【例05】松下無線 放送局型第百二十三號受信機の修理
また、戦前のラジオの修理をします。今回は放送局型第百二十三號受信機という、太平洋戦争末期に作られたラジオで各社統一した仕様で製造された物です。この受信機は敗戦色が濃くなった時代に製造された物であるため、トランスレスで部品点数も少なく、戦前のラジオとしては修理が容易な方です。ただし、部品や木箱の材質が悪いため、状態が良い物と悪い物では修理の手間に雲泥の差が出ます。このラジオはオークションで6000円即決で出ていたため、状態も良く見ずに思わず買ってしまいました。
【故障内容】

【2】セットの後ろを観察します。配線が腐って所々裸線が露出しています。電解コンデンサは戦後すぐに交換されたようですが、他は良く原型をととめています。真空管もオリジナルのまま残っているようです。

【3】まずは真空管を外します。付いていたりは全てマツダの球です。戦前、松下は真空管を製造していませんので、マツダの球を付けていました。従って元々の球がそのまま残っていると見て良いでしょう。整流管24ZK2はベースに刻印、他は品番が球に印刷して有ります。

【4】とりあえず汚いので真空管を磨きます。綺麗になったところで他のラジオに挿して動作確認したいのですが、この球を使用して動作するラジオが手元にありません。従って簡単に球の検査をします。まずヒーターの導通確認、全てOKです。続いてヒーターとカソード間の抵抗を測定、デジタルテスタでは全て無限大を示しました。トランスレスではヒーターとカソード間の電圧が高いため、時々絶縁不良の球が有ります。テレビの球では、垂直出力に使用した12BH7Aのヒーターとカソードが、数100Ωで絶縁不良というのが良くある話です。今回はとりあえずOKですが、実際電圧が掛かるとダメな球もありますから、この検査だけで使えると決まったわけではありません。球には18.10の紙が付いている物があります。昭和18年10月ということです。

【5】軽く埃を取ってからシャーシを取り出します。セルロイドの目盛盤が外れています。鳩目が錆びて落ちたのでしょう。ダイヤル指針も錆びて酷い状態です。目盛盤と指針は外して、アルコールなどで清掃しておきます。

【6】シャーシを裏返して観察します。こちらも大変な状態です。ボリウムは交換された形跡が有り軸の長さが違います。電解コンデンサは上と下に同じものが2個付けられていますが、使える気がしませんから交換することにします。よく見ると部品がぐちゃぐちゃで、ペーパーコンデンサは中身がはみ出している物が数点、リード線も腐って芯線も外被ボロボロです。さーて、どうしたものでしょう・・・。毎度の事ですが、しばらくは考えながら途方に暮れます。

【7】とりあえずシャーシは後回しにして、キャビネットからスピーカーを外します。ラッキーな事にスピーカーは断線していません。電源スイッチは昭和30年頃の物が無理矢理付けられていましたが、錆びています。とりあえずスイッチも外してキャビネットの中を徹底的に掃除します。キャビネットの中に感電注意と真空管配置図、昭和18年10月製造と書いた紙が貼って有り、綺麗に残っていました。またキャビのそこには回路図が大変鮮明な状態で残っています。

【8】木箱の天板を見て下さい。木が浮いてしまって隙間が出来ています。これではどうにもならないので、木工ボンドを使用して補修することにします。また、汚れとニスの曇りはコンパウンドで除去します。

【9】セルロイドの窓は真っ黒です。またニスも曇っていて汚いのでこれも補修します。窓の横の紙には・・・奈良18年・・・と書いて有ります。奈良県で使われていたのでしょうか。

【10】木箱を全て磨き終わりました。浮いた部分には木工ボンドを付けて、写真のように紐で縛り、押さえたい部分に燐寸箱を押し込みます。これで半日放置して、次の補修部分を接着して縛り、半日と繰り返して、箱全体をなおします。