理があり、これを宇宙定数の測定とすることは到底できない。 これを"宇宙論の議論を終息させ、宇宙論を推測から精密科学にした"とは、よくも言ったものである。

(*) 1995 年からハイゼットグループの測定による、遠方の超新星から予測した明るさよりも約 25% 暗かったことから、宇宙定数の存在 を初めて測定したという報告があるが、その結論は確定的ということはできない。


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24. ニュートン重力再考

ニュートン重力、F= GMm/r^2 は、Mm の積に比例する双線形(bi-linear)である。 m が受ける重力は、Mに比例する。 空間に分布する質量の場をρと書けば、場のもたらす任意点の重力は、電磁場と同じく線形である。

F(ρ1 + ρ2)= F(ρ1) + F(ρ2)

地球の表面で、中心向きの重力 F(ρ)があるなら、逆に一様に物質が分布している中の空洞の表面の重力は、-F(ρ) だろうか。 空洞表面には空洞表面に中心から外側に向く重力があることになる。


ところがこれは、よく知られているように、球対称の質量分布では、中心から半径 r の点への重力は、 r より内側部分の質量が全て中心に集中している重力と同じであり、 r より外側は、打ち消しあって関係ないという、ニュートン力学の常識とは、相容れない。

この疑問を解くため、次のように考える。空間的に一様なρのもたらす重力は、球対称に中心から r の点で、r に比例する重力になる。 半径 r の球の質量が、r^3 に比例し、重力は距離の2乗に反比例するから、r に比例する。これは、ばねの力学になり、1次元的には 単振動である。それなら空洞表面の重力は 0 であり、人が空洞に中心を上にして立つことはない。そして、これで解決だろうか。


そうではない、一様なρのとき、どこかを宇宙の中心にすることに必然性はない。どの点を中心と考えても、現実的な力学を与えると いうことは、あり得ない。これは、宇宙の一様等方の前堤とは関係なく、それ以前の問題である。


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25. 重力ポテンシャルと宇宙項

半径 r の一定の厚さ d の球殻の星の数は、r の2乗に比例する。光の強さが距離の2乗に反比例しても、中心に及ぼす光量は r によらず、 同じ大きさで影響する。これを r= 0 から無限まで積分すると発散する。オルバースのパラドックスをこのように球殻で説明し、 一定の厚さの球殻による一定の増加、その光の総量は無限大という説明は、光が物体に吸収されると途切れることを忘れた、 明らかな間違いである。

しかし、重力は、なにものにも吸収減衰されず、その影響がそのまま届くとされる。オルバースのパラドックスの重力版は、無限大の破綻 に出会う。半径 r の一定厚さの球殻の質量は、r の2乗に比例し、距離の2乗に反比例する重力は、r によらず同じ大きさで中心に影響する。 これを r= 0 から無限まで積分すると発散する。もちろん、完全な球対称なら、中心への重力は、ベクトルが打ち消しあって0となり、 積分しても0であるが、打ち消しは、球殻内の質量の一様性によるので、それからのずれは、どこまでも積算され発散する。


重力をスカラーの空間的傾斜(勾配)で説明しようとする重力のポテンシャル GM/r は、球殻が一様でも打ち消し合いはなく加算される。 半径 r の球殻の質量(r^2 に比例)が及ぼすポテンシャルは、r^2 と 1/r の積で、r に比例する。これは、r=0から無限遠までの積分をする 以前に、無限遠の球殻のもたらすポテンシャル自体が無限になる。ポテンシャルを破綻させないために、ρ一定を捨て、周辺宇宙の密度を 減少させると、ρ(r) ∝ 1/r で球殻の影響は、r に関係なくなり、有限になるが、積分は発散する。ρ(r) ∝ 1/r^2 でも影響は、1/r であり、 まだ積分は発散する。1/r^2 よりも急速に密度が減少するとき、初めて積分が発散しなくなる。つまり、そのような条件に入らない 一様密度の無限宇宙には、厳密なニュートン力学の適用はできない。

重力のポテンシャルが遠方で有限なら、統計力学の法則に従って星の散逸現象がいつまでも続く。これは、定常でなくなる。 逆に遠方でどこまでもポテンシャルが上昇するなら、遠方の星の運行は、高速に見えなくてはならない。これは、現実と合わない。 基本的に、現実の宇宙で星の分布が遠方で疎らということは、ありそうもないことである。

C.ノイマン、ゼーリガーによる、Φ= Aexp(-r √λ)/r という指数関数的ポテンシャルを導入すれば、この困難が避けられる。 φ= exp(-ar)/r のとき、φ'= -(a+1/r)φ、φ"= (a^2+2a/r+2/r^2)φ、lim r→∞ φ"= a^2φであるから、それは、ポアソン方程式 ΔΦ= 4πkμ_0 の代わりにΔΦ-λΦ= 4πkμ_0 を導入することに対応する。この式では、一様密度μ_0に対する一様ポテンシャル Φ= -4πkμ_0/λ が存在できる。

このことは、一般相対論の重力方程式でも同じであり、斥力項のない重力方程式では、星の散乱をくい止め、星の速さが速く見えない 境界条件は設定できない。それゆえ、G_ik - λg_ik = -κT_ik(縮約して、R+4λ= κT ) という、共変性に触れず、エネルギー運動量 テンソルの保存則を崩さない斥力項λが導入された。それは定常性以外の理由では、正当化され得ないものであった。 彼がワイルに宛てた葉書では、"ド・ジッター宇宙は、任意の2点は、互いに遠ざかり、その速さはどこまでも速くなる。 準静的な世界が実現しないなら、宇宙項などお払い箱だ。" とある。


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実際の重力は、宇宙に適用してすぐに無限大に遭遇するような、数学的なもろさを持たないだろう。重力版のオルバースのパラドックス も無限大を導いてはならない。それに対応する力学法則は、ニュートンの重力方程式ではないであろう。一般相対論の斥力項も、これを 解決するために導入されたのである。

指数関数入りのポテンシャル Φ= Aexp(-r √λ)/r は、距離の関数が異なるだけで、質量Mについて線形なので、重力場の線型性をもつ。 しかし恐らく重力も、一度効果を与えたら消え去る量子でできていて、通常物質では、ほとんど透明ながら、物質は重力を幾らかは遮ると みるべきだろう。重力場に線型性はなく、その式は、光の遮蔽のような質量による重力遮蔽があるだろう。

質量自体もエネルギーである。ポテンシャル中の質量もエネルギーである。無限遠から来た質量は、ポテンシャルの低下分だけ加速され 動質量が増える。質量は、周りの質量のために増加する。質量の一部は周りの影響であり、m には M の分が含まれる、マッハの原理である。 ポテンシャルエネルギーを質量に換算して、m= m0(1 + GM/rc^2) これをニュートン重力の式にいれると、F= GMm0/r^2 + (GM)^2m0/r^3c^2 これを r で積分し重力ポテンシャルは、Φ= -GM/r -1/2 (GM/rc)^2 となる。しかし、Mの2次項がある重力の式は、物質による重力の遮断 ではなく、逆に重力の相乗効果である。付加項が元の式と同符号であるから、ρ一定の宇宙の重力ポテンシャルの発散は解決しない。(*)

光のオルバースのパラドックス "夜空はなぜ暗いか" が無限大に発散しないのは、星が点光源でなく、0でない視角度(立体角)をもつからである。 ある半径の一定の厚さの球殻は、一定の光量を加算するのではなく、星の輝度(光量/視角度)の一定の面積(立体角) ds を加算しようとするが、 すでにその r までの星の存在する角度分 ∫ds は、その外側からの光を遮り、塞ぐ。積分は、そこまでの星の立体角に、一定の面積 ds *(全立体角 - そこまでの立体角∫ds) を加算し、∫(ds/dr)(4π-∫ds)dr になる。その無限遠までの積分は、有限である。夜空は、星々の 輝度で埋めつくされるだけである。星ぼしの輝度は、太陽表面の数1000度ではない。光を遮るすべての物質の平均温度、黒体温度は、 絶対温度2.7度である。この光のような関係が、重力にもあるだろうか。

2.7度の黒体輻射が説明できたとしても、赤方偏移は説明できるだろうか。斥力項が物質密度より大きい場合、g_44の大きさが周辺で大きく ド・ジッター宇宙のような行動をし、赤方偏位をする。ド・ジッター宇宙は宇宙の大きさが変化しても、物質密度=0が不変だから定常の枠 にいれることができる。密度が時間的に変動するなら定常とは言えない。


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(*) 気体の圧縮にはエネルギーを必要とするから、全体のエネルギーは増大して当然だが、重力収縮にはエネルギーを必要とせず 逆にエネルギーを出す現象である。エネルギーが低下する方向の変化は、自然に進行する。惑星が太陽に合体収縮しないのは、 横方向速度をもつからであり、天体はそのうちに速度を失って、天体は自然に合体し収縮する。収縮のとき運動エネルギーが得られる。 物質が宇宙に一様に分布することは、エネルギー的には最も高い状態であるから、不安定であり、これは定常ではありえない。 重力収縮においてエネルギー、質量がどうなっているのか。質量と重力ポテンシャルは関係がないとするのが通常の理解であるが、 それの異論を考える。

深い重力井戸の中で時間経過が 1/2 に緩やかであるとき、ニュートン力学の F = ma という力と加速度の関係はどうなっているのか。 時間は慣性質量の逆数で、慣性質量 m が大きくなって加速度が小さいとみるのだろうか。 特殊相対論の相対運動では時間経過の低下には質量の増加が伴っていた。重力ポテンシャル低下による時間経過の低下は、それと違って 質量も低下するのだろうか、謎である。 相対運動では、F= ma は、速度に垂直な力は、ローレンツ変換で 1/γ に弱まり、加速度は、1/γ^2 に弱まっていた。横質量はγ倍、 速度が小さく時間をγ倍かけないと同じだけ変位しない。速度は、1/γ、横変位は 1 のままであった。

物体は、集合するとエネルギーを増やす、それを質量に換算すると、質量を増やすという上の解釈、 これは、エネルギーは質量と等価であり運動エネルギーも質量に換算できるからであるが、 それに対して、重力現象においても全体の質量、エネルギーは変化しないという考えもありえる。 運動エネルギーが発生した分だけ、ポテンシャルの低下した場所にいるとき質量又はエネルギーが低下しているのではないか。 無限遠の平坦な時空からあるポテンシャルの地点に物体を持ってきて物体が運動エネルギーを得るのは、そのポテンシャル低下分を 埋め合わせているに過ぎないのかもしれない。引力によって結合すると物体は発生する運動エネルギーを散逸させれば一般に軽い。 物体が結合するとき、取り出す運動エネルギーの分(重力ポテンシャルの低下分)だけ質量欠損する。 それは、水素よりもヘリウムの方がより強く物質が結合し、質量欠損分を核融合エネルギーとして取り出すのと同じである。 重力ポテンシャルは、質量と慣性を決めているのかもしれない。これは、周囲の質量が物体の質量を減らすことになり、 マッハの原理の逆になるが、そのことが宇宙的な場合のポテンシャルの発散を防ぐかもしれない。 そうすると、二物体が遠くから近付くだけで、質量を増やすということはなくなる。しかし、物体が収縮して質量を減らすのなら、 遠方から物体がブラックホールに落ちるとき、地平線では質量が0になり運動エネルギーだけになるのではないか。 質量が全て0になるなら、地平線では運動エネルギーも0になる。これではブラックホールは得るものがないという不都合なことになる。

