イントロダクション
はじめに、量子暗号が求められるようになった背景からお話します。

現在最もスタンダードな暗号方式のひとつにPGPというものがあります。基本的に最も安全な暗号方式といわれ、伝えたいデータに数学的な処理をすることによって、判読が不可能なデータに書き換えます。この暗号方式を解読するには巨大な整数を素因数分解する必要があり、現在のコンピュータの性能では莫大な時間を要します。このため事実上、暗号解読が不可能であるとされています(図1-1)。

このように、現在世の中で使用されている暗号方式は、解読に非現実的な時間がかかることを安全性の根拠としています。

図1-1 量子暗号が求められる背景@

その安全性を脅かすものとして、ネットワークを使用した分散処理の発達、ここ数年飛躍的な進歩を遂げている量子コンピュータの存在が挙げられます。量子コンピュータが実用化すると現在のコンピュータでは宇宙の歴史ほどもかかる計算も数分で行うことができるといわれています。そうなれば、PGPのような暗号は簡単に解読されてしまうことになります(図1-2)。

図1-2 量子暗号が求められる背景A

ここに量子暗号が注目される理由があります。量子暗号は、PGPのような従来の暗号化技術とは根本的に異なり、量子(物理量の最小単位)の持つ特徴を利用した暗号化技術として、近年盛んに研究が行われています。計算量ではなく、量子力学の基本原理である「ハイゼンベルグの不確定性原理」を安全性の根拠とし、この暗号が打ち破られることは自然原理的にあり得ないことから、究極の暗号化技術といわれています(図1-3)。

図1-3 量子暗号が求められる背景B


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