死ぬかと思った富士登山

@ミリオンマップ(東京地図出版)より

富士山の頂上で「富士山測候所」のある日本で一番高いところ=剣ヶ峰(けんがみね)は標高3776mにある。
上の地図<以下@マップと表記>を見て「河口湖駅から富士山頂まで歩行距離でだいたい20kmである」と言い切る人、ダメな人である。

「ふ〜ん、ココ(河口湖駅)から富士山のてっぺんまで20kmぐらいか・・
 8kmを40分で走った俺だぜ(高校体育時:中の下くらいの速さ)。 昔(小学校1.2年)は、校内学年別マラソン大会
 で1位もとったさ。  余裕余裕! ダッシュで3時間だな!!」

・・・・・・間違った計算した・・・・・・ 何が間違っているか分からん奴は、登ってみろ! 分かるから。
ただ、うっかり「富士山にのぼっていた」つもりが「天にのぼっていた」なんてことになったらシャレにならんので注意しようぜ。


以下、ところどころに画像あり。 実はこれ以上に撮ったつもりだったものがある。 しかしながら、
あまりの暗さで現像されなかったものがある。  特に、樹海付近・・・


●出発偏
 ←るるぶ<JTB> 富士山

9月下旬、シドニーオリンピックが開催されている頃。 夕方、立ち読みしに入った本屋で上の雑誌を見つける。
「登ってみっか・・・・」
コレを即買いして、家に帰る。 速攻準備。

 ←こんな格好&荷物で行った。

このときの俺には「登山」なんて意識はNothing! ダッシュでいっきに頂上まで登るつもりだったんで
身軽に・・・ 
リュックの中には、1.るるぶ(雑誌:富士山偏) 2.携帯ラジオ 3.携帯電話 4.懐中電灯 
さらに、行く途中でペットボトルのジュース2本、使い捨てカメラを購入。

 新宿から富士五合目まで直通で走っているというバスがあるらしく、夕方の18時過ぎに新宿へ向けて家を出る。

20:20 ・・・・・・・無いですよ。・・・・ そんな言葉を俺に投げかけたのは富士急行の職員。 あら??
あきらめて帰ろうかとも思ったが、そこはそれ、前進主義をもっていた俺、引き下がるわけにはいかなかった。
仕方なく普通に電車で行くことに決定。  新宿→中央線→大月→富士急行→河口湖


23:10  河口湖駅。 富士山までの登山バスが18時で終わっていることに愕然。次のバスは翌日朝9:30とか・・・

       あたりは典型的な田舎の駅前。 何も無し。 タクシーの停車場があったが「富士五合目まで1万円」という札。
       なめんな、所持金8500円。 

       帰りたくてもすでに終電。 暗いから、富士山がどこにあるのかも分からない。
        10分ほどボォ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っと立ち尽くした後、フラフラあてもなく、なんとなく歩いてみた。 
       道路を5分程歩いたら、コンビニ発見。

       ← 地図をとりあえず買ってみた。

 地図を買って富士山付近のマップが乗っているページというのが、このページの一番上の画像(@マップ)。 コレを見て思ったこと・・

      「ここ(駅近くのコンビニ)から、ココ(富士山の頂上)まで20km無いぐらいか・・・。 確か高校のときの
       ロードレース大会で8kmを40分ぐらいで走ったんだよな。 あ、全然余裕じゃん、よゆ〜よゆ〜♪ 3時間ぐらいで
      着いちゃうじゃん♪」

      ってことで、「明るくなるまでコンビニ前でじっとしている」という選択肢を捨てて、富士山麓へ向かうのだった (23:30)


●河口湖駅〜富士の麓ふきん

0時過ぎ: しばらく歩いていると国道に出る。 富士急ハイランドなんかが見えたりしてそこそこ賑やか。

0:20   国道から折れ曲がる(@マップの河口湖の「河」の字の下あたり)
      「吉田口登山道→」
と書かれたやけに小さな札がひっそりと貼られているのを見る。 ここから後動いている人を見なくなる・・

1:00   比較的広い道路を延々と歩いている。 道路の両側は原生林。 地図には「原生林と溶岩のなかを走りぬく眺望のいい
        道路」と
、載っているが、まったく眺望は良くないのである。 はるか前方に見える信号まで10分かけて歩いて
       いったら、またはるか先に信号が見える・・・

2:10   大石茶屋という茶屋に着く。 なにやら建物の中には人気があるが、店が開いていないのは予想どおり・・

      

      ・・・・・「吉田口登山道→」という札の先を見て愕然。 いよいよ舗装されていない、いわゆる「山道」ってゆーか「樹海」 

      光がまったく無く、本当にこっちでいいのか!? かなり迷った後で「懐中電灯」を取り出して、樹海に入る。

2:40   「馬返」という場所。

  

