第35話 耳そうじ


 私は耳掃除が大好きです。車や会社のデスクには綿棒を入れてあります。綿棒が手の届くところにないと、落
ち着かない事に最近になって気がつきました。綿棒が切れてしまうと妙に不機嫌になります。自己分析では、お
おざっぱな性格をしている筈なのですが、綿棒に関してだけは神経質なようです。アマチュア無線を楽しむ為に
は、人の5感のうち、聴覚を最も良く使います。ノイズに埋もれた信号を聞き分けるため、耳は最も大切な器官
です。アマチュア無線を楽しむために、神経質になっているというわけではありませんが、ひょっとしたら、趣
味を楽しみ続けたいと云う潜在意識が、そのような行動を私にとらせているのかも知れないなと、風呂上がりに
耳掃除をしながらふと思いました。

 私の耳かすは、世に言う「じゅく耳」で、粘りけのある黄色みがかった耳汁が耳穴にたまります。綿棒を耳穴
から抜き出したとき、真っ白な綿が、深みのかかった色であればある程に快感を覚えます。移動運用から帰って
きた時には、耳汁もたくさん分泌しているようで、普段以上の快感を得ることが出来ます。
 移動運用では、必ずヘッドホンを着用しています。山岳移動運用の時、荷物が重くて装備を減らさなければい
けないときでも、AZDENのヘッドセットか、SONYの密閉型ヘッドホンのどちらかはリュックに入ってい
ます。スピーカーから大音量を発して、山頂で集う一般ハイカーからひんしゅくを買わないように、という配慮
もあります。ヘッドホン着用の主目的は、リグからの信号に集中できるという事です。この行動には嬉しい副産
物があります。帰宅後の耳そうじが楽しいのです。

 ヘッドホンを被っての真剣な信号のやりとりをしていると、耳穴がかゆくなってきます。山上にヘッドホンは
持ってきても、さすがに綿棒までは手が回りません。そこでボールペンやススキの茎をちぎって、耳穴に突っ込
んでボリボリと耳の中を掻き回します。すっきりして真剣勝負に戻るのです。そんな直後は、先ほどまでよりも
弱い信号が聞き取れるような気がします。

 家に帰って、耳の中までお湯が入る程に湯船につかります。汗を流した後は耳そうじの時間です。とろとろ綿
棒にこびりついてくる耳汁に混じって、とてもとても小さい木の屑がくっついてくることがあります。それを眺
めながら「山の上からこんなところまで連れてこられてご苦労さん」と、訳の分からないつぶやきをして、汚れ
た綿棒をゴミ箱に放り投げるのです。移動運用の余韻を、自宅に帰ってからも楽しめる耳そうじの時間は、私に
とっては優雅な時間です。ゴミ箱に放り投げたつもりが、逸れてしまって入らずに床に転がり、嫁さんに「汚い
なあ」と、文句を言われない限りは...

 耳そうじのやり過ぎは、耳に良くありません。大音量で長時間の聞き取りもこれまた良くありません。どうか
皆さんやり過ぎにはご注意ください。それでも私は、優雅な時間を得るために、これからもたびたび移動運用に
出掛けそうです。耳をそうじしながら「今度は何処に行ってCQCQしようかな」と、思いながらボリボリとつ
つくのです。耳の穴を...
 

JL3TOG 2001-DEC-05
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