・・・・・・・?
ここはどこだ?
・・・・暗い
・・・・・・・・暗い?
・・・・・・・・何故暗闇を見通せる?
一体・・・・ここは・・・・
私は訳も分からず黒く暗い・・・何かの底を其処を彷徨っていた
それは幼児が見る悪夢か・・・それとも・・・・己の為した悪行故か・・・・
怖いとは感じなかった・・・ただ悲しかった・・・ただ虚しかった・・・・
な・・・・ぜ・・・・貴方が・・・・?
あのひとはなにがほしかったのだろう?
なにがほしくてたくさんひとをころしたのだろう
なにがほしくてたくさんほしをこわしたのだろう・・・・
・・・何が欲しい?
・・・・・奴が欲しがった物・・・か・・・・
・・・・何が欲しかったかは知らんが・・・その一つは手に入れたらしい事は撃墜直前に奴自身から聞いている・・・
・・・オーディン・・・全宇宙の最高権力の象徴であり皇室の最皇位であり・・・その名は唯一にして一・・・・その座を奪取出来たという事・・・・・
そして・・・それを可能にしたのは・・・・
俺達・・・・・・「フェンリル隊」が・・・穢れを一身に引き受けてくれた結果
だと貴方は言っていたな・・・・
ならば俺達の夢はどうなる?
お前の世界で生きたいと願っていた奴等の夢は・・・
お前の語る理想の世の中を見たいと言った奴の夢は・・・
それら全てを砕いた上にしかお前の夢は・・・成り立たないのか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・白龍帝・・・・・・・・・・・・か・・・・・・・・・・・
・・・・・穢れ無き・・・白・・・・・・・・・・・か・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・??!
・・・・何だ・・・この痛みは・・・・
・・・・・俺は・・・・まだ死んで無い・・・・のか?
ガアアッ!! (身体が・・・・・裂けそう・・・・だ)
ガアアああア!!(かっ・・・身体が・・・焼ける!)
・・・・唐突に激痛に襲われ意識は急速に浮上していき・・・・
全身を針のむしろに包まれたような痛みの中で俺は目を覚ました
・・・・見た事の無い・・・が・・・どこか懐かしい感じの天井だと思ったが
全身に走る激痛がそれ以上の思考を消し去ってしまう
ようするに体中が痛過ぎて頭がボーっとしていると言えば分かり易いか
・・・・どこからか・・・・声が聞こえる・・・声?・・・子供? まさか
戦場に子供がいる訳が・・・・戦場?・・・・俺は・・・・一体?
そうして声が聞こえた方を見ようと・・・して ・・・・・・・・・・
い゛ぃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛〜〜!!
・・・・・死ぬほど痛かった・・・・ そりゃそうだ本当に死ぬかもしれなかったんだから
・・・・死ぬかも?・・・・
良く生きていたな 若造・・・
ひと目で老人と分かる姿と声が目の前にあった
・・・爺さんが・・・・俺を助けてくれた・・・・のか?
確かに手当てをしたのはワシじゃが・・・お前さんを見つけて来たのは
孫娘じや・・よ〜く礼を言っとくんじゃぞ・・・あの子がお前さんを見つけなかったら死んでかもしれんのじゃかからなぁ〜
カッカッカッカッっと意地悪く笑うご老体
・・・・いきなりこっちの顔を覗き込んできたかと思うと・・・・孫が可愛いからと言って手を出すんじゃないぞ〜 ・・・・と冗談とも思えない顔つきで
冗談とも思える意味不明の・・・・って・・・
どうやったら今の俺が手を出せると思う?と思ったまま答えて・・・
またもカッカッカッカと笑いつつ今のお前さんは孫のいい玩具じゃなと
さりげなく恐ろしい事を言う
と意識が揺らぎ始め・・・・少し遠くで爺さんの声が聞こえる・・・・
・・・睡眠剤と痛み止めの麻酔を打っといたからな・・・・少し眠るといい
動けるようになったら嫌でも家業を手伝ってもらうからなぁ〜
意識は急速に底に沈んでいき話を最後まで聞き取れたかどうか・・・
まだ・・・死んでいないのなら・・・何が出来るのだろう・・・と
漠然とそう考えながら再び起きるための暗闇のなかに意識を埋もれさせていった
・・・・俺が砂浜で原型を留めていなかった機体の残骸から助け出されてから何とか動けるようになるまで大体半月ほどかかった
・・・その間・・・あんのガキンチョめ・・・・こっちが動けんのを良い事に散々玩具にしてくれたな・・・・ったく酷い目にあった
・・・・包帯の上から傷口を触るくらいならまだ良い・・・
・・・・時々・・・・叩きやがる・・・その度に喘ぎ呻き・・・良い声でさえずるなぁ〜とかほざきやがる・・・そのうえ・・・・
・・・・あろうことかダイブして来やがった・・・・信じられるか?
どっかの怪奇物の古典に出て来そうな包帯男みたいな怪我人に向かってだぞ
・・・・あんときゃ・・・・・死ぬかと・・・・思ったぞ・・・・ったく
ご両親はどんな教育をなさっておいでだったのだろうか・・・・まったく
と・・・おぉい〜ナク!何してんだぁ〜早く工具を持って来てくれんかぁ〜と
ここの主の声が・・・っと早く爺さんにコイツを持ってかないと
物思いを中断して庭で作業中のムック爺さんの所に小走りで急ぐ
どうやら何らかの機械品の修理を請け負っているらしいのだが・・・・・・
・・・修理屋とか再生屋の類いなのだろうか?