つまり、物体の集合において、次の3説があり得る。

(1)運動エネルギーの分だけ増加する説(質量は不変)。これは常識的説だがなぜ増加するのかが理解できない。 物体は配置によって質量を変えるものではないのではないか。

(2)運動エネルギーの分、質量が減っているという説(全体エネルギーは不変)。質量がポテンシャルエネルギーの低い場所にいるだけで 低減しているのではないだろうか。運動エネルギーを加算した全体のエネルギーは一定とする考え方である。

(3)質量は不変で光速の低下によって物質のエネルギー mc^2 が減る説。 c をその場所の光速とする。 (全体エネルギーが不変)慣性を決める質量は変化せずに、ポテンシャル低下に伴う光速の低下によって静止質量のエネルギーが 低下しているのではないか。


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26. 天文学の要約

"銀河系外天文学" T.A.アゲキヤン著(1966)、笹尾哲夫訳、地人書館を、大変に素晴しい内容の本なので、紹介する。 著作権侵害かもしれないが、学生のノート、レポート程度と考えて欲しい。

星の等級は、古代ギリシャのヒッパルコスによって付けられた。最も明るい星を 1 等級とし、やっと肉眼で見える星を 6 等級にした。 視覚の特性によって等級は明るさの log に比例し、1等級下がると、2.512 倍の光量になる。5 等級の違いで光の量 I (I = L/4πr^2) は 100倍違うので、 m= -2.5 log I + C 同じ星を 10 pc(32.59 光年)の距離に置いたときの等級を絶対等級Mという。 M = m - 5 log r + 5 太陽の見かけの等級は、-26.7であり、絶対等級は、+4.9である。太陽は近傍の恒星より多少明るい。

太陽系の近傍の恒星の距離は、年周視差を使って求められる。地球軌道半径(1.496億km)の視差を1秒角にする距離を 1 pc パーセク (Parallax secondから) と呼び、距離の単位にする。(3.259 光年) 1pc は地球軌道半径の 206265 倍、3.08*10^13 km である。(30兆km) 最も近傍の恒星は、ケンタウルス座のプロキシマ 1.31 pc、アルファケンタウリA,B の1.32 pc、バーナード星の1.84 pc である。 それぞれの絶対等級は、+15.7, +4.7, +6.1, +13.1である。三角測量で星までの距離を測定できる範囲は狭いが、6000個の恒星の距離が 測定されている。

太陽付近の恒星の密度:暗い星は遠方では見えないため、距離に対する恒星密度は、遠方ほど低下する。5pcで0.08、10pcで0.04である。 周辺の恒星分布から近傍への外挿で 0.133個/pc^3 という値が得られる。一辺2pcの立方体に1つである。

恒星の基本的な物理的指標は、絶対等級とスペクトル型である。星のスペクトル型は、一列に並べることができる。(O-B-A-F-G-K-M) (Oh Boyi A Fine Girl Kiss Me)と名付けられる。アルファベットが欠けるのは、歴史的理由である。スペクトル型は、さらに細かく 10に分けられ、O, B0〜B9, A0〜A9, ...と並べられる。太陽は G4 とされる。スペクトルは、星の表面物質の吸収線で、O は、 電離ヘリウム,2 重電離酸素、 B は、電離酸素、電離窒素、 A は、水素、 F は、電離金属、G,Kは、非電離の金属、 M は、酸化チタン などの化合物が特徴である。水素は全てに存在するが、B7〜A3において強い。

しかし、星に化学組成の違いがあるのではなく、温度だけによってスペクトルが違うのである。(O:50000度, B0: 25000, B5: 15600, A0: 11000, A5: 8700, F0: 7600, F5: 6600, G0: 6000, G5:5520, K0: 5120, K5:4400, M0:3600, M5:2700) スペクトル型が測定できない場合、 青色感度の強いフィルムと普通のフィルムの2種類の等級差による色指数 CI = m_ph - m_pv で温度を推定する。

質量ー光度関係:恒星の質量は、二重星の観測で得られる。恒星の光度は、温度に関係するが、絶対等級Mからおおよそ、直接換算できる式がある。 m= 3.89*10^(-0.1194M) mは太陽質量(2x10^33gr)単位。温度と絶対光度があると、温度の4乗に比例のステファンの法則 1cm^2あたりの毎秒 のエネルギー 5.71*10^-5 T^4 erg/sec を使って、表面積S、そして半径 rが求まる。


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変光星:太陽活動は、11 年の周期をもつが変動の巾は僅かである。大きく変動する変光星が存在する。ケフェウス座のδ星で最初に 発見されたためケフェイドという変光星の型があり変光星の大半をなす。星の重力収縮による高熱化と、膨脹による低温化とを繰り返す 周期的変動をし、2倍ないしそれ以上の光度の増大と緩やかな減少がともなう。2日〜20日周期の長周期ケフェイド、8時間〜18時間の短周期 ケフェイドに分かれ、両者は排他的に存在する。それ以外に半規則変光星、不規則変光星がある。ケフェイド型よりも激しい変動を、 数百日単位で又は一定しない周期で行う。例えば、かみのけ座X星はカオス的な光度変化をもつ。かんむり座R星は時たま急に暗くなる。 ふたご座U星は、ときに急に明るくなる。時間をおいて撮影した写真をブリンク・コンパレータで急速に切替え、瞬くのが変光星である。 光度曲線が分かれば変光星の型を特定できる。また、大部分の変光星は巨星、超巨星であり、遠方からも観測できるため距離測定で 重要な役割をした。

新星と超新星:新星現象は、恒星のあまり深くない層の爆発現象。新しい星の誕生ではなく、その場所には必ず古い写真にあわい星が 見付かる。暗い星(絶対等級M=6〜8)が数日で、M= -6 〜-7になり、もとの数十万倍の光度を出して閃く現象である。 数日で、10^45〜10^46 erg、太陽が 1 〜10万年かかって放出するエネルギーに等しい量が放出される。 光量は次第に減少し、ときには小規模の増光を伴い、10〜20年でもとの状態に戻る、一時的な現象である。 飛び去る質量は、星の質量の10万分の1である。

超新星現象は、重く大きな星の一生の最後の星深部で起こる爆発現象であり、数か月から数年に渡って、数十億倍の光度になる。 M= -12〜-18になり10^49〜10^51erg、太陽の数十億年分のエネルギーを放出する。物質放出の速度は、6000km/sec にもなる。 爆発によって飛散する質量は、星の質量のかなりの部分、少なくとも数%以上である。残骸に星雲を残す。 約100年に1度程度起こるとされる銀河系での超新星は、歴史上3回記録されたが、望遠鏡ができてから観測されていない。 超新星がなかったためではなく、銀河系は、対称面上のチリのため、他の銀河より条件が悪いのである。

スペクトルー光度図:横軸にスペクトル型を縦軸に光度を取り、その中に星のプロットを取ったのが、ヘルツシプルング・ラッセル(HR)図である。 その中の位置は、何らかの共通性によるだろうが、星の年齢か、化学組成か、それらの本質を考えることは難しい。しかし、事実として5つの系列 に分かれる。主系列星が右下(0.0001 太陽光度)から左上(1万太陽光度)にかけてS字型に分布し、その下に並行して主系列に比べて1/4から1/5の 光度の準矮星の系列がある、その下にA〜Fに0.01太陽光度より少し下に白色矮星があり、中央から右上に伸びる赤色巨星の舌がある。それらの上、 1万太陽光度を超える所に超巨星が左右に拡がっている。HR 図は、太陽系の近くの恒星から作られたもので、遠方の分布は異なると考えられる。 散開星団、球状星団、他の銀河ではこの図が異なるのである。存在比率は、光度の大きい恒星は、遠くまで見えるので、その体積で割る必要がある。 統計は、主系列星とくに K, M 型のスペクトルの赤色矮星が多い。超巨星1個に対して主系列星1000万個、白色矮星約100万個、準矮星1万個、 そして赤色巨星数1000個である。

恒星の固有運動と視線速度:視線に垂直な方向の恒星の運動は、期間を置いた恒星の写真の比較で求める。通常の恒星の固有運動20〜30km/secと、 精度は、年間 0".001 であり、精度の 5 倍の信頼しえる値は、1200pc 内である。最も大きい固有運動の恒星は、バーナード星10".27(1.8pc)、 カプテイン星8".79 (4.0pc)、ラカイル9352星6".87(3.7pc),-37°15492 星6".09(4.8pc)、白鳥座 61 番星5".22(3.4pc)である。 視線速度は、スペクトルの偏差Δλ/λ= v/c によって測定でき、遠ざかる方向を正にする。条件の良い場合、精度 0.1km/sec まででる。


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銀河系の発見:18世紀後半のイギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェルは、星空の恒星の分布が大円に集中していることを系統的研究により示し、 星々が銀河赤道にそった巨大な平たい系をなしていると説明した。星雲がこの銀河系内の天体でなく他の銀河であるというのは、1920年代に なって示された。

銀河系の形:恒星が円盤状の分布をしていて、境界は明確でないが 1000pc^3 に恒星1個を境界とすれば、直径30000pc 厚さ2500pcである。 直径10万光年、太陽系は、ほぼ銀河対称面上にあるが、銀河中心軸から 10000 pc (8.5kpc) であり中心よりもふちの方に近い。 銀河系に含まれる恒星の数は、1000 億(2000億〜1兆)を超えている。(括弧内は、最近の数値。)

