研究事始め
序論
- 最初に研究を始めたテーマは、ケトンのカルボニル基の隣に塩素を導入することでした。
- この研究は、日本化学会欧文誌( Bulletin of the Chemical Society of Japan, 58(1)142(1985)に発表しましたが、ここでは、バイオ工学などを学ぶ学生の方にもわかりやすく解説してみたいと思います。
- 「 ケトンのカルボニル基の隣に塩素を導入する 」という研究と聞くと、バイオと何の関係があるんだと思われるかもしれません。ところが、実は、大いに関係があるのです。
- 微生物が産生するβ-ラクタム系抗生物質は、隣り合う2個のカルボニル基を持った化合物(α-ジケトンといいます)から生合成されます。この生合成を研究するためには、大量のα-ジケトンが必要となります。そこで原料としてα-ジケトンを購入することになるわけですが、自分の思ったとおりのα-ジケトンは、売っていないかもしれません。そうなりますと研究はそこでストップしてしまいます。そのためには、効率の良い、応用の利く、α-ジケトンの合成法の開発が不可欠になります。
- α-ジケトンの合成法の一つの可能性として、α,α-ジクロロケトンの加水分解が考えられます。そこで、合成のターゲットとしてα,α-ジクロロケトンを選ぶことにしました。
- 有機化学の教科書を読んでみると、カルボニル基の隣に塩素を導入する方法として次の2つが挙げられています。
(1)酸触媒下でケトンと塩素を反応させる。
(2)塩基触媒下でケトンと塩素を反応させる。
(1)の場合、1個目の塩素は導入されますが、2個目の塩素を導入することは、困難です。
(2)の場合、容易に2個の塩素が導入されますが、ハロホルム反応が起こり、含塩素化合物は、通常、単離されません。
- そこで、α,α-ジクロロケトンの新たな合成法の開発を始めることにしました。
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