ガキンチョがちょっかいを出して来ないのは何故だか分からんが
もしかしたら子供なりに気を使っているのかもしれんが・・・どうだか
爺さんは何やら民生用の重機らしき物の中に潜り込んで何やらやっていた
爺さんこれでいいか?と声を掛けてかけると中から油で真っ黒になった顔が出て来たと言うか全身真っ黒である
おぅ・・そうそうそれだと持って来た工具を一瞥するとそこのレンチの・・・それと
それを取ってくれんかと・・・これと・・・これですね?と渡して・・・
それらの工具を手にしてまた重機の中に潜っていった
しばらく似たようなやり取りが続いていた
・・・そう言えば爺さん・・・何故ムックなのだろう? 前に聞いたが誤魔化された
ムックと言えば共和連邦軍のトップエースの名も確か・・・ムック・・・・
赤毛のムックと言えば帝国でも軍人・・・特にスレイヴ・フレーム乗りなら知らぬ者などまずいない・・・
百の帝国機に取り囲まれながら無武装の機体で半数を撃墜そのまま包囲を突破した話は生きた伝説として語られている
確かにスレイヴ・フレームを使った格闘戦では無敵を誇ったらしいのだが・・・・
さすがに格闘戦だけで落したって言うのは誇張だとは思うのだが・・・・
・・・・確か奴も・・・眼を持っていたはず・・・ならそれほど冗談とも思えない・・・か
おいっ!何をしとる!ボーっとしとらんでそこの工具をよこせ!
・・・・・あっ・・・・ああ・・・・これか? 少し慌てて言われた工具を渡す
そうじゃそれじゃ!もうちょっとしっかりせぇ!
・・・・・怒られてしまった・・・・これで何度目だろうか・・・・・
そう言えば・・・・初めてだったな・・・こういうのは・・・・
あいつに出会ってからいつもS・Fに乗って戦って戦って・・・・それだけだったような気がする・・・
こんなに怒られたのも・・・これだけ気持ちが休まるのも・・・・
・・・・本当に・・・・あれ以来だな・・・・
・・・・ヒスイ姉さん・・・大丈夫だろうか・・・無事に生きていてくれるといいんだが・・・
姉さんとは孤児院を出て以来会っていない・・・・ただあそこを出て二週間ほど後に不吉な噂を耳にしただけだった・・・
・・・反帝国主義のテロに巻き込まれて生死不明か・・・
・・・・・何かの重機らしい機材の修理を手伝いながらふと・・・空を見上げ
爺さんが不思議そうに・・・何を見てるんじゃ?と聞いて来る・・・
・・・・ここの空も・・・蒼いな・・・
空が青いのは当然の事じゃろ? 変な事を言う奴じゃなぁ〜?
・・・騒がしいが穏やかな日常が過ぎて行く・・・・
あそこにいた頃とは比べ物にならないほど穏やかに
・・・・怖いくらいに何事も無く穏やかに・・・・・
その日は何時も通り穏やかに過ぎ去るはずだった・・・・だが・・・
・・・今日は朝から建設用に使うのだろうクレーンやらなにやら見た事の無い重機・・・そいつが五つも六つも作業場に鎮座していた
作業場と言えば聞こえはいいが単に空いている土地に並べてあるだけである
そこで幾人かの修理工と一緒になって拙いながら手伝いを続けていた
・・・まぁ・・・ああ言う落され方をしたら普通・・・戦闘中行方不明扱い・・・と言うか
・・・・まず・・・生きているとは思わないだろうし・・・原隊復帰は・・・無いだろうな
・・・あいつの眼はそれを望んでいなかったしな・・・
・・・・まぁ・・・いいか・・・とにかく・・・今やれる事をやれるだけ・・・やろう
やっとこの手の作業にも慣れて来たことだしな・・・
・・・にしても・・・ただ重機だけかと思ってたら・・・・旧式のS・Fが混じってやがる
・・・・・・見た感じは・・・大体・・・三世代は前の機体か・・・
何に使う気だ?・・・・・・・・って下半身ホバータンクかよ!?
こっちのは・・・・何なんだこりゃ?エアータンクに頭が生えてるっ!?
・・・・ホバーリングする人型戦車に空飛ぶ生首戦車ってか・・・
こっちの人型は・・・・!?両腕が大型の削岩ドリルとは・・・まいったなこりゃ・・・
・・・・中々に奇天烈なカスタム機だよなこりゃ・・・
う〜む・・・・面白見本市だな・・・とか一人納得しつつ手を動かしていく
・・・ん?こりや旧式機にしちゃ・・・えらく新しいコクピットだな・・・
何か・・・見覚えのある・・・・タイプなんだが・・・
・・・・と・・・・現場の責任者らしい髭付き爺さんの声が・・・
こりゃ新入りっ!!お前の担当はあっちじゃ!あ・っ・ち!