銀河系内のガス物質:恒星の吸収線から視線速度が恒星のそれとは異なる星間のカルシウム、ナトリウムが見付かり、酸素、カリウム、 チタン、その他の原子、シアンCN、炭化水素 CH その他の分子化合物も見付かった。 銀河平面近くで星間ナトリウムは、10000cm^3あたり原子1個である。 地球上では 1cm^3 の空気に分子が 2.7 x 10^19 ある。星間水素は、長い間見付けられなかった。それは、水素の性質と恒星間輻射密度による。 電離した原子は、もう一度電子に出会わないのでなかなか電離から戻らない。励起した原子は一瞬に戻る。 電離水素は、陽子なので光を吸収しない。中性基底と励起の間は、遠紫外の光をやりとりするが大気を通らない。 恒星大気では励起からさらに高い励起に移るとき可視光をやりとりするが、星間では励起状態が非常に少ないのである。 結局、水素は発見されそれは輝線であった。電離水素が電子と再結合するとき、多段階で可視光を出すことがあるからである。 星間でも水素が多く他の原子全体の 1000 倍も多い。銀河平面で2〜3 cm^3 に原子1個、5〜8*10^-25g/cm^3 である。 星間ガスの分布は一様でない。星間ガスの全質量は銀河系内の全ての恒星の質量の 0.01〜0.02 にあたる。 銀河のなかで中性水素ガス(HI)と電離水素ガス(HII)は、明確に領域を分ける。紫外線源が近傍にあると水素は電離したままになる。 O型星の30〜100pcの球内は電離している。B1、B2 型ではそれよりずっと小さい。HII領域は、銀河系内の 1/10 で、Hα線(6563A)フィルタ で明るく写る。中性水素は、近いエネルギーレベル間 (陽子と電子の磁気モーメントが同じか逆による) の21cmの電波を輻射する。

銀河系の回転:中性水素の 21 cm 電波のドップラー偏位によって銀河系内の中性水素ガスの回転、そのまま銀河の回転とみなすことができる回転 を知ることができる。銀河中心からの距離によって回転の速度が低下する。4kpc で、0.011"/yser 8kpcで0.0061"/yesr 12kpc で0.004"/year である。 太陽のある10kpc では、0.0047"回転の周期は、2億7500万年で、速度は、220km/sec である。速度の曲線は 4kpc 200km/sec, 8kpc 220km/sec, 12kpc 200km/secで、多少の盛り上がりがある。ケプラーの第3法則では、周期が長半径の 3/2 乗に比例するが、銀河系は少し違っている。 半径の増大によって速度が低下するとき、近傍の恒星の視線運動にはある系統的影響がでる。 銀河中心方向と回転方向の中間方向とその逆方向に正の視線速度、それに垂直な2方向に負の視線速度がでる。 銀河中心を上に回転方向を右にする図では、右上と左下が遠ざかり、左上と右下が近づく。この運動は近傍の恒星の視線速度に現実に現れている。

銀河系内のチリ状物質:10^-4〜5 cm、平均間隔100m のチリは、ガスの1/100である。赤い光よりも青い光をより吸収する。 銀河平面内で 1kpcで 2m 等級さげるが、一様でなく、まだらな分布のため、不確かである。

銀河系の中心核:銀河中心核は、銀河平面のガスと塵に隠れている。1947 年ステビンとホイットフォードは、光電管による赤外線観測、 1951 年カリニャーク等の光電子倍増管による観測がある。直径1.3kpcのふくらみが確認された。


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二重星と多重星:銀河系内部の星は、単独で存在する星と、集団で存在する星がある。太陽は単独星である。 重力で互いに関係する星、太陽から最も近い恒星 30 個のうち、13 個は二重星と三重星である。 周期から質量が計算でき詳しく調べられる。質量が2倍の星は、光度が10倍になる。

散開星団:数十から数百、(最大2000個)の恒星を含む星団。形は不規則。プレアデス星団は、視力のよい人で7個、望遠鏡では数百の星 とガス星雲を認める。ペルセウス座の h, χの二重星団には、600個の恒星を含む。散開星団には、はっきりした特徴がある。赤黄の巨星 は少なく、赤黄の超巨星がないが、白青の巨星、超巨星が多く存在する。色ー光度図では、主系列しか存在しない。銀河対称面に集中して 分布する。カタログに800程の散開星団があるが、銀河内に 3000 個ほどとみなされ、その星団内の恒星を平均 300 個とすると1000万個。 これは、銀河内の恒星の1万分の1である。

球状星団:それ自身球状に数十万〜百万の星が分布する星団。銀河系に球状に分布する。例、ケンタウルス座のω。 "その調った形、中心から縁にむけて次第にまばらになっていく星々のありさまは、星の系がついにたどりついた静止の姿であり、 完全な平衡常態なのだという感じをおこさせる。"赤黄の巨星、超巨星はあるが、青白の巨星は少なく、青白の超巨星はまったくない。 球状星団には、変光星が多いが、散開星団にはきわめて少ない。散開星団中の変光星は、数日〜数十日、球状星団中の変光星は、一日以下 といった短周期ケフェイドである。散開星団には、大量のガスと塵があるが、球状星団には、ガスや塵が少ない。 色−光度図では、黄赤の巨星列、明るくない主系列、絶対等級 +1.0m あたりの水平列が特徴。全体の明るさは大きく、119個が見付かっている。 銀河中心を中心とし球状に分布している。1918 年シャプレーは、太陽が銀河中心でないことをこれによって見いだした。 球状星団あたり恒星100万個とすると、銀河内に1億個の星が球状星団となっている。これは、千分の1である。

銀河系における若い星々の集まり: 20〜30個の O, B0, B1, B2 などの高温巨星の集落、O-集落がある。 範囲が数10〜数100pcなので重力関係にはない。銀河対称面にあり、3.5kpc 以内、1/3は 1.5kpc 以内である。

銀河系のサブシステム: 高温の超巨星、巨星、長周期ケフェイド、塵、ガス散開星団のなす平面サブシステム、 黄、赤の準矮星、巨星、短周期ケフェイド、球状星団のなす球状サブシステム、そして、 黄、赤の矮星、巨星、くじら座ミラ型変光星のなす中間的サブシステムに分類できる。 平面サブシステムの恒星の化学組成は、金属が球状サブシステムの星にくらべて多い。

銀河系の渦状分枝:銀河系を対称面に垂直に眺めると渦状銀河になっている。渦状分枝には、高温の巨星、超巨星、塵、ガスがあり、 それを取り除くと渦状構造は消える。赤黄の星は、矮星から巨星まで、分枝と分枝の間の場所も均等に満たしている。 ファン・デ・フルスト、ミューラー、オールト、ヒンドマン、スターカーペンターらの21cmの電波による中性水素ガスの密度は、 レーダーで見るように銀河系の渦状分枝を示している。


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恒星がガス物質から形成されたとする仮説:恒星進化論は、まだ十分解決されていない。ガスから形成されたという仮説では、 ガス状物質は、質量、密度がある十分大きな値に達する場所では、自分自身の引力で収縮をはじめ、密度が高くなり、つめたいガス球を つくっていくと考える。ひきつづく収縮によって、ポテンシャルエネルギーが熱に変化し、ガス球の温度は上昇する。 ガス球は、輻射というかたちでエネルギー放出する。中心部の温度が数100万度になると、熱核反応が開始する。 この反応が開始するまでの期間を収縮期間と言う。この期間、恒星温度は次第に上がり、スペクトルは次第に早期型になる。光度は 表面温度が上がるのと、物質が熱せられ透明度が増すことで、光度は上昇、半径の収縮で、光度は低下であるが、両者を同時に作用して わずかに光度は上昇する。スペクトル−光度図上で、収縮期間の星の進化は、右から左にやや上向きに進む。 このとき、恒星をつくる母体のガス雲の質量によって、線は上になる。こうして主系列星ができる。 熱核反応が起こり、エネルギー供給がされるようになると、収縮がとまり、主系列上にしばらく止まるようになる。

その期間は、水素ヘリウム反応によって太陽の質量が、現在の割合で反応すると、1000 億年になる。 これは宇宙進化のスケールとしても、少々長すぎる期間である。水素が燃えつきてしまうのは恒星全体でなく、 その中心においてのみであることを考えにいれなければならないだろう。

恒星が燃えつきていくと、恒星の半径は増大し、温度は低下し、光度は多少増える。主系列を離れ、右上に向かって移動する。この移動の 速さは、温度に依存する。核反応の速度は温度の15乗に比例する。中心部の温度は、質量によって決まるから大きな質量の星ほどより早く、 右上に移動し、赤色巨星になる。赤色巨星の星の中心部は収縮し一億度になり、反応は、三つのヘリウムから炭素を作る反応を行う。 この反応によって温度が上昇し、スペクトル−光度図上で左むきの移動がおこる。

散開星団の中の星は同じ年齢と考え、スペクトルー光度図の左上の曲りを説明できる。サンデージの作成した、10個の散開星団の色−光度図 から、その曲りは、主系列から巨星への変化が起こっていると解釈すれば、主系列を0年として変化は、NGC2362 はゼロ歳、ペルセウス座のh、 χは、8x10^6 年、プレアデスは、10^8年等になる。NGC2682 は 8x10^9 年であるがすでに球状星団のかたちとにたものになっている。

ガス説の難点は、銀河系内にガスが少ないことである。水素ガスの質量は、銀河系全体のわずか2%である。すでに恒星形成が完了したのではない。 銀河系には、青い超巨星、巨星が沢山あるが、それらがガスの分布とは、関係がなさそうであること。さらに、収縮過程がきわめて穏やかな ものになることであり、普通の恒星の観測を詳細に説明したかもしれないが、あらたなものを予言せず、一連の観測による激しい恒星、 銀河の爆発現象を説明できない。

恒星が超高密度物質から形成されたとする仮説:V.A. アンバルツミアンによる。宇宙では合成過程より分解過程が優勢であること。 ハイペロンによる恒星形成を考える。或る種の爆発的現象が説明されるかもしれない。安定した状態の散開星団があることは、 その反論になる。


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他の小宇宙の発見の歴史: 1784 年彗星の観測家メシエは、108 個の明るい星雲状物体のカタログを作成した。1884 ドライヤーは、7840 個のカタログ(New General Catalogue)を作成した。星雲は M100 とか、NGC3034 といって区別する。メシエの29個は散開星団、29個は球状星団だった。もう11個 は、銀河系内のガス星雲である。これは、輝線のスペクトルでそう判断される。のこり、39個は、渦巻や楕円の天体である。 1917 年リッチーとカーチスは、NGC224(アンドロメダ星雲)に数日で耀く光点を見付け、これを新星現象と推定。絶対等級を -7m とすると みかけの等級 16m から 460kpc になる。これで NGC224 は銀河系の外にあることになる。NGC224 は、みかけの等級は 4.3m である。 460kpc とすれば、絶対等級は、M= -19.8 になる。太陽の絶対等級は、+4m.9 である。その違いは 24.7 等級であり、5 等級で100倍だから 100 倍が5回ちかく、80 億個の太陽光度になる。太陽の近傍の星の平均光度、太陽の1/12 の個数で言えば、1000億個、わが銀河系の恒星の 個数にほぼ等しい。1924 〜26 年ハッブルはNGC224 をウイルソン山天文台の 2.5 m 鏡で、個々の星の像に分解した。他のいくつかの星雲 の渦状分枝にも行われ、1944 年バーデは、NGC244, 渦状星雲 NGC598 の核や、楕円銀河も分解した。ハッブルが銀河を楕円(Elliptical), 渦状(Spiral), 不規則 (Irregular) に分類した。

