究極のヘタレSS 卑しんぼ 〜癒し系対決〜



 『究極VS至高』のヒロイン対決もこれが2回目。
  海原憂山の出したテーマ“いやし系ヒロイン”に応え、病岡が挙げたのは『Kanon』の水瀬秋子であった。だが…



「わははっ! 愚かなり病岡士郎」
「なにがおかしいんだっ! 秋子さんの母性愛以上の癒しが存在するというのかっ」
「そのとうりだっ」

しゃらくさいとばかりに大声で罵倒する憂山。
血相を変え理由を問う究極陣営に対し、哀れみすら含んだ眼差しで答えた。

「母親がすべて…いや、母親だからこそいかんのだ」
「な、なにぃ!」
「考えても見よ! プレイヤーのオカンの名前が“秋子”だったとしたら…」
「…はっ」

病岡の顔が青ざめる。
その可能性が脳裏から欠落していたことに気づき、自分の愚かさを非難するかのように唇をかみ締める。

「フフン」

憂山はそんな息子を一瞥すると、審査員の名士方に向けて演説をはじめた。

「もし自分の肉親の名前を見出してもみよ。妄想…もとい夢が砕け、プレイヤーは過酷な現実に打ちのめされるだろう」

その言葉に審査員一同もうなずく。

「たしかに…明太子みたいなオカンと秋子さんでは落差が…」
「ワシもゲーム中のロリィな妹キャラと現実のヤマンバが同じ名前で醒めてしまったことがあってのう…」

病岡の傍に控える苦里田さんも悔しそうに、だが確信を込めた口調で言った。

「そうなのね…だからギャルゲーのキャラは、『現実にいねーよ、そんな名前』『キャバクラの源氏名みてー』…みたいな名前を与えられていたのね」

それに気づかなかった自分たちの愚かさに、二人は打ちのめされたのであった。
憂山は追い討ちをかけるように、大声で続ける。

「士郎…いや、この男は死後何年も経つというのに、いまだ母親離れができんとみえる。わははっ!」
「クッ」



  病気の母をないがしろにギャルゲーに熱中する孤高の芸術家「美少女ゲームを芸術に高めた男」― 海原憂山と、
  その父に反発し大切なセーブデータを破壊して家を飛び出した息子 ― 病岡士郎。
  二人の対決はいまだ幕を開けたばかりである。


   (つづく…かもしれない)




あとがき

実はもう一話用意してあるけど…ヤバイよなぁ。




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