と・・えらく旧式の土木機械を指差して
・・・あっすいませぇ〜ん
っと平身低頭で応じてコクピットを閉じてそちらに向かう
・・・向かいながら良く分からない小さな違和感を覚える・・・・
あの・・・コクピット・・・・どこか・・・・で・・・・
忙しく辺りを動く作業員達の隙間を縫ってようやく目的の場所にたどりつき・・・
またも正体不明の違和感に襲われ・・・・
何で・・・・土木用の重機に力を感じる? ・・・・何故戦場の空気を観る?
・・・とにかくそれはそっちに置いて整備を始めるが・・・周囲を取り巻く異様な気配は一層濃度を増して漂い始める
・・・気の・・・せい・・・か? 何か・・・・・・・・が・・・?!
・・・痛ぅ・・・・眼が魔眼が・・・何故だ・・・何故(うず)疼く・・・・
・・・・!!?空・・・? 雲ひとつ無い澄んだ空を見上げる・・・だが見えるものは
澄み切った青天井のみ・・・だが眼からは紅い雫が後から後から零れ落ちる
馬鹿な・・・どう言う事なんだ?・・・ここは戦場ではないぞ
・・・ぐっ・・・この・・・痛み方は・・・・死が近いとでも言うのか?
堪らず左目を押さえてしゃがみ込む・・・
近くにいた職人とか作業員とかが大丈夫かとかどうしたんだ?とか声を掛けてくるが・・・
眼は一層強く痛みだす・・・意識が揺らぐほどに・・・・
まるで・・・・そのまま何も対策を取らなければ星ごと砕かれるとでも言うかのように・・・・
おいっ!どうしたしっかりせんか!
・・・聞き慣れた筈の爺さんの声が遠くに・・・・一瞬意識が遠くなり・・・・・・
左目を押さえていた手が離れる・・・
そこにあったモノ・・・それはおよそ人のものとは呼べない・・・そう・・・まるで・・・・
獣のような・・・それだった・・・凶暴な光を湛えた猫科の獣の瞳に近い金色の瞳
それが止め処も無く朱色を流し続けていた・・・・
・・・こいつ・・・魔眼持ちだったのかよ・・・と言う事は・・・・帝国の・・・・
まぁ・・・待て・・・そうとは限らんじゃろ ・・・・ちょ〜っと見せてくれんかの?
魔眼なんて代物にはそうおいそれとは御目に掛かれんのでな・・・・
そう言って・・・聞き慣れた声が近寄って・・・・!!?な・・・・こいつは・・・・
フェンリル・アイじゃと!? 何でこやつが・・・・
やはり・・・・帝国の・・・白龍帝の・・・・
何か周りで色々聞こえるが・・・・・それよりも・・・・・
・・・・この・・・星を・・・・浄罪の名の・・・・下に滅ぼす・・・つもりか?・・・白龍?
やっと・・・気が付いたよ・・・・貴方が・・・・この・・・星を放置しておく訳がないんだ
惑星ニブルヘイムを・・・・レインボウ・アーチを・・・・・
そう・・・うわ言のように呟いて・・・誰かが聞いた・・・・何故だと
当然だ・・・この世界は三つの銀河より成り立っていて・・・通常の空間転移航法技術では恒星間移動辺りが関の山だ
そこでレインボウ・アーチと呼ばれる銀河間の超長距離移動用の転移ゲートが主要惑星などに配置され管理運用されていた
それにより・・・アースガルズ圏とヴァルハラ圏を結んでいた・・・・
その最重要拠点の一つがニブルヘイムだったと言う訳だ
奴がそれを潰す理由は至極単純・・・滅ぼすためさ
恐らく向こう側から爆発物のプレゼントでも贈ってくれるんだろうな?
唐突に意識が白く弾け・・・・・ブレイカーが落ちるように意識が落ちた
落ちる寸前・・・・目覚める筈の無い右目が渦巻く虹の間中に純白の機神と
その乗艦たるスレイプニルが現臨するのを幻視して
・・・・あいつ・・・・何故・・・・自分から?・・・・
己の内でそう呟いて・・・・
・・・十機のサイクロプスが動きを止めたのが軌道エレベーターから10キロから15キロ圏内に入った辺りだった・・・
何故突然動きを止めたのか・・・と突然機体のセンサーが多数の動態反応を拾う
・・・・・・確認するまでも無くセンサーカメラ越しに空間から揺らめくように現れるソレが見えた
何だありゃ?!知るかよ! 一体どうなっているっ!等の通信が飛び交っているが俺が聞きたいくらいだよ・・・
と・・・良く見ると・・・あのちっこいのはバケモノ戦車から次々に飛び立っている?!
まさかありゃ・・・オートマター?・・・あの形状のタイプは見た事はないが・・・・・
この数は少々厄介だな・・・と状況把握に勤めていると
何時の間にか傍にいたらしい自称隊長殿が鋼鉄製の羽虫共が湧いて出て来た
なぁ〜こう言う時は一体どうしたら良いんだと能天気におっしゃる
そりゃあ小隊ごとに何とかしてもらうほかないんじゃ・・・・
って・・・おいおい・・・・・・・何か凄く数が増えていらっしゃるようですが・・・って一体どれだけばら撒いてんだよ!