楕円小宇宙:星種II の星(赤黄の巨星〜矮星、光度の大きくない白色の星)からなり、星白色の超巨星、巨星がない。塵状物質も見えない。 その特徴は、偏平度だけである。10x(a-b)/a によって、0 から 7 までの値がある。NGC4636は E0 , NGC4406は、E3, NGC3115 は、E7である。 その本当の形態は、一律の偏平度の回転楕円体かもしれない。ハッブルは、偏平率の分布から、眞の偏平率の分布を知るための研究を行った。 結果は、小宇宙団に加わっている楕円銀河は規模が大きく、E4〜7であり、小宇宙団に入っていない楕円銀河は小さく、E0〜1である。

渦状小宇宙:渦状小宇宙は、動的な姿を示している。やっと渦の分枝がみえる程度のSa型の大熊座のNGC3898,小宇宙の核は大きく全体の半分 を占める。NGC1301は分枝はかすかであり、NGC3368ではかなり発達している。分枝の数は2である。Sb型の小宇宙の代表は、NGC488, NGC3521, NGC6384 である。分枝の数は多い。NGC210 では分枝の数は2である。Sc型は、多くの小枝にわかれた分枝とずっと小さい中心核をもつ。NGC 628、NGC1232、NGC157がある。3種とも真横からみた小宇宙(Sa:NGC4594ソンブレロ銀河, Sb:NGC4565, Sc:NGC4244)では、塵の帯が見える。 偏平率はいつも7より大きく、Sa型では、8, Sb型では、8.5〜9、Scでは9以上である。楕円小宇宙では、7までであった。 渦巻構造がでるためには、大きな偏平率が必要である。リンドブラッドによる運動学的説明があるが、渦状分枝が高温巨星からなることを 説明しない。偏平な恒星系が偏平性すてること、その逆もあり得ない。それらは並行の進化であろう。楕円銀河にガスや塵が見えないのは、 中心部にガスや塵が落ちたと考えられる。NGC5866 はその中間的なものである。

棒渦状小宇宙:渦状小宇宙では、分枝が円形の核から伸びていたが、その核が棒状になって、渦状分枝は棒の両端から出ているものである。 分枝の発達程度によって SBa, SBb, SBc に分類する。NGC4548 (SBb), NGC1073 (SBc)がある。わが銀河系は、Sb あるいは Sc である。

凸レンズ状小宇宙 S0:小宇宙団のなかには、偏平率は大きいのに渦状分枝、塵の線が見えないものがあり、S0と呼ばれる。ガスや塵がなん らかの原因で掃き出されたものとされる。真正面からの NGC524, 真横からの NGC4762 がある。

不規則小宇宙:不規則な形の銀河を irregularから、I型という。銀河が最初不規則にできて、それが規則的になると考えると、その整列する までの時間は、その銀河の物質密度の平方根の逆数に比例する。わが銀河系の平均物質密度 10^-24g/cm^3 では、10億年になる。不規則なのは、 その銀河が若いか、密度が低いかになる。しかし、もう1つの不規則の可能性があり、それは他の小宇宙との相互作用によるというものである。 これは、不規則型に二種類あるのと対応している。IのI型特徴は表面輝度が高く、入り組んだ不規則な形をしているものである。 NGC2574, NGC5204 がある。ヴォークルールは、この種の不規則銀河に、マゼラン星雲、NGC5204 に破壊された渦巻の跡を発見した。 また、IのI型は、しばしば2つで組を作っている事実に注目した。大小のマゼラン雲、 NGC4027と4038, NGC4618と4625 などである。 相互作用による銀河の変型がもたらすものである。単独であるものは、すでに他が遠方にまで移動したが、形を調えるにはまだ時間がかかる ということであろう。不規則銀河の二種目は、IのII型という(例はしし座の不規則銀河)。表面輝度が非常に低いものである。 物質密度が低いため形を調えられないと考えられる。

針状小宇宙:3軸の回転楕円体、ラグビーボール型の存在は、例えば、棒とあまり発達していない分枝の棒渦状銀河NGC7741、 また、楕円銀河のようで長軸のまわりに暗い環がみえる葉巻型銀河 NGC2685 がある。


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小宇宙のみかけの等級と光度:太陽80億個分の光度、1000億の恒星の集団である銀河系の絶対等級は、-19.7 である。 肉眼で見える銀河は、南半球の大小のマゼラン雲(+1.2m, +2.8m)とアンドロメダ銀河(+4.3m)だけである。 大小のマゼラン星雲は、46 kpc にあり、絶対等級は、-17.4, -16.0である。隣の渦状銀河であるアンドロメダ銀河は、 マゼラン星雲の 10 倍の距離 460 kpc にあり(1954年までは、230kpcとされていた) 絶対等級は、-19.8である。 銀河系とアンドロメダ銀河は、ともに超巨大な渦状銀河である。 (超巨大銀河:-19 等以下、巨大銀河:-19 〜-17、中位銀河:-15 〜-17 。矮小銀河:-15.0 以上) 4番目の明るい銀河は、三角座のNGC598だが、6.0 等級であり、オペラグラスを使わなくては見えない。 最も明るい銀河の列にはいる、NGC4594は、-20.7 であり、さらに、かみのけ座銀河団の中心にある NGC4874,NGC4889 は -22.0 等級である。
  銀河  みかけの等級 型 距離 絶対等級 分角
 大マゼラン雲    1.2 II 46   -17.4 780    
 小マゼラン雲    2.8 II 46   -16.0 180    
  224            4.3 Sb 460  -19.8 197x92 
  598            6.0 Sc 480  -17.6 83x53  
  253            7.6 Sc                   
   55            7.8 Sc                   
 5236            8.0 Sc 1800 -19.1 10x8   
 3031            8.1 Sb 1540 -18.7 16x10  
 4594            8.6 Sb 5000 -20.7 7x1.5  
 5457            8.6 Sb 1800 -18.5 22x22  
ハッブルによる明るい600個の銀河からの分類の比率。(不規則型、S0型は非常に少ない。)渦状銀河は、楕円銀河より明るいので、渦状銀河は 広い空間から採取されている。一定の空間をとるとき楕円銀河の比率はもっと多い。不規則銀河とくに I II は、非常に暗いので比率は最大になる。
  E    Sa+SBa   Sb+SBb   Sc+SBc
 17%    19%      26%      38%  
ヴァン・デン・ベルグのみかけ12等までの絶対等級による分布。1Gpc^3 あたりのS、I型の分布と、E型の分布を比較している。 超巨大小宇宙は、極めてまれで -20〜-21 は、2Gpc^3 に1つ。-21〜-22 は、40Gpc^3 に1つである。中位以下の光度の銀河は、 多く、-14〜-13 の矮小銀河は極めて多い。もっとも暗い矮小銀河は、やぎ座の不規則銀河 -6.5 等級で、普通の球状星団よりも暗い。 銀河光度は、-22 等〜-6 等まで 100万倍の範囲にある。


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       銀河個数(/Gpc^3)        
-------------------------------
  絶対等級      I,S型    E型   
-------------------------------
-21.0〜-22.0    0.025          
-20.0〜-21.0    0.52     0.091 
-19.0〜-20.0    6.9      1.7   
-18.0〜-19.0   19        5.5   
-17.0〜-18.0   30        6.9   
-16.0〜-17.0   35        9.1   
-15.0〜-16.0  155              
-------------------------------
恒星系における二つの星種:星種Iは、高温巨星、超巨星、長周期ケフェイド、新星、超新星、散開星団、水素雲、暗黒星雲、 銀河面に近く、中心核をさけた渦状分枝にある。星種 II は、低温の赤色巨星から矮星、短周期ケフェイド、球状星団で楕円銀河、 渦状銀河の中心核にある。

質量−光度比 (M/L)は、恒星のスペクトルで大きく変わる。小宇宙のタイプによるM/L比の値は、バービッジ夫妻によるものでは、 II:5、I II:10、Sc:7、Sb:14、Sa:20、S0:21、E:41 というのがある。

 O5    0.0001 
 B5    0.01   
 A0    0.05   
 F0    0.2    
 G0    0.8    
 G2    1.0    
 K0    3.0    
 K5   12.0    
 M0   65.0    
 M5  120.0    
小宇宙のスペクトル:銀河の平均スペクトルは、IのI:F2、Sc:F6、Sb:F9、Sa:G1、S0:G2、E:G4 である。

小宇宙各タイプの系列:E0-E1-E2-E3-E4-E5-E6-E7<Sa-Sb-Sc/SBa-SBb-SBc>I ハッブルは、E0〜E7に収縮し偏平になり、さらに渦巻又は棒渦状になる進化を考えた。これは、英国の天文学者ジーンズの考えが影響 しているが、ジーンズの説は楕円銀河と渦巻の中心核が恒星でなくガスであるとした。現在、楕円銀河も渦状銀河の中心核も、恒星に 分解されたため、進化説はあまり認められない。とくに渦巻は、逆にScからSaへの進化はありうる。高温の巨星、超巨星が豊富なのは、 I1、Sc、SBc であるからである。偏平率をこれほどに変えるメカニズムは存在しない。早期型、晩期型銀河という言葉は残っている。


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局部小宇宙群:銀河系の近傍は、その外よりも小宇宙密度が高く、物理的にも、発生においてもつながりがあると考えられる。 最近数年間の発見はすべて I II 型の矮小宇宙であり、1963年にはさらに4つ発見され表にも加えてないものを考えると、 局部小宇宙群の半数はI II 型の矮小宇宙となるが、それらは、さらに発見されるだろうし、南天の研究がこれからであるから、 半径500kpc 内では最多の型は I II型の矮小宇宙である。リーヴズは、乙女座小宇宙群において多くの矮小宇宙を発見したが、 この隣接する小宇宙群においても、矮小宇宙が他のタイプに比べて多いことを示した。 1956年には、炉座の小宇宙群においても同様な研究が行われ、矮小宇宙の数はほかの小宇宙の数より少なくとも5倍は多いことが 明らかになった。自然界には、小さいものが大きいものより多いという一般法則があるようである。 光量では、銀河系とアンドロメダ銀河(NGC224)の光量は、他のすべてを合わしたより多いから、 これらは、2つの超巨大銀河とそれに同伴する18の系かもしれないが、速度はこれらがいずればらばらになることを示している。 太陽系に対する視線速度は、太陽の銀河中心に対する速度220km/sec を引く必要がある。銀河中心からは大マゼラン雲の速度は、 82km/sec であり、小マゼラン雲は、18km/sec である。いくつかは遠ざかり、NGC224,IC10,IC1613 を含むいくつかは接近している。 しかし、各小宇宙の運動を完全に知ることはできない。そのうち、我々の知り得るものは、視線速度だけである。 最も近い46kpcの距離で視線に垂直な速度が100km/secあっても、年間、0.0005"の固有運動でしかない。
 名称          タイプ   等級  絶対等級      距離      分角   視線速度
 銀河系       Sb又はSc           -19.8                                
 大マゼラン雲   I I       1.2    -17.4        46       780       +280 
 小マゼラン雲   I I       2.8    -16.0        46       180       +160 
 彫刻室座系     I II      8.8    -12.1        90        45             
 炉座系         I II      9.1    -13.4       290        50       +149 
 NGC6822        I I       9.1    -13.9       330        20        -34 
 NGC147         E3       10.5    -13.4       400      18x22           
 NGC185         E1       10.2    -13.7       400      14x12      -180 
 NGC224         Sb        4.3    -19.8       460     197x97      -267 
 NGC205         E5        8.9    -15.0       460      26x16      -239 
 NGC221         E2        9.1    -14.8       460      12x18      -220 
 IC1613         I I      10.0    -13.5       460      23x23      -235 
 NGC598         Sc        6.0    -17.6       480      83x53      -190 
 NGC6946        Sc       11.1                                     +34 
 IC10           Sc                                               -343 
 IC342          Sc                                                -20 
 しし座I系      I II     12.0    -9.7        220       38             
 しし座II系     I II     12.0    -9.7        220       41             
 りゅう座系     I II     10     -10          100       50             
 こぐま座系     I II     10     -9            67      130              

