実験用電源を作る


作成 : 2003/06 頃 
更新 : 2006/02/10

どんな電源を作ろうか

 このサイトのほかのページで紹介している回路では、1.5V、3V、5V、9Vなどの電源を使用しています。
 このように電子工作やその途中の実験では、いろいろな電圧、電流の電源が必要となることが多いと思います。
 そんな時、実験用の電源があるとたいへん便利です。

 ここでは、できるだけ安く簡単に作れるようにいろいろ工夫してみました。

 目標とする出力は、
      ・出力電圧:0〜20V可変
      ・出力電流:最大2A
 です。

どんな部品を使おうか

 普通は、ここで電源トランスを選定します。
 しかし、最近トランスは種類も少なく高価になり、何しろ重いのが欠点です。

 そんなときは、中古パソコンショップへ行ってみます。そして、買ってきたのが ノートPC用ACアダプタです。
ノートPC用ACアダプタ  スキャナ用や小型プリンタ用などでもよいでしょう。
 どちらかというと、古いタイプのほうが電圧も高く、改造もしやすいと思います。

 出力電圧が5Vや12Vのような、よく使う電圧のものではなく、19Vとか23Vといった、 中途半端で使い道がなさそうなもののほうが、安く手に入るかもしれません。
  組み込み用のスイッチングレギュレータモジュールでも、24Vくらいのものはあまり売れないのか、 たまに在庫処分として安く売っていることがあります。

 左の写真は、20V2Aのもので、以前に1000円以下で購入したような記憶があります。

 つぎは、出力電圧の可変方法です。
 ACアダプタを分解して、制御回路を改造すればできそうですが、一般にこのタイプのスイッチングレギュレータは、  制御回路も複雑で、可変範囲を広く取るにはかなり工夫が必要です。
 したがって、そのような改造方法は今後の宿題ということにして、ちょっと手抜きをして  スイッチング電源キットを使うことにしました。
  マイコンボードや電子キットなどで有名な、秋月電子のキットで、  HPH12002というスイッチング電源モジュールを使用した電源キットです。

  このモジュールは、ボリュームを接続しない場合、出力は12Vです。
  モジュール内部に、5Vの基準電圧があり、出力電圧を抵抗で5/12に分圧したものと比較して、出力を安定化しています。
  出力電圧下げるときは出力を5/12に分圧せずに、直接基準電圧と比較することで5Vに安定化しています。  これが、このキットの最低出力電圧となります。
  逆に、出力電圧を上げるには、出力電圧を5/12よりももっと下げて、基準電圧と比較します。  25Vを出力するには1/5(=5/25)に分圧しています。
HPH12002電源キット
  このようにして、このキットの仕様では、5V〜25V(4Amax)となっていますが、  1.5Vや3Vの電圧もほしいところです。
 

5Vより低い電圧を出力するには

  手抜きをした反省として、ここはちょっと工夫をして見ます。

  それでは、もっと低い電圧を出力するにはどうしたらいいでしょう?

  それは、例えば、1Vしか出力していないのに、基準電圧と比較する回路に対しては5V出ているように見せかけるのです。
5倍回路 5倍回路基板  25V出力するときは、出力電圧を1/5にして基準電圧(5V)と比較したように、1V出力するときは、 出力電圧を5倍にして基準電圧と比較してあげればいいのです。

 出力電圧を1/5に下げるのは、抵抗やボリュームでできますが、5倍にするにはそうはいきません。

 でも、安いオペアンプ1個で簡単にできます。LM358は2回路入りのオペアンプで、50円くらいです。
 LM2904やμPC1251、NJM2904などが同じように使えます。
  2回路のうち1回路しか使用していませんが、安いのでいいでしょう。残りの半分は、入力端子をきちんと処理しておきましょう。

  回路図の中で、下のほうにある6個の端子は、スイッチング電源キットのボリュームを接続するパターンにつながります。
 Voutは電源キットの出力端子へ、ContはHPH12002の6PINへ、 Gndは電源キットのグランドへ、それぞれつながるところへ接続します。
 それと同時に、電源キットとこの基板を固定する役割もします。
 V+は電源キットの入力端子に接続します。
 Vol.は電圧を可変するためのボリュームで、 50kΩのものを接続します。電圧の可変範囲が1V〜20Vと広くなるので、 微調整用に2kΩのボリュームを直列に接続すると使いやすくなります。
  電源キットに付属のボリューム(250kΩ)を使うときは、R3(2.5kΩ)を12〜13kオームにします (写真のように半固定にしてもよいでしょう)。
電源キットと5倍回路をつないだ写真
  これで、出力電圧は最低1Vから可変できるようになりました。

  秋月のスイッチングレギュレータキットと、5倍回路を接続した全体の回路はこのようになります。
  最高電圧は、ACアダプタの出力より3V程度低くなります。
  (余裕を見て出力電圧より4〜5V高い電圧を入力した方がいいでしょう)
  例えば、最大20Vまで出力したい場合には24Vの入力があったほうがいいでしょう。

  出力電流は、電圧の高いほう(15Vくらい)ではACアダプタと同じ2Aくらい、 電圧の低いほう(5Vくらい)では電源キットの最大と同じ4Aくらい取れるはずです(実際に測定はしていないのですが)。

  目標の、0Vからの可変はできませんが、R1とR2の抵抗比を変えれば、0.5Vや0.1Vから可変できるようになります。

  どうしても0Vから可変したい場合は、余っているオペアンプで基準電圧を作ってやればできると思いますが...。
  0Vから可変できるような回路も考えていますが、ちょっと回路が複雑になりそうです。
  うまく動作するような回路ができたら、ここに載せるかもしれません。


並列接続は有効か?