・・・・見れば軌道エレベータを中心にして100メートルほどの距離を置いて空間と言う空間を埋め尽くしている大量の鋼鉄の虫の大群の群れ
大きさはおよそ80センチから1メートルほどの大きさで戦闘力もそれなりだとは思う・・・
が・・少なくとも一千機近くいると戦力としては馬鹿にできない
・・・・この隊の中に実戦経験者はいるのか?と自称隊長殿に聞くと・・・・さあな・・・本物の部隊長殿に聞きな・・・と素っ気無い
急いで隊長機に回線を開いて尋ねるが要領を得ない返答ばかり・・・
何とか聞き出してみたものの・・・全員戦闘経験はシュミレーター以外無い・・・らしい
・・・つまり・・・実戦経験者は・・・俺だけかよ!?ってどうすりゃ・・・・
あいつらは全員エース級の腕だったから俺も好きにやれたんだが・・・
・・・・この状況で・・・・しかも素人のお守りをしながら戦うなんて器用な真似は出来んぞ・・・ったく
・・・どうすりゃ・・・・いい・・・どう戦えばいい・・・・
どうすれば・・・こいつらを・・・・生き残らせる事が出来る?
・・・・自問自答を繰り返す事三回・・・・と・・・お前は実戦経験者なんだってな?と部隊長殿が通信を入れてくる
・・・そうだと伝えると・・・この現状を打破する策はないか?時間稼ぎでもいい・・何か無いか?
・・・しゃべり方に余裕が無い・・・・声が少し震えている・・・・初陣でこれだけの戦力差を目の当たりにすりゃ当然だろうな
ったく・・・・厄介過ぎるなこりゃ・・・
お〜い聞いてっかぁ〜部隊長殿〜と・・わざとふざけた口調で話し掛けてみるが・・・・何だ!聞いているぞ・・・と
まるで余裕がない・・・・
内心溜息を付きながら・・・この状況でこいつらでも出来る事と言えば・・・・多分・・・・
・・・・小隊ごとに密集隊形を敷いて互いに相互支援をさせて下さい・・・それと攻撃を避けるよりシールドを使った防御に徹して下さい
現状の保持を最優先させるようにして・・・深追いは絶対にさせないで下さい・・
小型タイプのオートマターは単体ではたいした攻撃力を持たないはずです・・・怖いのは数に押されて部隊ごと飲み込まれてしまう事です・・・幸い奴等は半包囲状態から動く気配を見せてはいません
持ち場を堅守するのか・・・撤退するのか・・・・・・・・貴方が決める事です部隊長殿!
わ・・・私が・・・決める・・・のか?
・・・・貴方はこの部隊の総指揮官でしょう!しっかりして下さい!
し・・・しかし・・・・どうすれば・・・・
現状に戸惑う部隊長殿だったが現状はそれを許す時間を与えてはくれなかった・・・・
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
・・んで・・・・ 何で俺がこんな事をしてるんだ?
どう言う経緯かはよく分からん・・・だが現に俺は軍警仕様の機体・・・
S・ライト・フレーム・・・その名もドーベル・ドックに乗っていて・・・かつ
警備任務だかに駆り出されていた・・・・
・・・確かに・・・全機種中最軽量に属する部類で都市戦には向いているとは思うが・・・装甲が薄過ぎるのが難点か・・・なにせショートレールガン一発で沈む脆さだ・・・まぁ〜・・・その分機動性は折り紙付きだが・・・
・・・しかし人型とは言え・・・全項5mってのはちょいと頼りないなぁ〜コクピットがやたらと狭いし・・・
身動きするスペースは無きに等しく・・・シートと電子機器にサンドイッチにされようになって呟いた・・・
武装は伸縮祝可能な電磁警棒(プラズマ・ステック)と20ミリマシンガン・・・それと
左腕に固定された半身を隠せるくらいの大きさの長方形シールド・・・か・・・
ったく俺は・・・何をやってるんだ・・・・くそっ・・・
と通信が入る・・・ おらっバイトっ!ちゃんと働けっ!
機体の通信機が見慣れないいかつい顔を映し出す
・・・・・バ・・・・バイトぉ? 状況が分からず思わず聞き返し・・・
お前は今回の警備任務を志願したと聞いているが?
・・・・は?(やられた・・・・あのじじぃ〜一杯食わせやがったっ!)
・・・は?・・・じゃない さっさと所定の位置につかんか!
所定の位置・・・所定の位置・・・・と 急いでコンソールを叩く
(こう言う時は高機能A・I搭載機だと楽出来ていいんだがな・・・)
溜息を付きつつ何とか目的の場所を探し出して・・・・
一応確認のためにお聞きしますが・・・・この場所でよろしいんでしょうか隊長?
ああ?・・・・ああそこでいい ・・・で私の事はってまぁ〜どうでもいいか
後な街中ではスラスターを炊かない事 ホバー移動も無しな・・・
・・・・・・・・・・・・・つまり歩いて向かえ・・・と?