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マゼラン雲:南天の彼方に天文学の宝庫というべき大小のマゼラン雲がある。我々の銀河系に最も近く、超新星、星団、ガス星雲に富む。 マゼラン雲の中ではみかけの等級の比較が絶対等級の差になるので、1910年 G.リービットは小マゼラン雲中のケフェイド型変光星を 観測中に、長周期ケフェイドの周期ー光度関係を発見した。2倍周期が長いものは、-0.6m 等級(1.7倍)明るい。この関係は、銀河系、 大マゼラン雲、アンドロメダ星雲中の長周期ケフェイドにも普遍的にあった。類似の関係は、短周期ケフェイドにもあった。 これが星団、小宇宙の距離を求めるのに果たした役割は計り知れない。距離を知りたいときは、ケフェイド変光星をみつければよい。 その変光の周期から絶対等級Mを知る。みかけの等級mをつかえば、log r = 1/5 m - 1/5 M + 1 から距離rを得る。 両マゼラン雲は46kpcと近く両者の間は、20kpcである。両者は、銀河系の伴天体であり、銀河系と中性水素ガス雲に包まれて、 互いの間に水素の橋がかかり、大マゼラン雲からは、銀河系と逆の方向に渦状分枝のようなものが伸びている。銀河系の方向にも 伸びているだろう。大マゼラン雲はさしわたし10kpc であり、いりくんだ多様な構造をしている。棒渦状小宇宙の棒をおもわせる 細長い形、超巨星がグループをなしてできるさまざまな微細構造も多い。星種 I の天体、その傑出したものが多く、銀河系の渦状分枝 以上である。青白色の超巨星が非常に多く、ヴォークルールは、大マゼラン雲中に太陽光度の1万倍以上の光度の超巨星を4700個もかぞえた。 絶対等級 -10.m1 等級の光度記録保持者の星、HD33579 がある。かじき座 S 星ともよばれる。100万個の太陽の光度。 これをアルファ・ケンタウリの距離におくと満月5個の明るさになる。

もっとも近い小宇宙の中の最も明るい星々
恒星名           スペクトル型    M     小宇宙名     
白鳥座 VI No.12    B5          -9.8    銀河系      
サソリ座 ζ        B1          -9.4    銀河系      
オリオン座 β      B8          -8.8    銀河系      
HDE 26970          B2          -9.8    大マゼラン雲
HDE 269781         B9          -9.5    大マゼラン雲
HD  33579          A2         -10.1    大マゼラン雲
HD  7583           A0          -8.8    小マゼラン雲
HD  6884           B9          -8.5    小マゼラン雲
各小宇宙中もっとも明        -8.6       NGC224      
るい数個の恒星の絶対        -8.9       NGC598      
等級を平均した値            -8.3       NGC6822     
サッケレイは、大マゼラン雲の一角で、さまざまな見掛の等級の星を数え、距離を考えて次の表をえた。
      M         個数           M         個数
-6.5 〜 -6.01      3     -4.0 〜 -3.51     34
-6.0 〜 -5.51      6     -3.5 〜 -3.01     44
-5.5 〜 -5.01      5     -3.0 〜 -2.51     80 
-5.0 〜 -4.51     12     -2.5 〜 -2.01    143
-4.5 〜 -4.01     12     -2.0 〜 -1.51    258
小マゼラン雲の大きさは、大マゼラン雲のおよそ1/4、さしわたし2.5kpcである。外観が似ている、互いの距離が近い、発生の事情も 共通だろうが、星種 I の天体はあまり豊富でなく、傑出したものがない。 ある恒星が大マゼラン雲の中であるかどうかは、視線速度が大マゼラン雲の 280km/sec の近く、250〜310km/secに入っているかで決める。 その恒星が銀河系内であれば、60〜70 km/sec をこえることはない。また、固有運動の存在する恒星は銀河系内である。 星種 I に特徴的な、ガスー水素星雲は、532個の大きなガス星雲がほとんど大マゼラン雲にある。かじき座 30 というガス星雲は、 直径200pcと50万太陽質量であるが、銀河系内の最大のガス星雲は 6pcと100太陽質量でしかない。

マゼラン雲の中には星団が非常に多い。1833 〜1838 年ジョン・ハーシェルは、大マゼラン雲中に 919 個、小マゼラン雲中に214個の 星団と拡散物質の雲を数えた。現在、大マゼラン雲に約1100個と小マゼラン雲に100個以上の散開星団のカタログができている。 銀河系内と同じような球状星団は 35 個と 5 個がある。しかし、銀河系には見られない青白色の巨星をふくんだ球状星団がある。 これは、通常の黄赤の球状星団の年齢の古さと違って若い球状星団かもしれない。変光星も多い。長周期、短周期のケフェイドの両方 観測できるのは銀河系外ではマゼラン雲だけである。新星の閃光は、大マゼラン雲中で1926,1935,1936,1937,1951年に、小マゼラン雲 中には 1897,1927,1951,1952年にあった。最大光輝の絶対等級は、-7.m0〜-8.m5 等級であり、銀河系内の新星と大差ない。 マゼラン雲には、拡散物質も多い。個々のガス星雲以外に小宇宙全体にも広がっている。銀河系では、ガスは全体の 1〜2%だが、 マゼラン星雲では 6% と見積もられる。シャプレーの考え出した方法によって、塵は、そのそとの区域と比べて、大マゼラン雲を透かし てみたときの遠方の小宇宙の個数が 1/10 になることから、約 1.m7 等弱めているとされる。銀河系の場合は、対称面に垂直に透かせ ると平均 0.m7 等しか下がらない。小マゼラン雲でも光の吸収が確認される。


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渦状銀河は、台風のように渦を吸い込んでいるのか、渦を吐きだしているのか。巻き込む方向か、巻を解く方向に回っているのかは、 対称面から30°方向から眺める銀河で、渦の形と対称面の暗黒線の両方が見え、どちらが手前かが分かる銀河を使って、銀河の腕の ドップラー計測で分かった。結果、渦を巻き込む方向であった。台風と同じく、渦の物質は、渦の根元に向かって動いている。

半径に対する速度、銀河の回転曲線は、中心近くは高速で、中心からあるところより外で速度一定の傾向がある。 中心から離れるにつれて、銀河の質量は増加している。質量 M を中心にして半径 R を周回する物体は、√(M/R) に比例する速度をもつ。 速度一定は、M が R に比例する増加である。銀河系の質量は、一兆太陽質量程度まで増加する。

銀河の質量は、回転する銀河では、視線速度から得られ、楕円銀河など回転が少ない銀河では、より精度が低いが、スペクトルの拡がり、 個々の恒星の速度分散から得られる。アンドロメダ銀河では、3400億の太陽質量である。M/L 比という太陽を基準にした質量/光度比は、 16である。銀河系もおそらくこれに類する。最大の質量の銀河は、E0 型の NGC 4486 で、10兆太陽質量もある。M/L 比は、60 もある。

銀河系のガスと塵:銀河系の対称面に太陽系は在り、その銀河の対称面に存在するガス、塵の影響は、銀河の対称面との角度依存性から 対称面に垂直な方向でも、0.25等級増加している。つまり、銀河の我々の部分を透かすと 0.5等級、63% が覆われるのである。 遠方小宇宙は、銀極では、1°四方に13個を超えるが、銀河面に近づくと減少し、銀河面から約20度の範囲に外の銀河は、全く見えない。


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ハッブル定数と距離測定:ハッブルの行った観測は、距離に対する赤方偏位の比率であったが、赤方偏移の原因をドップラー効果とすると 視線速度に換算できる。そのためハッブル定数は、v = H r となる。 v≪c のとき v/c= Δλ/λ 正確には、z= Δλ/λ + 1 として v/c= (z^2-1)/(z^2+1)

ハッブル定数は、遠方ほど精度が上がる。銀河の固有運動(単独の銀河で 200 km/sec程度。銀河団中の銀河では 400〜600km/sec) の比率 が下がるからである。しかし、ハッブル定数を定めるには、別の方法で距離を測定できなければならない。

ケフェイド変光星は、銀河系内にもあるが、大小マゼラン星雲中では、ほぼ距離一定のため変動の周期と絶対等級の間との関係が見付かり、 絶対等級を推定する道具として使われる。長周期ケファイドがアンドロメダ銀河に見付かったことから、ハッブルはその距離を推定した。 アンドロメダ銀河は、銀河系に向かっている、(これを視線速度が負という。)そのため青方偏位しているので、これからハッブル定数を 定めることはできない。それよりも遠い銀河には、ケファイド変光星も見付からず使えないので、銀河の最も明るい恒星がほぼ同じ絶対光度 をもつと仮定する距離推定を用いる。これに乙女座銀河団の中の最も明るい銀河 NGC 4321 が使われた。

1954 年バーデは、アンドロメダ星雲中に 22.4 等の短周期ケフェイドを探そうとした。 5m 望遠鏡(23.0 等級が限界)を使って、 (2.5m 望遠鏡では限界が、21.5等であった) しかし、それは見付からず、代わりにくじら座ミラ型変光星を見付けた。 このタイプの変光星は、短周期ケフェイドより1.5 等明るいことが、銀河系の球状星団の観測から分かっていた。20.9 等のはずが、 22.4 等であった。これらの事態は、推定距離のすべてを 2 倍にしないといけないことを示唆していた。他の銀河までの距離が一挙に2倍に 拡大した。なぜ距離推定を間違ったのかというと、ケフェイドが短周期型と長周期型に分かれていて、周期と光度の関係が、長周期ケフェイド は、短周期ケフェイドと違っていたのである。アンドロメダ銀河の中の球状星団と超巨星が、銀河系のそれらよりなぜか小さいこともなくなり、 アンドロメダ銀河自体の大きさも銀河系とほぼ同等以上になった。

