宇宙は膨張している

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south deep field (C)NASA HST

運動する発光体。
発光体はそれに固有の波長の光(スペクトル)を持っているとしよう。発光体がもし観測者から後方へ向かって運動するのなら、固有の波長が長い方(赤い方)へへずれて観測される現象(ドップラー効果)がある。交代速度が大きいほど、ドプラー効果は大きい。

ケフェイド変光星
変光星とは明るさが変わる星のことだが、ケフェイド変光星は周期的に変光し、しかもその周期と絶対光度(本来その星が持つ明るさ)との間には一定の関係がある。したがって今同じ周期を持つ2つのケフェイド変光星があったとすると暗い方は遠くにあることになるのだ。この性質を利用し星までの距離を知ることが出来る。

膨張宇宙の発見はE・P・ハッブル(1889〜1953)によってなされた。
20世紀のはじめ、渦巻銀河(アンドロメダ銀河等)などの2つの大発見があった。1つはV・Mスリファーによるもので、いくつかの渦巻銀河に後退運動を示すドップラー効果が観測されたのだ。しかしその解釈が問題だった。スリファーは銀河の回転運動に注目し、銀河系内にある原始太陽のようなものと考えたのだ。スリファーのこの発見は非常に有名だったもので、発表会(1914年)の席には若きハッブル(当時24歳)もいた。

2つ目はハッブルによるもので、渦巻銀河の縁の部分にあるケフェイド変光星の観測から、それは私たちの銀河系の外にあること、それとその正確な距離が解ったのだ(1923年)

これら2つの事実を結び合わせ、銀河はその距離に比例し、後退速度が大きくなることを見出したのがハッブル(1929年、ハッブルの法則)であった。そのころアインシュタインの一般相対性理論によって、宇宙の膨張が数学的にあり得ることが知られていた。しかしこのようなことがなにか天文学上の証拠として見つかるなどと想像した人はいなかった。アインシュタインでさえ宇宙の膨張を認めようとはせず、彼は静止宇宙論を主張したのである。

宇宙の膨張と天体の持つ引力の関係は非常に大きい。現在も膨張している宇宙は、天体の持つ引力の影響が大きい場合、ある一定の場所まで膨張するとその後は引力に負けて膨張を止め、やがて収縮をはじめ最終的にはつぶれてしまい、引力の影響がさほど大きく作用しない場合は今後も緩やかに膨張をすると考えられてました。しかしここ数年の調査で、宇宙はこのどちらの予想も外れた動きを見せてました。

宇宙は収縮ではなく、緩やかな膨張でもなく、急激に加速しながら膨張しているのです。宇宙のほとんどは何もない真空が大半を占めている中で、何が作用して宇宙を急激に加速させているのか。通常では理解できない事実が明らかになってきました。それは真空のエネルギーというものです。なにもないという真空が宇宙を押し広げているのです。

左の解説図1のような場合、人工の真空内で上下の真空の空間(広さ)が異なる領域に物質(図では赤い玉)を置いたときに物質は真空のエネルギーによって作用するか実験がされました。結果は真空の空間が大きい方から空間が小さいほうに押されたのです。つまり真空のエネルギーは確実にエネルギーをもているのです。そして真空のエネルギーによって生まれた宇宙空間はそのほとんどが真空であるためにさらに空間の膨張が加速されていくのです。アインシュタインも生前発見できなかった謎のエネルギーが真空のエネルギーだったのです。

ハップルの法則がそのままで膨張宇宙を示すわけではない。この法則は宇宙の中の極限られた一点(地球)で見出されたにすぎない。このままなら地球が宇宙の中心だということにもなりうるのだ。ここで「宇宙は(大局的にみれば)一様であってどの場所で見ても同じ」という宇宙原理が必要になる。この宇宙原理と、遠い銀河ほど速い速度で後退する様に見えるというハッブルの法則とを結びつければ答えは「宇宙は膨張している」となる。

ハッブルは観測の名手と言われた。この点はスリファーも同じである。また彼は宇宙は単純で美しく、さらに完全なものという、審美的ともいえる宇宙観の持ち主であった。この点でも胸に描くイメージが違うとはいえ、スリファーも同じであった。このような2人であったが、行き着く場所が違うのもまた止むおえないことであった。ここでハッブルの功績をいうなら、渦巻銀河が、私たちの銀河の外にあると言うことを、高い正確さで押さえたこと、に始まると言える。

解説図1

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ハッブルディープフィールド (C)NASA HST

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