 ↑ 「江戸時代まではここまで馬に乗ってきて、ここからいよいよ本格的な登山道へ入る」というようなことが書いてある。

    なめんなっ! もうすでに十分ヤマミチ。


●樹海・・・道を間違えようものなら、死。

    ←地図上ではわずか1数cmに、30分〜1時間かかる

3:00 1合目到着<標高1.520m>
 ← これ以外には潰れた大昔の山小屋の残骸のみ 

ここから5合目までが今回の登山のなかでも最もやばかったところ。 ところどころに「OOマツ XX科植物」のような
札が貼っているだけで、人工物はほぼ無し。 まさに、「樹海」である。

本当に今進んでいるこの道で合っているのかどうかが分からない。 なんとなくコッチに行けそうだ、という感じ。

行き止まりだったら、引き返して・・・あぁ、もしかしてコッチ??・・・・

 

3:40 2合目到着<標高1.700m>
 ここまでくると引き返すに引き返せない。熊とか蛇とかに襲われたらおしまい。

高山病・・・俺はぜったいそんなんにかからないぜ! と思ってたのに、まさにソレ!
 異様に息があがる。 深呼吸してるのに、何か息苦しい・・・ 
あ、これが高山病ってゆうのね^^ ほんとにツライのね!

 5分歩いて10分休憩、5分歩いて10分休憩・・・・

  (三軒茶屋)
  ↑途中、こんな場所も。
「江戸時代、朝にOOを出発した一行が昼食をここでとる」と書いてある。

 江戸時代まで 2合目以上は「女人禁制」だったそうな →   

 

4:10 3合目到着<標高1.840m>
  暗闇にはすっかり慣れてしまった・・

長時間あるいていると暗闇もそんなに怖くなくなってしまう。 懐中電灯をつけないと先が見えないので歩けないが
ところどころで
月の明かりで足りるところは完全に消して歩くことも可能。

かなりやばい中でも、最高にやばかった辺り。 歩くとすぐに息があがってしまう。
あまりの疲れに、むきだしの岩に腰をかけたり、草むらの上にリュックを枕にして普通に寝っころがったり・・・

汚いとかそんなこと思ってる余裕なし。 こんな時間に原生林の中で仰向けになって寝てる俺って結構すごくないか??
無理やりにでも奮い立たせなきゃやってられない。

もしここでぶっ倒れたら確実に死ぬんだろうなぁ〜・・・。 死んだらいつ発見されるんだ??
ははっ(^^;;;  じょーくじょーく、死にはしないだろ、死には・・・ 
(← こんなこと真剣に考えているあたり、かなり本気であせっていた)

4:50 4合目到着<標高2.100m>
 ← ここまでくると、なんとなく吹っ切れるものがある。

「足の骨とか折れたら、終わりだな」とか相変わらず考えながら歩いているものの、ここまでくると下りるより登った方が
早く人間に出会える確率が高いというものである。 誰かぁっ! 俺を発見してくれっ!

 ← こんなところで競走している連中がいるらしい。
 ↑ こんな看板がところどころにかかっている。 誰だよっ、こんなとこで競走してるやつぁ? 道が分かってよかったりもする。

 ← うっすらと空に青みが・・。 5時ちょっと過ぎ。

 

5:30 5合目到着<標高2.305m>
  ← ついに・・・

河口湖駅を出発すること6時間目にしてようやく世間一般で言う「富士登山」に入る。 

昔はココで「五合目まで登った」という焼印を押してくれたそうな・・・。 

 ←やったっ、、、この柵を乗り越えると・・・↓

    舗装された道路に出た・・・樹海脱出 →  


●世間一般で言ういわゆる「富士登山」偏 6:10

← いわゆる一般に言う富士登山へ突入

ここまで来て、正直かえるかどうか迷った。 夜通し上ってきて、これでもう十分じゃないか・・・

でも、ここで帰ったらあまりにも空しすぎるではないか・・・

 周りにも登山者があちらこちらに見え始め、嬉しいことこの上なし。 これでいつ倒れても誰かには発見される。

7:40 6合目到着<標高2.390m>
 ←景色はいい、空気もいい、でも我が身で感じられるのは疲労感のみ。

すでに雲の上。 ↑ 一応ベンチらしきものはあるが、座る気にもなれない造り。 日差しは強さを増す一方。

             

             周りはこんな風に大きな岩だらけ → 

7合目の写真はなし。

11:20 8合目到着<標高3.250m>
 ← 山荘。 シーズンでないと開いていない。 無常だ。

ここまで来ると、もうこの景色には飽き飽きである。何の感動もなし。

ちょうどこの頃、ペットボトルのジュースもなくなってから3時間、極度の脱水症状。 まじでやばかった。

誰かに水を分けてもらおう(売ってもらおう)と、本気で考えていた。 しばらく上っていると、工事をしている人たちが

いたので、「すいません、水分けてもらうわけにはいきませんか?」と懇願すると快く分けてくれた。 人の親切が

心に染み入ったとき。 そのとき渡されたコップが「カップ酒」のコップだろうと気にしてる余裕もなし。

 ←分かりづらいが中央右付近にあるのがブルドーザー&ユンボ

9合目の写真は無し。

13:10 頂上到着
 

↑狛犬? ついに頂上に。 嬉しさに流す涙は枯れきっていた。

 ついに、ついに着いたぞ頂上に。 なんかゆっくりお茶でも飲みたい!!