1958 年サンデージは、小宇宙の中の複数の最大光度の恒星の平均がほぼ同じ光度という推定方法で、ハッブルの用いた NGC4321 の中の恒星を 5m 望遠鏡で再度調べると、恒星20.8と電離したガス19.0に分離できた。これによって1.8 等級、距離にして 2.3 倍になった。

サンデージは、さらに近傍の小宇宙の距離をケフェイドだけでなく新星をも用いて調べた。これによってバーデの 2倍という数字は、2.75 倍にすべきことが分かった。ハッブルの 540 km/sec/Mpc というハッブル定数は、近傍の小宇宙は、2.75 倍の距離になり、赤方偏移を利用 するその他の小宇宙の距離は、6〜7 倍に増やすことになった。現在(1968年)では普通、ハッブル定数は、75 km/sec/Mpc という値が使われる。 研究者の中には、100 km/sec/Mpsという値も使用される。

キティー・ファーガソンの"宇宙を計る"(1999)(講談社)によると、ハッブル定数のその後の歴史は、1970年代半ばにサンデージは 55(誤差10%)、 1970年代終〜1980年代始には、約50という値を出し、このとき、ジュラル・ド・ヴォークルールは、強く異を唱えた。 1994年、ロバート・カーシュナーのチームは、超新星から宇宙年齢、90〜140億年をだす。ウエンディ・フリードマンのチームが、 1993年12月に光学系を修正したハッブル宇宙望遠鏡を使い乙女座銀河団中のM100に20個のケフェイドからハッブル定数 80 という値を出した。 サンデージは、白色矮星に物質が落ち込んで爆発する Ia 型超新星を使って、50という値を得ていた。 マーク・M・フィリップのIa 型超新星が同じ光度にはならないという発表をうけ、カーシュナーは値を修正し、55から67に上げた。 1995 年フィリップスとその同僚マリオ・ウマイは、60〜70を出した。同年、ナイアル・タンバーは、HSTのケフェイド測定で、M96の距離から、 かみのけ座銀河団の距離を推定し、宇宙年齢 95 億年(誤差10億年)とした。 1996年、サンデージは、NGC4639 のIa 型超新星とケフェイドの測定で 57 にし、フリードマンは、種々の測定から綜合して73とした。


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恒星の光度と質量

星の話を理解するのに、星を気体のガスのように考える。重力が大きいので太陽のように表面はくっきりしている。 その境界は、半径の1/100 以下しかない。星の内部は、水素とヘリウム原子核と電子のプラズマ状態であり、光を通さない。 星のエネルギーは、中心から表面まで伝導と対流によってゆっくり伝播する。太陽の場合、中心の変動が表面に伝わるのに半径70万キロ を10万年がかかるという。(これは、7km/year、20m/day、1m/hour という遅さである。)

絶対等級Mから質量を計算する式 m= 3.89*10^(-0.1194M) (mは太陽質量(2x10^33gr)を単位にする)は、表面温度を無視しているのだろうか。 ステファンの法則 5.71*10^-5 T^4 erg/sec/cm^2 から、光度は、温度の4乗比例である。O 型と G5 型は、10^4 倍も違い、さすがに O 型は 例外としても、F0型〜K0型の間でも 3.6 倍の違いがでる。それなら上式は、全く意味をなさない。そうでなく、質量が半径(表面積)と温度を 決めると考えると、上の式に意味を与え、それは、等質量がHR図上で一本の線をもたらす。

光度 L∝m^3.5 (3〜4.5)、星の寿命 τ∝ m/L からτ∝ m^-2.5 (-2〜-3.5)とよく解説される。星の中心温度がほとんど変わらないとして R∝m と考え、主系列は質量の違いで並んでいると解説される。主系列の左上の星は質量が大きく、右下は質量が小さいという。しかし、 星の中心温度が同じで半径が異なるなら、半径の大きい方が表面温度は低くなり、主系列星の左上で質量が大きいという話と矛盾する。 光度と質量の関係は、m= 3.89*10^(-0.1194M)と、絶対等級の式、M= -2.5log(L/(4πr^2))+C から、L∝(m/3.89)^3.35、星の寿命は、 τ∝m/L からτ∝m^-2.35 となる。

星は、球体であり体積は半径Rの3乗に比例し、表面積はRの2乗に比例する。体積は3乗比例なのに、放射の出口は2乗比例である。 体積あたりの出口は、サイズに逆比例する。つまり、大きい星は、体積あたりの発生エネルギーは小さくても表面で同じ放射密度が保てる。 同じ表面温度を保つのに、体積あたりの発生エネルギーは、1/R 比例ですむ。R∝m^k で、小さい星とその半径が2倍の大きな星があって、 質量比が8倍未満 (k>0.333) なら、大きい星の平均密度が小さい星の平均密度より小さい。サイズと密度が逆転する。 また、質量比が4倍未満(k>0.5)のとき、同じ表面温度をたもつのに、大きな星で質量あたりの発生熱は大きくなる。

しかし質量を与えると星のサイズと表面温度が自動的に決まると考えるなら、半径と、表面温度は、どのように質量に依存するのだろう。 これは、一般的に、R∝m というが、それはどの程度正しいのか。 R∝m では、2倍の質量は、2倍の半径である。 光度がL ∝ m^3.35 (又は m^3.5) なら、温度一定なら 3.35 (3.5)はすべて、表面積の分になるから半径は、R ∝ m^1.675 (1.75)になる。 ともに上の話を満たすから、大きな星は、平均密度が小さく、質量あたりの発生熱は高い。 もし、表面温度が質量に依存すると、L∝T^4から、光度のm依存は、半径のm依存の2倍と Tのm依存の4倍で構成される。 R∝m にするには、T∝m^0.3375 (0.375) だが、デネブの例は、R= 40, m= 16.5 なので、R ∝ m^1.32、T∝ m^0.1775 である。

熱核反応の速度は、温度の15 乗に比例するという。温度だけで寿命がきまるようなものである。質量と表面温度が関係しない場合、 同じ表面温度なら、半径の大きい星ほど内部温度は低くてすむ。


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HR図と恒星進化

HR 図中の主系列の並びは進化の過程ではなく、存在の分布でしかないとされている。 恒星の生成をガスの収縮によるとするガス説は、系列図に現れないほど急速な収縮過程を考え、主系列上の点に右右下から収縮生成し、 右右上に消えて行く進化過程をもつとされる。銀河系では、星間水素ガスは円盤の対称面上にあり、散開星団のように寿命の短い巨星、 超巨星が銀河対称面には多く存在する。つまり今も新しく恒星は作られているのである。 しかし、星間水素ガスは銀河系の質量の2%にしか当たらない。1um 〜0.1umの塵はさらにその数%である。 渦巻銀河以外の楕円銀河にはガスがない。ガスが少ないのは、恒星生成がすでに終ったとするのだろうか。 ガス説による恒星の生成は、説明できないことが多いため、超圧縮物質からの発散過程とする説もある。 いずれにしても恒星の生成自体が、まだ十分説明できないでいるのである。

昔、考えられたのは、これを時間的並びとするものである。つまり、星の進化の流れをそのままに見るものだとする。 それは、主系列の左上から右下へ、青く耀く早期星から赤く暗い晩期星への変化である。この早期星、晩期星という言葉は、いまも使われる。 これは、興味深い考えで、星の進化のありさまがそのまま図になっているなら、これほど分かりやすいことはない。 存在分布が時間的分布で、集合平均が時間平均である。星の進化の過程はすべて見えていることになる。 ところが、HR図が現在の存在分布のスナップでしかないなら、星の進化がこの図と関係ないという考えも可能になる。 星は、この図の上に現れ消えるだけで、存在分布は、星の進化の上の安定期しか見ないとするのである。そしてその考え方では、 この存在の分布図に現れないほどに急速な、又は暗い進化の過程があるということになる。図に存在しないものを利用するこの考え方は、 正しいのだろうか。図に見えているものを存在の変化と見ないのは、基本的な誤りかもしれない。

昔の星の進化説は、主系列の左上から右下への進化であり、青く明るい星から赤く暗い星への変化である。温度が高い青く若い星が、 徐々に歳老いた赤く暗い星になるとする。それは、なにか自然の生物の加齢の過程と一致するものであるが、過程は燃料終了とともに終わる。 それでは、過程は1段階であり、ヘリウムの次の過程がないことになりそうだ。

逆に、主系列が右下から左上への進化なら、弱く赤く暗い星が、中心温度を徐々に増大させて青く耀きその最期を遂げるという変化である。 これは、質量が増えるのでだめだろうか。質量推定の方法を調べたほうがよい。主系列中の青い星は、本当に赤い星より質量が大きいのか。 主系列は、質量一定の直線よりも多少左上がりとされるが、確かなことだろうか。その温度上昇は、水素がヘリウムに変化し、ヘリウムが その他の元素に変化する反応が徐々に進行するからではないだろうか。核の変化の過程は連続的と考えることになるが、そうすると、 青い散開星団は、実は歳老いた星たちの集合であり、球状星団の星々は若いものになる。これは、常識のひっくり返しである。

一般の考えは、水素からヘリウムに変わる融合を利用した主系列は、そのうち中心核にヘリウムが溜り、中心核は収縮し外側の水素殼は膨脹し、 ヘリウムを融合する反応が始まるのは、赤色巨星になるときであるとする。中心核は、全体の10万分の1のサイズになるという。 主系列から赤色巨星までの変化は、非常に急速でHR図に現れないなら、それを確認する方法もないことになるが、いままさに変化している星を 見付けてもよいのではないか。その後の超新星爆発現象による巨星から白色矮星への変化が捉えられるように。 この考え方のモデルシミュレーションで散開星団のHR図が再現されるというが、本当だろうか。


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恒星の形成と収縮過程

ビッグバンでは、水素ヘリウム以外の重物質ができず、超新星爆発だけでこれが作られるとすると、重物質を用意する期間はどれぐらいだろうか。 今言われる銀河系で100年に1回という多いめの超新星爆発の頻度を使って、爆発1回で放出する物質の規模を太陽100個分と大きくみて、 質量が太陽2000億個分の銀河系に一巡行き渡るのには、2000億年かかる。しかし、水素とヘリウムだけの第1世代の超新星爆発後のガスの物質比率 が現在の太陽系の物質比率になるわけではない。1回の恒星経験で重物質が0.01%増えるとき、それが0.1%になるには、10回の恒星周期が必要である。 1 巡で2000億年必要なら10巡には、その10倍の時間がいる。(最近は、超新星爆発する星を、太陽質量の 8 倍以上とする。また、銀河系の質量は、 その周辺まで含めると太陽質量の1兆倍である。恒星の水素、ヘリウム以外の元素の比率は2%(〜0.1%)と言われる。これらは、必要な時間を伸ばす。)