ああ・・・・それと緊急時は移動方法は気にせんでもいいが・・・・
なるべく市民の財産は傷をつけてくれるなよ
・・・・はぁ〜〜 善処します
よろしい 少し時間をオーバーしているからな急ぐとしよう・・・・・・
こうして俺達?は指定された場所に向かい移動を開始したのだった
(・・・・・・・そうか・・・これが・・・・じじぃの言っていたバイトの・・・・・
・・・・この時期にまさか軌道エレベータの警護を軍警がとは・・・ね)
・・・・ったく・・・・一線の軍人さんは何をしてるんだか・・・
彼らなら軌道上のリング周辺に展開しているはずだ・・・・と隊長?さんが教えてくれた
と・・・言ってる間に何とか指定時間ギリギリに指定ポイントに到着した・・・・
(しかし・・・何故このタイミングで?・・・この感じだと主力部隊は外周リングの軌道上に展開していると言うが・・・)
(それにしても・・・地上をこれほど手薄にして・・・何を考えているんだ?ニブルヘイムの首脳陣は)
状況に流されるはかりの俺の眼前には巨大な軌道エレベーターが地平線の彼方にまで長大な陰を落していた
・・・軌道エレベーター基部の外周警備を始めてからほぼ二時間が経過した
周囲を見渡すと同型のドーベンドックやそれのカスタム機と思しき機体が大体・・・・220機ほど確認出来た
事前に確認出来たデータによると10機一組のチームと言う事なので・・・・
22部隊・・・軍隊で言う所の中隊規模って所か・・・
軍警でこの規模は中々の大部隊だとは思うのだが・・・・戦力的には心許無いな・・・とか考えつつ警備行動を取っていた・・・
と言っても周囲をレーダーと肉視による監視行動だけなんだが・・・
ふと例の隊長さんが話しかけて来た
確かお前さん「ナク」って言ったよな・・・名前?
・・・・・・・・・・ですけど・・・何か?
・・・おやっさんの所に落ちて来た居候がいるとか聞いてな・・・そいつの名が・・・・確かナクとか聞いてたからさ・・・もしかしたらと思ってね
・
・・・オンポロ機体の整備どころか作業用重機の整備も満足に出来ない居候なら・・・・間違いなく・・・俺だな・・・ははは
・・・・・・・・・間違い無い・・その眼・・・・ブラックフェンリル隊隊長の貴様が何故ここにいる?
そいつは俺の半開きの魔眼を見て問い詰めるように尋問でもしているように聞く・・・
・・・・雇い主に斬られっちまったからな・・・俺みたいな使えん奴は用無しって事じゃないのかとはんば冗談で答えてみるが・・・・
・・・・俺ならそんな勿体無い事はせんな・・・・奴の戦闘力は魔眼持ちの中でも最高ランクに属するレベルだ・・・
特に回避力と防御に神技的冴えを見せると言う・・・
そんな奴をただ遊ばせておくと思うか普通?
その上切り捨てる?・・・・お前の元上司の考えが分からんな
・・・・はは・・・は・・・と笑って誤魔化す以外無かった・・・・
実際・・・ここの軌道上でブラッディア・ジェミニ・・・あの悪魔の双子をけしかけて
俺を落したのは白帝だろうし・・・何より彼らを動かせるのは奴しかいない・・・
・・・精神と魂の牢獄に囚われた・・・いや幽閉した奴自身だけだしな
分かっているのは・・・俺は信頼していた上官に背後から切られて死にかけていた所を・・・
ムックのクソ爺に助けられちまったって事・・・さ
・・・・そりゃ・・・まぁ・・・・難儀な事で・・・
・・・そこまで聞いといて・・・それだけかい?
と・・やはり冗談交じりに答えて・・・
それだけだよ・・・悪かったな・・・不器用で無能な愛すべき我が部下よ
・・・・・思い出した・・・・こいつジジイのボロ屋で宣戦布告見ていやがった奴等の・・・
若衆の中にいやがった奴じゃねえか・・・・ 皮肉もジジイ譲りか・・・
おいっ貴様ら!なに無駄口きいているんだ!ちゃんと仕事せんかっ!!
・・・・見る所では見ているもんだ・・・・手を抜いているつもりはなかったんだが
・・・・今度は中隊長殿直々のお叱りを受けてしまった・・・ったく・・・ふうっ
それからの数時間は何事も無く退屈な時間が過ぎて行った・・・ただ
ただ・・・ほぼ一時間後・・・その五分間ほどの間に断続的に奇妙な通信障害が起きた事以外は・・・
それが最悪の悪夢の幕開けになろうとは誰一人として思わなかっただろう
・・・いや・・・ある程度の出来事ならば予測できていたのだが・・・
現実が予測を上回っただけの事でしかない・・・・ただそれだけの事
ついさっきまで軍警部隊を緩やかに半包囲していた金属の羽虫の群れが少しづつ包囲網を縮めつつあった
そして・・・ついに雪崩れのように襲い掛かってきた
ちいぃ!?立て直す時も考える時もくれんかっ!
部隊長殿っ!さっき言った事は覚えていますね?
あ・・・ああ・・・覚えている・・・
もはや逃げる暇は無くなりました・・・覚悟を決めて下さい
・・・・・・・・・分かっ・・・・た・・・・
わざと明るい口調で・・・ははは〜まぁ〜何とかなりますって
おっ・・・お前はどうするつもりだ
突っ込んで中からかく乱すると同時に出来る限り数を減らします
言うが早いか推進用の背部スラスターと脚部プラズマジェットホバーを出力全開にして
地面を掠めるようにして虫の群れに突撃をかけた
群れの中でマシンガンを乱射しつつプラズマステックで手近な奴から叩き潰す・・・
突撃時の推力を保ちつつ半円状にターンをかけたついでに軌道上にあった虫達を蹴り潰しつつマシンガンを撃ちまくる
同じパターンを三度繰り返し・・時にはシールドで殴り払って凌ぐ
・・・これでかなりの数がこちらに来るはず・・・だが・・・
ちっ!やはり数で押されるとキツイか!
