(これは実話を元にしたフィクションである…)
〜嘘感動王列伝〜
高橋直子物語 駆け抜ける青春
第一話 『国民栄誉賞を獲る少女』
直子は来るべきオリンピックに備え、地獄の高地トレーニングに望んでいた。
「ニッポンの夜明けは近いぜよっ」
太平洋に吼える小出監督。
明白楽として名高い男である。
「…カントク…」
“高地”と“高知”をかけたギャグ。
そのくだらなさに、直子は眩暈を覚えた。
「今年は五輪イヤーなんですから、マジでがんばらないと…」
「…直子」
監督は直子の肩にポンと手をおいて
「俺を信じろ」
自信たっぷりに語りかける。
「…はぁ」
「それになぁ、これもプログラムの一環だ。オマエは心肺機能より先に改善せねばならない欠点があるのだ」
「そ、それは…?」
「うむ」
たっぷり間をおいて、威厳をもって宣告。
「オマエの弱点…それはズバリ“ハート”だ!」
「ハ…ハート!」
がーーーん
ショックのあまり、妙な効果音が直子の脳裏で響く。
「坂本竜馬を生んだここ高知で、オマエのマイナス思考をポジティブシンキングにチェンジするのだ!」
「の、脳内革命ってやつですね?」
「うむ」
直子の瞳に輝きが戻る。
「やりますっ! わたしがんばりますっ!」
「…直子」
交わされる視線。
直子はいまさらながら、目の前のヒゲオヤジの偉大さを、ひしと感じていた。
*
10分後…
「なんのために走るのよぉ…苦しい思いして…」
訓練の甲斐なく、思考のベクトルはマイナスに一直線。
「オマエは『かっとばせキヨハラくん』のクワタかいっ」
「…コーチ…」
あきれる監督に、直子はうつろな瞳で問う。
「私だって普通の女の子みたいに…オシャレや恋を…」
「バカっ」
ばしっ!
愛の鞭(または体罰)が頬を打つ。
「…カントク…」
頬をおさえ、唖然と師をみあげる。
小出監督は憤りを抑えきれないとばかりに、一気にまくしたてた。
「あまったれるな! 金メダルがそう簡単に獲れると思っているのかっ」
ポカンとした表情で、直子は呟く。
「…べつに…欲しくないし…」
「バ、バカっ」
獲ってもらわないと困るのは監督。
スネられては、今後の人生設計が台無しである。
「ほ…ほらっ、金メダルはいいぞぉ。ジャンプの原田や岩崎恭子の栄光を思いだせっ」
「…栄光…」
促されるまま直子は、栄光のメダリストたちの軌跡に思いを馳せる。
「な? ええやろー」
「………」
突然、直子の瞳から大粒の涙が…
「どうせ…どうせチヤホヤされるのは最初だけじゃないですかぁ。あとは忘れさらえるんだぁ、うぇえん」
「わー! 逆効果やーっ!」
高橋直子…
シドニーオリンピックまで、あと半年――
<次回予告!>
ルーマニアのシモンさん来襲!
「ナオコ、ショーブヨ」
市橋有里を一蹴したその実力に、直子は果たして立ち向かえるのかっ!
戦え! 直子!
未完成の大技――「グラサンアタック」が炸裂する次回、『苦悶の表情なのにニコニコドー』にレリーーズッ!
(次回放映日は未定です)
あとがき
全二話です。
次回が最終回(^^;
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