エジプトひも(-2)
正五角形を描く



      
 
 NHKの「わくわく授業」という番組を見て「エジプトひも」について知った。岐阜東中学・高等学校で数学を教えている亀井喜久男先生が考案された12等分したひもで色々なかたちを作図する図形の授業を紹介したものだった。
 思わず身を乗り出すほど面白かった。

 ホームページでも紹介されている。その中で、正五角形については、12等分のエジプトひもで作画するのはできないと書いてあった。エジプトひもで正五角形を作画できないか考えてみた。

 

(1)

 亀井さんが名づけた「エジプトひも」は左図にあるようなひもを12等分して、しるしをつけたもの。

 「エジプトひもの作り方も、「わくわく授業」で紹介されていた。

 (2)からの図は便宜上グリットを背景に描いている。グリットはないところで描画することを考える。


(2)

 これはエジプトひもで直角を作る方法。
辺の長さを3・4・5になるように分割点を引っ張ると、直角ができる。

ただ引っ張るだけで、正確に直角ができる。


(3)

 次に、一辺が2になる正方形を作る。
左図のように、(2)で決めた3つの頂点を固定して、4辺を縮めて右上の赤点を引っ張る。


(4)

 そうすると、一辺が2になる正方形ができる。


(5)

 左図赤い点をピンなどで固定して、右上の方を持ち左上の頂点に向けて斜めに引っ張る。

左上の頂点に重なった右側のひものところにしるし(ピンクの点)をつける。

 ここで斜めの線の長さは、√5になる。


(6)

 (5)と同じやり方で左側の縦線にもしるしをつける。


(7)

 (5)(6)でつけたピンクの点を持ってピンと張る。

ピンクの点までの縦の長さは1+√5になる。


(8)

 (7)で持ったピンクの点をぴんと張ったまま近づけ重なる点を見つけてその場所にピンを打つ。



(9)

 (8)でぴんと張っていた斜めのひもを左の図のようにひもにある次の黄色のしるしまで緩める。

 次に、左図の□のところを持って、互いに外側にぴんと張るところまで引っ張る。


(10)

これで正五角形の出来上がり。
 亀井さんからメールをいただいた。私がエジプトひもについて関心を持ったことに歓迎の意を表明されたうえで、正五角形を描くことについては、次のようなコメントをいただいた。

****************
さて正五角形の話ですが、12は5の倍数ではないので印をもって頂点となるように引っ張ることはできないということです。60等分のバビロニアロープで可能です。ただピタゴラスの定理や二次方程式や黄金比などの知識なしゆえにまさに近似でいくしかなかったと考えています。

理想の意味で正しい方法の模索が、かの時代の人の中に数学的論理への模索を促したのではないかと思います。
だからこそ理論的に成し遂げたとき、それを勝ち誇るかのようにピタゴラス学派の人々は学派のシンボルマークをペンタグラマにしたのだと 私はひそかに思っています
どうでしょう
****************

 最初のところは、亀井さんがエジプトひもで正五角形が描けないとしている理由について述べている。確かに、上に示した五角形の描き方は、実質上10等分のひもとして(12等分のエジプトひもの2辺分を使わないようにして)使っている。私としては、道具の一部を使わないという使い方もあり、と考えたのだが、エジプトひもの使い方として想定されたものとは外れるのかもしれない。それで、このページのタイトルのところに(-2)をつけるようにした。
 
 私は、メールの後半に書かれていることが面白かった。12等分のエジプトひもでは、正三角形・正方形・正六角形は容易に描けるけれど、正五角形はできない。数学的論理を駆使することで可能になることをピタゴラス派の人たちは示して、自分たちのシンボルとした・・・といった数学史のダイナミズムを亀井さんは想定されているようである。数学史については無知に近いが、なるほどとても面白そうだと思った。

 じつは、上の五角形の描き方は、下に示したリンクのページで紹介されているコンパスと定規で正五角形を描く方法をヒントにしている。コンパスを使って正五角形を描く方法を編み出したのが、ピタゴラスだそうだ。(1+√5)/2で示される黄金比についての知識なしには描けないことかもしれない。
それでも私は、ピタゴラス派が正五角形の数理を発見するより以前に、道端で少女があやとりのような遊びをしながら「お花のかたちができた!」とはしゃいで、正五角形を作って遊んでいる姿を想像してみたい。数学史について無知なるがゆえの想像かもしれないが・・・。

 参考URL
(1) 亀井喜久男 数学教育研究のページ
(2) エジプトひも
(3) NHK わくわく授業 ひも一本で図形がわかる 〜亀井喜久男先生の数学〜
(4) 正五角形の作図法について
(5) 正五角形をかく
(6) 正五角形の書き方の証明
(7) 任意分割法による正多角形の作図
 上記の参考URLで、(4)〜(6)にはコンパスと定規で正五角形を描く方法が紹介されている。(6)では描いた図形が正五角形であることが証明されている。

 ただし(7)で言われているように、何度も円を描いていくうちに誤差が重なりできた五角形がゆがんでしまうことが多いように思える。(7)では、逆転の発想で精度の高い正五角形を描く方法が紹介されている。この主張にほとんど同意。円に対する内接円や外接円を正確に描くのは難しい。理論的に正確であることと現実に精度良い作図を出来ることとのあいだにはずれがある。このあたりは、理論と技術・技能のあいだに横たわる問題として興味深いものがある。(7)にはこんな記述もあった。

「ある特別なシミュレーションや制御のプログラミングを行なう場合、微分方程式などを多用した純粋に数学的な処理をするプログラムを組むと複雑になるばかりで巧くいかないのに、ごくシンプルな初等算術や物理の原理を階層的に組み込んで用いると十分実用に耐え得るシミュレーションや制御が可能になるということが少なくありません」

 私も超音波探傷のシミュレーション螺旋を調べるソフトなどを、同様の考え方でやっている。

 実は、「エジプトひも」で正五角形を描く方法については(6)のページを見て思いついたものである。

 「エジプトひも」での作図でも、ひもの太さや目印のつけ方ピンのさし方によって誤差が生じるが、コンパスでやるよりは精度良く正五角形が描けるようである。

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