愛撫
「はぁ…ぁ…」
背筋を疾る痺れに、少女はただ切ない声を漏らす。
初めての感触に、本能が呼び覚まされる。
(だ…めぇ……)
言葉にならない。
抵抗も束の間。
唾液の音が、痒みにもにた疼きが、身も心も溶かしてゆく。
「うぅ…ん」
やがて、真琴は誘われるままに口元を這う唇を貪りはじめた。
偶然ぶつかった互いの舌を絡め合い……
「…っ…さん…いいよぉ…」
『愛撫』
作:雀バル雀
scean 1
荷物、といっても量は少ない。
数枚の服とマンガ本を風呂敷に包み込むと、躊躇することなく階段を降りて行く。
「真琴」
背後からの声。
真琴が降りかえると、呆然とした表情で祐一が立っていた。
「何のよう?」
「って…おまえ…」
信じられないといった態で、身を乗り出して問い詰める。
「ど、どうしたんだよ…その荷物…」
さらにニ、三歩。
しかし、真琴の強い瞳がその歩みを止めた。
「出てくの、じゃ」
scean 2
「出てく…?」
意味を確かめるように、祐一はもう一度呟く。
そして、理解した瞬間。
「秋子さんたちによろしくねー」
「お、おい」
反射的に手を伸ばす。
追いすがる様に、強引に上着を掴んだ。
「ちょ、いたっ」
真琴は乱暴に手を振り解くと、服の乱れを整える。
そして、うろんげに階上の祐一を見上げた。
「…ったく、あいかわらず強引なんだから…」
「ご、ごめん」
勢いに押され、祐一は思わずわびる。
その様子を見て、すこし満足げに鼻を鳴らした。
「ふーん」
「な、なんだよ…」
真琴は応えない。
ただ余裕たっぷりに、見つめ返すだけだ。
祐一は怯えを悟られないように、語気を荒げた。
「おまえ…お、オカシイぞっ! 出てくだのなんだの…そ、その…」
「ふふ」
祐一は少女を伺う。
彼の知る相手は、ほんとうに自分の知る少女かと訝しがりながら。
「女は変わるものよ」
scean 3
「女は変わるものよ。…相手次第でね♪」
楽しげに呟く。
祐一は虚をつかれて一言も返せない。
「へー、祐一やっぱり真琴のこと…」
「バ、バカっ」
虚勢をあざ笑うかのように、真琴は大声で笑う。
「あはは☆ かわいー」
「くっ」
祐一はこの場から逃げ出したい衝動にかられた。
そうできたらどんなに楽だろう。
だが、真琴は追い討ちをかけるように、大きな瞳を細めて微笑みかける。
「ごめんね…嫌いじゃないんだけどさー」
あんたじゃ物足りないの、とさらっと言ってのけた。
祐一は絡みとられたまま、身動きすらとれない。
「な…」
「だってねー、ねー♪ …スゴオィんだもーん♪」
頬を赤らめて、赤裸々に自らの体験を綴る。
「いっぱい舐められてねー、強引なのに手馴れてて、ぜんぜん嫌じゃないしー」
無邪気で、陽気で
残酷で
「あれが本当の…よねー。みんなが夢中になるの分かるよ、うんうん」
「お…おまえ…」
「祐一の愛撫なんて比べたら失礼よねー。経験の差を引いてもね、あたしたちの本能に響くって言うのかなー。あははー☆」
祐一は呆然と、ただ少女の言葉を噛み砕いてゆく。
真琴は眼中にもないかのごとく、弾むように玄関に下りて行く。
「あ、北海道までの旅費、祐一の財布から借りたからね。じゃ」
鼻歌交じりで靴紐を結び、むこうに付いたら連絡すると言葉を残して、真琴は去っていった。
「………」
ドアの閉じる音で呪縛から解けたように、祐一は崩れた。
scean 4
「あぅー、そ…そこはー」
老人にぺろぺろと顔を舐められ、恍惚の表情を浮かべる真琴。
足元には彼女の仲間たちが寝そべっている。
「あらあら、真琴ちゃん、かわいいですねー」
「いやーん、ムツゴロウさーん上手〜♪」
fin
あとがき
五行で済むネタをここまで伸ばしてみました(^^;
あなたが噛んだー、小指が痛い〜(笑)
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