  よく、3端子レギュレータやスイッチングレギュレータの出力電流を増やすために、2台、3台と並列に接続 することについて、ネット上での質問や議論を時々見かけます。

  一般的には、同じ製品・デバイスでも出力電圧が微妙に異なるので、電圧が一番高い出力のものに電流が集中してしまい、 出力電流をまかないきれなくなってようやく次のものが電流を供給し始めるようになります。
  電源メーカや半導体メーカのホームページなどには、微少抵抗やダイオードを接続後に並列接続すると良いように書いてあるところもあります。
  それはそれとして、このキットの場合はどうなのかを見てみることにしました。


 なるべく付加回路の影響を無くすために、5倍回路ははずして測定します。
 電圧調整用のボリュームもつけずに、12V固定で測定することにしました。

 20V程度の入力をつなぎ、出力は1.5A程度流れるようにしました。
 出力に50mΩの抵抗がついているので、この両端の電圧を測って出力電流のバランスを見ることにします。

 
ユニット 50mΩ両端の電圧 電流(計算値)
A 76.3mV 1.526A
B 2.0mV 0.040A
  考えるまでもありません。
  完全に片方のユニットがカットオフ状態になっています。


  改めて回路を見直して見ます。
    ・両方のユニットの出力端子は50mΩの抵抗を介して接続されている。
   しかし、
    ・両方のユニットの電圧検出端子同士は直接接続されている。
  ここに問題がありそうです。


 せっかく電流のバランスをとるために、出力端子のほうは50mΩの抵抗を介して接続してあるのに、 電圧検出端子同士が接続されていては台無しです。

 早速、両ユニットの電圧検出端子を接続しているパターンをカットします。

 ボリュームを接続するパターンの右でも左でも大丈夫だと思います。
 (この段階ではボリュームが接続されていないので全く同じです。)
 

  パターンをカットした後の電流も測定してみます。
ユニット 50mΩ両端の電圧 電流(計算値) 電圧検出端子電圧
A 42.5mV 0.850A 4.94V
B 35.2mV 0.704A 4.99V

  両方の電流が同じにはなりませんが、分散されていることがわかります。
  電圧検出端子の電圧にも違いがあることがわかります。

  出力電圧が12V固定の場合はこのままでもいいでしょう。
  出力電圧を可変にする場合は何か考えなくてはなりません。

  プラスマイナスの両方の電圧を出力する電源の中には、トラッキングレギュレータというものがあります。
  一方の電圧を可変させると、もう一方も同じ電圧が出力されるようになっている電源です。

  これと同じように、片方のユニットの出力する電流が変化すると、もう一方の電流もそれに追従(トラッキング)するような回路を作ってみます。

  回路は単純な作動増幅回路です。
  ゲインは両方のユニットのばらつきや、電圧検出端子のゲインなどによって決めた方がいいのですが、 ここでは一応100倍にしてみました。

  5倍回路を作った時にオペアンプの片方が余っていたのでそれを使用してみました。

  5倍回路のところで説明してあるとおり2.5kΩの抵抗は半固定抵抗(4.7kΩ)になっています。
  基板の裏にも部品が実装してあるので部品配置はあまり参考にならないかもしれません。


  性能測定中…

  

最後に

  いかがですか?  (ACアダプタを直接改造する方法は、宿題ってことで...そのうちに...。)
 この回路は適当な負荷を接続して、出力電圧が変更できることは確認しましたが、 出力電圧の安定度やノイズ/リップルなどに関しては測定してありません。
 実際に使用する場合は、入力するACアダプターや負荷に異常がないことをよく確認してください。


 このページがGoogleで検索できるかどうか見てみましたが、なぜか「HPH12002M」では検索できません。
 よく見たら本文中では「HPH12002」になっていました。(というわけでここにHPH12002Mと書いておこう…)
 実際に「HPH12002」と「HPH12002M」で検索してみると「HPH12002M」の方がHitするページが多いようです。

 この新電元のHPHシリーズはこのように簡単にスイッチングレギュレータを構成することができますが、 1998.04に生産終了となっています。
 他の方の製作ページなどを見てみると、出力リップルが多かったり、電源投入時に一時的に出力電圧が上がったりするようなことも書いてあるので、 そのようなことも廃止の理由かもしれません。

 ネット上を探してみると、似たようなモジュールを別の会社が出していることがわかりました。
 YEC(ユタカ電機製作所)のYDS-100/200シリーズは製造されているのかどうかはわかりませんが、
 会社のホームページには「カタログ」や「アプリケーションノート」もありました(2006.02)。



    

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