物質が用意されたとしても、前世代の超新星爆発から今の太陽系が形成されるまでの収縮に必要な期間を考えると、太陽系が第2世代という確信は、 なくなる。散乱した微細な原子、分子を結合するには、サイズの小ささから重力でなく、光圧が最も強い引力を与える。宇宙空間の光圧は弱い。 太陽系の原子分子の集合過程は、通常の星が光を放つ期間よりもオーダーとして、十分長い期間が必要に思える。一般に、発散は短時間で、 収縮過程は、長期である。数年間土中に幼年期をすごし成虫で数週間しかいない蝉のように恒星は、物質のサイクルからみると、 核融合に点火して光る期間はその一部ではないかと思う。これは光るのを待つ通常物質ダークマターに関係する。

太陽質量の水素がヘリウムに変わるエネルギーと現在の太陽のエネルギー放出からみた寿命は、1000億年である。 太陽の質量 2*10^33 gr の水素がヘリウムに変わるエネルギー(0.7%)と現在の太陽のエネルギー放出4*10^33erg/sec からみた寿命は、 E= mc^2 から、erg と gr と cm/sec で、2*10^33*0.007*(3*10^10)^2/4*10^33 = 3*10^18 sec = 10^11 年、1000億年となる。 (これが宇宙の進化説からは、その宇宙進化のスケールより大きいため、恒星の全ての水素がヘリウムに変わるのでなく、恒星の中心核 だけがヘリウムに変るとして太陽の寿命を 100 億年にする。それほどに効率を低く見る必要はないのではないか。さらにヘリウム以降の 反応の期間もあって、それを極端に短く見積もりすぎではないか。太陽の現在が活動の中期で、最も活発に反応しているという根拠も まったくないが、他の期間は、もっと緩やかだとするだけで寿命はもっと長くなる。)

耀く物質のN倍の通常物質ダークマターがあるとき、物質が恒星を経る周期は、星の寿命のN倍であろう。単純な算数だが、 定常を前堤にすれば、すべての物質が循環するなら、時間平均が集合平均に一致するエルゴード性が満たされない理由は無い。 そうすると前世代の超新星爆発は、そのぐらいの昔となる。太陽の寿命が星の物質平均の耀く期間の代表になるかどうかは不明であるが。

恒星の収縮過程では、超新星爆発で飛び散った物質は、その重力ポテンシャルの井戸を出ると速度が落ちるだろう。さらに物質が互いに ぶつかりあって相対速度を落し、ガスの中心の重力に補足される。それから、さらにぶつかり合って速度を落し、中心に落下し塊を作る。 稀薄なガスが重力中心を見いだす重力捕捉速度を次のように考える。ガスの塊が周辺よりもΔρだけ密度が高いとすると、重力ポテンシャル -GM/R = -4π/3 GΔρR^2、これが、-v^2/2 より大きく √(8π/3 GΔρ) R > v の場合にガス塊は重力捕捉される。 v= √(8π/3 GΔρ) R を重力捕捉速度とすることができる。


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太陽系では、地球が周回する速度は、30 km/sec であるが、もとのガス塊は、隣の恒星、1.3pc 先の半分まで広がっていた可能性がある。 太陽地球間(天文単位AU)を 1 秒角に見渡す距離、地球軌道半径の 20 万倍が、1 pcである。もとのガス塊の周辺 0.5 pc の距離における 重力捕捉速度は、地球軌道半径の10万倍離れ v= √(GM/R)から√1/R 比例で、10^-2.5 = 1/316 倍、約 100m/sec になる。 (30km/sec を角速度一定で遠方にもどすと1/R比例から 30km/sec x 10^-5 になり、30 cm/sec になるが、 物質がぶつかりあって速度を落すときにそれを使うのは間違いである。) このように、重力捕捉の速度は小さい。現在、恒星の固有速度は、20〜30km/sec ほどである。その速度が、稀薄なためほとんどぶつからない 電離したままの電離水素ガスどうしがぶつかり合って、そこまで速度を落すのに、どれだけの永遠がかかるのだろう。 そして、重力捕捉の速度から、さらに速度を完全になくし、冷却し、収縮し、塊になる必要がある。(それに必要な期間は、まだ考慮していない。)

この重力捕捉された物質が収縮するのに要する時間を、重力系の崩解時間として、t_c 〜 R/v 〜 (Gρ)^-1/2 とする驚くべき説明が方励之、 李淑嫺著の "Creation of Universe" 1989年 (邦訳、"宇宙のはじまり"、佐藤文隆、青木薫訳、講談社ブルーバックス 1990年) にある。 "超銀河団いまだ完成せず"という標題の説明にこれらの式を説明し、太陽系で、R= 50 AU とし、57年、銀河系では、6600万年、超銀河団では、 380億年という崩解時間を示す。彼の使用する宇宙年齢は 200 億年であり、超銀河団は、まだ収縮が完成していないとする文脈である。 半径 R をその重力捕捉速度 v で割った R/v は、最短で集まることのできる時間であり、その速度で中心に向かった場合の時間かのようだ。 それは、一回の軌道周回時間より短く、物質が収縮する時間の推定としては、余りにも短い。まず、その速度では、周回し続け、収縮する ことができない。収縮が実際に起こるためには、物質同士の衝突で速度を消す、ρに反比例する期間が必要である。 それは、R/v で見積もる期間とはまったく異なる長期の時間であろう。それを定める考え方を作る必要がある。

それ以前に、太陽系のもとになるガスの半径を 50 AU とするのは小さすぎるだろう。それは、現在の惑星系の大きさである。 ガスの半径を、隣の星までの距離の半分、約 0.5pc = 100000 AU とすると、半径 R は、2000倍、密度ρは、8x10^9分の1になる。 それほども密度が違って来るのである。そして収縮時間が (Gρ)^-1/2 に比例すると、8.94万倍になり、57 年は、5.1 x 10^6 年になる。

温度からくる粒子速度を考えると、温度 T のとき、質量 m の粒子の速度は 3/2 kT (1自由度に 1/2 kT) の平均運動エネルギーをもつ。 ボルツマン定数 k= 1.3806 x 10^-16 [erg/K]、陽子、電子の質量、m_p= 1.6726 x 10^-24 [gr], m_e= 9.1093 x 10^-28 [gr] を使うと、 粒子速度は、v= √(kT/m) で、陽子のとき v_p= 0.9x10^4 √T [cm/sec/K] である。(電子の速度は、√1836.1= 42.85倍大きい。) T= 300 Kの常温で 1.56 km/sec、現在の背景輻射の温度 T= 3K で 156 m/sec であり、太陽系の重力捕捉速度より大きい。 太陽系が水素ガスから始まるのには、現在の背景輻射温度ですら、重力捕捉速度を超えているのである。


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温度からくる粒子速度が重力捕捉速度を僅かに超えるだけで、重力捕捉が起こらないということはない。速度の分布はガウス型をするから、 低速の粒子が大半を占め、それらは重力捕捉されるのである。しかし、温度からくる粒子速度が重力捕捉速度を大幅に超える速度では、 重力捕捉される粒子はそのほんの一分になる。例えば、温度が 30K では、0.5 pc 半径の原始太陽系ガスが重力捕捉されることはないと いえるだろう。その温度では、より大きい半径のガスで重力捕捉が起こり、恒星の間隔は今よりも大きいものになるだろう。同じ密度のとき、 温度が10倍、100倍で、速度が√10倍、10倍なら、重力捕捉速度は、Rに比例するから、R も √10倍、10倍になる。恒星質量は、31倍、1000倍になる。 そのように恒星の間隔と恒星質量は、ガスによる形成を考える場合、比較的容易に重力捕捉時のガスの温度を推定できる。 太陽の場合、現在の背景輻射 3K の温度が重力捕捉の可能な温度である。

宇宙膨脹の非平衡を仮定することによって、これが容易になるとは思えない。宇宙膨脹の中での収縮は、さらに困難で時間がかかると 思うべきである。なぜなら、ある永い時間をかけて、膨脹が局所的に停止した領域ができても、それはまだ収縮ではない。収縮はそこから 開始しなければならない。つまり、前期過程がさらに増えるのである。 さらに、それがビッグバンから現在までの1/10、1/100の時刻に起こるなら、そのときの宇宙の平均温度は、絶対温度27度、270度であり、 ガスは、そこまでしか冷却できない。輻射の光圧は現在より大きいため有利であるが、 冷却の底辺となる周囲温度が高いために収縮過程は現在の宇宙よりも困難で長期となるだろう。

収縮をはじめる水素は、中性水素ガスでなければならない。陽子の電荷は、互いに反撥するから電子と結合してからでないと、 次の結合、水素分子の形成はないだろう。つまり、電離水素ガスは、中性水素ガスになってから収縮をすると考えられる。 電離水素ガスが中性水素ガスになるのには、輻射の低下が必要である。輻射がなくなって低温になっても、まばらな星間ガスでは、 陽子と電子の結合は起こりにくい。稀薄な電離水素ガスは、ほとんど光を吸収しないし吐きださない。銀河平面付近の 2〜3cm^3 あたり 1個の水素原子、5〜8 x 10^-25g/cm^3 という稀薄さでは、電離ガスが中性水素ガスに変る期間も考慮する必要がある。

1cm^3 に1個の密度では水素原子程度のサイズ(ボーア半径0.528Aの2倍) 10^-8 cm の断面積なら、平均自由行程は、L= 10^16 cm になる。 相対速度が 10km/sec でも 10^10 sec 毎の衝突になる。粒子あたりの衝突の平均時間間隔は、L/v に比例し、 (体積あたりの輻射作用は L/v/ρ に比例する。) v= √(T/m)だから温度低下につれて時間がかかることになる。 衝突による速度減少率(反撥係数)を一定の r (例えば 1/2)とすると、稀薄なガスがある速度にまで低下するには、 最初の大きな速度に関係なく、ほぼ一定の期間が必要になる。


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初速をv0とし、最終速度をv1とするとき、log_r (v0/v1)= N なら N 回の衝突が必要だが、それぞれの平均間隔は、 τ0= L/v0, τ1= L/v0r, τ2= L/v0r^2, ... , L/v0r^N という等比数列となるから、それらの総和は、Στi 〜 L/v1/(1-r)、 r と v1 だけによる。太陽系の場合、先ほどの密度と最終速度v1= 100cm/sec とするなら L/v1 = 10^14 sec = 3 x 10^6 yr の 1/(1-r)倍になる。 恐らくは、中性水素に変ってからの時間が長いだろう。それは、陽子電子の衝突は、結合する可能性が高いので反撥係数が低い。 中性水素原子も水素分子に反応するが、水素分子同士は反応しないので反撥係数は高いとしよう。 もし、 r= 0.9 なら 3000万年、r= 0.99 なら 3億年、r= 0.999 なら 30億年になる。