機体をターンさせた瞬間・・・味方機に群がる数百匹の虫の群れ・・
・・・!!?そこをどけぇ!! 最初に目に映った奴をステックで殴り・・・
そのまま軌道エレベータの方に斜めに推力全開でジャンプさせ・・・進路上にいた虫達にシールドを構えて構う事なしに体当たりをかけ弾き飛ばす
鉄の虫の雲を抜け囲まれた味方を瞬間確認して周りの虫の群れに勢いのままに空中から変則斜め踵落としを仕掛け右足の装甲を犠牲にしながら進路上の数十匹を爆散させる
大丈夫か!
なっ・・・・・何とか・・・すまない
・・・・まずは皆でこの場を切り抜けることだけ考えましょう・・・
・・・・(そうは言ったものの・・・予備弾奏が後三つ・・・装甲もあらかた無くなっちまてるしなあんま派手な事は出来んが・・・)
ふ・・・さぁてとぉ!風穴でも開けてやっかなぁ!と気合を入れ唖然とする見方機に対しまだ戦闘中だぞ!と笑い声まじりに叱咤?し再度的中に突撃していった
文字通り真っ向から突撃して向こう側に抜けてアルファベットのWの形を辿るように来た道を引き返し都合三度目の突撃をして向こう側に抜けた時だった・・・・
四本足の一つ目の巨体はまるで飼い犬がお座りするような格好をして背の巨砲を天に向けて屹立させて・・・・
それを見た瞬間にいく筋もの不吉な光が地を焼くのが見え・・・・次の瞬間に・・・無線に全機っ!
機動エレベーター基部まで後退しろっ!! 急げぇぇ!と叫んでいた
背筋に死神の息吹を感じつつ出来うる限り全速で機体を後退させつつ分けも判らずおろおろしている味方を後退させ
最後の機体を後退させた次の瞬間
十機のサイクロプスが上空に一斉砲撃を開始した・・・・
化け物じみた巨砲が連続して一斉に火を噴くさまは・・・
大気を引き裂く凄まじい轟音を伴ってこの世の終りを連想させるに十分な光景だった
だがこの後に訪れた光景は地獄を連想させるに十分過ぎた
十機のサイクロプスが砲撃を開始して10分経たないかと言う時に上空から光の柱がいく筋もいく筋も
それこそ視界が白くなって見えなくなるほど降って来た
光は空を引き裂き地を砕き・・・・・世界から色彩も音も奪い去っていった・・・
どれくらいの時間が過ぎたのか? ようやく世界は色と音を取り戻し・・・・・
機体のセンサーカメラが映し出した光景は・・・・
あれだけいた鋼の虫が消え去って原型を留めないほど破壊されたサイクロプスのなれの果て・・・・
それの周囲はまるで噴火口が出来たかのように溶岩が煮え滾っていた
この光景を見る限り・・・どうやら重戦艦クラスの対艦砲で対地攻撃を行ったらしい・・・が・・・・
砲手の腕が良いのはいいとしても・・・少しやり過ぎだろ・・・・
こりゃ・・・軌道エレベーターも所々溶けちまってるし・・・
ったく・・・・危なかった・・もう少しで骨どころか機体すら残らん所だったよ・・・・ふぅ〜
ええと・・・・こっちの損害は・・・・・各機に連絡を入れ損害状況を確かめる・・・・
どうやら大した損害は・・・・うんっ?俺のが動かん?・・・・ちぃと無理させ過ぎたかな・・・
スラスターがうんともすんとも言わんし四肢の駆動系と制御系も逝っちまったか・・・・
この様子じゃ・・・・誰かに送ってもらうしかないかなと苦笑してコクピットを開放して降り・・・・
熱風が肌を撫で・・・ふと今まで乗っていた機体を見る・・・と
装甲という装甲が剥げ落ち所々骨格がむき出しになっている箇所があるわ溶け掛けている箇所はあるわと
無残な姿をさらしていた
こいつが今まで俺を守ってくれた・・・と言うわけ・・・か(有り難うな)
と心で礼を言い・・・かすかに響く轟音に空を見上げると軍警のマークを付けた大型輸送ヘリが10機で編隊を組んで飛んでくるのが遠目に見えた
それにしても・・・どこの艦隊だ?さっきの砲撃は・・・
(分らん事だらけだな・・・この星に落とされる直前辺りから特に・・な・・・・)
あの仕事の後・・・俺はジジイに掴み掛かろうかという勢いで・・・
アレは何の仕事だったんだ?と詰め寄っていた・・・が当の赤いクソジジィはと言えば
馬耳東風〜馬の耳に念仏〜何の事じゃったかなぁ〜と涼しい顔でのたまいなさる
で・・・いいんじゃないのかい全員無事じゃったんじゃろ?
・・・・何とかかんとか・・・だがな・・・
終わり良ければ全て良しとはいかんのかのぅ〜
・・・・・サイクロプス型のプロトタイプとテストタイプと思しきデカブツが10機も出て来なきゃあ・・・な・・・
それで・・・何じゃと言うんじゃ?