しかしそれもシーズンならではのこと。 シーズンオフの9月20日じゃ、開いている店は皆無。 登山者はまぁ、パラパラ

といる。

     いかに撮ろうとも、あまり変化は無し。 →

 ←1人で写真を撮っていると「撮りましょうか?」という親切な人に撮ってもらう。

撮ってもらいながらも自分がどんな風に撮られているのか、とか、どんなポーズをとろうか、などという思考は

全く働かず。 ロープの向こうはマジで危険。 ふざけて越えようものならどこまで転がり落ちるか分からない。

← 富士山の火口。 向こうに見える一番高いところが3776m

↑ 富士山の頂上付近はおわん上になっている。 おわんの底はどうなっているかというと、なんでもない。

日本の最高所(3776m)に到達するには、向こうまで回っていかないといけないのである。 1周するのに約1時間20分。

気温は限りなく0度に近く、突風が吹き荒れる。 雲がないので紫外線をもろに浴びる。 突風に吹っ飛ばされそうになるが

本当に吹っ飛ばされたらシャレにならない。 体勢を崩しでもしたら、本当に死ぬ確率大である。

14:10 剣ヶ峰:富士山測候所<標高3.776m 日本最高点>
  ←富士山測候所の白いドーム。

日本最高点である石碑の前で見知らぬ人に撮ってもらう。→ 

  ←富士山の火口底。あそこから火が吹く(噴火時) 最後の1枚。

これで登山記録は一応の終わりである。 

だがしかし、実のところ困難はまさにこれからだったのである。 下山は登りと違うルートなのだが、「砂走り」という

現象がある。 急斜面に火山灰が降り積もっていてふかふか状態になっている。 そこを一気に駆け下るというもの。

場所によっては1歩で1m下ることができるという。 最初は「おぉ、おもしれぇ」という気もしたが、すでに体力は底をついている

状態。 5分もすればすぐに飽きる、ってゆーか、走らせんなよ。 道があまりに急斜面なので強制的に走らされる。

ときに岩が剥き出しになっていて、おもわず転倒、しかし周りは見渡す限り誰もおらず痛がってる余裕も無し。 すりむいて

血を流しながらも走りつづける・・・

 

8時間ほどかけて上ってきた距離(5合目から)を2時間半弱で駆け下りた。 うぅ、やっと・・・

バス停にたどり着いて愕然・・・「なにっっ!! バスはもう無いだとっっ!!!!!!!!!!」

一日3本、すでに最終は出た後、このとき夕方の16時20分。

 う〜ん、困った。 

地図を見る、そこから最寄の駅(御殿場?)まで20km、死ね! 歩けば5、6時間もかかる・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・

歩くしかない・・・・・・・ 否、走る・・・・・・・  神よ! なぜに我にこのような試練を与えたもうたっ!?

 

前日から不眠不休で頂上まで登り、そして駆け下り、いままたハーフマラソンをしろと?

電車のダイヤの関係で、どうしても9時ごろまでには駅に着かねば終電に間に合わない。  必死。

走る、ひたすらに。 時々横を通る車、なんどヒッチハイクをしようと思ったことか。 

「陸上自衛隊 富士練習場  危険、立ち入るべからず」の看板を横目に走る。 体温が上がってきたのでTシャツのみに。

「マラソン選手だったら1時間くらいで走れるんだな」と思うが、まったく参考にならない。 遠くに街の光が見えるが

走れども走れども近づかず。

 さっきまで明るかったのに、すでに真っ暗。 街灯もない、あるのは月の明かりと遠くの町のネオンの光のみ。

またかよ!!

 

2時間後、19時を少し過ぎた頃にようやく国道に出る。 たすけてっ!

走る気も失せ、国道をゆっくり歩いているとバス停発見、ダッシュ!! バス停に書かれた文字は「河口湖駅行き」

時刻表を確認すると「19:20」の文字が・・・・・・・・・

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁっっっ!!!

 

ほんとに来た、乗ったさ、当たり前さ。

河口湖駅まで1時間ほど。 家に着いたのが0時ちょっと前。 

次の日、猛烈な筋肉痛に苦しめられる。

 翌日:紫外線による脱皮被害。 

                                         おしまい

 

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