銀河系とアンドロメダ銀河までの距離の半分、230 kpc(2.3 x(3.084 x 10^13 km)x 10^5 = 7.09 x 10^18 km) を半径にする原子ガス雲の体積は 4x3.14/3 x (7.09 x 10^18)^3 = 1.486 x 10^57 (km)^3 である。銀河系の質量を 1x10^11太陽質量= 2 x 10^33 x 10^11 = 2 x 10^44 gr とすると、 密度は、ρ= 1.345 x 10^-13 gr/(km)^3= 1.345 x 10^-28 gr/cm^3 になる。先の太陽系ガス雲密度の約 1/5000 である。 半径は、230 kpc で先の 0.5 pc の 46万倍である。重力捕捉速度 v= √(8π/3 Gρ) R は、1/70.7x460000 = 6506.4 倍になる。 平均自由行程 L は 5 x 10^3 倍であり、重力捕捉速度 v は、6506 倍だが、最終速度 v1 を太陽系と同じにすると、L/v1 は、5000 倍。 1.5 x 10^10 yr (150億年)の 1/(1-r)倍である。密度からくる平均自由行程は、ある程度意味があるが、最終速度 v1 を決めるすべを得ないと、 すべては r と v1 に依存するからなにも決めないのと同じである。

太陽系の重力捕捉速度、100m/sec を最終速度とするなら、銀河系の形成と太陽系形成は連結して考えることができる。その場合、 L/v1 は、太陽系形成の 5000/100 = 50 倍の時間になる。1.5 x 10^8 yr = 1.5 億年の 1/(1-r) 倍になる。r= 0.9 なら 15億年、 r= 0.99 なら 150億年、r= 0.999 なら 1500億年である。

原始銀河系ガスの半径230kpcの重力捕捉速度は、651 km/sec であり、これに対応する温度は、5200万度である。この温度自体は、 銀河団の内部にあるX線を放射するガスの存在が確認されているから、意外でもないが、この温度では、稀薄なこのガスは、 プラズマ状態であり、水素原子を形成しないだけでなく、重力収縮して銀河や、恒星を形成するのでなく、核融合を起こして 発熱する温度である。この温度より十分小さくても問題がないわけであるから、この温度である必要はないのだろうか。そうではない。 現実の温度が低ければ、現実の銀河系より小さな矮小銀河を生むだろうし、これより高い温度では、より巨大な銀河を生むだろう。


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ガス恒星形成説は、短かすぎる収縮過程以外に、宇宙に十分ガスがないことが問題だった。時間不足は、定常が解決するが、ガス不足は、 定常にしても説明が付かなかった。しかし、ダークマターの探索のお陰で光らない通常物質の推定量は、増加した。ガスは恒星の1〜2%と 言われたのが、今は、光る物質が銀河系の質量の0.3%と言われ、その50倍の BDM があるといわれる。

現在、太陽系には恒星が耀き、太陽風によってガスは吹き飛ばされてしまって、そのガスはないとされる。 太陽半径 6.960 *10^10 cm と、太陽質量 M= 1.989 * 10^33 g を使って、物質の量が変わらず、ρR^3一定から太陽系のもとのガス密度を 計算する。太陽平均密度を 1.4(g/cm^3)とし、太陽半径を半径 0.5pc の球体に拡げると 1.4/(1.5*10^13/7*10^5)^3= 1.4/(2*10^7)^3= 1.7*10^-22 これは、現在の値 (恒星間ガスは 5〜8 x10^-25g/cm^3)より3桁大きい。太陽が近傍恒星より大きめを考慮し半径を 1pc に拡げても 2.2* 10^-23 となり、まだ2桁大きい。昔はガスがあったと考えるべきか。ガス不足は、太陽風による太陽周辺だけの局所現象ではない。

銀河中心からの衝撃波によって、点火期間は、加速できるかもしれない。しかし、恒星の収縮過程が恒星の寿命よりずっと短時間という説 には、根本的な無理がある。ビッグバンからの時間に間に合うには、数億年で収縮しないといけない。46億年前の太陽系完成までの残りの 時間をすべて収縮期間に充てることはできない。以前 50 億年と言われ、今20〜10億年になった、銀河形成の同様な永い期間と、物質を 用意する超新星爆発サイクル期間が必要だからである。宇宙の初期に重い星が多く、超新星爆発による世代交替が速かったという証拠はない。 天文学は、ビッグバンからの時間に収容することを要求され、急がされている。時間がかかりそうな過程を、非常に容易に通過するように する。そうでもしないと、とてもその時間にはいる訳がないからである。最近はその矛盾が早期の時期に集中し、恒星形成、銀河形成を 圧縮している。

2003年9月28日、放送大学の"宇宙の観測"(講師は川辺良平氏)で、最近の恒星の始まりの考え方を知った。ガスは分子雲を形成する (10万〜100万年)。原始星を形成する(1万年〜10万年)。ダスト円盤(デブリ円盤)と両極へのアウトフロー放出をするTタウリ型星を形成する (1000万年〜2000万年)。そして主系列星になる(>1億年)。という昔よりさらに急速な恒星形成を考えるのである。 Tタウリ型という独得な天体を、すべての恒星の形成の段階と考えるかどうか疑問だが、(というか、とてもそんなことは信じられないが) このように急速な恒星形成を考えなければならなくなった理由は、いわずもがなである。


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宇宙の果ての銀河の光度

宇宙の果て 130億光年、(4Gpc)は、アンドロメダ銀河(見かけの等級 +4.3、絶対等級は、-19.8)の距離 460 kpc の約1万倍の距離である。 アンドロメダ銀河をそこにおくと、10^-8、20等級上がり、24.3 等級になる。しかし、1994年のHDFの深部探査の銀河達は、約30等級であった。 予測との誤差は5等級、光量で1/100である。これは、どう解決するのだろうか。

(1)宇宙の果ては、銀河間の塵によって 99% 覆われているのかもしれない。塵による減光は、距離に比例する等級変化が 1.25 等級/Gpc になり、すこし大きすぎる。銀河系や、アンドロメダ銀河は、数ある銀河のなかで、超巨大銀河(-19 等以下)に属す。中位の銀河は、 アンドロメダに比べ5〜3等級暗い。深部探査の銀河達を中位銀河とみなすと、29.3〜27.3等級になる。予測からの誤差は、0.7 〜 2.7に減る。 4Gpc の塵による減光を 2 等級とすると 0.5等級/Gpc、銀河内太陽近辺の光の減衰 0.5等級/3kpcに比べて、約 6 桁少ない。

それ以前のハッブルの測定、銀河の分布が一様で、宇宙が透明とするときのゼーリガーの式、等級 m+1 までと等級 m までの銀河の個数比 N(m+1)/N(m)= 3.98 (1等級差は、2.512倍、距離比は√2.512。個数比は距離の3乗、(2.512)^(3/2)= 3.981) からの偏りが微小で偶然的から、 塵の密度は、10^-31〜10^-32 g/cm^3 を超えず、"わが恒星系の主平面ちかくでの星間ガスよりは、100万倍も薄いことが必要。"に合う。

(2)普通の宇宙原理からいって、銀河系やアンドロメダ銀河を超巨大銀河とせずに平均的な銀河と考えるか、深部探索で見えた銀河達が平均よりも かなり明るいものと考えると、 5等級の差に戻ることになり、宇宙の果てが5等級、100倍光度が低下する距離、つまり10倍宇宙の果てを 遠ざけることが合理的になる。ハッブル定数を 1/10 にし、宇宙の始まりの時期を10倍過去に伸ばす大変なことになるが、 銀河系とアンドロメダ銀河以遠の銀河の距離推定に使った道具を疑うだけですむ。

(3)宇宙が平坦でなく、曲率が正で空間的に閉じている場合、遠方の光は、宇宙自体の凸レンズ効果で距離の2乗に反比例よりも明るくなるし、 反対に曲率が負であるなら凹レンズで遠方が暗くなる。宇宙が透明で空間曲率が正なら、ある距離まで空間が拡がるが、それより先は空間が 狭くなり、遠いほうが明るくなる。そして最大距離には一点からの光が収斂する、対極点がある。対極点の存在は、宇宙の光学に異常な性質を 帯びさせるはずで、定常有限宇宙のオルバースのパラドックスを生む。アインシュタインの定常宇宙にもこの問題は残る。 現実の宇宙においてこのような性質は、全く確認されていないし、曲率が負であることが、宇宙の果てを暗くさせる。 曲率が負であることが減光の理由かもしれない。

(4)ドップラーシフトも、塵なしに遠方の光度を下げる。遠方では光の速度に近づくに従って、際限なく光度低下をもたらす。 銀河のスペクトル型(F2〜G4)がシフトされ、可視光領域に入るものが変わることで光度が変化する。 しかし、宇宙の果ての銀河が、本当にどの程度遠方かによる。銀河の赤方偏移の値があれば、議論できるだろうが、 スペクトルが得られたわけではない。

1995 年からのハイゼットチームによる40〜70億光年の50個ほどの銀河での超新星爆発の赤方偏移と明るさの比較で、予測より平均 25% 暗い ことから斥力項の存在を確認したとする話と比べれば、大きな誤差であり、説明は容易でありうる。彼等は、たった25%の誤差から斥力項を 結論する。塵の関与分、赤方偏移自体の減光分の計算もしない。


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27. おわりに

冒頭で引用した、アインシュタインの”相対論の意味”の第二版への付録、””宇宙論的問題”について”(矢野健太郎訳)は、次のように終る。

(9)最後の、しかし重要な注意:ここに用いられた意味での宇宙の年齢は、放射性金属から見出された地殻の年齢をたしかに超えていなければ ならない。これらの金属による年齢の決定は、あらゆる点からみて信用しうるものであるから、もしここにのべた宇宙論的な理論が、このような 結果と矛盾することが判ったならば、この理論は直に不可とされる。この場合に対しては、私は何等合理的な解答を見出すことができない。

一般相対論の解として自ら最初の定常宇宙論を作成し、その後、我が人生最大の誤りとして、宇宙項を捨て去り、フリードマン宇宙と宇宙膨張 を承諾した彼が、その宇宙の年齢問題が解決しないなら、それら全てを廃棄すべきという態度である。彼の真実に対する比類なき献身に、 ただ脱帽する。

宇宙論は、90 年代初期に問題にされた宇宙の年齢問題、大規模構造問題、CDM+インフレーション論の問題も解決することなくこの 10 年間に さらに切迫した重大さとなった。94 年にハッブル宇宙望遠鏡によってもたらされた、深部探索の映像はより根源的である。 ここ数年、予想したように、失われた質量は、宇宙項に代行を求めるようである。 あまりに当然のように広言されたビッグバン宇宙論の欠落した論理、隠蔽された事項、又は行き詰まりを意識し、この文章を述べた。