教科書はまず教えない歴史


試験を前日に控えた晩、食卓に腰掛け、名雪と二人で日本史の勉強をしていた。

「鎌倉幕府の成立は何年だ?…って、こりゃ簡単だな」
「うーんと、わたしが生まれる前だから…」
「そりゃそうだ」

互いに問題を出し合い、記憶を確認しあう。
クイズかなにかと思ったのだろうか、居合わせた真琴やあゆ、秋子さんもそれに口を挟んできた。

「秋子さんが生まれるより、前だよねー」
「当たり前ですっ!」

真琴の声に、めずらしく強い口調の秋子さん。
やがて、正面に座っているあゆが身を乗り出して、大声で答えた。

「『以前より・いっぱい出番減ったね・邦ちゃん』の1192年でしょ?」

ずいぶん珍しい覚え方だが、もちろん正解。

「あ、あゆちゃんに先越されちゃった…」

名雪が残念そうに呟いた。
相手が相手だけに余計くやしいらしい。

「あぅー、真琴が先に言おうと思ってたのにー」
「早いもの勝ちだもーん」

頬をふくらます真琴を、次ですよと秋子さんがなだめる。
その様子に微笑ましさを感じて笑ったのだが、真琴はバカにされたと感じたのか、プイと横を向いた。

「じゃ、次いくぞ。えーと」

俺は無視して、次の質問を捜す。

「室町時代の最高実力者は誰だ?」

答えは簡単、室町幕府の全盛の将軍、足利義…

「アハハ、簡単だね。一休さんだよ」

あゆの自信たっぷりの回答に、おもわず椅子からずっこけ。
しこたま腰を打って、患部をさすりながら身を起こす。

「…なに言ってんだよ、おまえ…」
「だってっ! 仮にも将軍さまにだよ、『わがまま将軍』だの『けち将軍』だの無礼千万な呼びようだし、寺社奉行はアゴで使うし…」
「オイ…」

まぁ…確かに、将軍さま貫禄ないし、蜷川新右ェ門殿はパシられまくってるが…

「桔梗屋さんからトンチと称した屁理屈で財産奪いまくるし…、後小松天皇のご落胤だかなんだか知らないけど、傍若無人もいいとこだね」

まるで自分がやられたかのように憤るあゆ。
反論を返そうと口を開いた瞬間、隣の真琴と名雪が言い返す。

「あはは、バーカ。違うわよー」
「そうそう、違うんだおー」

そして、それぞれの主張を展開。

「一休さんより、さよちゃんでしょー・・・"歴史の影に女あり”よぉ」
「それなら母上さまのほうだよ。あのスパルタおばさんの命令には、さすがの一休どのも形無し…」

それから三つ巴の一休さん談義が続いた。

「・・・"てるてる坊主”に逐次報告してるでしょ。あれは母上さまに通信してるんだよ。ああやって監視から逃れられない」
「違うわよぉ。最終回で菊の御紋つきの刀を贈られたのが、さよちゃん支配者説のなによりの証明なのよっ」
「ボクとしては黙念さんも怪しいとニラんでるんだけどね」

話に熱中するあまり、すっかり存在を忘れられた俺はあきれて、秋子さんに同意を求めた。

「…しょうがない連中っスね。こいつら」
「ほんとに」

秋子さんはお茶を飲み干すと、瞳を閉じて語った。

「…古代より、世界の支配者はユダヤって決まっているんですもの…」
「へ?」

そして彼女は湯のみをテーブルに置くと、膝に視線を落して、楽しげに笑った。

「…ユダヤ、ユダヤが…クスクス…」
「あ、秋子さん…」



   (おしまい)





あとがき

「一休さん」はやっぱり最高(^^;/
史実とはかけ離れてるんだけどね…




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