・・・いいか?アレが一発でも実装している大型兵器を即席部隊に対して使ってたら間違いなく全滅は免れかった所だぞ・・
ほう?あんた程の使い手でもか?
当たり前だろうが!・・・俺一人なら逃げ続けて避け続ける事だけは出来るだろうが
・・・あの機体じゃあな・・・致命傷どころか掠り傷がやっとだろう
もっとも・・・前面の大型光学砲の発射直前に特攻して自爆させれば・・・大砲の一つくらいは潰せるかもしれんが・・・
要するに・・・良い機体さえあれば良い結果を出せる・・・そう言いたい訳か?お前さんは?
そこまでは言わんが・・・そうだなぁ〜レージェンド級の機体が使えれば一個艦隊くらいは潰してみせるんだがなぁ〜
ほぅ〜こりゃまた大きく出たな? で何じゃそのレ〜なんたら級っのは?
レージェンド級・・・今の所確認されていた機体はユミルのバハムートとリバイアサンそれとヴァルハラの・・・・奴のオーディーンくらい・・・か
旧世紀と推測される遺跡から発掘された現代のテクノロジーでは再現不可能な超絶的性能を持つありうべからざる機体の事・・・その戦闘力は一機で一個艦隊に匹敵するとまで言われているが
で・・・それがあれば良いのか?
おいおいおい・・・何もそこまでは言わないよ・・第一それはロストテクノロジーの産物で・・・・・
しっとるよ・・・
・・・・・なに?!
・・・・・・・・・・このタヌキジジィ〜と心の中で拳を握り締めていると当のクソジジイは近くのテーブルから写真を取って来て・・・お前さん・・こいつをどうみる?
と写真とはまた古風な物を・・・と・・・写っていた物を見て驚いた
こいつは・・・まさか竜機か?!しかし・・・・何故・・・
写真に写っていたのは暗黒の世界で爆発光を背にした破壊神と化したような黒色の竜機
(恐らく・・・こいつは・・・・失われた機体・・・しかも竜機だと?)
もう二枚の写真はテーブル一杯の大きさにまで引き伸ばされていた
・・・肝心の竜機がボケてるな・・・って事はもしかして・・・無人なのか?
恐らく・・・な 最新のチューニングモジュールでのピント合わせも間に合わんくらいだからの・・・最初の奴は偶然撮れたらしいんでな
って事は・・・パイロットが乗ってたら・・・間違い無く挽肉になってるな・・・
それは間違い無いじゃろうな・・・・・計測機器による観測ではエース仕様機並みのG.ショックアブソーバーの限界機動をすら軽く超えとるらしいからのぅ〜
・・・・・・・って・・・どうやってこれを手に入れたんだ?
・・・・写真だけでも・・・最高軍事機密並みの代物じゃないのか?これって
・・・内緒じゃ♪
・・・・・・・・ときやがった
・・・・・・・・・喰えねぇどころか食あたりしそうなジジィだな・・・こりゃ・・
と・・・心の中で毒づいてみる
んで・・・何でこんなもんを見せたんだ?
ん?・・ああ・・お前さんを黙らせるのに丁度良いと思ったからじゃよ
って事は・・・・五月蝿い男一人黙らせる代償に更に五月蝿いのが回りをうろちょろさせる事がか?・・・・割りに合わんだろ?
確かに一時的にだが俺は黙っちまったがな・・・
そうじゃろうそうじゃろう
・・・と嬉しそうに・・・幽かに不気味さの漂う笑いを浮かべ・・・
今度のバイトはこんなんでどうじゃ?
と一枚のチラシ?を見せて来た
・・・市警の募集?交通整理募集?経験者優遇?!
んなもんやった事ないぞ・・何事も経験じゃ・・・それに働かざる者食うべからずじゃ
・・・・・今度は多少は楽が出来る事を願うよ・・・・
しかし愛すべきクソジジィの目に宿る不気味な光は進むべき未来が暗雲漂う悲観すべき世界に思えてならなかった・・・
・・・・忘れる筈がない・・・いや・・・忘れようが無い・・・感覚・・・
眼を受けた時のアレは・・・筆舌に尽くし難い・・・
・・・眼と言っても実体のソレでは無く・・・
それらは作り物の機眼や遺伝工学をナノマシン技術を弄んで作られた奇眼・虹眼・・・
少なくともそれらは実体を持っていた・・・
だが・・・俺に移植されたアレは・・・霊体だった・・・
・・・・移植されたものは・・・フェンリル狼と呼ばれる霊力を玉体と呼ばれていた水晶球から
俺の目に霊体とか言う奴を宿らせる行為そのものだった
もっとも物語にあるようなファンタジックな代物ではなく
どちらかと言えば・・・拷問そのものだったと言っても間違いではないのだろう
行為そのものは閉鎖された空間・・・場所は分からなかった・・・
あいつは事実を伏せた上でただ・・・力が欲しいか?欲しければくれてやろう・・とだけ
聞いただけだった
当時の俺は一も二もなく受け入れた・・・欲しかった・・・誰も死なせない・・・
・・・・死なせる事のない・・・もう・・・ただ殺させないだけの・・・
無機質な金属質の6М×6Мの壁・・・正方形の空間・・・
その中央に歯医者で見たような診療用の椅子・・・その椅子までもが全て金属の光沢を放ち・・・
この空間の中でさえ際立ってその無機質さを弱めの明かりの中に異様な光沢と共に浮かび上がらせていた
俺はその椅子に特殊な拘束具・・・
まるで資料で見た鋼鉄の処女とか言う古代の拷問具そっくりなソレに固定・・・され・・・・儀式は開始された・・・・
違う点が在るとすれば・・・内部に拷問の為の刺のような剣が仕込まれて無い事と
両目の穴が開いている事・・・オリジナルに比べて一回り半は小さい事・・・
身動きは一切出来ず・・・唯一動くのは瞼のみ・・・
・・・何故そこまでしなくてはいけないのか?・・・少し疑問はあったが当時の俺は奴を信頼しきっていてそれ以上は無かった
見えていたのは天井と奇怪な何かの装置のみ・・・・と何かがゆっくりと降りてきて
奴の声が聞こえた・・・そのまま目を開けていろ・・と
どういう意味か考える間もなく視界は二条の光に焼かれた・・・
・・・・?片目だけではナイノカ?・・・・
・・・それから先の記憶は途切れ途切れにしか憶えていない
処置が終わり開放された後・・・・一週間ほど意識が無かったらしい
・・・・多分・・・夢の中で数え切れない程の剣と槍で斬られ突かれ・・・
何度も何度もなんども殺され・・・続け・・己を投げ出す間もなく
・・・・ただ・・・幾千も斬られては体が切り裂けて血を吹き四肢が斬れ飛び
・・・幾万も突かれ身体は原型を失うほどに心は悲鳴を上げ続け精神という血液を噴出し続け
・・・一度死んだのだろう・・・多分・・・
何故か痛みだけは忘れること無く感じ続けていた・・・・
激痛とは程遠い・・・ケタ違いの死の海を漂いながら・・・・
その狭間で心が切り刻まれている幻影を見たのだろうか?
その所為か身体が動くようになるまで更に一週間かかった
処置に関わった技師だろうか?・・・奇跡だとか言ってやがったが?・・・
医者は・・・もうしばらく休養が必要だとか言う・・・確かに酷く身体も頭が重い・・・・
上手く身体が動かせない・・・・まるで繰り糸の切れた人形みたいだ・・・
・・・ようやく動けるようになってすぐに自分の目に違和感を感じた
見ている以上の何かを見ている感覚・・・・それが何かはその時はまだ分からなかった
その後は・・・戦闘訓練漬けの日々を過ごし生身での戦い方と人型兵器の使い方を芯まで叩き込まされた・・・
それがある程度の成果を上げると今度は機体を渡され奴の手駒として作戦に加わっていった
俺は眼の力を使い敵となった勢力を指示通り血祭りに上げ徹底的に滅ぼし尽くしていった
レヴァンティン・・・擬似ドラウブニル機関を六基も搭載した大型戦略殲滅兵装
惑星遺跡ダナケルトより発掘された遺物を元に開発された超兵器
これを使い幾つの星々をそこに住まう人々ごと消した事か・・・
さすがに白旗を上げた奴らを皆殺しにした時は・・・・・・
奴の命令とは言え・・・何故?と聞かずにはいられなかった
回答は・・・・それが私の意思だからだ・・・だった
一体・・・何を考えて居られるのか?・・・敵対勢力を潰すのならまだ分かる・・・
だが中立勢力と味方まで潰して何になるというのだろうか
そののち俺は疑問を内に抱えたまま幾度も作戦に従事し続け何時の間にか隊長と呼ばれていた
そしてある作戦でコードネーム『ナク』を得る
だが未だ名無しの身なのは相変わらず変わらない
いつ失ったのか・・・それとも最初から無かった・・・のか・・・憶えていない
あの頃からどれだけの時間が流れたのだろうか?
戦うこと以外ほとんどしてこなかった気がする・・・
そしてある時・・・ふと奴に聞いてみた・・・何故あれほど徹底して殺し奪い続けるのか?と
そうしたら作戦中に刺客を送られた・・・なぜだか分からない・・・信頼されていなかったのか?
ただ・・・理由を知りたかった・・・それだけだった
部隊は散り散りになりあいつらの所在も生死も分からなくなった
その時・・・作戦を実行中だったのが惑星ニブルヘイムの衛星軌道上だった
任務はニブルヘイム軌道上にある眠らずの巨人『ヘイムダル』システムの端末の確保と
第二に惑星深部に存在するとされるユグドラシル遺跡の確保とヘイムダル主機の確保だった
ヘイムダルシステム・・・
惑星間を虹の架け橋と呼ばれる異相次元へのゲートを開き極超短時間に数百万光年の距離を飛び越える虹色の門・・・
次元の歪みを発生させ本来ならなら亜光速でも数億年かかってしまう旅路をほぼ瞬時に飛び越えてしまうシステムである
以前作戦で潰して回っていたのもヘイルダムの端末機器を軌道上にもっていたか
内部に備えていた星々だったのは意図されていた事だったのか?
そこで俺は刺客として現れたあの双子に突如急襲われ青い輝きの中に機体と共に吸い込まれていった